著者
板倉 陽一郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告電子化知的財産・社会基盤(EIP) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.128, pp.9-14, 2006-11-30

昨今,ブログやSNSが「炎上」したとの報道が後を断たない。「炎上」状態にあっては,民事・刑事的に名誉毀損にすら該当する批判的書き込みが溢れ返り,情報発信源は①閉鎖,②意見欄停止,③放置,などの対応を余儀なくされる。しかしながら,民事・刑事的な対応は稀である。本稿は,炎上状態の背景には「意図せぬ公人化」現象があると考える。「公人」概念を扱った裁判例の分析により,「公人」概念は幅を持ち,私人が「公人性」を備えることで名誉毀損からの保護が減弱するとの帰結が得られる。そして,「意図した公人化」と異なり,「意図せぬ公人化」においては保護減弱が不当であることを明らかにし,対応策として「公人」概念の不適用と名誉毀損罪の非親告罪化を提案する。These days, there is much news that blogs and SNS profiles are "burned". On "burned" blogs and SNS profiles, many libelous comments are posted, owners of them are forced 1)closing, 2)stopping space of comments, or 3)giving up. However, they scarcely institute civil action, or accuse them. In this paper, "Unintended being public figure" is supposed as a background of "burning". From Cases about "public figure", we can find that a concept of "public figure" has width, and to be "public figure", private figure lost protection from libels gradually. In the case of "Unintended being public figure", to lost protection is injustice, a concept of "public figure" must not be applied, and libel should not require accusation.
著者
辻本 芳郎 板倉 勝高 井出 策夫 竹内 淳彦 北村 嘉行
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.35, no.10, pp.477-504, 1962-10-01 (Released:2008-12-24)
参考文献数
19
被引用文献数
3 1

本研究は目本の工業を空間的配置の上から研究することをこころざしたものである.まず,最大の工業地帯である京浜の中核である東京都区内の分析を行なつた. 1958年末現在で都内30人以上の全工場を重化学工業・組立工業・軽工業の3部門にわけて考察した. 概観して,中小工場が多く,鉄鋼・化学・繊維などの基礎的原料部門にかけている.〈重化学工業〉城東・城北・城南に多いが,河川・運河ぞいのわつかの部分をのぞき,重量物をあつかうものは少く,雑貨工業か組立工業の一部とみとめられるものが多い.〈組立工業〉城南・城北の2大核心地域をもつが雑貨的耐久消費財の生産が主である.〈軽工業〉各種の問屋の集中地域である日本橋と,浅草を核として城東地域に卓越し,印刷出版は中央地域に集中している.これを総合すると雑貨の多い城東・中央の躯幹部分と,戦中戦後飛躍的に発達した組立工業を主とする城南・城北と,西郊に成立しつつある環状分布の地域に分けられる.いつれも同一製晶をめざした同業・関連業種の工場が割合せまい地域に集つている. これらの工場は,手労働を主とした雑貨的商品が多く製晶ごとめ問屋的生産組織が無数の小営業者を統括しているのが特色である.
著者
大賀 光太郎 板倉 賢一 出口 剛太
出版者
石油技術協会
雑誌
石油技術協会誌 (ISSN:03709868)
巻号頁・発行日
vol.77, no.6, pp.435-437, 2012 (Released:2014-03-29)
参考文献数
1

In our laboratory, fundamental tests on underground coal gasification (UCG) by using coal blocks were conducted for several years. Last year, a small scale field test on UCG was carried out at a part of developing area of Mikasa surface mine in Hokkaido.At the field, two bore holes were drilled, one is incline bore hole and the other is vertical bore hole. The lengths of incline bore hole and vertical bore hole were about 5m and 1.4m, respectively. The vertical bore hole was used for an oxygen injection hole and ignition hole. The incline bore hole was used for a gas production hole. Some temperature sensors were installed around the incline bore hole to measure the temperature of around the production bore hole. AE sensors were also installed around the incline bore hole to estimate the gasification zone in the coal seam. Underground Coal Gasification (UCG) demands precise evaluation of the combustion area in the coal seam. Especially, the monitoring of fracture activity in the coal seam and around rock is important not only for efficient gas production but also for estimation of subsidence and gas leakage to the surface. The test was carried out for forty hours and production gases were analyzed at every thirty minutes.Experimental results obtained showed that the combustion propagated along the linking hole inside coal seam. The temperature gradients inside the coal and the composition of production gas were changed under constant oxygen flow rate. But Average thermal value of generated gases by field test was about as much as generated gases by laboratory test.
著者
板倉 文忠
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.3_25-3_30, 2010-01-01 (Released:2010-10-01)
参考文献数
6
被引用文献数
1

音声信号に対する最も重要な分析方式であるLSP(線スペクトル対)発明の経緯について述べる.PARCOR(偏自己相関)係数方式及びLSP方式は,音声の周波数スペクトル,すなわち声道(口の形)を表現する方法である.これらの方式はいずれも世界中の携帯電話で使われ続けている.PARCOR方式及びLSP方式は,それぞれ,1969年,1975年に日本電信電話公社電気通信研究所(通研)において発明された.本稿では,これらの方式の誕生の経緯を明らかにするために,その出発点(1966年)となった最ゆうスペクトル推定法による音声分析合成方式(ML方式と略す)までさかのぼって紹介する.
著者
板倉孝 著
出版者
法律常識研究会
巻号頁・発行日
1921
著者
板倉 陽一郎
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.846-849, 2015-08-15

