著者
牧迫 飛雄馬 島田 裕之 土井 剛彦 堤本 広大 堀田 亮 中窪 翔 牧野 圭太郎 鈴木 隆雄
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.197-206, 2017 (Released:2017-06-20)
参考文献数
31
被引用文献数
2

【目的】地域在住高齢者に適するようにShort Physical Performance Battery(以下,SPPB)算出方法の修正を試みた。【方法】高齢者4,328 名をSPPB(0 ~12 点)で評価し,歩行速度と椅子立ち座りは対象者の測定値(四分位)を基に,立位バランスは立位保持の出来高によって配点した地域高齢者向けのSPPB community-based score(以下,SPPB-com)(0 ~10 点)を算出し,24 ヵ月の要介護発生との関連を調べた。【結果】対象者の78.7% でSPPB が,10.5% でSPPB-com が満点であった。SPPB-com が4 点以下で要支援・要介護発生率が高く(12.8%),SPPB-com,年齢,女性,MMSE が要支援・要介護発生と有意に関連していた。【結論】SPPB を再得点化したSPPB-com は地域在住高齢者の要支援・要介護リスクを把握する指標として有益となることが示唆された。
著者
牧迫 飛雄馬 島田 裕之 土井 剛彦 堤本 広大 堀田 亮 中窪 翔 牧野 圭太郎 鈴木 隆雄
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11253, (Released:2017-04-22)
参考文献数
31
被引用文献数
2

【目的】地域在住高齢者に適するようにShort Physical Performance Battery(以下,SPPB)算出方法の修正を試みた。【方法】高齢者4,328 名をSPPB(0 ~12 点)で評価し,歩行速度と椅子立ち座りは対象者の測定値(四分位)を基に,立位バランスは立位保持の出来高によって配点した地域高齢者向けのSPPB community-based score(以下,SPPB-com)(0 ~10 点)を算出し,24 ヵ月の要介護発生との関連を調べた。【結果】対象者の78.7% でSPPB が,10.5% でSPPB-com が満点であった。SPPB-com が4 点以下で要支援・要介護発生率が高く(12.8%),SPPB-com,年齢,女性,MMSE が要支援・要介護発生と有意に関連していた。【結論】SPPB を再得点化したSPPB-com は地域在住高齢者の要支援・要介護リスクを把握する指標として有益となることが示唆された。
著者
古名 丈人 島田 裕之
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.132-137, 2006 (Released:2008-06-06)
参考文献数
60
被引用文献数
10 5

平均寿命の延長と老化に伴う個人差の増大は,運動学研究における決定論的な議論を困難にする.一方,疫学的な研究は大規模な代表性ある集団を対象とすることが多く,高齢者の諸機能の特徴,平均像を同定することができる.本稿では,まず,高齢者の運動機能研究における疫学的視点の必要性を述べ,長期縦断研究の結果から高齢者の歩行機能の加齢変化を提示した上で,健康や寿命との関わりについて概説する.さらに,運動学やバイオメカニクスと疫学の共通の課題となる転倒に焦点をあて,学際的な研究によってこれらの問題が解決できる可能性について述べる.
著者
島田 裕之 古名 丈人 大渕 修一 杉浦 美穂 吉田 英世 金 憲経 吉田 祐子 西澤 哲 鈴木 隆雄
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.105-111, 2006-06-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
25
被引用文献数
50

