著者
本田 智比古
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2017年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.100065, 2017 (Released:2017-05-03)

1. はじめに国名や都市名,自然地域名称などの地名をどのように表記するのかは,地域を研究対象とする地理学においては大変重要な問題である.しかしながら,地名表記の標準化をつかさどる国家機関が存在しないため,地名の表記は統一が図られず,時にはその不統一性から,同一都市を別の都市と誤解するような事態も生まれている.そのようななか,教科書業界において,地名表記に対してどのような取り組みが行われているのか,帝国書院を例に取り上げ,地名表記にどのような課題があるのか考えてみたい.2. 教科書における外国地名の表記に関して戦後の教育業界において,最初に地名表記の統一が図られたのが,1950年代である.文部省に専門の委員会が設けられ,教育的見地から外国地名と国内主要自然地域名称の呼び方と書き方の基準が検討された.委員は,教育関係者だけでなく,外務省,建設省地理調査所,報道関連など各所から集められ,検討の結果は1959年刊行の『地名の呼び方と書き方』という書籍にまとめられた.以降,この基準書は1978年の『地名表記の手引き』,1994年の『新 地名表記の手引き』へと受け継がれ,教科書業界ではこれらの基準書に従い地名を表記することで,地名表記の統一を図ってきた.しかし,新聞社やテレビ局などの報道機関は会社ごとに独自の基準を作成しており,この基準書に準じなかったという点,1994年以降,続編書籍が刊行されていないという点で課題が残っている. このようななか,教科書業界では,特に国名と首都名に関して特段の配慮を行ってきた.1970年代から2007年までは,『世界の国一覧表』という外務省見解をコンパクトにまとめた書籍を統一原典として使用してきた.また,2007年にこの書籍が廃刊となって以降は,教科書会社で組織している教科書協会に,国名と首都名に関する表記を統一する連絡会議が設けられ,地図帳を発刊している東京書籍・二宮書店・帝国書院の三社の地図帳編集部門担当が毎年集まり,見解の統一を図っている. しかし,このように統一できている外国地名は主要地名だけであり,その他の詳細地名の表記は教科書会社で異なっているのが実情である.例えば帝国書院では,前述の『新地名表記の手引き』が1994年に発刊されたことを受け,本書が掲げる現地音表記の精神を地図帳に反映するため,1998年に地名表記の大幅な見直しを行っている.各言語の専門家数十人にご協力をいただきながら,「英語発音や旧宗主国言語の名残があった地名も原則として現地音表記に改める」などといった新しい原則を設け,地名表記を一新した.だが,これらの帝国書院独自の取り組みにも課題はまだ残っている.例えば,現地音をどの少数民族のものまで徹底するか,現地音を日本語の片仮名表記でどこまで正確に再現できるか,などである.地名表記の検討に対しては,情勢の変更も踏まえながら,不断の努力を行うことが必要である.3. 教科書における国内地名の表記に関して 外国地名に比べると地名表記が統一されているように見える国内地名であるが,これにも課題はある.まず,世界の地名と同様に,詳細地名に関する業界での統一基準が無い点である.帝国書院では,行政地名は国土地理協会発刊の『国土行政区画総覧』,自然地域名称は国土地理院発行の『決定地名集(自然地名)』,鉄道名やスタジアム名等はそれぞれを管理する会社の資料を原典とし,地名表記を社内では統一している. 国内地名の表記に関しては,使用漢字の字体のばらつきという課題もある.例えば飛騨市や飛騨山脈の「騨」は,パソコンの標準変換では出すことができない「」という字体を多くの教科書では採用しているが,これを通常の出版物にまで強要するのは難しいと考える.また,2004年に漢字のJISが改正され,168字の漢字の登録字形が変更されたため,該当漢字がパソコンや印刷機のフォント環境によって異なった字体で印刷されるという問題も起きている.地名として登場するものとしては,「葛・葛」や「薩・薩」,「逢・逢」などがその対象である.(「 」内の右側が2004年以前の,左側が2004年以降のJISにコード登録されている字体)4. まとめ このように外国地名,国内地名ともその表記に関しては様々な課題を抱えているのが現状である.それらの課題を個々の会社や団体だけで解決することは不可能であり,また努力を行うほど,他社や他の業界と不統一を起こす結果にもつながりうる.そのため,国家地名委員会が設置され,この委員会のもとで地名表記の標準化が図られることの意義は非常に大きいと考えている.
著者
本田 智子
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.191-199, 2018-06-01 (Released:2018-06-21)
参考文献数
14
被引用文献数
2

