著者
小野崎 隆 山口 隆 姫野 正己 池田 広
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.546-550, 1999-05-15
参考文献数
10
被引用文献数
8 19

Pseudomonas caryophylliにより発生するカーネーション萎ちょう細菌病は, 夏の高温期に多発する立ち枯れ性の土壌伝染病害であり, 日本でのカーネーション栽培上最も重要で問題となっている病害であるが, その抵抗性育種は国際的に未着手の状態である.このため, 抵抗性育種素材の選抜と抵抗性品種の育成が, 緊急の課題となっている.本報では, カーネーション277品種の萎ちょう細菌病に対する抵抗性を, 浸根接種法による検定により評価した.接種から91日後の発病率によって, 抵抗性を極強(発病率 : 0%), 強(発病率 : 0<&acd;≦20%), 中(発病率 : 20<&acd;≦40%), 弱(発病率 : 40<&acd;≦70%), 極弱(発病率 : 70<&acd;≦100%)の5つに分類した.検定試験の結果, 供試品種のほとんどはり病性で, 207品種(全体の74.7%)は抵抗性が極弱に分類された.萎ちょう細菌病に対する抵抗性が強(発病率 : 0<&acd;≦20%)の品種は, 'ウィコ', 'ノクト', 'サンドローサ'の3品種のみであった.
著者
北原 武嗣 杉浦 邦征 山口 隆司 田中 賢太郎
出版者
関東学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

海溝型巨大地震のような長周期・長継続時間地震波を受ける鋼製橋梁の耐震性能の把握が重要である。そこで,都市高速に多用されている鋼製橋脚を対象とし,ハイブリッド実験,静的繰返し載荷実験およびFE非線形解析により,最大耐力履歴後の数十回に及ぶ繰返し変位による耐力低下を検討した。その結果,最大荷重履歴後,初等はり理論で弾性範囲と考えられる数十回に及ぶ変位載荷により,耐力は10%程度低下する可能性のあることが分かった。また繰返し振幅範囲が大きいほど,繰り返し数が多いほど耐力低下の割合が大きいことがわかった。
著者
山口 隆子 横山 仁
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, 2004-10-01
参考文献数
1
被引用文献数
1
著者
山口 隆子 Takako YAMAGUCHI 東京都環境科学研究所基盤研究部 The Tokyo Metropolitan Research Institute for Environmental Protection
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 = Tenki (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.265-275, 2006-04-30
参考文献数
44
被引用文献数
1

日本における百葉箱の歴史と現状について調査した結果,以下のことが明らかになった.19世紀中頃のイギリスで開発が始まった百葉箱は,1874年に日本へ導入され,1875年からの観測に使用したものが最古の記録であり,1886年までに「百葉箱」と命名されていた.百葉箱の読み方は,「ひゃくようそう」と「ひゃくようばこ」が混在しているが,小学校理科教科書に関しては,1969年以降「ひゃくようばこ」もしくは振り仮名なしで統一されていた.百葉箱の現状であるが,現在,気象庁の観測では百葉箱は使用されておらず,教育現場においては,1953年の理科教育振興法公布以前から設置されている.また,その設置状況は,東京都のヒートアイランド観測を行っている106校の東京23区内の小学校に関して,設置地表面状態に関してはほとんどの学校が気象庁の設置方法に準拠しているものの,日当たりに関しては37%,風通しに関しては43%,扉の向きに関しては37%の学校しか準拠しておらず,設置基準全ての項目を満たしている学校は106校中4校のみであった.さらに,理科の授業における使用状況は32校中24校で使用しているものの,観測を実施している学校は2校のみであった.
著者
神野 巧矢 山口 隆司 浅野 貴弘 伊川 嘉昭 小山 雅己 水内 將司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.22-00119, 2023 (Released:2023-03-20)
参考文献数
15