本研究では,地域在住の高齢者を対象としてTimed Up & Go Testを実施し,性差と加齢変化を調べた。また,転倒,活動性,健康感との関係を調べ,高齢者の地域保健活動におけるTimed Up & Go Testの有用性を検討した。対象は地域在住高齢者959名であり,平均年齢74.8歳(65-95歳),男性396名,女性563名であった。検査および調査項目は,身体機能検査としてTimed Up & Go Test,歩行速度,握力,膝伸展筋力,Functional Reach Testを実施した。質問紙調査は過去1年間の転倒状況,外出頻度,運動習慣,趣味,社会活動,主観的な健康感を聴取した。Timed Up & Go Testを5歳の年齢階級別に男女差を調べた結果,すべての年代において男性が有意に速い値を示した。加齢変化をみると男女とも70歳末満と以上の各年代に有意差を認めた。男性においては他の年齢階級間に有意差は認められなかった。一方,女性では70-74歳と80-84歳,85歳以上,および75-79歳と80-84歳の間,80-84歳と85歳以上の年代間において有意差を認めた。転倒,活動性,健康感との関係では,転倒状況,外出頻度,運動習慣とTimed Up & Go Testの有意な関係が認められた。以上の結果から,高齢者におけるTimed up & Go Testは性差と加齢による低下が明らかとなった。また,転倒,外出頻度,運動習慣と密接な関係が示され,地域保健活動の評価指標としての有用性が確認された。
著者
李 成喆 島田 裕之 朴 眩泰 李 相侖 吉田 大輔 土井 剛彦 上村 一貴 堤本 広大 阿南 祐也 伊藤 忠 原田 和弘 堀田 亮 裴 成琉 牧迫 飛雄馬 鈴木 隆雄
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0161, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】近年の研究によると,心筋こうそく,脳卒中など突然死を招く重大な病気は腎臓病と関連していることが報告されている。クレアチニンは腎臓病の診断基準の一つであり,血漿Aβ40・42との関連が示されている。また,糖尿病を有する人を対象とした研究ではクレアチンとうつ症状との関連も認められ,うつ症状や認知症の交絡因子として検討する必要性が指摘された。しかし,少人数を対象とした研究や特定の疾病との関係を検討した研究が多半数であり,地域在住の高齢者を対象とした研究は少ない。さらに,認知機能のどの項目と関連しているかについては定かでない。そこで,本研究では地域在住高齢者を対象にクレアチニンが認知機能およびうつ症状とどのように関連しているかを明らかにし,認知機能の低下やうつ症状の予測因子としての可能性を検討した。【方法】本研究の対象者は国立長寿医療研究センターが2011年8月から実施した高齢者健康増進のための大府研究(OSHPE)の参加者である。腎臓病,パーキンソン,アルツハイマー,要介護認定者を除いた65才以上の地域在住高齢者4919名(平均年齢:72±5.5,男性2439名,女性2480名,65歳から97歳)を対象とした。認知機能検査はNational Center for Geriatrics and Gerontology-Functional Assessment Tool(NCGG-FAT)を用いて実施した。解析に用いた項目は,応答変数としてMini-Mental State Examination(MMSE),記憶検査は単語の遅延再生と物語の遅延再認,実行機能として改訂版trail making test_part A・B(TMT),digitsymbol-coding(DSC)を用いた。また,うつ症状はgeriatric depression scale-15項目版(GDS-15)を用いて,6点以上の対象者をうつ症状ありとした。説明変数にはクレアチニン値を3分位に分け,それぞれの関連について一般化線形モデル(GLM)を用いて性別に分析した。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は国立長寿医療研究センターの倫理・利益相反委員会の承認を得た上で,ヘルシンキ宣言を遵守して実施した。対象者には本研究の主旨・目的を説明し,書面にて同意を得た。【結果】男女ともにクレアチニンとMMSEの間には有意な関連が認められた。クレアチニン値が高い群は低い群に比べてMMSEの23点以下への低下リスクが1.4(男性)から1.5(女性)倍高かった。また,男性のみではあるが,GDSとの関連においてはクレアチニン値が高い群は低い群に比べてうつ症状になる可能性が高かった1.6倍(OR:1.62,CI:1.13~2.35)高かった。他の調査項目では男女ともに有意な関連は認められなかった。【考察】これらの結果は,クレアチニン値が高いほど認知機能の低下リスクが高くなる可能性を示唆している。先行研究では,クレアチニン値は血漿Aβ42(Aβ40)との関連が認められているがどの認知機能と関連があるかについては確認できなかった。本研究では先行研究を支持しながら具体的にどの側面と関連しているかについての検証ができた。認知機能の下位尺度との関連は認められず認知機能の総合評価指標(MMSE)との関連が認められた。しかし,クレアチニンとうつ症状においては男性のみで関連が認められたことや横断研究であるため因果関係までは説明できないことに関してはさらなる検討が必要である。【理学療法学研究としての意義】老年期の認知症は発症後の治療が非常に困難であるため,認知機能が低下し始めた中高齢者をいち早く発見することが重要であり,認知機能低下の予測因子の解明が急がれている。本研究ではクレアチニンと認知機能およびうつ症状との関連について検討を行った。理学療法学研究においてうつや認知症の予防は重要である。今回の結果は認知機能の低下やうつ症状の早期診断にクレアチニンが有効である可能性が示唆され,理学療法研究としての意義があると思われる。
著者
島田 裕之
出版者
一般社団法人 日本老年療法学会
雑誌
日本老年療法学会誌 (ISSN:2436908X)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-5, 2022-03-01 (Released:2022-03-30)

