著者
村上 祐子
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.354-355, 2017-04-15

アラン・チューリングは計算機科学の創設者の一人であることはいうまでもないが,理論生物学における形態形成の先駆者でもある.さらに,技術者倫理と軍事研究者の規範との衝突や,性嗜好による差別といった現代にもつながる倫理上の問題の当事者としても今後その存在は重要な参照先になるだろう.
著者
村上 祐 今泉 庸子 菊地 洋一 武井 隆明 Murakami Tasuku Imaizumi Youko Kikuchi Yoichi Takei Taka-aki
出版者
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13472216)
巻号頁・発行日
no.8, pp.81-87, 2009

「ルミノール発光」は日常よく耳にする言葉である。科学捜査を扱ったTVドラマで,化学薬品を散布して室内を暗くすると血痕部分が青白く光るシーンがよく出てくる。このような血痕の鑑識に使われる化学薬品が「ルミノール」で,ルミノールによる発光は「化学発光」と呼ばれる。化学発光は,物質内の化学結合の変化によって,高エネルギー状態(励起状態)から低エネルギー状態(基底状態)へ変わる際,その余剰のエネルギー分を光エネルギーとして放出するときに見られる現象である。ルミノールは,酸化されると励起状態を経て安定な物質に変わる。血液中のヘモグロビンはこの酸化反応に触媒として作用し,皮応を促進するので,血痕部分で発光するのである。これと似た機構で発光するものに,ホタルの発光がある。ホタルは,発光の元になる物質とその化学変化を助ける酵素を体内でつくっている。このときの化学変化も空気中の酸素による酸化で,ホタルが呼吸して酸素を取り入れるたびに光る。このように,生物がつくり出す物質が体内で反応して発光する現象を「生物発光」といい,夜光虫やホタルイカなど数多く知られている。1962年,下村修ボストン大名誉教授が光るオワンクラゲから発見した緑色蛍光タンパク質(GFP)も,発光物質の一つである。このGFPは生きた細胞中のたんぱく質の目印に使われ,現在では生命科学の研究に不可欠なものとなっている(下村氏は,GFPの発見により2008年ノーベル化学賞を受賞した。)。 化学発光の大きな特徴は,物質の反応を自らの発光で発信していることであり,観測者が目視によってそれを容易に確認できることである。このため,自然の科学現象の美しさ・不思議さを直接観察できる教材として,中学校や高校,あるいは大学初学年の学生実験等で取り上げられることが多い2-5)。さらに言えば,化学発光は,光を使った分析で最も一般的な吸光分析のように励起光を当てる必要はなく,適当な光検知器がありさえすれば,反応を精密に分析できる。これらの発光現象を単に目視だけの走性分析的に扱うだけではなく,身近に入手できる簡単な検知器を使って定量化・数値化することができれば,より深い理解が可能となり,学生・生徒の科学的興味・関心をいっそう高めることができると思われる。 本論文では,大学での学生実験や中高の生徒実験のための教材研究として,CdSセルとデジタルカメラを光検知器として用い,ルミノール発光を速度論的に追跡した結果を報告する。
著者
村上 祐介 時田 春樹
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11316, (Released:2017-09-06)
参考文献数
23

【目的】慢性期の脳卒中片麻痺患者に対して就労支援を行った経験について報告する。【症例紹介】症例は右片麻痺と失語症を呈した40 代の女性である。2012 年10 月,左の被殻出血を発症した。他院にて6 ヵ月間の入院リハ実施後,2013 年3 月に退院し,以後,当院外来リハが開始となった。来院時の移動能力は4 点杖利用下にて短距離歩行自立,その他は車椅子自走レベルであった。【経過】理学療法では,歩行能力の向上や公共交通機関の利用に関するリハを実施した。結果,T 字杖利用下での屋内外の歩行が可能となり、介入36 ヵ月目にはバスや電車の利用が可能となった。また,多職種とも連携を図り,結果として新規の就労が可能となった。【結論】就労支援の問題点は多岐にわたるため,個々の症例の問題点を把握し,包括的に支援することが重要と思われた。
著者
村上 祐子
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.155-163, 2018
被引用文献数
1

本稿では,人工知能の倫理に関して国内外のガイドライン検討状況をまとめた上で,背景となる倫理学の論点を概説する.
著者
久木田 水生 神崎 宣次 村上 祐子 戸田山 和久
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

28年度においては、主に次の調査・研究を行った。(1) 心理学、人類学、認知科学などの自然科学の諸分野における、道徳性に関する近年の研究について調査・研究。(2) 人工知能の分野における倫理や道徳に対する取り組みについての調査と検討。(3) 伝統的な倫理学において道徳性というものがどのようにとらえられてきたということについて調査。これらは本科研の主要な目的である、近年の科学の成果に基づいて道徳性の概念をアップデートして、新しい道徳性のモデルに基づく人工的な意思決定システム、行為システムをデザインするということに直接つながる調査である。上記の調査・研究の結果として以下のことが明らかになった。すなわち人間の道徳性は、霊長類など他の社会的な動物や、また言語を話す前の幼児にも見られる、協力的な行動・利他的な行動を選好する態度にすでにその萌芽が現れている。このことは従来の倫理学が考えてきた、「十分な理性的能力を有する人間(典型的には成年に達した人間)に特有のもの」ではないことが示唆される。その一方で人工知能の分野においては、技術の進展が目覚ましく、またその進歩の勢いに不安を抱く人々も多い。そこから「人工知能の倫理」、あるいは「ロボットの倫理」、「ロボット倫理学」というテーマが注目されている。そしてそれに即した研究の中には、人工知能やロボットに人間や社会の価値を反映させるということを目標としているものも多く、本科研の研究の方向性が社会的な重要性を持つものであることが確認できた。
著者
久利 美和 村上 祐子
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