2015年10月から,マイナンバーが住民票を有するすべての者に通知され,2016年1月から利用が開始される.すべての国民は,マイナンバーの利用から逃れることはできないが,マイナンバーの利用は厳格に規律されており,マイナンバー法に定められていない取扱いを行えば,直ちに違法となる.マイナンバーは①利用しないことが許されず,②取扱いを誤れば違法の評価を受けるものであり,しっかりとした予備知識を持たなければIT技術者にとって非常に危険な地雷となり得る.本稿では,以下,本誌読者が常識として知っておくべき①マイナンバー制度の概要,②施行スケジュール,③必要な準備(制度面),④必要な準備(システム面)を概観することとする.
著者
板倉 陽一郎
雑誌
研究報告電子化知的財産・社会基盤(EIP)
巻号頁・発行日
vol.2013-EIP-61, no.28, pp.1-8, 2013-09-04

復興庁職員によるツイッターでの不適切発言事案が発生したことから,総務省は,同様の事案の再発防止を期する観点から、各府省庁等に対して職員の服務規律の徹底を求めるとともに、「国家公務員のソーシャルメディアの私的利用に当たっての留意点」 を取りまとめ、各府省庁等に対して、これを参考に職員への周知徹底を行うほか、必要に応じて、内規の制定、研修の実施等を行うよう求めている。本発表では,同取りまとめの意義を,具体的事例を交えて解説するとともに,その影響等につき考察する。
著者
熊谷 雄介 板倉 陽一郎 見並 良治 猪谷 誠一 道本 龍
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第35回 (2021) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.2D3OS7a01, 2021 (Released:2021-06-14)

さまざまな大規模データセットが企業や大学によって公開され,それらを用いた研究や開発が行われている.また,深層学習フレームワークの発展によってデータセットのみならず学習済み統計モデルも広く公開され,利活用が進んでいる.それらの資源には多くの場合さまざまなライセンスが指定されているが,一般の研究者がそれを意識することはまれである.しかし,データセットや学習済み統計モデルを用いた商用システムやソリューションの開発を行う際には,どの用途であればライセンス違反になるのか,またはならないのかを十分に検討しなければならないが,既存研究においては明らかにされておらず,各社の判断において行われているのが現状である.そこで本研究では,データセットと学習済み統計モデルを用いた研究やビジネスのより安心・安全な実現を手助けするために (1) 代表的なデータセットや学習済み統計モデルのライセンスを確認し,(2) データセットや学習済み統計モデルのユースケースを列挙し, (3) ライセンスとユースケースの組み合わせについて何が可能で何が不可能か,の3点を検討した.
著者
池田 彩夏 魚里 文彦 板倉 昭二
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.288-298, 2019 (Released:2021-12-20)
参考文献数
18

幼児の危険認知の発達をどのように促すべきかは,発達心理学における課題の1つである。幼児への効果的な教育方法として,多くの研究が絵本の読み聞かせを取り上げているものの,防犯教育への絵本の読み聞かせの効果に関しては,直接的な検討はされていない。そこで,本研究では,絵本の読み聞かせが幼児の危険認知の発達を促すかを検討した。さらに,絵本による教育効果と共感性の関連を併せて検討した。4~6歳児を対象に,仮想場面において,未知人物から誘われた際に回避行動を取るか否かの選択,および,その行動理由を尋ねる課題を実施し,絵本の読み聞かせ前後での課題得点を比較した。分析の結果,適切な回避行動および行動理由の回答は読み聞かせ後に増加しており,特に年長児に対し行動理由を尋ねる課題において,読み聞かせの効果が顕著であった。また,共感性と読み聞かせの効果との関係を検討したところ,共感性が高い子ほど,読み聞かせによる危険認知課題の得点の上昇が大きい傾向があった。考察では,絵本の読み聞かせ効果の発達的変化および本研究成果の応用的側面について議論した。
著者
奥村 優子 鹿子木 康弘 竹内 祥惠 板倉 昭二
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.248-256, 2014 (Released:2014-08-25)
参考文献数
40
被引用文献数
3 3

Recent research demonstrates that social preferences for native language speakers emerge early in development, indicating that infants prefer speakers from their own society. Dialect may also be a reliable cue to group membership because it provides information about an individual’s social and ethnic identity. We investigated whether infants showed social preferences toward native-dialect speakers over those with unfamiliar dialects. Infants at 9 and 12 months of age were shown videos in which two adults (a native-dialect speaker and an unfamiliar-dialect speaker) each spoke to and then offered an identical toy to the participating infants. Next, two real versions of the toys were presented to the infants in person. The 12-month-old infants preferentially reached for the toy offered by the native-dialect speaker. The 9-month-old infants also showed a preference for native-dialect speakers but this finding was not statistically significant. Our results suggest that dialects may be a reliable cue to group membership, and that infants’ orientation toward members of their native community may guide their social and cultural learning.
著者
板倉 陽一郎
出版者
情報ネットワーク法学会
雑誌
情報ネットワーク・ローレビュー (ISSN:24350303)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.35-46, 2018-11-29 (Released:2020-01-16)