日本老年療法学会は,高齢者の健康増進,障がいの一次,二次,三次予防の効果的な知見を創出するために,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士等の専門職が一体となって議論する場を提供し,知見の共有やイノベーションの創出を目的としている。この目標を達成するためには,研究を通じた生涯学習の促進が必要であり,研究実施の手順を自己の経験を踏まえながら記述した。本学会を通して質の高い研究が広く公表されることを期待している。
著者
橋立 博幸 島田 裕之 潮見 泰藏 笹本 憲男
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.159-166, 2012-06-20 (Released:2018-08-25)
被引用文献数
5

【目的】本研究は生活機能低下の危険のある高齢者において筋力増強運動を含む機能的トレーニングが生活機能に及ぼす影響を検証することを目的とした。【方法】二次予防対象者に選定された地域在住高齢者68人(平均年齢77.4歳)を,下肢粗大筋群の重錘負荷運動およびマシンを用いたトレーニングを行う筋力増強運動群(n = 40)と,下肢粗大筋群の重錘負荷運動とともに姿勢バランス練習,歩行練習を行う機能的トレーニング群(n = 28)に群別し,運動介入を3ヵ月間行った。介入前後には,下肢筋力,姿勢バランス能力,歩行機能(timed up & go test(TUG),最大歩行速度(MWS)),活動能力,主観的健康観を評価した。【結果】介入前後において機能的トレーニング群は筋力増強運動群に比べてTUG,MWS,主観的健康観の成績の有意な改善を示した。【結論】二次予防対象者における3ヵ月間の筋力増強運動を含む機能的トレーニングは,筋力増強運動のみの実施に比べて,歩行機能,主観的健康観の向上が得られる有用な介入である可能性が示唆された。
著者
牧迫 飛雄馬 阿部 勉 大沼 剛 島田 裕之
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.36, no.7, pp.382-388, 2009
参考文献数
12
被引用文献数
1

【目的】在宅訪問サービスの継続要因および訪問リハビリテーションが要介護高齢者に与える影響について検証することを目的とした。【方法】対象者は,訪問リハビリテーションを利用する要介護高齢者33名(訪問リハ群),および訪問看護または訪問介護を利用しており訪問リハビリテーションを利用していない要介護高齢者13名(非訪問リハ群)とし,3か月間のサービス継続前後で運動機能,生活機能,活動状況の変化を比較した。【結果】30%以上の対象者が3か月後には訪問サービスを中止または終了しており,訪問リハ群では脱落者のvitality indexが継続者よりも有意に低かった。訪問リハ群では運動習慣を有する者が多く,離床時間の増大に対して良好な結果を示した。運動機能や生活機能は,有意な変化を認めなかった。【結論】訪問リハビリテーションの継続には,意欲が関与することが示され,訪問リハビリテーションは運動習慣の確立や離床時間の増大へ良好な影響を与える可能性が示唆された。
著者
牧迫 飛雄馬 島田 裕之 吉田 大輔 阿南 祐也 伊藤 忠 土井 剛彦 堤本 広大 上村 一貴 Jennifer S. BRACH 鈴木 隆雄
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.87-95, 2013-04-20 (Released:2018-04-12)
参考文献数
41

【目的】日本語版-改訂Gait Efficacy Scale(mGES)の信頼性と妥当性を検証することを目的とした。【方法】地域在住高齢者240名を対象とした。そのうちの31名については,自記式による日本語版mGESの評価を2回実施した(評価間隔14〜20日間)。日本語版mGESの妥当性を検証するために,運動機能(chair-stand test,片脚立位時間,通常歩行速度,6分間歩行距離),生活空間,転倒恐怖感との関連を調べた。【結果】日本語版mGESは高い再検査信頼性を示し(級内相関係数[2,1]=0.945,95%信頼区間0.891〜0.973),すべての運動機能および生活空間と有意な相関関係を認めた。従属変数を転倒恐怖感の有無,独立変数を性別,各運動機能,生活空間,日本語版mGES得点としたロジスティック回帰分析の結果,転倒恐怖感と有意な関連を認めた項目は,性別(女性),通常歩行速度,日本語版mGES得点であった。【結論】高齢者における歩行状態の自信の程度を把握する指標として,日本語版mGESは良好な信頼性および妥当性を有する評価であることが確認された。
著者
坂田 亮一 勝俣 学 押田 敏雄 島田 裕之 神田 宏
出版者
日本養豚学会
雑誌
日本養豚学会誌 (ISSN:0913882X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.76-81, 2004-06-20 (Released:2011-06-08)
参考文献数
13