初年度初年度は,研究機関およびその助成金を活用しての直接的または間接的に科学普及活動に従事する人材の意識調査、就業形態、また実施される企画の有償かの可能性について聞き取り調査を行い、キャリアパスとして必要な視点が、報酬体系の確立と評価手法についてであることが明らかとなった。次年度は、研究管理の観点で関連業務者の報酬体系の実態に焦点を当てるとともに、報酬体系の根底にある概念についても意見抽出を行った。また、海外の事例を含めた検討会を国際会議の場で行った。
著者
大谷 卓史 村上 祐子 川口 由起子 川口 嘉奈子 永崎 研宣 坪井 雅史 吉永 敦征 芳賀 高洋
出版者
吉備国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究においては、①最新の社会・技術動向に照らして大学教養課程向けの情報倫理学教科書を改訂して基本的な情報倫理学概念を確認し、②情報倫理学の歴史を整理し、あわせて、③プライバシーと自己決定権に関する議論を概観したうえで、④ソーシャルメディアによる個人をターゲットとした世論操作の可能性や、⑤サーチエンジンの検索結果表示アルゴリズムなどによるプライバシーや自律への影響の問題などの考察を行った。これらの成果を踏まえ、研究成果の一部を書籍として刊行した。同書『情報倫理-技術・プライバシー・著作権』(みすず書房)は、公益財団法人電気通信普及財団第33回(2017年度)テレコム社会科学賞奨励賞を受賞した。
著者
田口 紀子 増田 真 永盛 克也 吉川 一義 杉本 淑彦 多賀 茂 王寺 賢太 アヴォカ エリック 辻川 慶子 村上 祐二
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

フランスにおける、「文学」と「歴史」という二つの隣接ジャンルの美学的、認識論的境界の推移と、具体的文学作品での歴史認識の表出を、17 世紀から 20 世紀までのいくつかの特徴的局面に注目して検証した。2011 年 11 月には国内外から文学と歴史の専門化を招いて日仏国際シンポジウム「フィクションはどのように歴史を作るかー借用・交換・交差」を京都日仏学館で開催した。その内容を来年度を目途にフランスで出版するべく準備を進めている。
著者
野家 啓一 座小田 豊 直江 清隆 戸島 貴代志 荻原 理 長谷川 公一 原 塑 北村 正晴 村上 祐子 小林 傳司 八木 絵香 日暮 雅夫 山本 啓
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

討議倫理学に基づく科学技術の対話モデルを作るために、科学技術的問題をテーマとする対話を実践し、そこから理論的帰結を引き出す研究を行った。その結果、以下の成果がえられた。1. 高レベル放射性廃棄物の地層処理に関する推進派と反対派の対話では、合意にいたることは困難だが、対話を通じて、理にかなった不一致に至ることは重要性を持つ。2. 推進派専門家と反対派専門家が論争を公開で行った場合、その対話を一般市民が聴いて、めいめい自分の見解を形成することがあり、このことが対話を有意義にする。3. 対話を成功させるためには、信頼や聴く力、共感のような習慣や徳を対話参加者がもつことが重要であり、このような要素を討議倫理学の中に取り込んでいくことが必要である。4. 対話では、価値に対するコミットメントを含む公正さが重要で、追求されるべきであり、それは、価値に対する実質的コミットメントを持たない中立性とは区別される。
著者
村上 祐子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.2-6, 2009-01-01
被引用文献数
1

e-リサーチとは,電子データをネットワークを介して共有し,シミュレーションなどの処理を行って新たなデータを得ることによって,理論を展開する科学研究の方法論である。理工医薬系が主たるフィールドであるように思われているが,人文社会系でも研究データの共有から新たな検索ツールの開発,またGISなど,さまざまな試みが行われている。小論では,日本国内での例をとりあげ,今後の展開を予想するとともに,学術図書館の役割を再考する。
著者
佐藤 明子 高橋 治 菊地 洋一 村上 祐
出版者
日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.21-27, 2006-01-31
被引用文献数
8

原子の構造やイオンを初めて学習するのは何歳で,どのようなレベルの内容を学習しているか,海外の教科書の比較研究を行った。調査した教科書は英国,フランス,ドイツ,イタリア,スロバキア,インド,中国,台湾,インドネシア,アメリカの計10か国の中学のものである。その結果,内容のレベルは国によって様々であるが,原子の構造やイオンは13〜14歳で初めて学習する国が多いことがわかった。そして,多くの場合,イオンは基本粒子として,原子の構造の直後に学習されている。また,周期表もほとんどの国で13〜14歳で扱われ,原子の構造,イオンの学習に活かされていることもわかった。原子の構造,イオンは,中学段階の学習で大きな役割を果たし,この段階でそれらを学習することが適切であることがわかる。