著者
山本 健太
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.203-220, 2011-09-30

本研究は,静岡のプラモデル製造企業を取り上げ,各社資料および聞き取り調査の結果から,技術獲得の経緯および協力企業との分業構造の特性を示すことで,静岡市を中心とする当該産業企業の集積メカニズムを明らかにしたものである.プラモデル製造企業は,設立年や進出時期,技術獲得の経緯の違いから,転換企業,進出企業,新興企業に分類できる.また,これら企業の分業構造は,センター型(転換企業,新興企業)とネットワーク型(進出企業)に分類できる.センター型の分業構造のもとでは,金型や品質の管理が容易である.ネットワーク型の分業構造のもとでは,短時間での多種多量の製品の製造が可能である.また,自社と取引先のみならず,取引先企業間の近接性も求められる.いずれの分業構造の企業であっても,物流を伴う取引の多さから,近接性が求められている.さらに,プラモデル製造企業は,地元の取引先の多くと,企業設立以前から顔馴染みであったり,設立時から取引を継続していたりする.プラモデル製造企業の分業構造を支えているものは,顔の見える相手との信頼関係である.このような静岡に埋め込まれた取引関係もまた,静岡におけるプラモデル製造企業の集積を促している.
著者
山本 健太 久木元 美琴
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2012, 2012

大都市における文化創造機能については,これまで主として生産者の視点から議論されてきた.他方で,文化を消費する人々の行動については,十分な知見が得られていない.特に,従来の研究蓄積において,消費者の行動とその空間性について言及したものはみられない.本研究では,大都市における文化産業として演劇をとりあげ,観劇者の属性と消費行動の特性の一端を,アンケート調査の結果から考察する. <br> 具体的には,小劇場劇団Hの劇場Aにおける公演(10月26日~31日,10公演)の観劇者を対象として,アンケート調査を実施した.当該公演の客入数は合計617,回答数は98であった.アンケートでは,これまで明らかにされてこなかった観劇者の居住地や職場の位置,観劇前後の行動などの質問を設定した.<br> 劇団Hは,2001年に旗揚げし,現在は劇団代表で脚本・演出も手掛ける俳優Nの下で9人が活動している.劇場Aは1984年に設立され,舞台配置にもよるが,60席程度を設置できる規模である.小劇場の中でも知名度の高い劇場で,中堅劇団の公演地として選択されることが多い.最寄駅は京王井の頭線駒場東大前駅である.<br><b> 観劇者の属性:</b>性別年齢別回答数では,女性の20代後半から30代前半がボリュームゾーンになっている.職種では,事務職(24)が最多で,その他専門技術職(13)が次ぐ.最終学歴では大学卒(非芸術系)が卓越するが,芸術系出身者も少なくない.居住地の最寄駅をみると,劇場の立地を反映して,JR中央線沿線や東急田園都市線,京王線,小田急線など,新宿や渋谷を起点とする路線沿線に居住するものが多い.一方,広島県(2人)や富山県(2人)など,遠距離地域からの集客があることも注目される.<br><b> 観劇に至る経緯:</b>公演を知るきっかけは,「チラシ」が98人中37であり,重要な情報収集ツールになっている.また,劇団関係者(21)や友人(17)からの情報も多い.さらに,本公演では,劇場Aを通じて観劇に至ったことに言及したものが8人(9%)いた.このことは,劇場による宣伝が公演を実施する際に無視できないことを示している.観劇に来た理由では,「演出家[m3]&nbsp;Nの演出/脚本が好きだから」(50)が最も多く,「好きな俳優が出演する」(24)との回答も少なくない.誘われて観劇に来たものは13あり,ここでも,友人ネットワークを通じた「口コミ」による観劇者動員の重要性が指摘できる.<br><b> 劇場の立地と観劇者の行動:</b>観劇を決定する際に,劇場の立地をどれくらい重視するか尋ねた結果,劇場の駅からの距離や劇場周囲の雰囲気はあまり重視されないことが示された.他方で,職場や自宅からのアクセスは,「気にする」「とても気にする」の合計(46)が,「あまり気にしない」「全く気にしない」の合計(38)を上回った.これは,仕事帰りに観劇に立ち寄る場合や,終業後に一度帰宅してから観劇に至る場合が少なくないことによる.このことから,終業後に公演時間に間に合う劇場立地であることが,観劇を決定する上で重要な要素となっているといえよう.<br><b> 劇場周辺における観劇者の消費行動:</b>観劇前後の訪問場所をみると,57人中15人が,単館系映画館や小劇場,美術館などを挙げ,近在する文化施設を「ハシゴ」している様子が認められた.劇場Aは,渋谷と下北沢の中間地点に位置し,いずれの街からもアクセスしやすい.渋谷や下北沢といった盛り場や,そこに立地する文化施設に近いことが,本事例における回答者の「ハシゴ」行動を支えていると推察される. 消費者のこうした行動は,都市における演劇文化の消費行動の実態や,ひいては「都市の魅力」「地域の魅力」の要因を検討するうえで,無視できない知見であろう.このような消費行動が他地区での公演においても認められるのか,事例の蓄積が必要である. <br>
著者
野添 匡史 間瀬 教史 杉浦 みどり 岡前 暁生 山本 健太 立栄 智恵 眞渕 敏 傳 秋光
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.254-259, 2007-10-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
24
被引用文献数
11