産褥期は育児のために母親の睡眠が分断され,睡眠時間の減少や疲労の訴えがしばしばみられる[1].特に,産褥早期の育児において授乳の占める割合は大きく,睡眠への影響因子の一つであると考え,本研究では褥婦の授乳方法・授乳姿勢と睡眠感の関連について明らかにすることを目的とした.入院中(経腟分娩では初産婦6日目,経産婦5日目,帝王切開分娩では8日目)と産後1ヶ月の2回,授乳や睡眠に関する質問紙と,睡眠感の評価にOSA睡眠調査票MA版を用いて調査を実施した.その結果,分娩歴や分娩方法の違いによる睡眠感に有意差は見られなかったが,入院中の授乳方法において,夜間は直接授乳群(n = 46)で疲労回復や睡眠時間の項目の得点が有意に高く(P < 0.05),授乳姿勢においては添え乳群(n = 14)で疲労回復に関連する項目の得点が高かった(P < 0.05).さらに産後1ヶ月の授乳方法でも,昼(P < 0.01)・夜(P < 0.05)ともに直接授乳を行う褥婦の睡眠感が良好であることが分かったことから,産褥期の睡眠感を高めるには,直接授乳と添え乳が効果的であった.また,産後1ヶ月で睡眠感の改善がみられた.産後1ヶ月で睡眠感の改善がみられたのは,母親が育児に慣れたことや,授乳パターンが把握できるようになったことなどにより,スムーズに授乳できるようになったことが影響していると考えられる.
著者
谷田 恵子 楊箸 隆哉 本田 智子 柴田 真志
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.1_191-1_198, 2011-04-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
28

本研究では,睡眠時の心拍変動(HRV)データを1分と5分間区分でMemCalc法により周波数解析してHRV指標を求め,PSGで判定した各睡眠段階におけるHRV指標についてそれぞれ比較検討した。20~44歳の女性8名から得られた16夜分のPSGおよびHRVデータを解析した。HRV解析は,超低周波数高領域(0.016~0.04Hz:VLF-hi),低周波数(0.04~0.15Hz:LF),高周波数(0.15~0.4Hz:HF)の各帯域のパワースペクトル値を算出した。LF/HF,HF/(LF+HF),HF/(VLF-hi+LF+HF),VLF-hiの4つの指標において,1分と5分間区分解析共に,REM睡眠,浅睡眠,深睡眠の各睡眠段階間に有意な差が認められた。これまでHRV周波数解析指標の算出は5分間区分が主であったが,睡眠段階の推定にはPSGの1エポック20~30秒により近似する1分間区分解析結果を用いる方が有用である可能性が示唆された。
著者
本田 智治 橋爪 可織 松浦 江美 永田 明 大山 祐介
出版者
一般社団法人 日本救急看護学会
雑誌
日本救急看護学会雑誌 (ISSN:13480928)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.20-28, 2022 (Released:2022-05-24)
参考文献数
18

