著者
木村 涼子
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.39-54, 1997-10-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
12
被引用文献数
7 1

The paper analyses the dynamics of the process by which gender and gender relation are constructed in the primary school classroom. The data consists of questionnaires completed by pupils, observations of various sixth grade lessons and interviews of the teachers and pupils. The result of the questionnaire resarch shows that there is a difference between girls' and boys' behaviours, and pupils recognize gender bias in the way teachers treat pupils. Through observation of lessons, gender differences in classroom interaction patterns were found. The findings are that reachers give more attention to boys and let them have the floor more often than girls, and boys are more prominent in classroom discussions than girls. While boys speak eloquently, girls keep silent in class. Such gender differences are produced not only by teachers but also by pupils themselves. By favouring distinctions between girls and boys, they construct femininity and masculinity in school life. In particular, boys try to separate themselves from girls and to be superior to them in class. In the face of the boys' will to diminate classroom discussion, girls withdraw and refrain from self-assertion. Because of pupils' atittudes and culture, teachers' efforts to treat girls and boys equally sometimes have little success. It is suggested that gender difference in the classroom is a product of politics working among teachers, boys and girls.
著者
伊田 久美子 山田 和代 中原 朝子 木村 涼子 熊安 貴美江
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は深刻化する貧困と拡大する格差について若年層の生活の質に焦点を当てたデータのジェンダー分析を行った。特に世帯への包摂の質、つまり世帯内依存関係を視野に入れた生活の質を分析対象とした。その結果次の知見を得た。①女性は男性と異なり、自分の納得する生き方の選択(エイジェンシー)が幸福度を低下させる傾向がある(マイナス効果)。②既婚女性の暴力リスクは概して高く女性の収入増によりさらに高くなる(バックラッシュ型)。③既婚女性の幸福度は他の婚姻同居形態に比べて高いが、既婚女性間の比較では専業主婦の自尊感情は雇用者に比べて低い。④親同居未婚者は男女とも一人暮らしや既婚者に比べて収入も幸福度も低い。
著者
木村 涼子
出版者
Japanese Educational Research Association
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.302-310, 2000

本稿の目的は、そもそもフェミニズムが近代社会における「公私」の区別をいかにとらえたかを踏まえた上で、近年のフェミニズムと公教育に関する議論を検討することにある。20世紀初頭の婦人参政権獲得運動に代表される第一波フェミニズムの主張は、近代的な「公」の定義を前提として、「公」的領域への平等な参加を求めるものであった。しかし、1960年代以降の第二波フェミニズムは、「公私」間の線引き自体を疑問視した。「個人的なことは政治的なこと」という第二波フェミニズムの有名なスローガンは、「公私」の区別に対する批判を表明している。第二波フェミニズムは「公」領域のみならず「私」領域においても性差別が存在することを告発した。生活世界全体をつらぬく、男性優位の権力関係を問題にしようとしたのである。現在、フェミニズムは日本社会において市民権を獲得していると言われる。近年の議論の中では、かつて反体制運動であったフェミニズムが、今や権力側に身をおいているのではないかということを憂慮する主張もみられる。教育に関して言えば、フェミニズムは学校における性差別を告発し、女子にとっての学習環境の改善を要求してきたが、そうした運動は、初等教育から高等教育まで、さまざまな学校段階に影響を与えてきた。その結果、「男女平等教育」や「ジェンダー・フリー教育」といった名の下に、フェミニズムの公教育への制度化とよぶべき事態が生じてきている。公教育そのものを批判してきた第二波フェミニズムにとって、公教育内部へのフェミニズムの制度化は、内在的な矛盾となる。フェミニズムは、学習-教授プロセスに関して、独自の方法論を発達させてきた。第二波フェミニズムが重視する方法論は、たとえば、従来の教師-生徒間の序列的な関係を前提とした一方的かつ受動的な学習を拒否し、「個人的なことは政治的なこと」という原則に基づいて、学習者自身の主体性の確立やコンシャスネス・レイジングの実現を目指すものである。フェミニズムの観点から子どもたちは平等や自由や解放について学ぶべきという理念は、教師-生徒間の不均衡な権力関係が存在する学校の状況と矛盾せざるをえない。そうした矛盾を抱えつつ、男女平等をめざす教育のゆくえはいかなるものになるのか。今後のジェンダーと教育研究の課題は、現在進行中の男女平等をめざす教育推進の実態と、それが何を教育現場にもたらしているのかを、実証的に明らかにしていくことである。
著者
NAKAMACHI Eiji NAKAGAWA Masaki KIMURA Ryohei MORITA Yusuke ナカマチ エイジ ナカガワ マサキ キムラ リョウヘイ モリタ ユウスケ 仲町 英治 中川 昌紀 木村 涼平 森田 有亮
出版者
同志社大学ハリス理化学研究所
雑誌
同志社大学ハリス理化学研究報告 = The Harris science review of Doshisha University (ISSN:21895937)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.11-18, 2017-04

