著者
勝見 さち代 村上 信五
出版者
医学書院
雑誌
耳鼻咽喉科・頭頸部外科 (ISSN:09143491)
巻号頁・発行日
vol.82, no.5, pp.137-143, 2010-04-30

Ⅰ はじめに 顔面神経麻痺の評価法には大きく分けて2つの方法がある。1つは顔面全体の印象を概括的に捉えて麻痺程度を評価する方法(gross system)で,もう1つは顔面表情の主要な機能を区分して幾つかの単位に分け,それぞれを個別に評価し,その合計で麻痺程度を評価する顔面部位別評価法(regional system)である。現在,臨床において汎用されている評価法は,gross systemではHouse-Brackmann法があり,regional systemでは40点法(柳原法)がある。前者は主に聴神経腫瘍術後の麻痺を対象として考案され,後者は主にBell麻痺,Hunt症候群による麻痺を対象としてわが国で考案された。また,後遺症評価に重点をおいたSunnybrook法もある。 本稿では,現在臨床的に用いられている代表的な評価法について解説する。
著者
渡邉 暢浩 高橋 真理子 宮本 直哉 村上 信五 井上 ひとみ 出口 正裕 関谷 芳正 井脇 貴子
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.354-359, 2006-12-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
9

HiRes 90K® Bionic Ear implantは米国アドバンスト・バイオニクス社の新しい機器であり, 米国食品医薬品局の承認を受け, 本邦以外の世界で採用されている。特徴として柔らかくしなやかで, 薄い形状であり, 手術侵襲が軽減されていることやこれまでの8チャンネルから16チャンネルに倍増していること, 新しいコード化法を取り入れていることなどが挙げられる。今回4名の中途失聴成人 (男性3名, 女性1名, 年齢64歳から74歳) に本機器を手術する機会を得, 特に術中, 術後に問題はみられなかった。軽度の浮遊感が続いた患者が1名みられたが, まもなくそれも消失した。4名のうち2名においてMAIS (Meaningful auditory integration scale) を行ったところ, 従来のプログラムであるContinuous Interleaved Sampler (CIS) やPaired Pulsatile Stimulation (PPS) よりもHiRes-SやHiRes-Pにおいて明らかに高い値を示した。結果として4名の患者はすべて新しいHiRes® sound processingを選択され, 従来のコード化法を選んだ患者は一人もいなかった。短期観察期間ではあるが, HiRes 90K® Bionic Earimplantは, 欧米での評価もあわせて効果の面でも安全性の面でも現在認可されている人工内耳より優れていると考えられた。
著者
堀 高志 藤岡 利生 村上 和成 首藤 龍介 末綱 純一 寺尾 英夫 松永 研一 糸賀 敬 村上 信一 柴田 興彦 内田 雄三
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.27, no.12, pp.2775-2781_1, 1985-12-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
27

胃憩室は消化管憩室の中では比較的稀なものであり,胃憩室の発生頻度は一般に0.01%から0.20%との報告が多い.胃憩室の多くは,噴門部小彎後壁寄りに発生し,体部大彎に発生するものは極めて稀である.また,大きさについては,広田らによれぼ2.1cmから3.0cmのものが最も多く,5.1cmを超えるものは6.9%にすぎない.更にその壁構造については,一般に真性憩室が多いとされている. 症例は48歳女性,胸やけ,心窩部痛,体重減少を主訴として入院した.上部消化管X線検査にて胃体部大彎側に巨大な憩室を認め,内視鏡検査にても同様の所見であった.保存的療法にても自覚症状改善しないために手術が施行された.憩室は11.5cm×8.0cmの大きさで,組織学的には仮性憩室であった.
著者
田中 方士 渡辺 隆 宮内 義浩 伊良部 徳次 村上 信乃
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.105-107, 1994-02-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
8

慢性腎不全で内シャントによる血液透析を受けている356例571手術につき, そのシャント閉塞の危険因子につき検討を行った. 検討した因子は, 手術時年齢, 性別, 原疾患, Ht値である.全体での5年開存率は68%, 10年では57%であった. 性別, Ht値は, シャント開存に関係なかったが, 原疾患 (糖尿病), 手術時年齢はシャント開存に影響を与えた.
著者
大杉 千尋 村上 信司 渡辺 嗣信
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.730-736, 2014-11-25 (Released:2015-01-10)
参考文献数
11

単一クローン性免疫グロブリン(M蛋白)は,免疫生化学検査の測定結果に様々な影響を与えることが知られている.今回われわれは,AST測定時の反応タイムコースの異常から,患者血清とAST第1試薬が反応して混濁を生じた症例を見出した.その症例における混濁の原因はIgM-κ型M蛋白であることを証明した.さらに他8社のJapan Society of Clinical Chemistry(JSCC)標準化対応試薬で患者血清を測定したところ異常反応を生じなかった.そこで,試薬成分の緩衝液に着目し,3種類の緩衝液における様々な濃度での患者血清との反応性を確認した.その結果,本症例の異常反応は現行AST試薬の低イオン強度によるものであると考えられた.
著者
安藤 研 布施 秀樹 島崎 淳 村上 信乃 松嵜 理
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.79, no.8, pp.1399-1405, 1988-08-20
被引用文献数
3 8

