著者
持田 裕司 竹村 洋子 松本 正江 金勝 廉介 木口 憲爾
出版者
社団法人 日本蚕糸学会
雑誌
蚕糸・昆虫バイオテック (ISSN:18810551)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.37-43, 2006 (Released:2007-07-03)
参考文献数
7
被引用文献数
3

実用蚕品種受精卵の2年間保存条件を検討した。清水ら(1994)の2年間保存法における6回の15℃1日間中間手入れのうち,最終の1回を10℃10日間に改めた「改良2年間保存法」を試案した。この方法で2年間保存をした交雑種は実用ふ化歩合65%程度で,飼育成績は対照としての1年間保存卵からふ化した個体と同等であった。原種の場合,改良2年間保存後のふ化率は対照区と比較して著しく低く,ふ化幼虫の雌雄比にも偏りが生じた。しかし,次代卵を再び2年間保存することを繰り返す継代は可能であり,多くの品種において継代のたびにふ化率は向上した。2年間保存により幼虫の飼育成績は低下するが,継代した卵を通常の1年間保存後にふ化させることで飼育成績を回復することが確かめられた。産卵台紙の間にスペーサーを挿入することで積極的に空気の流通空間を確保することは,ふ化率の改善に有効であった。
著者
香川 昌平 野村 早苗 小林 邦夫 四宮 由美子 津村 洋子 伊勢 久代 松岡 瑛
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.135-145, 1977

ラット膵灌流法をもちい, 種々のイオン環算下でのglucose刺激によるインスリン分泌動態を検討し, インスリン分泌機構の解明を試みた.<BR>[実験成績]<BR>I.K+, Li+-free液, 6.2mMK+, Rb+, Li+液による灌流: Glucose-freeの場合, K+, Li+-free, 6.2mMLi+液は後期相のインスリン分泌を惹起するが, 6.2mMK+, Rb+液はインスリン分泌を誘起しなかった.10mM theophyllineを含むK+, Li+-free液は対照の3倍量のインスリンを分泌するが, 6.2mM Li+液はtheophyllineによる影響はうけなかった.Hill plotの解析から, K+, Li+-free液, 6.2mMK+, Rb+液のglucose刺激によるKm値は, それぞれ, 6.5, 8.9, 8.7mMであった.<BR>II. 24.8mM, K+, R+, Li+液による灌流: Glucose freeの場合, 24.8mMK+, Rb+液は一過性のインスリン分泌を惹起するが, 24.8mM Li+液はインスリン分泌を誘起しなかった.また, 12.4mM Li++6.2mMK+液の前灌流により, 24.8mMK+液のインスリン分泌は対照に比し低下した.<BR>III. 6.2mMK+液から6.2mM K+, Rb+, Li+液に変換した際のα-およびβ-D-glucose刺激によるインスリン分泌: 16.7mM濃度で, 6.2mM K+液では, 両anomer刺激によるインスリン分泌は同等であるが, 6.2mM Li+液では, βanomerに優位なインスリン分泌がみられ, 6.2mM Rb+液では, ともにインスリン分泌は抑制された.<BR>以上より, Li+はK+, Li+-free条件に比して, インスリン分泌を低下させるが, receptorの親和性を増大させ, βanomer刺激に優位なreceptor conformationへ変化させる可能性が示された.
著者
岡崎 勘造 柴田 愛 石井 香織 助友 裕子 河村 洋子 今井 (武田) 富士美 守屋 希伊子 岡 浩一朗
出版者
日本スポーツ産業学会
雑誌
スポーツ産業学研究 (ISSN:13430688)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.235-244, 2011 (Released:2011-11-23)
参考文献数
24

The present case study evaluated an environment-focused project for promoting walking, which included the development of walking courses (using public spaces, parks, roads) with stations for smart cards in the community and an interfaced internet-based self-monitoring system. The project was started in 2008 in Misato City of Saitama Prefecture. In this project, individuals can participate by paying a registration fee (500 yen) and obtaining their own cards. If registrants walk the course, holding their cards over a scanner at 3-4 stations, the smart card records their data (e.g. distance and time spent in walking) from one to the other station and transfers these to a self-monitoring system. As a result, registrants could check their data online. From June 2008 to November 2009, a total of 631 individuals (62% female) who obtained the information from newspaper, magazines, website, or some local events, registered for this project. From walking data collected automatically in the database through the self-monitoring system, it was found that 445 registrants (63% female) used this system at least once, and most of the registrants were 40 years old or more. This suggests that the project in this study might have been effective in promoting walking only among older people. Also, most of the registrants lived around the courses. In particular, the courses in the area surrounded by beautiful nature and residential areas were often used. To expand this idea to other age groups, new attempts, including a point supplying system based on the distance of walking are under development.
著者
渋谷 俊昭 金山 圭一 上野 健一郎 木村 洋子 後藤 昌彦 籾山 正敬 北後 光信 白木 雅文
出版者
朝日大学
雑誌
岐阜歯科学会雑誌 (ISSN:03850072)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.91-95, 2010-10-20