目的:救命救急センターの救急外来における実習の学びの語りから、看護学生の体験を明らかにする。方法:成人看護学実習を履修し救急外来実習を選択したA大学3年次生の看護学生6名に半構造化インタビューを行った。インタビュー内容は、実習中の体験や実習指導者および教員のかかわり、実習前後の救急看護のイメージなどで構成し、質的記述的研究法を用いて分析した。結果:看護学生の救急外来での実習にかかわる体験を示すコードから12個のサブカテゴリーを抽出し、《メディアで形成された希薄な救急医療のイメージが実習によって具体的になる》《救急医療における医療者・患者・家族の姿から、医療現場の現実を学ぶ》《救急外来でも病棟と変わらない自分が学んだ看護が存在することを確認する》《救急看護師の姿を通じて自分の将来における選択肢が増える》の4個のカテゴリーが見出された。看護学生は、救急外来での実習によって現実的な救急医療を学び、患者や家族の感情の代理的経験をすることによって共感が生じていた。そして、救急外来における看護を確認し、将来の選択肢の拡大という変化が生じていた。結論:本研究では、救急外来の実習によって救急看護のイメージが具体的なものとなり、患者・家族、実習指導者である看護師の姿を通じて、救急医療の現実を学び、自分自身が学んだ看護を確認するとともに将来の選択肢が増えるという看護学生の体験が明らかになった。
著者
本田 智子 今村 徹
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.237-242, 2019-06-30 (Released:2020-07-06)
参考文献数
23

症例は 57 歳, 右利き男性。兄には左利きの矯正歴がみられた。右頭頂後頭葉皮質下出血発症 4 週時点で左半側空間無視, 構成障害, 着衣失行を認めた。音声言語の理解, 表出および読字には問題なかったが, 漢字書字に障害がみられ, 無反応, 部分反応, 存在字近似反応などの純粋失書と思われる反応に加えて, 文字の構成要素はすべて書き出されているが空間配置が乱れた構成失書がみられた。小学校 1, 2, 3 年生の教育漢字から無作為に選択した 51 文字の書取と写字では, 純粋失書は写字で著明に減少したが, 構成失書は書取と写字で同程度の割合でみられ, 偏と旁など, 部首と部首との空間配置が乱れる場合と, 1 つの部首を構成する字画の主要なまとまり同士の空間配置が乱れる場合とがあった。近年, 右半球損傷による構成失書の症例がいくつか報告されている。構成失書は従来指摘されてきた左頭頂葉病変以外にも, 非定型側性化を背景に有する右半球病変で出現する可能性がある。
著者
大久保 淳 本田 智
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会学術講演会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.265-266, 2020

<p>線径が20μm超極細ワイヤを用いてピッチ40μmのマイクロねじとマイクロナットを製作し,これらを組み合わせたマイクロ送りステージを開発した.この送りステージは,マイクをねじの両側にクルトガ機構を取り付け,クルトガ機構のレバーを1回動作(押し離し動作)させると,ナットが1μmずつ左右に移動する構造になっている.本報告では,ステージの構造・位置決め動作・実験による位置決め結果について報告する.</p>
著者
小澤 暁人 本田 智則
出版者
一般社団法人 エネルギー・資源学会
雑誌
エネルギー・資源学会論文誌 (ISSN:24330531)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.254-265, 2020 (Released:2020-11-10)
参考文献数
32

Battery is a key technology in the transition to a low-carbon and resilient energy system. Recently in Japan, residential PV battery system is considered as one of the most promising applications; however, its impacts had not been fully assessed. This study evaluates the effects of residential PV battery system for end-users under various conditions on geological, technological and socio-economic factors. Regional diversity is considered by using data on residential power consumption and PV power generation that were collected from over 40 thousand all-electric houses in Japan. Scenario analysis and sensitivity analysis are performed to evaluate the effects of uncertain parameters on the system’s performances. Simulation results suggest that economic benefits of the system can be improved by changing battery operation mode at the end of purchase period for PV under Feed-in Tariff (FiT) scheme and the benefits should vary depending on the region. The results also indicate that PV self-consumption rate is over 50% when charging the battery with surplus power. Sensitivity analysis results suggest that the unit prices of grid electricity and the purchasing price of surplus power after FiT scheme should have large influences on the economic benefits of the system.
著者
本田 智子 城戸 滋里 岡崎 寿美子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.4_45-4_57, 2003-09-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
33