通常の豚肉を用いて, 高温と低pH処理によりPSE様状態を呈する肉を人為的に調製した。調製した豚肉試料がどの程度のPSE状態であるか判定するために, 試料から抽出した筋漿タンパク質の変性程度を透過率 (Transmission Value: TM値) で測定した。その保水性, ならびにソーセージを試作しクッキングロス, 物性などの項目について比較検討を行い, PSE様豚肉における保水性とクッキングロスの関係について調べた。また加熱後の各豚肉ソーセージ試料の色調を測定し, 生肉でのPSE状態との関連性を検討した。PSE処理時のpHの低下に伴いTM値が上昇し, 筋漿タンパク質の変性が顕著に進んだ。ろ紙加圧法による保水性の測定値 (M/T値) は試料のPSE状態が進むに伴い, その値が徐々に低下し, クッキングロスは増加した。用いた試料において, 保水性とクッキングロスの間に負の相関が認められた。また, PSE様肉の保水性とクッキングロスともに, その測定値は対照区より劣る値を示した。色調測定での Hunter 値において, PSE状態の進行とともに正常肉に比べてLおよびb値の上昇とa値の低下が明らかにみられ, L*, a*およびb*も同様の変動を示し, 肉眼的所見からも赤色に乏しく白けた色調を呈した。物性測定の結果では, PSE状態が進むにつれテクスチャーが低下する傾向がみられ, このようなソーセージは商品価値が低いものと判断された。
著者
堤本 広大 牧迫 飛雄馬 土井 剛彦 中窪 翔 牧野 圭太郎 島田 裕之 鈴木 隆雄
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1499, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】認知症の前駆症状とされる軽度認知障害(mild cognitive impairment;MCI)では,客観的な認知機能が低下していることが定義とされ,灰白質容量が低下していることが報告されている。認知機能検査の中でも,遂行機能と灰白質容量との関係は多数報告されており,遂行機能が低下している高齢者ほど灰白質容量が低下していることが明らかとなってきている。しかし,MCI高齢者における遂行機能と灰白質容量との関連については議論の余地があり,遂行機能については下位機能が存在するため,灰白質容量低下に関連する下位機能を明らかにすることで,MCI高齢者の早期発見の一助となると考えられる。そこで,本研究では,MCI高齢者における灰白質容量と遂行機能の下位機能検査との関連を横断的に検討する。【方法】対象は,MCIに該当した高齢者83名(平均75.4±6.8歳)とした。遂行機能の下位機能検査として,注意の切り替え機能(Trail Making Test(TMT)),ワーキングメモリ(Digit Span(DS)),および選択的注意・抑制機能(Stroop test(ST))を実施した。灰白質容量の計測については,MRI装置(Magnetom Avanto,Siemens社製)を用いて撮像を行い,FSL(FMRIB's Software Library,Version 5.0)を用いて全脳における灰白質容量を算出した。統計解析では,灰白質容量と各遂行機能との相関関係を調べるためにPearsonの相関係数を算出した。その後,有意な相関関係が認められた遂行機能検査を独立変数とし,従属変数に灰白質容量,共変量に年齢,性別,body mass index,教育歴,mini-mental status examinationスコアを投入した重回帰分析を実施した。なお,統計学的有意水準は5%未満とした。【結果】遂行機能の中で,灰白質容量との有意な相関関係が認められたのはTMTのみで,TMTと灰白質容量との間には負の相関関係が認められた(r=-0.414,p<0.001)。その後,有意な相関が認められたTMTを独立変数とした重回帰分析を実施した結果,共変量で調整してもTMTと灰白質容量との関連性は有意であった(β=-0.376,p=0.001,R2=0.26)。【結論】本研究では,MCI高齢者における灰白質容量と遂行機能の下位機能検査との関連について検討し,注意の切り替え機能が低下しているMCI高齢者ほど灰白質容量が低下していることが示唆された。今後は,注意の切り替え機能が低下している健常高齢者がより早期にMCIへと移行するかどうかを検討する必要性があると考えらえる。また,本研究結果は,MCIのスクリーニングツールの中でもTMTが有用である可能性を示した。
著者
吉田 大輔 島田 裕之 牧迫 飛雄馬 土井 剛彦 伊藤 健吾 加藤 隆司 下方 浩史 鷲見 幸彦 遠藤 英俊 鈴木 隆雄
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.EbPI1414-EbPI1414, 2011