本研究では自動穿刺装置の組み込みを目的として,近赤外光による光切断法を用いた前腕静脈位置計測システムの開発を行った.近年,看護師の不足や技術不足による採血の失敗が問題となっている.採血の対象となる細い静脈や皮下脂肪に覆われている静脈などは,目視で発見することが困難である.そのため,神経損傷および静脈貫通などを誘発する.よって,採血時の静脈探索システムや自動採血システムの開発が強く望まれている.先行研究で仲町らはステレオ合焦点ハイブリット計測法を用いて,手指の自動採血システムの開発を行った.本研究の新規性は従来の手法と比べ高速かつ使用しやすく,高精度なシステムの開発である.本研究では近赤外光によるスリット光を走査することにより静脈のイメージ画像を得る.また,画像処理により鮮明な静脈画像を取得した.さらに,光切断法により血管中心までの距離および血管径の計測を行い血管径に対して10%の計測誤差を達成した.In this study, we developed a comprehensive biomedical optics device to detect the three-dimensional (3D) position of forearm veins by using the light-section method with near-infrared (NIR) light to execute automatic blood sampling. Now, there still remain the demands to develop "easy to use" blood sampling system for the deteriorated blood vessel caused by metabolic syndrome and aging. It is also difficult to find a vein of infants and obese people because the vein is thin and covered with thick subcutaneous fat for injection. Thus, there have been strong demands to develop a vein detecting and automatic blood sampling system. In the previous study, Nakamachi et al. detected vein positions in the finger by employing the combination of auto-focusing and stereo methods with NIR light. Our newly developed device was characterized as a quick, user-friendly, and highly accurate system for vein detection. In this study, by using the slit light with an NIR wavelength, the scanning image of the vein was taken. We succeeded in clear visualization of the vein using the image processing to improve the sharpness. We measured distance from the forearm surface to the center of the vein by using light-section method and vein diameter, found that the errors were less than 10% of the vein diameter, which was the tolerance threshold value of error.
著者
木村 涼
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

天保13年(1842)6月、五代目海老蔵は、天保改革における風俗取締政策の一環である奢侈禁止令に抵触したとして南町奉行鳥居耀蔵から江戸十里四方追放の処罰を受けた。江戸を離れ嘉永2年(1849)12月に海老蔵が追放赦免を受けて江戸復帰するまでの約8年間の演劇活動を対象に研究を進めた。追放処罰を受けた海老蔵は成田山で1年間蟄居した後、芝居の場を求めて上方方面に赴いた。海老蔵は住居を大坂に構え、上方方面の拠点にしていた。したがって、大坂の芝居出演は他の地域のそれに比べて圧倒的に多い。そこで、番付をはじめとする関連資料を、大阪府立中之島図書館や大阪歴史博物館にて複写した。また、大坂の次に海老蔵が多く出演している京都での興行を調査するため、京都大学図書館や京都府立総合資料館に行き、関連資料を複写した。伊勢や名古屋などの地域も幾つか出演しているので、三重県立博物館や三重県立図書館、愛知県名古屋市蓬左文庫、同県西尾市岩瀬文庫、御園座図書館などに赴き、番付や台帳はじめとする関連資料を複写した。その他、成田や静岡、長野、広島、長崎などの資料館や博物館、図書館に赴き、海老藏の興行記録が記されている『御用留』や『御用日記』を複写し整理・翻刻した。こうして江戸追放中の上方方面を中心とする芝居出演に関する資料を収集してきた。その結果、地方におはる観客の動向や演出の相違も判明した。本研究は、海老蔵の江戸以外の地域におはる芝居興行の究明は焦眉の急であるという課題に応えるものである。
著者
小野田 正利 小林 正幸 近藤 博之 平沢 安政 藤岡 淳子 山下 晃一 近藤 博之 平沢 安政 藤岡 淳子 志水 宏吉 井村 修 木村 涼子 中村 高康 野田 正人 岩永 定 山下 晃一 田中 規久雄 古川 治
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

学校の教職員と保護者の間に、いま時として鋭い対立関係が生じてしまい、教育活動に大きな影響が出ていることが、わが国の学校問題の一つに急浮上してきた。本研究では、質的調査と量的調査を組み合わせ、同時に教育学の観点からだけでなく、心理学、精神医学、福祉学、法律学などの多様な分野の専門研究者を交えて、これらの問題の原因究明とともに、良好な関係性の構築の方向性を明らかにした。
著者
佐藤 和夫 井谷 惠子 橋本 紀子 木村 涼子 小山 静子 片岡 洋子
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究では、日本が男女共同参画社会をめざすためには、男女共学、共修がどのように実施されるべきかについて、高校を対象に分析検討を行った。男女共学、共修は男女平等教育にとって必要な基礎的条件ではあるが、隠れたカリキュラムにおけるジェンダーに無自覚なまま共学、共修を実施しても、共学、共修がただちに男女平等教育には結びつかない。そのため、男女共学や共修の現状を明らかにしながら、男女平等をつくるための共学、共修とはどうあるべきなのかについて、以下の3つの調査領域における研究において析出した。1,福島県の男女共学化および共修の現状調査福島県は、男女共同参画社会の実現のための施策の一環として、長らく残っていた別学高校をすべて共学化した。その共学化実現過程や高校の現状について、聞き取りと観察および質問紙調査を組み合わせて分析、考察した。2,関西(大阪)の私立高校の共学化戦略と共学、別学の現状調査福島県とは対照的に公立高校はすべて共学だった大阪府では、私立高校が別学校を提供してきた。近年、共学化が進んでいる大阪の私立学校での別学、共学の経営戦略および生徒への質問紙調査によって、共学、別学の比較検討を行った。3,高校での体育共習の指導場面の観察調査男女共修の高校の体育の授業場面において、教師の声かけが生徒が男子か女子かで異なること、そこに教師のジェンダー観があらわれ、ジェンダーの利用と再生産が行われていることなどについて、授業観察の分析を行った。