著者
飯干 寛幸 松本 康太郎 鵜川 始陽
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2020-OS-148, no.2, pp.1-10, 2020-02-20

近年,電源が失われても内容が保持されるメモリとして不揮発性メモリ(NVM)が市場に登場した.NVM を使ったシステムでは,データがキャッシュから NVM に書き出されて初めて永続化される.そのため,いつ電源が失われても良いように,常に NVM 上のデータの整合性を保つための方法が研究されている.その中には,個々のデータ構造を NVM に対応させるアプローチと,汎用のデータ構造を永続化するためのシステムを開発するアプローチがある.本研究では,NVM を使ってデータ構造を永続化するためのシステムである NV-HTM の評価を行った.そのために,NV-HTM を使い永続化した B+-木と,B+-木を NVM に特化させた FPTree の性能を比較した.NV-HTM は性能評価用の DRAM を用いたエミュレータを使うソースコードしか存在しなかったため,実機で動作するように修正が必要だった.FPTree もアルゴリズムの記述から実装する必要があった.これらを実装して比較したところ,NV-HTM は FPTree に比べて遅く,スレッド数を増やしても 4 スレッドまでしかスケールしなかった.そこでさらに,NV-HTM の性能ボトルネックを詳細に調査した.
著者
松本 康博
出版者
日本歯科医史学会
雑誌
日本歯科医史学会会誌 (ISSN:02872919)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.230-234, 2004-09-30
参考文献数
14
被引用文献数
3

幕末から明治初期に発行された英字新聞とDirectoryを用いて,来日した外国人歯科医師の動向を検討した.最初の来日外国人歯科医師であるEastlakeの初来日は1865年9月27日で,1866年5月26日に横浜を出港しており,この間,横浜の山下居留地の108番で診療を行っていたことが明らかになった.
著者
日向 進 矢ケ崎 善太郎 松本 康隆
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住宅総合研究財団研究年報 (ISSN:09161864)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.239-250, 2004 (Released:2018-05-01)

本研究は西洋建築技術が流入しはじめた近代という時代,その対極に位置したと思われる茶室建築をつくり続けた木津宗詮と笛吹嘉一郎の建築活動を考察したものである。二人は自らも新しい技術を体得しながら近世とは趣きの異なる茶室を造っていた。また,二人の作風には違いが見られたが,それは時期的な違いからきたものであると理解することができた。二人の建築活動は,近世から続く茶道という文化を近代の新しい社会において活かし続けていく,一つの流れによって捉えることができた。
著者
五十嵐 暁郎 田島 夏与 松本 康 石坂 浩一 藤林 泰 イ ヒョンジョン ユン イルソン 金 相準 李 国慶 武 玉江
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

都市空間の再編が進む日中韓の北東アジア3国の大都市について実証的、理論的な分析を行った。3国の状況について現地調査や、研究者に対するヒアリングを行って状況を把握した。理論的には、グローバル都市、居住者意識、コミュニティ、住民運動、市民参画、創造都市など、社会科学的分析視角によるアプローチを行った。シンポジウムなどを重ねることによって、こうして獲得した理解を検討し、この主題に関する分析をまとめた。この主題について社会科学的なアプローチは少なかったが、今後の展開にとって先駆的な研究を示すことができたと思う。
著者
松本 康志
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.79-88, 2017-05-01 (Released:2017-05-01)
参考文献数
6

気象情報は社会の基盤的な情報として,防災対応から日々の生活などのさまざまな分野で活用されている。気象庁は,スーパーコンピューターの計算能力向上を基盤にした精緻な数値モデル開発等による予測精度の向上と,ひまわり8・9号の観測データ等のビッグデータや対象区域の細分化によるきめ細かい気象情報をはじめとする新たな情報提供など,さまざまに充実を図ってきた。同時に,「気象庁防災情報XMLフォーマット」の策定など,気象情報を社会により広く,よりわかりやすく提供し,活用を促進する方策も講じてきた。近年の情報通信技術(ICT)の飛躍的な発展に伴い,即時的,自動的な情報処理による高度な利用が期待される。そのため,IoTなどに関する有識者や幅広い産業界の企業・団体からなる「気象ビジネス推進コンソーシアム」を2017年3月7日に発足させ,気象情報を活用して社会の生産性の向上を目指す取り組みを新たに開始した。
著者
松本 康
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.147-164, 2005-06-30 (Released:2009-10-19)
参考文献数
17
被引用文献数
5 4