本研究は,入院施設などで個別的な睡眠環境温度が保持できない対象者へ,快適な睡眠を提供するために,冷却パックの後頭部冷却が睡眠に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。 調査期間中を通して,決まった時間に自宅での就寝が可能な健常者7名に対し,通常の環境下と冷却パック使用下での睡眠中の活動量と覚醒回数・覚醒時間のアクチグラフによる測定,及び,寝つきの主観的評価についての質問紙調査を行い,両環境下でのデータを比較検討した。 調査の結果,睡眠中の活動量は,入眠後90分から180分の間で冷却パック使用下での睡眠中の活動量が有意に減少しており,覚醒時間と覚醒回数においても冷却パック使用下の方が減少していたことが明らかになった。 (p<0.05) また質問紙調査からも,冷却パックの使用は,高温多湿環境下における睡眠の助けになることが示唆された。
著者
根本 理 本田 智明 高橋 誠 竹内 正人 杉山 喜則
出版者
岩手県立大学総合政策学会
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.35-47, 2007-12

巣外育雛期初期(巣立ち後1ヶ月間)のイヌワシAquila chrysaetosの幼鳥の生存にとって重要な親鳥からの餌の受渡状況を解明するため、2000年と2002年に福島県の同じ営巣地から巣立った幼鳥各1羽を対象に目視調査による巣外育雛期初期の餌受渡状況調査結果とビデオ撮影による巣内育雛期後期(巣立ち前10日間)の餌搬入状況調査結果との比較を行った。その結果、餌受渡回数で評価した場合、幼鳥は巣内育雛期後期と同様に巣外育雛期初期もその生存に必要な餌を親鳥からの受渡に依存していることが明らかになった。餌受渡および同じ幼鳥を対象に分析した幼鳥の飛翔能力の発達状況のそれぞれの解析結果から総合的に考察すると、ハンティング能力が未発達な巣外育雛期初期の幼鳥の生存を確保するためには、親子関係が維持できるように、この時期に幼鳥の中心的利用エリア(営巣地から半径1.2kmの範囲)で工事などを行う場合には、巣内育雛期の親鳥に対する保護対策に準じた保護対策を講じることが必要であると考えられた。
著者
根本 理 本田 智明 高橋 誠 竹内 正人 杉山 喜則
雑誌
総合政策 = Journal of policy studies (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.35-47, 2007-12-01

巣外育雛期初期(巣立ち後1ヶ月間)のイヌワシAquila chrysaetosの幼鳥の生存にとって重要な親鳥からの餌の受渡状況を解明するため、2000年と2002年に福島県の同じ営巣地から巣立った幼鳥各1羽を対象に目視調査による巣外育雛期初期の餌受渡状況調査結果とビデオ撮影による巣内育雛期後期(巣立ち前10日間)の餌搬入状況調査結果との比較を行った。その結果、餌受渡回数で評価した場合、幼鳥は巣内育雛期後期と同様に巣外育雛期初期もその生存に必要な餌を親鳥からの受渡に依存していることが明らかになった。餌受渡および同じ幼鳥を対象に分析した幼鳥の飛翔能力の発達状況のそれぞれの解析結果から総合的に考察すると、ハンティング能力が未発達な巣外育雛期初期の幼鳥の生存を確保するためには、親子関係が維持できるように、この時期に幼鳥の中心的利用エリア(営巣地から半径1.2kmの範囲)で工事などを行う場合には、巣内育雛期の親鳥に対する保護対策に準じた保護対策を講じることが必要であると考えられた。
著者
本田 智子
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
産業医大誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.191-199, 2018
被引用文献数
2