歯周組織に及ぼす喫煙の影響を検討する目的で,歯肉線維芽細胞へのニコチンの影響について検討した.歯肉線維芽細胞は通常の培地で24時間培養され,次に1μg/ml,0.1μg/ml,0.01μg/ml のニコチン含有培地で培養した.細胞増殖能を測定するために培養終了24時間前に3H-Thymidine を添加した.培養終了後に放射能計測を行い,細胞分裂能を観察した.さらに同様の培養後に細胞形態を観察した.また細胞骨格の観察の目的でFITC Phalloidin で染色し,ストレスファイバーの観察をおこなった.ニコチン添加1μg/ml 群では有意に細胞増殖能が低下した.また1μg/ml 群では細胞形態は紡錘型を呈していた.さらに細胞骨格のストレス線維は収縮し,粗になっていた.これらの結果から,歯肉線維芽細胞の増殖にニコチン摂取が抑制的に関与することが示唆された.
著者
竹村 洋子
出版者
The Japanese Association of Special Education
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.415-424, 2011
被引用文献数
1

特別支援教育への転換が法的に裏づけられたが、通常学級における発達障害児への教育的対応には課題が山積している。行動論的支援では、「問題行動」への介入について児童と環境との相互作用の視点の重要性が認識されており、本邦では通常学級における介入研究が増加している。本稿では、「問題行動」をめぐる児童と環境との相互作用に視点を置き、発達障害児の学校適応を促進するための課題を明らかにすることを目的に、それらの研究を概観した。児童と教師との接近的相互作用の成立の重要性が指摘されるとともに専門機関や保護者など他者との良好な連携が支援効果を高める条件となるが、環境への介入には課題が多いことが指摘された。「問題行動」をめぐって複数の変数が関連した複雑な相互作用が成立し、その分析と介入の方略が求められている。教師の評価に着目した分析により、「問題行動」をめぐる相互作用について関連要因が明確化され、通常学級における課題を解決するための指針が得られる可能性について言及した。
著者
竹村 洋子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.44-56, 2008-03-30

本研究では,通常学級における「問題行動」をめぐる教師-児童間相互作用について,児童とのかかわりに対する教師の評価に焦点をあて,問題状況に関して検討を行った。研究1では問題性評価尺度及び対処行動評価尺度が調えられた。因子分析の結果,問題性評価尺度は影響性評価・対処可能性評価の2因子9項目,対処行動評価尺度は問題解決志向・支援希求志向・情動軽減志向の3因子16項目の構造として理解することが適当だと考えられた。研究2では2つの尺度の結果についてクラスタ分析を行った。その結果,児童とのかかわりにおいて生じる問題に対する教師の問題性評価は4類型,対処行動評価は5類型に分類可能であることが示された。研究3では,通常学級における「問題行動」をめぐる教師-児童間相互作用への介入を実施し,研究1で作成した尺度を用いて介入に伴う教師の評価の変化についてデータを得た。その結果,教師への介入後に対処行動評価の類型の変化が,フォローアップ期には教師の問題性評価の類型の変化が示された。教師の評価のうち,対処行動評価が教師-児童問相互作用を規定する要因である可能性が示された。
著者
松村 洋子
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

【クビナガハムシ亜科の系統推定とオス・メス交尾器の詳細な形態観察から,交尾器の伸長現象と連動したオス・メスの複雑な共進化の全貌が解明されつつある】一般に繁殖に関わる形質は,他の形態形質では区別ができない種間でも,顕著な差異を示す例が多く知られる.交尾器特有の多様性を生む原動力は性淘汰・性的対立によると考えられ,行動生態学的な視点からの研究が行われてきた.一方で,その多様な形態をもつ交尾器の進化史はこれまであまり着目されてこなかった.さらにオス・メス交尾器の共進化の研究もサイズという一面しか捉えられてこなかった.形態形質の変化は個体発生の変更によってもたらされ,発生単位の構成要素間で連動した形態変化が起こることが十分に予想される.しかし,これまでにそういった発想で繁殖形質の網羅的な形態観察に基づく共進化史を推定した例はない.本研究では,これまで見落とされてきたサイズ以外の要素も含めたオス・メス交尾器の共進化の実態解明を目的とし,クビナガハムシ亜科に見られる交尾器の伸長現象を取上げた.これまで良く知られているように,オス・メス間の交尾器長の共変化に加え,メス側の構造に,オスの伸長部の有無と連動した以下の変化傾向があることが分かった:(1)交尾時にメス側の受入れ口となる部位に観察されるパッドの有無,(2)メス膣の表面に観察される剛毛のパッチの位置,(3)メスの精子貯蔵器官の複雑さ.さらに,オスの伸長部の長さがある閾値を越える否かで,オスの伸長部を取り巻く膜の表面構造が劇的に変化することが分かった.現在,形態観察に加えて本分類群の分子系統樹の構築を進めている.今後は,これを基に,交尾器の形質状態の祖先・子孫関係を決定し,オス・メス交尾器の共進化史を提示する.
著者
坂井 康子 志村 洋子 岡林 典子 山根 直人
出版者
甲南女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