【目的】物忘れなどの記憶障害は、アルツハイマー病(Alzheimer's disease: AD)の特徴的な前駆症状である。海馬や嗅内野皮質を含んだ内側側頭葉はこの記憶の中枢であり、記憶障害と内側側頭葉の脳萎縮とは密接な関係があると考えられている。一方、日常的に知的な活動や身体活動、あるいは社会活動(社会とのつながり)を保持することは、高齢期における認知症(特にAD)の発症遅延や認知機能の維持にとって有効である可能性が示唆されている。これらのことから、活動性の高い日常生活を送ることは、内側側頭葉の脳萎縮を抑制できると推察されるが、高齢期における内側側頭葉の脳容量と日常生活活動との関係については、これまでほとんど報告されていない。そこで本研究では、どのような日常生活活動が内側側頭葉の脳萎縮と関連があるのか明らかにすることを目的とした。<BR><BR>【方法】主観的な記憶低下の訴えがある、もしくはClinical Dementia Ratingが0.5に該当した65歳以上の地域在住高齢者125名(76.1±7.3歳)を対象とした。すべての対象者は、基本情報に加え一般的な認知機能検査、頭部のmagnetic resonance imaging (MRI)検査を受けた。内側側頭葉における脳萎縮の程度は、MRI検査で得られた画像を基にvoxel-based specific regional analysis system for Alzheimer's disease(VSRAD)を用いて定量的に評価した。日常の生活活動状況は、質問紙を用いて過去1ヶ月における各活動の実施状況(二択式;している/していない)を聴取した。各々の活動項目はセルフケアや手段的日常生活動作、社会活動などの25項目から構成されており、高齢者の生活活動全般を幅広く捉えられる項目内容とした。そして、活動項目ごとに「している」と回答した者(活動群)と「していない」と回答した者(不活動群)の2群間で内側側頭葉の脳萎縮度に差がないか、共分散分析を用いて検討した。なお分析の前段階として、2群いずれかのサンプルサイズが20に満たなかった活動項目は、あらかじめ分析項目から外した。また、年齢と脳萎縮との関係をpearsonの相関係数で確認した。<BR><BR>【説明と同意】すべての対象者に対しては、事前に研究内容を説明し、書面による同意を得た。また、本研究は国立長寿医療研究センターの倫理・利益相反委員会の承認を得て行った。<BR><BR>【結果】内側側頭葉の脳萎縮と年齢との間には、有意な正の相関関係が認められた(r = 0.457, p < 0.01)。そこで、年齢を共変量とした共分散分析を行い、内側側頭葉の脳萎縮と日常生活活動との関係を検討した結果、「頭を使う活動(将棋や学習)」において、活動群(n = 70)の脳萎縮度が不活動群(n = 55)のそれより有意に小さかった(F = 6.43, p = 0.01)。同様に、「習い事」においても、活動群(n = 70)の脳萎縮度が不活動群(n = 55)のそれより有意に小さかった(F = 4.40, p = 0.04)。<BR><BR>【考察】記憶とその関連領域である内側側頭葉の脳容量とは、密接な関係があると考えられている。今回、同領域の脳萎縮と知的活動(「頭を使う活動」)の実施状況との間に関連性が認められたことは、先行研究の結果と矛盾しない。地域高齢者にとって、日常的に知的な活動を取り入れることは、認知機能の低下だけでなく内側側頭葉の脳萎縮も抑制できる可能性が示唆された。ただし、それ以外の活動(主に身体活動)の実施状況と内側側頭葉の脳萎縮については、有意な関連性が認められていない。今後は内側側頭葉以外の領域、あるいは活動の実施頻度を考慮したより詳細な検討が必要と考える。また、日常的な知的活動が内側側頭葉の脳萎縮を抑制できるとの仮説を立証するためには、縦断的な研究や介入研究が必要であり、今後も追跡調査を継続する予定である。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】理学療法の現場において、認知機能障害を有する高齢者を対象とするケースは少なくない。本研究は、このような高齢者に対し運動療法だけでなく日常の生活活動状況にも配慮した理学療法戦略が重要であることを示した、意義ある研究であると考えられる。また、今回の研究結果をさらに発展させることで、脳萎縮や認知機能の低下を予防するような方策が将来明らかになると期待している。
著者
牧迫 飛雄馬 古名 丈人 島田 裕之 赤沼 智美 吉田 裕人 井平 光 横山 香理 鈴木 隆雄
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 = The Journal of Japanese Physical Therapy Association (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.27-33, 2011-02-20
被引用文献数
4