本研究の目的は,体幹前傾姿勢が肺気量位と呼吸運動に与える影響を調べることである。健常人20名を対象として,体幹前傾角度0°位(安静立位),30°位,60°位,90°位での肺気量位,胸腹部呼吸運動を測定し,体幹前傾角度の違いと各指標の変化について検討した。終末吸気肺気量位,終末呼気肺気量位は体幹前傾角度の増加に従い有意に増加したが,60°位,90°位の問では有意な差は認められなかった。終末吸気,終末呼気の胸部周囲径は体幹前傾角度の増加に従い有意に増加した。以上の結果より,体幹前傾姿勢では胸郭に対する重力の作用方向が変化し,胸郭が拡張位となることで高肺気量位での呼吸様式になると考えられた。
著者
吉川 千尋 田上 未来 間瀬 教史 山本 健太 野口 知紗 冨田 和秀 門間 正彦 居村 茂幸
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0165, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】横隔膜呼吸では,下側肺野の換気が増加すると報告されており,この変化は仰臥位や直立位と比較し側臥位でより顕著に見られる。この要因の一つとして横隔膜による縦隔の挙上があると報告されている。側臥位において下側肺野は縦隔による圧迫を受けている。横隔膜はその縦隔と連結をもち,側臥位で横隔膜が収縮すればその張力により縦隔が持ち上げられ,下側肺野が拡張しやすくなるという説がある。もしこの説が正しいとすれば,側臥位で呼吸を行うと吸気に伴い縦隔は上側に引きあげられる。その際,横隔膜の筋線維走行は縦隔を持ち上げる上側方向に向いているはずである。本研究の目的は,側臥位における呼吸に伴う縦隔組織の位置変化,横隔膜の走行を観察することにより横隔膜が縦隔を持ち上げ,下葉換気の増加に関与している可能性があるかどうかを検証することである。【方法】対象は健常人8名(男性6名,女性2名),測定体位は左側臥位とし,撮像時の肺気量位は機能的残気量(FRC)位,予備吸気量(IRV)位,全肺気量(TLC)位,残気量(RV)位とした。撮像装置は1.5TのMRI(東芝EXCELART Vantage1.5T)を用いた。対象者に各肺気量位での息止めを30秒程度行わせ撮像した。撮像は三次元構築画像撮像として,腹側から背側方向へ肺全体の撮像を前額断で行った。得られたMRI画像から画像解析ソフトimageJを用いて以下の分析を行った。まず心臓の最大横径を計測し,その画像上で,第5胸椎レベルでの胸腔内横径,右胸腔内壁から心臓最右端(右胸腔内横径),左胸腔内壁から心臓最左端(左胸腔内横径)の距離を各肺気量位で計測し上側・下側肺野の換気変化の指標とした。また,各肺気量位における大静脈孔レベルでの左右横隔膜の筋長を,第10胸椎レベルでの横隔膜最遠位部から大静脈孔部までの距離として計測した。さらに,その筋線維走行を観察し,横隔膜の筋収縮と収縮に伴う張力方向の指標とした。各肺気量位での測定項目を分散分析,多重比較法にて検定し,有意水準は5%とした。【結果】胸腔内横径(TLC:402.6±29.9mm,IRV:382.1±34.3mm,FRC:377.6±35.9mm,RV:365.5±34.8mm)は,TLCが他の肺気量位と比べて有意に長く,RVが他の肺気量位と比べて有意に短い値であった。右胸腔内横径(TLC:152.6±18.5mm,IRV:147.7±16.4mm,FRC:147.7±15.0mm,RV:142.1±16.0mm)はTLCが他の肺気量位と比べて有意に長い値を示した。左胸腔内横径(TLC:59.7±17.6mm,IRV:33.2±14.4mm,FRC:25.9±11.1mm,RV:22.0±11.2mm)はTLCが他の肺気量位に比べ有意に長く,RVに比べIRVでは有意に長い値を示した。右横隔膜の筋長(TLC:231.7±18.2mm,IRV:254.3±14.2mm,FRC:296.4±20.7mm,RV:326.4±21.3mm)は,TLC,IRVともにFRC,RVより有意に短い値を示し,FRCとRVの間でも有意差を認めた。左横隔膜の筋長(TLC:276.3±38.1mm,IRV:277.5±70.3mm,FRC:322.0±38.1mm,RV:332.1±33.0mm)は,TLCとIRVがそれぞれFRC,RVより有意に短い値を示した。右横隔膜の筋走行は,RVからFRCまで大静脈孔から胸壁にかけてわずかな曲線もしくは比較的平坦に近く,その後胸壁部分で鋭角にまがり胸壁に沿って走行していた。FRC以上の肺気量位では,大静脈孔から胸壁まで全体的に彎曲し,筋線維走行は右方尾側方向となり縦隔を上方に引き上げる走行となった。【考察】側臥位は体位変換の体位として頻繁に使用され,上側肺野の換気改善,排痰目的に利用される。今回の結果からは,側臥位における横隔膜の筋走行はFRC以上の肺気量位では縦隔を上方に引き上げる右方尾側方向となり,それと同期して下側に位置する左胸腔内の横径はRV時より長い値を示し,肺野の横径が拡張していた。これらの結果は,側臥位における横隔膜は尾側への下降による胸腔の拡張作用だけでなく,組織的な連結をもつ縦隔組織を上方に持ち上げ,下側の肺野を拡張する役割を持つ可能性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】側臥位における下側肺野の換気増加に影響する因子の一つを検討することは,呼吸理学療法の体位交換を行う上で有用な情報と考えられる。
著者
山本 健太郎
出版者
関西学院大学
雑誌
法と政治 (ISSN:02880709)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.1012-941, 2008-01
著者
岩井浩一 滝澤恵美 阪井康友 山田哲 佐藤たか子 木村知美 豊田和典 山本健太 冨田和秀 大瀬弘高 居村茂幸
出版者
茨城県立医療大学
雑誌
茨城県立医療大学紀要 (ISSN:13420038)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.141-148, 2009-03