既設鋼橋の性能回復・向上を目的に,高力ボルト摩擦接合を用いて鋼部材を付加する当て板補修・補強が行われている.本研究では,曲げを受けるI桁下フランジ当て板補修・補強部の荷重伝達区間に着目し,当て板厚やボルト間隔がそれに及ぼす影響を明らかにするため完全弾塑性解析を実施した.また,部分欠損補修における当て板の配置が補修効果に及ぼす影響を検討した.結果,荷重伝達区間は,当て板厚およびボルト間隔が小さいほど短縮された.また,ボルト間隔が小さいほど結果的に荷重伝達区間に必要なボルト本数が増加するため,すべりを生じた本数は減少した.本解析の部分欠損補修では,当て板を片側に1枚とするのではなく,2面摩擦として両側に当て板厚が半分の当て板を2枚とすることで荷重伝達区間を短縮でき,欠損部の応力をより低減できた.
著者
田畑 晶子 金治 英貞 黒野 佳秀 山口 隆司
出版者
一般社団法人 日本鋼構造協会
雑誌
鋼構造論文集 (ISSN:18809928)
巻号頁・発行日
vol.20, no.79, pp.79_19-79_28, 2013-09-27 (Released:2014-12-20)
参考文献数
10

The authors focused on the high strength bolted friction grip joints with countersunk head bolts which can finish the surface of the connection plate flat smoothly and prevent from functional depression due to corrosion. In this study, we carried out FE analysis varying the angle of countersunk head in order to evaluate the contact pressure of double shear connected friction joints with countersunk heads. Also, we have investigated the influence on load transferring mechanism by using countersunk head bolt for frictional joints. It has concluded that the most desirable angle of the countersunk head is 90 degrees. CD series's slip strength is about only 4% lower than that with normal head bolts.
著者
山口 隆子
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3-4, pp.75-86, 2022-03-31 (Released:2022-04-22)
参考文献数
138

芝棟に関する既往研究を整理し,現地調査により,芝棟の現存状況と芝棟植物の分布特性が明らかとなった.芝棟は,岩手・青森県を中心とした東日本に約600棟が現存しており,そのうちの9割は岩手県に現存している.岩手・青森県を除く都府県では,芝棟の多くが文化財等に指定され,保存されていた.しかし,文化財等に指定されている建造物であっても,芝棟を維持できなくなっているものもあった.芝棟植物の分布については,シバは芝棟が分布する全地域に見られ,東北地方太平洋側と内陸山間部では,ユリ・カンゾウ・ネギ・ニラが,関東平野部ではイチハツが,関東山地周辺ではイワヒバが多く見られた.
著者
山口 隆子 松本 昭大
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2020年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.22, 2020 (Released:2020-03-30)

伊豆諸島の島々では、島の上空だけが雲に覆われることがある。この現象を「島曇り」という。島曇りが発生すると、視界不良により航空機や船の発着が困難になる。伊豆諸島の島曇りに関する研究は、気象庁による報告書が複数あるものの、論文としてまとめられたものはない。そこで、本研究では、長期的な観測のデータを用いて、島における霧の発生条件を気候学的な推定を行った。 対象地域は、伊豆諸島のうち測候所が置かれており、欠測の少ない八丈島と伊豆大島とした。対象期間は目視による雲の観測が行われていた、1989年4月から2009年9月までである。島で広がる霧には、「島曇り」のみならず、海から侵入する「海霧」もある。しかし、島民は両者を区別しておらず、測候所での観測結果はいずれも「霧」となる。本研究では、島曇りと海霧を区別することが困難であることを考慮して、新たに「島霧」として定義を行った。 八丈島の島霧の発生頻度は、1年あたり約20.7日であり、大島の2.5倍弱に達した。このように、八丈島は大島と比べ、島霧が生じやすい。月別発生頻度は、両島ともに、5〜9月に多く、7月にピークを迎えた。一方、秋から冬にかけては、島霧の発生頻度が非常に小さくなる。6月から8月にかけては、気温が海面水温を上回る時期が現われるが、この時期と島霧が多発する時期が一致した。この点を各島霧日について、調べたところ、「気温-海面水温」の値が-3℃以上になると、島霧が急増することが明らかになった。 島霧は6,7月に多く、梅雨前線の影響が窺われたため、前線の位置を調べた。島霧時の前線の緯度は最多が北緯35度、次に37.5度であった。八丈島が北緯約33度であるので、これらの前線は、八丈島の北側かつ、近傍にあるといえる。したがって、前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込みやすい状況にある。一方、前線が32.5度以南、すなわち八丈島の南側に位置する場合、島霧の発生数は極端に少なくなる。これは、風向が北寄りとなり、陸地由来の乾燥大気が流入しやすくなるからだと思われる。 黒潮が島の南側を流れる場合、南方から湿った大気の移流により、島霧が生じていた。ただし、海面水温が低いため、他の条件が悪くても、大気が安定し、島霧となる事例もみられた。黒潮が島の北側を流れる場合、南寄りの風により気温が上昇し、海面水温を上回る際に、島霧の発生が多くなった。黒潮の影響により、北寄りの風の際にも、高温・多湿となることもあった。このように、黒潮の流路によりも、移流の効果が、島霧に影響を及ぼしていた。 島霧の発生条件の推定の結果、以下の条件が揃う際に、島霧が生じやすいことが明らかになった。①気温と海面水温の差が-3℃以上になること②湿度が85%を超えること③南西の風が吹くこと④850hPa以下の下層大気に安定層があること⑤日本列島上に停滞前線があること、もしくは南高北低の夏型気圧配置となること
著者
山口 隆太郎
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.259-281, 2014 (Released:2021-10-26)
参考文献数
57