【目的】75歳以上の高齢者における新規要介護認定の発生に対する歩行能力の影響を明らかにすることを目的とした。【方法】要介護認定を受けていない75歳以上の地域在住高齢者190名を対象とした。ベースライン調査として5m歩行時間(通常速度)を測定し,以降39ヵ月間の要介護認定発生状況との関連を調べた。【結果】39ヵ月間で34名(17.9%)が新規に要介護認定を受けた。5m歩行時間を男女別に4分位で速い群から遅い群のI〜IV群に分類し,要介護発生率曲線の差をLog-rank検定にて検討した結果,5m歩行時間が遅いIV群(男性5.2秒以上,女性5.8秒以上)では,それ以上に速い歩行速度を有する群(I〜III群)と比べて有意に高い要介護認定発生率を認めた(p<0.01)。Cox回帰分析の結果,新規要介護の発生と有意な関連を認めた変数は,BMIと5m歩行時間(秒)であり,5m歩行時間のハザード比は1.65(p<0.01)であった。【考察と結論】地域在住後期高齢者の歩行速度は,将来の要介護認定発生に影響を与える要因のひとつであることが確認された。
著者
牧迫 飛雄馬 古名 丈人 島田 裕之 赤沼 智美 吉田 裕人 井平 光 横山 香理 鈴木 隆雄
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.27-33, 2011-02-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
29
被引用文献数
2

【目的】75歳以上の高齢者における新規要介護認定の発生に対する歩行能力の影響を明らかにすることを目的とした。【方法】要介護認定を受けていない75歳以上の地域在住高齢者190名を対象とした。ベースライン調査として5m歩行時間(通常速度)を測定し,以降39ヵ月間の要介護認定発生状況との関連を調べた。【結果】39ヵ月間で34名(17.9%)が新規に要介護認定を受けた。5m歩行時間を男女別に4分位で速い群から遅い群のⅠ〜Ⅳ群に分類し,要介護発生率曲線の差をLog-rank検定にて検討した結果,5m歩行時間が遅いⅣ群(男性5.2秒以上,女性5.8秒以上)では,それ以上に速い歩行速度を有する群(Ⅰ〜Ⅲ群)と比べて有意に高い要介護認定発生率を認めた(p < 0.01)。Cox回帰分析の結果,新規要介護の発生と有意な関連を認めた変数は,BMIと5m歩行時間(秒)であり,5m歩行時間のハザード比は1.65(p < 0.01)であった。【考察と結論】地域在住後期高齢者の歩行速度は,将来の要介護認定発生に影響を与える要因のひとつであることが確認された。
著者
鈴川 芽久美 島田 裕之 牧迫 飛雄馬 渡辺 修一郎 鈴木 隆雄
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.334-340, 2009 (Released:2009-08-28)
参考文献数
28
被引用文献数
20 16

目的:要介護認定を受けた高齢者を対象として転倒と骨折の発生状況を調査し性·年齢·要介護認定状況(以下,介護度)による影響を検討する.方法:対象は通所介護施設を利用する65歳以上の高齢者8,335名(平均年齢82.2±7.4歳)であった.施設の担当職員が,介護度,過去1年間における転倒の有無,転倒による骨折の有無,骨折部位などの項目について聞き取り調査を実施した.なお認知機能障害により,回答の信頼性が低いと調査者が判断した場合には,家族から転倒や骨折状況を聴取した.また施設利用中の転倒については,その状況を自由記載にて担当職員が回答した.分析は転倒と骨折の発生頻度を性,年齢(前期/後期),介護度(軽度要介護群;要支援1∼要介護2/重度要介護群;要介護3∼5)別に算出し,χ2乗検定にて群間比較した.施設利用中の転倒については,場所,状況,動作,直接原因を集計し軽度と重度要介護群の群間差をχ2乗検定にて比較した.結果:過去1年間の転倒率は,女性(24.6%)よりも男性(26.8%)が有意に高かった.軽·重度要介護群における転倒率の比較では,女性においてのみ重度(26.4%)と比べて軽度(23.4%)要介護群の転倒率が有意に低かった.一方で転倒者のうち骨折した者の割合は,男性(4.5%)よりも女性(12.2%)の方が有意に高かった.骨折の有無を従属変数とし,性,年齢,介護度を独立変数とした多重ロジスティック回帰分析では,男性に比べると女性の方が2.5倍骨折する危険性が高かった.また施設利用中の転倒については重度要介護群ではトイレ時,軽度要介護群では体操·レクリェーション時,立位時の転倒が有意に多かった.結論:転倒率は女性の方が低く,それは軽度要介護群の転倒率の低さが影響していることが示唆された.一方骨折においては年齢や介護度の影響よりも,性別(女性)の影響が大きいことが示唆された.
著者
小口 理恵 牧迫 飛雄馬 加藤 仁志 石井 芽久美 古名 丈人 島田 裕之
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.705-710, 2008 (Released:2009-01-28)
参考文献数
19
被引用文献数
8 3

