著者
島崎 宇史 小田 洋一
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.111-118, 2020-07-31 (Released:2020-08-20)
参考文献数
71

危険な刺激や敵から素早く逃げる逃避運動は,ほぼすべての動物が生きのびるために行う必須の行動である。逃避運動は刺激や敵の情報を素早く察知し,可能な限り速く遠ざかることが求められているので,逃避運動を制御する回路(逃避運動回路)は,一般的な神経回路には見られない特性と構成因子を持つことが多い。逃避運動回路の中心には,しばしば巨大なニューロン(giant neuron)が存在し,様々の感覚情報・環境情報を統合して「逃げろ」という司令を出し,できるだけ早く効果器に伝えて逃避運動を実行する。 ここでは,イカ,ザリガニ,ショウジョウバエ,キンギョ,ゼブラフィッシュ,ラット,マウスなどを例にあげて,異なる種の動物が示す逃避運動とそれを制御する逃避運動回路を紹介し,逃避運動回路における巨大ニューロンの存在とはたらきを紹介する。興味深いことに,巨大ニューロンが活動しなくても動物は敵や刺激から遠ざかることは辛うじて可能であるが,瞬時に素早く逃げるには巨大ニューロンが唯一無二の役割を果たしている。また,なぜ逃避運動回路に巨大ニューロンが組み込まれているかについても考察を加える。
著者
福島 光浩 太田 寿 小田 瞳 伊藤 康弘 宮内 昭
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.27-30, 2017 (Released:2017-04-28)
参考文献数
9

われわれは低リスク甲状腺微小乳頭癌に対し,すぐに手術をせずに経過観察を行ってもほとんどの症例では全く問題がなく,また仮に経過観察中に腫瘍増大やリンパ節転移を認めたことにより途中で手術療法に切り替えたとしても,それらの手術後の予後もまた良好であったことを報告した。経過観察を選択した症例で,超音波所見と臨床病理学的背景から,後に手術が必要となること,もしくはずっと経過観察が可能であることを予測するための因子として以下の所見があげられる。腫瘍が増大せず経過観察継続可能な因子は①アコースティックシャドーを伴う粗大高エコー輝点,②初診時年齢高齢,③微細高エコー輝点,の3つ。一方,リンパ節転移が出現せず経過観察継続可能な因子は微細高エコー輝点,逆にリンパ節転移が出現し手術が必要となる因子は初診時年齢若年があげられる。
著者
奥村 康子 小田 雅子 齊藤 浩司
出版者
一般社団法人日本医薬品情報学会
雑誌
医薬品情報学 (ISSN:13451464)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.34-38, 2015 (Released:2015-06-28)
参考文献数
9

Objective: Consultation contents from medical consumers can become a useful information for medical workers.  However, report which investigated about them is limited.  In this study, we investigated the question contents from medical consumers with telephone.Methods: Nineteen hundred records on the consultation from medical consumers with telephone from 2007 to 2011 were subject to this study.  Using appropriate keywords and check the records, corresponding cases were extracted.Results: Resources of drug information which medical consumers used had various one such as the Internet, television, books, and newspapers.  However the medical consumers did not necessarily understand drug information correctly from the Internet and books.  This means that support by pharmacists was necessary in those cases.Conclusion: We think that information sharing in the medical consumers and medical workers based on a good relationship is important for proper use of drugs.
著者
野家 啓一 川本 隆史 篠 憲二 清水 哲郎 鈴木 淳子 座小田 豊
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

ヘラクレイトスの「万物は流動する」(panta rhei)やゼノンのパラドックスを引くまでもなく、哲学の源流をなす思想家たちにとって《動き》は重要なテーマであった。モノの動きとヒトの動きにはどれほどの共通性があり、どこが違うのか。あるいは同じ動物の動きの中で、人間の動きにはどんな特徴があるのか。「人の移動の哲学」は、そうした哲学の根本問題に立ち返りながら知の組み替えを図り、同時に現代の社会と文化の変動が突きつけてくる実践的な難問に応答することを試みるものである。1年目は、「人の移動」を《哲学する》方法論の探究に主力を費やし、研究代表者の野家啓一は、「人の移動」がもたらす境界領域としての「異界」に注目する作業を始めた。2年目は、「人の移動」を可能にする空間のあり方を主たる検討課題とした。次いで、「人の移動」に関連する文化現象の一例として、「メタファー」を取り上げ、東北哲学会との合同シンポジウムを開催した。3年目は「人の移動」を可能にする時間のあり方の吟味から共同研究をスタートさせた。次いで、「人の移動」の哲学の基礎理論を固めるべく、世界的に再評価の動きが見られる哲学者ディルタイを取り上げ、東北哲学会との合同シンポジウムを開催した。哲学・倫理学の研究者を核として、社会心理学、比較文化論・農業経済学という関連領域の第一線のメンバーを分担者に加えた本研究の成果は、すでに各種のシンポジウムで公開したほか、東北大学倫理学研究会の協力のもと三冊におよぶ資料集を発行し、関係諸機関に送付してある。さらに研究代表者・協力者の個別の論文・報告にも共同研究の成果は折り込み済みである。
著者
森 裕紀子 五野 由佳理 及川 哲郎 小田口 浩 花輪 壽彦
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.274-279, 2016 (Released:2016-11-22)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