現代の日本において,自己決定権を失った地方行財政制度は地方自治の阻害をもたらしている。なぜ今日このような制度を持つにいたったのかについて,本稿では財政調整制度の形成過程の分析を通じて明らかにする端緒として,財政調整制度の「萌芽」とされてきた義務教育費国庫負担制度の1918年における成立と1923年の改正の過程を分析した。1908年の義務教育年限の延長により重くなっていた町村の教育費負担は,義務教育費国庫負担の要求をもたらしたが,1918年の制度成立は「教育の改善」が,1923年の改正は「軍縮」が,それぞれ主な要因となった。それは制度形成に関わった各政治的主体が,「官治的」な地主制地方支配の維持のために,中央と地方の行財政制度の再編を意図したものではなかった。また自己決定権の喪失をもたらすような,人々の「平等志向」が存在したわけでもなかった。
著者
小野崎 隆 池田 広 山口 隆 姫野 正己 天野 正之 柴田 道夫
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.13-16, 2002-04-01
被引用文献数
2 14

Burkholderia caryophylliにより発生するカーネーション萎凋細菌病は, 日本でのカーネーション栽培上最も重要で問題となっている病害である.カーネーション品種'スーパーゴールド'×強抵抗性野生種D. capitatusの種間雑種系統の中から, 強度の萎凋細菌病抵抗性を有する系統91B04-2を選抜し, 中間母本'カーネーション農1号'として品種登録した.'農1号'は定植から約3か月で開花する極早生性を示し, 調査期間中の全収量は11.5本/株と対照として供試したカーネーション3品種をいずれも上回る多収性を示した.フローサイトメトリーによる相対的な核DNA量の測定により, '農1号'は'スーパーゴールド'とD. capitatusの雑種であることが確認され, 二倍体と推定された.本系統は, 抵抗性育種素材として, カーネーションおよびダイアンサスの実用品種の育成に利用できる.
著者
山口 隆介
出版者
聖泉大学紀要委員会
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
no.23, pp.103-118, 2016

本稿は,昭和27 年6 月に文部省宗務課(当時)による資料MEJ-8669「カトリック」(以下MEJ-8669.本文および註においても同様)に関する論攷である.その成立時期の状況からMEJ-8669 が作成された事情を推測するとともに,その記述内容から,この資料がカトリックについて神学的な理解,すなわち理論的な理解をするためのものではなく,日本という国家におけるカトリックという共同体の位置づけを現実的に理解するためのものであることを明らかにする.
著者
北原 武嗣 田中 賢太郎 山口 隆司 岸 祐介 濵野 剛
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.I_499-I_508, 2012
被引用文献数
1