AR(拡張現実)とは、視界全面には及ばない現実世界に仮想の情報を重ね合わせる技術であり、ARの代表的なアプリケーションとしてポケモンGOが存在する。ポケモンGOでは、ポケストップやジムといったゲーム内の拠点が、現実世界のランドマーク等をAR空間内にプロットすることで置かれているが、ポケストップやジムを目当てにプレイヤー(トレーナー)が集まり、土地所有権等への侵害を生じさせることがある。所有権者としてはポケストップ及びジムをAR空間内から削除しようとする、すなわちARに対してコントロールしようとすることになるが、法的根拠としては1)所有権アプローチが効果的であるとみられる一方、2)人格権アプローチでは権利行使が困難であることが考察された。
著者
板倉 昭二
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.262-266, 2006-07-01 (Released:2011-12-12)
参考文献数
14

他者の心的状態を見出したり推論したりすることをメンタライジングという. メンタライジングは, 人が円滑な社会的生活を営む上で重要な能力となる. メンタライジングの萌芽は, 乳児期初期の社会的知覚だと考えられる. すなわち, 人に対する志向性から始まり, 母子関係に代表される二項関係, さらに第三者もしくは対象物を含む三項関係の成立, そして他者の誤信念を理解する「心の理論」の成立へと続く. 本稿では, こうしたメンタライジングの発達を, 人に対する志向性, 人以外のエージェントに対する目標志向性の帰属や意図の理解, 誤信念の帰属について, われわれの実証的な研究を概略する.
著者
板倉 陽一郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.28, pp.1-8, 2013-09-04

復興庁職員によるツイッターでの不適切発言事案が発生したことから,総務省は,同様の事案の再発防止を期する観点から、各府省庁等に対して職員の服務規律の徹底を求めるとともに、「国家公務員のソーシャルメディアの私的利用に当たっての留意点」 を取りまとめ、各府省庁等に対して、これを参考に職員への周知徹底を行うほか、必要に応じて、内規の制定、研修の実施等を行うよう求めている。本発表では,同取りまとめの意義を,具体的事例を交えて解説するとともに,その影響等につき考察する。Followed by the careless tweet case by the official of Reconstruction Agency, Government of Japan, Ministry of Internal Affairs and Communications, Government of Japan (MIC) announced government agencies for the compliance of rules for officials and published "Points for attention for personal use of social media by government officials". MIC required government agencies to refer this "Points", set internal rules and have in-house trainings. This paper examines the "Points" with cases and considers the impact of it.
著者
板倉 数記
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.148-156, 2004-03-05
被引用文献数
1

「陽子は3つのクォークからできている」という一般的な"常識"は,強い相互作用の基礎理論である量子色力学(QCD)に根差した現在の理解からすると,甚だ曖昧で不正確なものである.実際,非常に高いエネルギーでの散乱で弱結合理論になるQCDは,この素朴な"常識"からはほど遠い陽子の姿を予言する.すなわち,高エネルギーの極限では,陽子は「グルオン」というクォークとは異なる構成要素が高密度に飽和した状態になり,この現象は陽子に限らず,如何なるハドロン(陽子,中性子などのバリオンと中間子の総称)にも,原子核にも現れる普遍的なものである.この状態は,あたかもガラスのようにゆっくりと変化するランダムな「色」の荷電分布を背景にして,「色」を持つグルオンがボーズ凝縮のように高密度に凝集したものであるので,「カラーグラス凝縮」と呼ばれている.本橋では,この「カラーグラス凝縮」の生成過程と性質,記述方法,実験的証拠の有無などについて,最近の理論的発展を解説する.
著者
斎藤 嘉人 宮川 璃空 村井 匠 小畑 悠 板倉 健太 佐藤 翼
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
AI・データサイエンス論文集 (ISSN:24359262)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.215-222, 2023 (Released:2023-11-14)
参考文献数
24

大豆の種子選別は時間と労力を要す作業であり,一農家が利用できる安価で簡便な選別機が求められている.本研究では,カラー画像および紫外励起蛍光画像の2種類の画像の入力による大豆の欠陥判別を目的とした.大豆種子のカラー画像と励起波長365 nmの蛍光画像をそれぞれ撮影し,目視にて正常粒・しわ粒・裂皮粒・病虫害粒の4カテゴリにラベル付けを行った.カラー画像,蛍光画像,カラー・蛍光画像同時入力の3パターンの入力によりResNet-50でモデルを構築した結果,テスト精度はそれぞれ91.7%,88.2%,88.3%であった.また,カラー・蛍光画像同時入力モデルでは正常粒の適合率が最も高く,判断根拠を可視化した結果,病斑のない健全箇所が重視されていた.以上より,従来のカラー画像に蛍光画像を組み合わせた判別手法が有効である可能性が示唆された.