茨城県常陸大宮市において、平成19年度の介護予備事業としてバランスアップ教室を実施した。教室の開始時および終了時には体力測定を実施し、参加者の体力の変化について検討したが、今年度は併せて呼吸機能の検査を実施した。高齢化の進展に伴って、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の有病率も増加することが懸念されており、住民の呼吸機能の現状を把握するとともに、運動指導によって呼吸機能がどの程度改善するかについて検討した。バランスアップ教室には55名が参加し、平成19年5月から11月までの6ヶ月間、市内の3つの会場でインストラクターの指導のもと、1回60分の教室を月3回の頻度で実施した。教室開始時の呼吸機能検査において、1秒率(FEV1.0%)が70%以下で、COPD疑いと判定された者は3名であった。呼吸機能検査結果と体力測定結果との関連では、FVCは、身長、体重、および反復横跳びの成績と有意な正の相関が見られた。V50/V25は、上体起こし、シャトルラン、立ち幅跳び、および得点合計と有意な負の相関がみられ、体力年齢と正の相関が見られた。V25は、立ち幅跳び、得点合計、および体力年齢と有意な相関がみられた。また、バランスアップ教室の開始時と終了時における測定値の変化は、介入の前後で平均値に有意な差が見られ測定項目はなかったが、多くの測定項目で成績向上の傾向がみられた。教室開始時にCOPD疑いと判定された者は、教室終了時に全員1秒率が70%を超え、呼吸機能の改善がみられた。
著者
久保 加織 尾嶋 美沙紀 山本 健太郎 堀越 昌子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.123-131, 2003-02-15