近年,構造物の地震応答に関して,海溝型巨大地震により励起される長周期かつ長継続時間の地震動の与える影響が注目されている.海溝型巨大地震では,数百秒程度の継続時間となることが予測されており,その際,構造物が最大荷重を履歴した後にも数十回~数百回オーダーでの繰り返し振幅を受けると考えられている.一方,鋼製橋脚の耐震設計として実施されてきた繰り返し載荷実験では,主に3回程度の繰り返しを行ってきた.そのため,海溝型巨大地震に対する鋼製橋脚の耐震設計に関しては,十分に解明されていないのが現状である.そこで本研究では,海溝型巨大地震のような継続時間の長い地震動を受ける既設高架橋の耐震性能を把握することを目的として,都市高架橋に多用されている単柱式鋼製橋脚を検討対象とし,数十回オーダーの繰り返し振幅が構造物の耐荷性能に与える影響について検討を行った.
著者
山口 隆子
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.101-109, 2018-03-01 (Released:2018-04-10)
参考文献数
27

日本における公的機関による気象観測状況について概観するとともに,東京都檜原村を事例として,これまでの気象観測状況を明らかにした.日本における気象観測は,気象庁のみならず,国土交通省や海上保安庁,環境省,都道府県,消防署等において実施されている.しかし,それぞれの観測目的が異なることから,データの公開状況も異なり,観測システム間の連携が取れていないことが明らかとなった.東京都檜原村を事例として,気象観測状況を調査した結果,少なくとも 1938 年以降,公的機関による気象観測は実施されており,観測項目や観測方法は異なるものの,現在まで継続して観測が行われていた.
著者
阿部 憲一 大橋 晶良 山口 隆司 徳富 孝明
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
環境工学研究論文集 (ISSN:13415115)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.195-200, 2007-11-16 (Released:2011-06-27)
参考文献数
25
被引用文献数
2

塩分濃度は亜硝酸型硝化に影響を及ぼす主要な環境因子の一つであるが, その効果については賛否両論がある. 本研究においては, 担体を充填したエアリフト型リアクターに人工廃水中のNaCl濃度を段階的に上げて供給したところ, NaCl濃度が16gCl・L-1に達してもNO2蓄積は確認されなかった. 同NaCl濃度条件下でNH4+濃度を上げたところ部分的なNO2蓄積が起こり, 本リアクターは亜硝酸型硝化のポテンシャルを持つことが示された. 以上のことから, 塩分濃度に亜硝酸型硝化の誘導効果は無いことが判明した. NaCl添加の前後でも, リアクター内のアンモニア酸化細菌 (Nitrosomonas europaea) および亜硝酸酸化細菌 (Nitrobacter spp., Nitrospira spp.) の種類は大きく変化しなかった.
著者
堀内 雅生 山口 隆子 松本 昭大
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2020, 2020

<p>温暖な地域における風穴の研究事例は少ない。今回は,鹿児島の桜島において著者らが新たに確認した「黒神風穴」について報告する。風穴の気温は18.8℃で,外気温(23.8℃)と比べて5.0℃低温であった。風速は0.15ms-1であった。 清水・澤田(2015)の巻末資料より,全国の風穴情報をGIS上に取り込み,気象庁のメッシュ平年値(2010)より各風穴周辺の年平均気温を求めた。すると,黒神風穴は御蔵島の風穴(温風穴)と同率で,日本国内において現在確認されている風穴の中で最も周辺の年平均気温が高いことが分かった。</p>
著者
堀内 雅生 山口 隆子 松本 昭大
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2020年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.93, 2020 (Released:2020-03-30)

温暖な地域における風穴の研究事例は少ない。今回は,鹿児島の桜島において著者らが新たに確認した「黒神風穴」について報告する。風穴の気温は18.8℃で,外気温(23.8℃)と比べて5.0℃低温であった。風速は0.15ms-1であった。 清水・澤田(2015)の巻末資料より,全国の風穴情報をGIS上に取り込み,気象庁のメッシュ平年値(2010)より各風穴周辺の年平均気温を求めた。すると,黒神風穴は御蔵島の風穴(温風穴)と同率で,日本国内において現在確認されている風穴の中で最も周辺の年平均気温が高いことが分かった。
著者
松本 太 石井 康一郎 山口 隆子 安藤 晴夫 三上 岳彦 福岡 義隆
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.142, 2004