[目的]本研究では,地域在住高齢者において定期的に実施している運動の種目により,身体組成,運動機能に違いがあるかを検討した。[対象]70歳以上の地域在住高齢者83名(平均年齢75.9±4.3歳)を対象にした。[方法]身体組成,運動機能,実施している運動種目,実施頻度,実施時間および過去半年間での転倒の有無を調査した。運動種目により,対象をスポーツ群と軽運動群とに分類し,調査項目の比較検討を行った。[結果]スポーツ群では,軽運動群よりもTimed Up & Go Testが有意に速い値を示し,過去半年間の転倒経験が少なかった。さらに,スポーツ群では運動実施頻度と骨格筋量(r=0.41),膝伸展筋力(r=0.42)に有意な相関関係が認められた。[結語]定期的にスポーツを実施している高齢者は,歩行機能が良好であり転倒経験も少なく,運動の実施頻度は下肢筋力や骨格筋量と関連があることが示された。
著者
鈴川 芽久美 島田 裕之 小林 久美子 鈴木 隆雄
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.103-107, 2010 (Released:2010-03-26)
参考文献数
24
被引用文献数
16 6

〔目的〕本研究の目的は,要介護認定を受けた高齢者における外出行動と身体機能との関係を明らかにすることである。〔対象〕通所介護サービスを利用していた高齢者359名(平均年齢82.2±7.0歳,男性119名,女性240名)とした。〔方法〕調査項目は性,年齢,chair stand test 5 times,timed up-and-go test(TUG),階段昇降の自立度,mental status questionnaireとした。なお外出は,これら調査の前後1ヶ月間(2ヶ月間)の状況を対象者の家族から聴取した。〔結果〕多重ロジスティック回帰分析の結果,TUGが有意に町内までの外出と関連し(オッズ比;1.04,95%信頼区間;1.01-1.08),町外までの外出とは階段昇降の自立度が有意に関連した(オッズ比;1.74,95%信頼区間;1.06-2.86)。〔結語〕外出の実行には実用的な歩行機能が必要であり,より複雑な状況への適応を要求される町外への外出には,階段の自立度が関与した。
著者
牧迫 飛雄馬 阿部 勉 大沼 剛 島田 裕之 古名 丈人 中村 好男
出版者
日本老年社会科学会
雑誌
老年社会科学 (ISSN:03882446)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.12-20, 2009-04-20 (Released:2020-10-20)
参考文献数
26
被引用文献数
3

本研究は,訪問によるリハビリテーションを利用する要介護者の家族を対象として,介護方法や介護に関する情報提供を行い,介護者の介護負担感の軽減や心理状態の向上が可能か検討することを目的とした.介入は,要介護者の介護度を層化して,対象者を無作為に対照群と介入群に分類し,介入群に対して個別介入を3か月間実施した.介入の実施は,訪問によるリハビリテーション時に行い,1回の介入は5分間程度とし,その他のサービスは両群とも継続した.介入後調査を完遂した家族介護者(対照群10人,介入群11人)を分析した結果,介入による介護負担感への効果は認められなかった.一方,介護者の主観的幸福感の指標としたPGCモラール・スケールの得点が,対照群では低下したのに対して,介入群では低下することなく維持されており,有意な交互作用を認めた.この結果は,家族介護者に対する情報提供が,介護者に対する主観的幸福感に良好な影響を与えることを示唆した.