栄養調整食品の利用状況についてのアンケート調査と,その栄養評価を行い,栄養調整食品の栄養学的意味について検討した.1)栄養調整食品は,大学生の中で食事代わりやおやつとして広く利用されていた.2)栄養への関心は男性より女性で高く,男女とも,栄養への関心の高い人ほどサプリメントなどポイント補給型栄養補助食品をよく利用し,栄養調整食品の利用も高かった.3)栄養調整食品の多くは,たんぱく質含量が低く,脂質エネルギー比率が高く,食事代わりとしての利用には問題があると判断した.4)栄養調整食品は,製品ごとの栄養成分が大きく異なり,大きく3つのグループに分けることができた.なかには,栄養素のアンバランスな摂取や脂質の過剰摂取を引き起こす可能性のある製品もあった.5)栄養調整食品の脂肪酸組成は,洋菓子類のそれと類似しており,n-6/n-3比が大きかった.
著者
山本 健太郎
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.1_15-1_39, 2021 (Released:2022-06-15)
参考文献数
30

日本の政党システムは、1994年の衆院の選挙制度改革を機に、それまでの一党優位体制から変化を遂げた。いわゆる政界再編を経て、2003年には自民党・公明党と民主党が政権を争う二大勢力体制へと収斂して、2009年には民主党が政権の座についた。しかし2012年には民主党が与党のまま分裂し、自民党の政権復帰後は非自民政党が分立してかつての一党優位体制とも重なるシステムとなっている。 本稿は、こうした日本の政党システムの変容について、ヨーロッパ諸国を事例として示されてきた有権者レベルでの変容や、選挙制度改革に的を絞った説明では、特に2012年以降の変容をとらえきれないことから、システム内の政党間の競争の図式そのものがシステムの脆弱性を招きうるのではないかとの仮説を検証する。 具体的には、選挙制度によって政党に大規模化の圧力がかかるものの、大政党が十分に支持を調達できない状況になると、並立制であることも手伝って第三極の小政党の参入を招くと主張した。大政党への短期的な支持の大小によって、システムの安定性が左右されうると考えられる。
著者
和田 崇 荒井 良雄 箸本 健二 山田 晴通 原 真志 山本 健太 中村 努
出版者
県立広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究では,日本の諸地域における通信インフラを活用した情報生成・流通・活用の実態を,いくつかの事例分析を通じて解明した。まず,通信インフラ整備の過程を地方行政再編とデジタル・デバイドの2つの観点から把握・分析した。そのうえで,医療と育児,人材育成の3分野におけるインターネットを活用した地域振興の取組みを,関係者間の合意形成と連携・協力,サイバースペースとリアルスペースの関係などに着目して分析した。さらに,地方におけるアニメーションや映画の制作,コンテンツを活用した地域振興の課題を指摘し,今後の展開可能性を検討した。
著者
山本 健太 金森 明 桐山 勢生 谷川 誠 久永 康宏 豊田 秀徳 多田 俊史 安東 直人 新家 卓郎 坂井 圭介 安田 諭 安藤 祐資 木村 純 曽根 康博 熊田 卓
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.1667-1672, 2013 (Released:2013-08-28)
参考文献数
17

83歳女性.平成10年に胆嚢結石症に対し腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.平成22年11月上腹部痛精査のため入院した.入院時肝胆道系酵素上昇を認め,腹部造影CT検査で拡張した総胆管内に局所的に高いCT値を有する結石を認めた.感染兆候を認めず抗血小板薬内服中のため保存的加療を開始し,第7病日にERCPを施行した.総胆管は拡張し,内部に迷入クリップと考えられる金属陰影を含む結石透了像を認めた.内視鏡的乳頭切開術を施行し,截石した.第9病日合併症なく退院した.本症例は胆嚢摘出時に超音波凝固切開装置を使用しクリップを減らす工夫をしたが胆管結石を生じた.比較的稀な合併症であり文献的考察をふまえて報告する.