Fischerの「下位文化理論」が都市における友人関係の興隆を予測して以来, 日本では都市度と友人関係に関する多くの調査研究がなされてきたが, その結果はまちまちであった.本稿では, 2000年に実施された名古屋都市圏調査のデータを用いて, 都市度と友人関係に関する経験的・理論的争点を検討する.分析の結果, 「友人興隆」仮説に反して, 友人数は都市度が増すにつれて減少していた.それは主に地元都市圏出身者が, 都市的地域で地元仲間集団を衰退させていたからである.しかし, 彼らの中距離友人数は, 都市度が増すにつれて増加していた.また, 遠距離友人数は, 都市度とは無関係で, 回答者の移動履歴の影響をうけていた.多くの経験的関連が移動履歴によって条件づけられていたという事実は, 社会的ネットワークの「選択-制約」モデルよりも「構造化」モデルを支持するものである.後者は, 諸個人の移動履歴によって関係資源の地理的分布が異なり, 都市圏内部に関係資源を豊富にもつ場合にのみ, 友人関係の再生産は都市度に影響されると強調する.さらにマクロにみると, 都市化の初期段階では, 移住者が多いために, 都市圏内部の社会的ネットワークは希薄であったかもしれないが, 一世代後には, 地元都市圏出身者の増大によって, 中距離友人ネットワークが増大すると推測される.こうして本研究は, アーバニズム理論に時間的・空間的視点を提供するものである.
著者
遠藤 英徳 藤村 幹 松本 康史 遠藤 俊毅 佐藤 健一 新妻 邦泰 井上 敬 冨永 悌二
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.7, pp.514-521, 2018 (Released:2018-07-25)
参考文献数
34

頚動脈狭窄症に対する外科治療の是非に関して, これまで数多くのランダム化比較試験 (RCT) が行われてきた. 古くは, 内膜剝離術 (CEA) と内科治療を比較したRCT, その後CEAと頚動脈ステント留置術 (CAS) を比較したRCTが行われ, その結果に基づいて治療ガイドラインが作成された. 症候性高度狭窄に対してはCEAもしくはCASの有効性が示されているが, 内科治療が発展した現在においては, 無症候性病変に対する外科治療の有効性検証が課題である. 今後は, 外科治療の危険因子を抽出し, 治療対象を明確化していく必要があるとともに, 術者教育環境を整え, 治療成績の維持・向上に努める必要がある.
著者
小林 泰輔 暁 清文 柳原 尚明 松本 康 町田 敏之 堀内 譲治
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.86, no.3, pp.321-327, 1993-03-01 (Released:2011-11-04)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

Case 1: a 59-year-old male with a one-year history of diabetes mellitus complained of right sudden deafness with vertigo. Otoneurological examinations showed sensorineural hearing loss of the right ear and bidirectional horizontal gaze nystagmus. MRI revealed infarction of the right cerebellar hemisphere indicating occlusion of the anterior inferior cerebellar artery (AICA). With conservative treatment his hearing returned to the contralateral ear level. Case 2: a 49-year-old female who complained of right sudden deafness with vertigo and ipsilateral facial palsy. Audiometric studies showed total deafness on the right. Bidirectional horizontal gaze nystagmus, together with V, VII, IX and X cranial nerve palsies were recognized. CT and MRI proved infarction of the right cerebellum and pons. Her hearing improved only partially. Other neurological signs disappeared within eight months. Case 3: a 54-year-old male with a history of hypertension and angina pectoris complained of right sudden deafness with dizziness. Right sensorineural hearing loss and spontaneous nystagmus toward the left were noted. His hearing improved on the next day. Two days later, however, he lost consciousness. CT showed no abnormality, but angiography revealed occlusion of the basilar artery.These three cases showed the importance of differential diagnosis between acute hearing loss due to cerebral infarction and idiopathic sudden deafness. We emphasize the diagnostic importance of risk factors such as hypertension and diabetes mellitus and the sign of vertigo with nystagmus of central origin in cases of cerebral infarction.
著者
片江 祐二 島田 佳宏 松本 康二郎 近藤 秀臣 森 俊陽 西田 茂喜 安田 学 花桐 武志
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.189-190, 2018-03-25 (Released:2018-05-21)
参考文献数
5

【目的】当科を初診した転移性骨腫瘍症例の特徴と必要な検査について検討した.【対象と方法】2012年からの5年間に新小倉病院で転移性骨腫瘍と診断され,カルテベースで後方視的に調査しえた132例のうち,悪性腫瘍の既往がなく整形外科受診時に転移性骨腫瘍が明らかになった9例(全例男性,60-88歳[中央値76歳])を対象にした.検討項目は,①初診時の主訴,②罹患骨,③腫瘍原発巣,④原発腫瘍検索方法,⑤原発腫瘍同定率である.【結果】①初診時の主訴は腰痛・背部痛が7例,②罹患骨は脊椎が8例で最も多かった.③腫瘍原発巣は前立腺癌4例,肺癌3例であった.④⑤原発腫瘍検索は,体幹部CT検査が9例で,その同定率は77.8%であった.【考察】整形外科を初診する70歳以上の男性では転移性骨腫瘍の可能性を念頭におく必要があり,原発腫瘍の検索には体幹部CT検査(造影含む)が簡便かつ非侵襲的で考慮すべき検査と考えた.
著者
片江 祐二 島田 佳宏 松本 康二郎 近藤 秀臣 森 俊陽 西田 茂喜 山下 信行 山元 英崇
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.185-188, 2018-03-25 (Released:2018-05-21)
参考文献数
14