1. はじめに 近年,地球温暖化とヒートアイランドによる温暖化に呼応して都市域では開花が早くなったり,紅葉が遅くなったりするなど,植物季節に変化が見られるようになったといわれている.そこで,松本・福岡(2003)は,埼玉県熊谷市を例として,2001年春に,都市の気温分布とソメイヨシノ(Prunus yedoensis)の開花日の局地差との関係を調査した.その結果,ソメイヨシノの開花日の分布に関しては都心部の高温域で早く,都市郊外の低温域で遅い傾向がみられ,ヒートアイランドが開花日に影響を与えていることが明らかになった.しかし,ヒートアイランドの調査は移動観測によって行われたために,開花日に影響を与えると考えられる積算気温と開花日との関係を詳細に検討するまでには至っていない.したがって,常時気象観測データが得られるような条件下でそれらの関係を検討する必要がある. 東京都環境科学研究所および東京都立大学(三上研究室)では東京都区内100カ所の小学校で百葉箱に自記録式の温湿度計を設置し,毎時10分間間隔で観測を行っている(METROS100).そこで,本研究では2004年春,それらの小学校のうち都心部から郊外部にかけての数地点を選定し,小学校内あるいは近辺におけるソメイヨシノの開花日の調査を行った.そして積算気温に着目しつつ,東京都区部におけるソメイヨシノの開花日に及ぼすヒートアイランドの影響について評価することを試みた.2. 調査方法ソメイヨシノの開花日の観察は2月下旬_から_3月下旬まで東京都区内,中央区,千代田区などを都心部,練馬区付近を郊外部として,当該地域の小学校や小学校付近の公園などを巡回し,調査を行った(図1).開花日の基準については気象庁の生物季節観測指針に従って判断した.すなわち1本の観察木で5,6輪以上の開花がみられた期日をもって開花日とした.なお,本研究では一つの地点で2本以上の木がある場合には,50%の木が開花したの基準に達した日を開花日とした. 3. 結果2004年は2月から3月にかけて,平年よりかなり気温が高く推移したために,気象庁発表では東京(靖国神社)はソメイヨシノ開花日の観測史上2番目に早い3月18日の開花となった.本研究で調査した地点では開花日は都心部の高温域で早く,郊外部の低温域で遅い傾向が見られ,都心部の早いところで開花日が3月18日であり,郊外部との開花日の局地差は最大で6日であった.よって,東京都区部においてもヒートアイランド現象が開花日に影響を与えていると考えられる.また,都心部と郊外部における開花日は各々におけるある起算日からの積算気温の変化傾向に相対的に対応している.以上のことから,ヒートアイランド現象によって都心部,郊外部におけるソメイヨシノの開花過程に影響を与える積算気温の推移に局地差が生じ,結果的に都市内外における開花日の局地差につながっていると考察された.謝辞2002年のMETROS100のシステム立ち上げ以来,東京都環境科学研究所の横山仁氏,市野美夏氏,秋山祐佳里氏,小島茂喜氏,現東京都水道局金町浄水場の塩田 勉氏,江戸川大学の森島 済氏,東京都立大学の泉 岳樹氏には,気象データの処理などに関して,多大なご尽力をいただきました.ここに記して深くお礼申し上げます.
著者
小松 靖朋 中上 貴裕 柚本 真介 小林 茂 松本 崇志 山口 隆司
出版者
社団法人 日本鋼構造協会
雑誌
鋼構造論文集 (ISSN:18809928)
巻号頁・発行日
vol.22, no.85, pp.85_1-85_14, 2015-03-25 (Released:2016-05-18)
参考文献数
12

In order to repair and retrofit the aged metal bridge, it is important to undestand the mechanical behavior of aged steel and replacement of rivet to H.T.B. In this study, firstly, tensile loading tests, chemical tests of aged steel are conducted to understand the basic property of aged steel. Secondly, tensile loading tests for multi-bolted joint are conducted to clarify replacement of rivet to H.T.B. In this study, three specimens are fabricated and tested; all riveted joint, partially H.T.B replaced, and, fully H.T.B replaced. Based on the test results, it is found that load carrying capacity and deformability of partially and fully replaced to H.T.B can be improved due to adding frictional resistance comparing with riveted joints only.