産褥期は育児のために母親の睡眠が分断され,睡眠時間の減少や疲労の訴えがしばしばみられる[1].特に,産褥早期の育児において授乳の占める割合は大きく,睡眠への影響因子の一つであると考え,本研究では褥婦の授乳方法・授乳姿勢と睡眠感の関連について明らかにすることを目的とした.入院中(経腟分娩では初産婦6日目,経産婦5日目,帝王切開分娩では8日目)と産後1ヶ月の2回,授乳や睡眠に関する質問紙と,睡眠感の評価にOSA睡眠調査票MA版を用いて調査を実施した.その結果,分娩歴や分娩方法の違いによる睡眠感に有意差は見られなかったが,入院中の授乳方法において,夜間は直接授乳群(n = 46)で疲労回復や睡眠時間の項目の得点が有意に高く(<i>P</i> < 0.05),授乳姿勢においては添え乳群(n = 14)で疲労回復に関連する項目の得点が高かった(<i>P</i> < 0.05).さらに産後1ヶ月の授乳方法でも,昼(<i>P</i> < 0.01)・夜(<i>P</i> < 0.05)ともに直接授乳を行う褥婦の睡眠感が良好であることが分かったことから,産褥期の睡眠感を高めるには,直接授乳と添え乳が効果的であった.また,産後1ヶ月で睡眠感の改善がみられた.産後1ヶ月で睡眠感の改善がみられたのは,母親が育児に慣れたことや,授乳パターンが把握できるようになったことなどにより,スムーズに授乳できるようになったことが影響していると考えられる.
著者
本田 智則 田原 聖隆 竹内 憲司 稲葉 敦 西野 成昭
出版者
国立研究開発法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、分散型電源及び既存電源を協調させつつ、長期安定的に稼働可能な電力システムの構築を目指し研究を実施してきた。再生可能エネルギー発電設備についてのLCA(Life Cycle Assessment)を実施し環境負荷の定量化を行った。また、インセンティブ制度設計にあたっては特に省エネが遅れている家庭部門に着目しHEMSデータを活用しライフスタイル別のエネルギー消費実態を特定すると同時に実験経済学の手法によって電力需用者の省エネインセンティブについての知見を得ることができた。仮想電力取引市場設計にあたっては各市場毎のライフスタイル変容が重要な課題であると言う今後の課題を得た。
著者
岩月 和彦 那須 裕 野坂 俊弥 岩崎 朗子 御子柴 裕子 本田 智子 楊箸 隆哉 奥野 茂代 田村 正枝 山田 幸宏
出版者
長野県看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

水中運動参加者の中で,生活習慣病を有する高齢者(高血圧症,高脂血症,糖尿病)と,生活習慣病を持たない高齢者の血圧,心拍数の3年間における変化を比較検討した.その結果,高血圧症を有する高齢者では,収縮期圧は140台、拡張期圧は80前後、心拍は73から76の間で保たれ、3年間安定しており服薬による血圧コントロールが適切に行われた場合,血圧及び心拍の上昇は見られなかった.「生活習慣病を持たない高齢者」の血圧、心拍数の平均値の3年間の推移です。高血圧症群と比べますと、収縮期圧が10ほど低く130台の値を示しています。拡張期圧は先ほどと同様で80前後でした。心拍は73から76の間で保たれていました。「高脂血症を有する高齢者」の血圧と心拍数は、生活習病を持たない高齢者と同様に、血圧、心拍とも正常値の範囲内で安定しています。「糖尿病を有する高齢者」は、こちらも同様に、3年問を通して、血圧、心拍とも正常値内で保たれていました。健脚度の「最大一歩幅」は、「高血圧症を有する高齢者」、「高脂血症を有する高齢者」、「高脂血症を有する高齢者」「生活習慣病を持たない高齢者」ともに、平成17年4月の時点で年齢相応の平均値より高く、移動能力のレベルが高いことが確認されますが、水中運動継続3年後には、両群ともに、さらに向上する傾向が認められました。「10m全力歩行」は、「高血圧症を有する高齢者」も、「生活習慣病を持たない高齢者」も、5秒前後の値であり、年齢相応の平均値よりも値が小さく、つまり早く歩けること、それも、3年間の年齢の増加に関わらず、3年後にはさらに値が小さく、「歩く」移動能力の向上が見られます。以上の結果、65歳以上を対象とした生活習慣病を有する高齢者の水中運動の継続による身体面への影響を検討した結果、生活習慣病を有する高齢者の血圧及び心拍に水中運動による悪影響は認められず、生活習慣病を持たない高齢者と同様に、下肢筋力や柔軟性が改善され、維持される傾向が認められました。
著者
本田 智寛 村中 智彦
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.42-64, 2010