群発頭痛の発作軽減に選奇湯の頓用が奏効した症例を経験した。症例は46歳女性で,30歳頃より季節の変わり目に群発頭痛の発作があり,症状は3日間持続した。発作時トリプタンや消炎解熱鎮痛剤は無効で,その発作の持続時間が長く頻回となったため漢方治療を希望し来院した。瘀血と気鬱より随証治療で通導散料を処方して頭痛の頻度と程度は軽減したが,鎮痛剤が無効な頭痛発作は生じた。そこで眉稜骨(眼窩上縁)内側の圧痛を認め,痛みの範囲が眉稜骨周囲のため頭痛時に選奇湯を頓用としたところ,最近1∼2週間持続した発作が30分で消失した。一般に構成生薬が少ない漢方薬ほど切れ味がよいとされる。選奇湯は黄芩を含む5味と構成生薬が少なく,頓用での効果が期待できる。眉稜骨周囲の痛みに対して,特に眉稜骨内側の圧痛を認める場合は選奇湯の頓用は試みるべき処方の1つである。

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著者
小田仁二郎 著
出版者
真善美社
巻号頁・発行日
1948
著者
小田 寛貴
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.380-383, 2018-08-20 (Released:2019-08-01)
参考文献数
2

鎌倉時代以前の古写本の大部分は,掛軸などにするために頁毎・数行毎に切断され,現存するものは極めて少ない。しかし,切断された断簡としては,かなりの量が伝世している。これが古筆切である。ただし,古筆切には,後世に制作された偽物や写しも多く混在する。そのため,炭素14(14C)年代測定という放射化学的手法によって古筆切の真贋や書写年代を決定することは,失われてしまった古写本の一部分が復元されることを意味する。さらに,こうした古筆切を史料とすることで,新たな歴史学・古典文学・書跡史学の研究が可能となる。
著者
佐藤 和紀 小田 晴菜 三井 一希 久川 慶貴 森下 孟 谷塚 光典
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S45061, (Released:2021-11-02)
参考文献数
6

小学校高学年児童がクラウドサービスの相互参照を用いて,他者の文章を参照して意見文を作成する実践を行った.意見文の評価と意識調査の結果,他者の意見文を参照したグループ児童の意見文の評価は有意に高く,他者の意見文を参照していないグループの児童よりも読み手にどう伝わるか気をつけて書く,自分の考え以外の視点でも書く,主語と述語のつながりを注意して書く,形式的なミスを少なくする,ことを意識していた.
著者
近藤 由佳里 大庭 智子 田中 智子 古賀 あゆみ 光吉 久美子 大塚 康代 野口 ゆかり 新小田 春美 平田 伸子 加耒 恒壽
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.518-529, 2005-01
被引用文献数
3

現在, 意図しない妊娠による結婚「できちゃった結婚」が増加している。妊娠, 結婚という2つの大きなライフイベントに同時に直面するため, 母性不安が大きく, 順調な母性発達過程からともすると逸脱しやすいのではないかと考えた。そこで今回, 「できちゃった結婚」妊婦の母性不安と母性発達の現状を明らかにするため, 計画妊娠初産婦と比較する研究調査を行った。期間は2003年9月〜12月。F市産婦人科5施設の初産婦319名を対象に自記式質問紙調査を行い, 以下のことが明らかとなった。(1)「できちゃった結婚」群は計画妊娠群より母性不安度が高く(p<0.001), 特に妊娠判明時「戸惑った, 困った」と答えた妊婦が, 有意に母性不安度が高かった(p<0.001)。(2)母性不安因子は, 「薬や喫煙の影響」「経済状態」「産後の体型の変化」「世間体」「育児」「母乳」「夫の思いやり」「夫の反応」「家族の反応」の9項目において, 「できちゃった結婚」群が有意に高かった。(3)母性の発達過程(母性意識, 愛着形成)については, 両群で有意な差はみられなかった。(4)母性不安度の高い人は母性意識が低く, 特に「できちゃった結婚」群において強い相関がみられた。(5)母性不安度が高い人は対児感情が低かった。