日本語環境にある乳幼児の音声の分類とそれらの音響分析の結果により,乳幼児音声(喃語を含む)のリズムと抑揚についての知見を得た。加えて,乳幼児音声の「うた度」を評定する聴取実験の結果を分析し,「うた度」の高い音声の特徴を抽出した。以上のように乳幼児音声の分析をおこなった結果をもとに,保育士・教員養成において乳幼児音声をめぐって感得すべき,あるいは配慮すべき点について検討し,論文にまとめた。
著者
河村 洋子 Singhal Arvind
出版者
熊本大学
雑誌
熊本大学政策研究 (ISSN:2185985X)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.35-45, 2012-03-23

本稿の目的はわが国では非常に新しいPositiv Deviance (PD)を紹介することである。私たち研究者は問題に着目し、問題そのものの理解や知識を求めるが、それだけでは有効な解決策を生みだすことはできない。PDはむしろ最善の解決策はコミュニティの中にあるとし、コミュニティに潜在する創造力や知恵に着目する。そのような解決策は社会の「当たり前」の基準から逸脱し顕在化していない。しかし問題に対して良い結果を生んでいても、それがコミュニティ内の他者より恵まれた資源があるからという理由であってはコミュニティ内の他者は実践できない。したがって、逸脱は他者と同様限られた資源しかもたない者に見られるものでなけらばならない。PDはこのように見出された行動(実践)を顕在化し、コミュニティ内に定着されていく。PDの概念は行き詰って解決策を見いだせないでいる複雑な社会課題に対して、発想の転換を提供する。The purpose of this article is to introduce the concept of Positive Deviance (PD), which is very new to Japan. Researchers tend to focus on problems or deficits and to face the challenge of finding and creating solutions. PD believes that solutions lie in the community from the asset-based viewpoint. However, such solutions, being away from the standard or the usual, are deviant and latent in the community. The deviant appreciates better outcomes not due to the better access to resources and should rather have as limited resources as the others do. Others can follow the deviant because s/he is in a similar situation with limited resources. PD tries to identify what the deviant is doing and to amplify it across the community. PD seems very useful in challenging stacked social problems, providing us with a new way of thinking.
著者
島村 洋子
出版者
新潮社
雑誌
週刊新潮 (ISSN:04887484)
巻号頁・発行日
vol.57, no.27, pp.123-126, 2012-07-19
著者
伴野 豊 藤井 博 河口 豊 日下部 宜宏 竹村 洋子
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究では九州大学大学院農学研究院附属遺伝子資源開発研究センターに保存される世界最高水準のカイコ突然変異体の有効利用と効率的保存を目的として行った。その目標は次の3点にあった。1、DNAレポジトリーの確立(遺伝子資源の有効利用)2、精子レポジトリーの構築(効率的保存)3、遺伝子資源の情報発信(情報レポジトリー)上記3項目に関する達成度は以下の通りである。(1、DNAレポジトリー)約450系統を網羅するDNAレポジトリーを計画通り構築した。各系統に関して10個体を個別に保存し,系統内の多型解析を必要とする研究にも対応したレポジトリーとなり、既に国内・外の研究に活用されている。これまでは研究者が飼育を必要としていた為に利用が限定されていたが桑の確保などの必要がなくなり、利用が拡大している(2、精子レポジトリー)本課題では精子を採取する過程と人工授精の過程に極めて高度なテクニックを有する為に、研究分担者である竹村が開発した技術を扱う事が可能な人材の育成に時間を要した。このために目標の全系統の精子レポジトリー構築には至らず、30系統に留まった。今後、技術の改善に努める必要がある。(3、情報レポジトリー)2005年3月までに報告されたカイコの突然変異遺伝子に関する情報の収集を行った。その結果、カイコ突然変異遺伝子に関しては2005年3月までに報告されている全てについて遺伝子記号,遺伝子名,形質特徴,文献引用が一覧出来るデータベースを構築し、「カイコ突然変異体利用の手引き2005」を刊行した。以上,DNA,精子,情報という3つ事項のレポジトリー化が計られ,カイコ遺伝子資源を効率的に活用・保存できる基盤が出来上がった。
著者
志村 洋子 汐見 稔幸 藤井 弘義
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

乳幼児期の子どもの心身の健やかな発達にとって、音環境が重要な役割を果たしていることは、諸外国では保育室の音環境基準として内装建材に吸音材を使用することが義務付けられていることからも明らかである。しかし、我が国の保育所・幼稚園の保育室内の基準は、音に関しては室外から流入する交通騒音等の基準のみである。本研究は、子どもと保育者の活動を適切に支え、保育の質を保障しうる環境かどうかを、実際に保育室内の音響特性を反響環境から吸音環境に加工し、その加工前後の子どもの遊びやコミュニケーションの変化を観察し、また保育者の保育方法の変化のアンケート調査を行った。併せて保育者を対象としたオージオメータおよびOAEスクリーナによる聴力閾値測定を実施し、聴力が保育室音環境の評価に有効かについて検討を行った。その結果、保育室空間内の音環境測定を実施することは、子どもや保育者の騒音暴露量を知るための手がかりとなり、保育者の聴力計測が保育室内の音環境を評価するための手法となることが示唆された。