研究の目的 自閉症児を対象に、学校の朝の会場面で報告言語行動(タクト)と聞き手への接近行動のシミュレーション指導を行い、直接指導を行わない自由場面でのタクトと接近行動の形成を目指した。その中で、タクトの指導手続きやシミュレーション指導場面の役割について検討した。研究計画 ベースライン、介入1期、介入2期で構成した。場面 対象児の在籍する小学校の特別支援学級の朝の会をシミュレーション指導場面とした。登校時、20分休憩と昼休みの開始時および終了時の5場面を自由場面とした。対象児 小学校の特別支援学級に在籍する自閉症男児2名であった。介入 介入1期では、各自由場面の「○○に行ってきました」などのタクトと接近行動のシミュレーション指導を朝の会で行った。介入2期では、朝の会場面でのシミュレーション指導の中で、タクトに先行する聞き手への接近行動を高めた手続きを分析し、「行ってきましたカード」などの手続きを自由場面に導入した。行動の指標 タクトの正反応と単語反応の生起を測定した。接近行動をプロンプトレベルで評価した。結果 介入1期では、タクトは生起したが、接近行動の遂行は高まらなかった。介入2期では、接近行動の遂行レベルの向上が認められた。結論タクトにおける接近行動の重要性とシミュレーション指導を行う授業場面の生起条件の分析としての役割が示された。
著者
那須 裕 楊箸 隆哉 岩月 和彦 北山 秋雄 本田 智子 坂口 けさみ 大平 雅美 堀内 美和 木村 貞治 藤原 孝之
出版者
長野県看護大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

施設入居高齢者や一人暮らし高齢者は外界との接触が減り、生活環境も画一になりがちで、また一方この人たちに継続的な刺激を与える周囲の余裕も中々持てないのが現状である。そのような高齢者のADLを維持しQOLを高めるために実施出来る可能性のあることについて検討を加え、また高齢者の運動機能及び高次脳機能を簡便に測定・評価する方法を開発するための基礎データ集積を行った。1 高次脳機能評価:予備調査として有料老人ホームにおいてADLがほぼ自立している高齢者10名に対して事象関連電位(P300)の測定を行い、平均潜時、平均振幅等の数値を得た。より多くの対象者を求め、指標としての有効性を示してゆくことが今後の課題である。2 睡眠に関する検討:若年者を対象に睡眠実験を実施した。P300及び反応時間を用いた寝起きのテスト、主観評価による寝起きのテストを行い、かつレム睡眠とノンレム睡眠との顕れ方のパターンについて検討しつつある。ここで得られた結果を施設内高齢者の快適な睡眠環境形成のために如何に役立てるかが今後の課題である。3 マッサージが筋肉の凝りに与える身体の主観的評価及び生理反応への影響:肩凝りを持つ若年者を対象にマッサージの効果について検討した。マッサージは肩凝り症状を軽減し血流を増加させることが示された。高齢者に対する効果については現在検討を継続中である。4 高齢者水中運動継続による運動機能及び高次脳機能の変化:水中運動継続が高齢者の運動機能、血圧、心拍数等に及ぼす影響につき、継続的に観察中である。