前立腺癌は経過中に組織学的分化度を変化し,再燃後には,低分化傾向がみられることを既に報告した(日泌尿会誌,74:989,1983).今回さらに症例を追加し,生検時と剖検時の病理組織像の比較を行なった.用いた37例は,全例癌死であり,いずれも内分泌療法が施行された.生検剖検問に取扱い規約による分化度の変化をみたものが9例,不変のものは28例であり,前者はすべて中分化型が低分化型となったもので,後者は中分化型12例,低分化型16例であった.低分化型で分化度の不変のものに内分泌療法無効例が多かった.生検剖検問で取扱い規約により不変とされた28例でもGleason scoreでみると,その40%は剖検時scoreが大となっていた.したがって内分泌療法後に再燃したものは,治療前に比べて,低分化傾向になるとみなせた.剖検時,転移部位の分化度は,多くは,原発巣と同じ分化度であった.
著者
五十嵐 辰男 村上 信乃 富岡 進 阿部 功一 井坂 茂夫 岡野 達弛 島崎 淳松 嵜 理
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.80, no.9, pp.1310-1315, 1989-09-20
被引用文献数
7 1

1978年1月より,1988年7月までに,千葉大学および旭中央病院泌尿器科で腎摘除術を施行した151例を集計した.偶然に発見された腎癌(「偶然発見癌」)は41例であり,受診動機としては他疾患治療中が28例,人間ドックが10例,集団検診3例であった.このうち,34例(82.9%)が超音波断層法で,4例がCTスキャンで,3例が排泄性腎盂造影で最初に発見された.「偶然発見癌」の腎癌全体に占める割合は,年次を経るにつれて有意に増加した(p<0.001).初診時または発見時,顕微鏡的血尿を認めたのは8例(19.5%)に過ぎず,スクリーニングとして検尿のみでは不十分で,超音波断層法も必要であると思われた.なんらかの症候を有する「症候癌」は102例,転移巣が最初に診断される「オカルト癌」は8例であった.「偶然発見癌」はこれらに比し有意にlow stage(p<0,001),low grade(p<0.001)であった.さらに,pT1〜2b,または長径10cm以下の症例において「偶然発見癌」の生存率は「症候癌」より良好であり(p<0.05),このような症例では腫瘍の早期発見による治療効果があったと思われた.
著者
丸岡 正幸 安藤 研 野積 邦義 安田 耕作 伊藤 晴夫 島崎 淳 松〓 理 村上 信乃
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.432-437, 1982-04
被引用文献数
1

千葉大学医学部泌尿器科と旭中央病院泌尿器科において治療を受けた前立腺癌284例の予後調査を行ない,内分泌療法を中心に集計した。各stage別の5年実測生存率は,stage A77%,B73%,C47%,D31%であった。初回治療として内分泌療法施行例は205例(stage A6例,B9例,C43例,D147例)であった。stage C・D施行例の5年生存率は各々50%,39%であり,stageDを,(1)ホルモン剤と去勢(103例),(2)ホルモン剤単独(24例),(3)去勢単独(20例),(4)内分泌療法未施行(21例)に分け,5年生存率を比較すると,各々,52%,29%,19%,8%と(1)群が最も良好な成績であった。さらに,ホルモン剤投与率の比較では, stageDの高投与率群(81例)と低投与率群(46例)の5年生存率は各々,41%,37%であった。予後に影響する因子として,(1)血清酸性フォスファターゼ,(2)組織型,(3)初回治療としてのTURを考えた。(1)は治療により1度でも正常化すること。(2)は高分化型になるほど予後は良く,(3)はstage Cは前立腺癌を悪化させるが,stage B,Dは予後に影響しないと現時点では考えた。死因は,stage D内分泌療法施行例で,前立腺癌死が第1位(75%),心血管障害死は全例4年稲井に起き,頻度も11パーセントにとどまり,内分泌療法施行時の障害にはならないと考えた。
著者
井坂 茂夫 岡野 達弥 島崎 淳 村上 信之 原 徹 片海 七郎 吉田 豊彦 長山 忠男 和田 隆弘 北村 温 香村 衡一 石川 堯夫 外間 孝夫 座間 秀一 佐藤 信夫 小寺 重行 川地 義雄 並木 徳重郎 梶本 伸一 伊藤 晴夫 皆川 秀夫 高岸 秀俊 村山 直人 真鍋 溥
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.83, no.10, pp.1662-1667, 1992-10-20
被引用文献数
4

日本において近年腎細胞癌患者数が増加してきていることが言われているが,人口動態の変化をもとにした発症率に関して最近の実情を報告したものはほとんどない.人口約500万人,手術設備のある25の泌尿器科を有する千葉県において,過去10年間の腎細胞癌患者の実態を調査した.郵送アンケート方式にて組織学的に確認された症例について検討した.調査項目は,性別,年齢,住所,職業,症状,発見のきっかけとなった検査法,手術日,腫瘍径,臨床病期などであった.22の施設から回答が得られ,1980年から1989年までの間に千葉県在住で560例が報告された.年間10万人当たりの発症率は10年間で0.32から2.07へと増加した.小さくて無症状かつlow stageの癌が急激に増加しつつあることが判明したが,転移病期のものの減少は認められなかった.腎細胞癌増加の主体は診断方法の発達による早期診断症例の増加であると考えられたが,なんらかの発癌因子が関与している可能性も否定できなかった.