【症例】77歳,女性.主訴:なし.現病歴:約2ヵ月前当院呼吸器外科で肺腫瘍を疑われた.PET-CTで左大腿骨に集積を認め,骨転移を疑われ当科紹介受診となった.肺腫瘍は生検で炎症性病変であり,大腿骨CTでは異常を認めなかったため,大腿部の骨生検は行わなかった.初診5ヵ月後のMRIで大腿骨の病変の増大を認め,腰椎MRIでは年齢の割には脂肪髄が少なかった.内科受診し,血液検査でM蛋白,尿中Bence Jones(以下BJ)蛋白は検出されなかったが,κ/λFLC比の異常を認め,γ-グロブリンは低値だった.胸骨生検を行い,病理診断と臨床像を合わせて非分泌型多発性骨髄腫と診断された.現在,血液内科で薬物治療中である.【考察】非分泌型多発性骨髄腫は多発性骨髄腫の数%の稀な疾患である.血清M蛋白や尿中BJ蛋白は検出されず,診断確定までに時間を要することが多い.原発不明の多発性骨病変があり,MRIで年齢の割に脂肪髄の減少をみたときは骨髄腫を考え,非分泌型も念頭に置くべきである.
著者
田鶴 寿弥子 松本 康隆 中山 利恵 杉山 淳司
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.110-116, 2019

<p>従来の茶室建築研究は,様式,構造,意匠,変遷などに重きを置いたものが多く,使用されている部材の樹種については数寄屋大工や建築家の目視に頼ったものや伝承によるものを主としていた。近年,樹種識別の重要性が周知され,茶室における科学的な樹種調査がようやく行われつつある。本研究では,数寄屋大工笛吹嘉一郎による三重県伊賀市に位置する芭蕉翁故郷塚「瓢竹庵」に注目した。瓢竹庵では,嘉一郎自筆と考えられる茶室見積書が現存しており,柱や構造材,天井や床など,計画段階での部材ごとの樹種や数量などが74点について記されている。本研究ではそのうち32部材について樹種調査を行い,当時の用材観ならびに材料変更について明らかとすることができた。</p>
著者
李 百浩 Li Baihao 松本 康隆 Matsumoto Yasutaka
出版者
神奈川大学日本常民文化研究所 非文字資料研究センター
雑誌
非文字資料研究 = The study of nonwritten cultural materials (ISSN:24325481)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.63-80, 2016-09-30

This paper will outline the history of the former Nanjing Shrine―parts of whose hallof worship and shrine office still remain―from the perspective of the architectural history of Nanjing City, and discuss reasons why parts of the shrine have been preserved. Before the shrine was erected, Mount Wutai, or Qingliang Shan, was an educational district where construction of a stadium and a conference hall was planned. In 1939, after Japan occupied the region, it was decided that a shrine be built in the area. Land was acquired for this purpose in 1941, and construction started in 1942, followed by a ceremony to summon the spirit of a deity called Chinza-sai in November 1943. The construction was completed in 1944. Gokoku Shrine was built next to Nanjing Shrine around the same time. After Japan's surrender, Nanjing Shrine was turned into a memorial hall for heroes of national resistance, and Gokoku Shrine became a pillage exhibition center. The Mount Wutai area came to serve its original function as an educational district ; consequently, the plan to build a stadiumwas revisited, leading to its construction after the People's Republic of China was founded. The former Nanjing Shrine came under the management of the Sport Bureau of Jiangsu Province, causing it to be used as a facility for table tennis, the bureau's senior activities and meetings. Later, the shrine faced the danger of possible demolition due to the need to collect cypress bark for paper production in 1958 and housing construction in 1985. Nevertheless, university professors called for its preservation. It is unknown until when its inner shrine remained intact and when Gokoku Shrine was torn down. Of all of Nanjing Shrine's structures, only its hall of worship and office remain. Four reasons why they have not been destroyed are in chronological order as follows : they are of high quality in terms of structure and space ; the inner shrine started to be used as a war memorial hall because shrines and such memorial halls both enshrine holy spirits ; the shrine lost its original function upon the foundation of People's Republic of China but maintained its value as a usable structure ; and a plan in 1985 to tear down the shrine arose from a decrease in the value of onestory structures in response to accelerated urban congestion after China's reform and opening up. Conversely, the shrine started to be viewed as a historical heritage.論文