著者
征矢 智美 野村 美佳 林 照次 長谷川 敬
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.115-124, 2004-06-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
10
被引用文献数
1 4

「肌の透明感」は女性の肌状態, 肌意識に関するアンケート調査や化粧品使用前後の指標に多く使用される重要なキーワードであるが, 「透明感」が具体的に肌のどのような状態を指すかについては明確ではない。そこで, 本研究では最初に若年層と中高年層を対象に「透明感のある肌」に対する重要度調査と他の肌表現語との関連度調査を行った。その結果, 「透明感のある肌」の重要度は, 若年層では最高位であるのに対し中高年層では肌荒れしていない等の肌悩みの方が重要視されていた。反面, 「透明感のある肌」は, 肌のキメや色, うるおいなどの三つの要素を基本要件とする複合概念であるという点で両年代に差異はなかった。次に, 両年代の評定者が同じ若年モデルを観察したときの「透明感」の主観判断とモデルの実際の皮膚生理的特性との関係を調べた。その結果, 若年層では肌色におけるbの色ムラ (標準偏差), 角層水分量, 皮膚表面形態 (皮溝深さ, 皮溝量), 中高年層では, 肌色におけるLおよびaの色ムラ (標準偏差) について有意な関係が認められた。これらの結果から, 「透明感」の言語的構造に年代差はないが, 判断の手がかりである皮膚の生理特性は異なると考えられた。
著者
林 衛
出版者
黒部川扇状地研究所
雑誌
黒部川扇状地研究所研究紀要
巻号頁・発行日
vol.38, pp.36-45, 2013-03-31

東京電力福島第1原子力発電所で、複数の原子炉の核燃料が冷却不能になり、飛散した放射性物質が、東北地方から関東地方を中心に広範な環境汚染をもたらした。過酷事故は、広範な放射能汚染をもたらすとともに、何万人から何十万人あるいはそれ以上の人びとの生活基盤を破壊する。世の中をよりよいものにしようとする人びとのさまざまな日常の営み農業も漁業も、将来世代のための子育てや教育活動も努力の成果をだいなしにしてしまいかねないのだ。専門家として尊重されているはずの科学者たちが、道をふみはずし、世の中を混乱させ、地域社会に分断をもたらす。これが原発過酷事故の本質だろう。富山県は、北陸電力志賀原子力発電所の風下に位置する。偏西風、季節風、局地風が影響して風下に放射性物質が流れる現実からみて、北西の季節風がまだ強かった冬の終わりに、太平洋岸で日本初の過酷事故が生じたのは不幸中の幸いであったといえる。二度と悲劇を繰り返さない道を検討する。
著者
尾西 明生 松木 正義 小林 直樹
出版者
The Society of Resource Geology
雑誌
鉱山地質 (ISSN:00265209)
巻号頁・発行日
vol.23, no.118, pp.119-136, 1973-05-25 (Released:2009-06-12)
参考文献数
19

The oldest rocks of the Hirase mine area are various gneissose and granitic rocks of the so-called Hida Complex. They crop out in the northeastern and southwestern parts of this area. The Jurassic to Cretaceous Tedori Formation overlies these rocks uncomformably in the southwestern part of this area. The Cretaceous Nohi Rhyolites Group is most extensively distributed in this area. It is composed of acidic welded tuffs intercalated with rhyolite lava, its tuff and tuff breccia, and mudstone.Granitic rocks, K-Ar ages of which are about 60 m.y., intrude the Nohi rhyolites. They crop out as several. stocks along the Sho-gawa (river) and are called "Shirakawa Granites." Fine-to medium-grained biotite granite and hornblende-biotite granodiorite are their major facies. The Shirakawa granitic rocks show contact aureoles in the surrounding Nohi rhyolites. Andalusite-bearing assemblage is seen around some of the plutons, such as Hatogaya and Hirase stocks. Dykes of quartz diorite porphyry, hornblende andesite, pyroxene andesite and basalt occur in these stocks mainly along fault zones.Metamorphic rocks of the Hida complex thrust up to the Nohi rhyolites along the Morimo tectonic line. It strikes north-northwest. A similar fault zone passing through the Mihoro dum reservoir is called "Mihoro tectonic line." There are many faults of NW-trend diversing from the Mihoro tectonic line, some of which cut throngh the Hirase granitic stock.There are many kinds of mineral deposits in the area, namely Cu-Pb-Zn veins in the Fcdori formation, Au-Ag quartz veins in the Nohi rhyolite, graphite deposits in the Hida complex and molybdenite-quartz veins in the Shirakawa stocks. Yet, only molybdenum deposits, those of the Hirase mine in particular, are productive. The Hirase mine is one of the most important molybdenite mines in Japan.The Hirase deposits are composed of 29 molybdenite-quartz veins. The veins strike N-S to NNE and dip steeply west. Productive veins occur in the marginal part of the Hirase stock. The granitic rocks of this part are very heterogeneous and become homogenous toward the interior. The veins also become poor or thin out in the interior.Molybdenite occurs along walls of quartz veins as fine-grained crystals or very coarse-grained cuhedral ones. The latter predominates in drusy parts of the quartz veins and accompanies coarse-grained calcite crystals in some places. Molybdenite seams occur in some parts of the altered Nohi rhyolites. Molybdenum grade of this ore is very low, 100 to 200 ppm, but the quantity is large. The amount of MoS2 in the altered rhyolites at Kitani (about 3 km north of the Hirase mine) is estimated about twice as much as the total historical production of the Hirase mine. Molybdenites in any mode of occurrence have been recognized in rocks between the Morimo and Mihoro tectonic lines.
著者
小林 誠 最上 紀美子 岸 博子 佐藤 正史
出版者
山口大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

脳血管攣縮は、くも膜下出血後の重篤な合併症であり、その原因として、Rhoキナーゼによる血管平滑筋のCa2+非依存性の異常収縮が注目されている。従って、この血管の異常収縮を引き起こすメカニメムとその原因因子を解明する事によって、脳血管攣縮の根本的な予防法や治療法を開発することが、国民衛生上の緊急かつ最重要課題である。本研究では、脳血管において、Ca2+非依存性の異常収縮を制御する細胞内シグナル伝達メカニズムを明らかにし、そのシグナル経路を特異的に阻害する因子を同定する事を目的とする。初年度は、脳血管異常収縮の原因分手として細胞膜スフィンゴ脂質の代謝産物であるスフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)を同定し、そのシグナル経路は、RhQキナーゼを介するものであるが、従来言われていたG蛋白質やPKCとは独立した新規のシグナル経路である事を見出した。本年度は、下記のような結果を得た。1)脳血管において、エイコサペンタエン酸(EPA)は、SPCによるCa2+非依存性収縮を著明に抑制したが、Ca2+依存性の正常収縮や細胞質Ca2+濃度レベルには全く影響しなかった。2)SPCは、Srcファミリーチロシンキナーゼを活性化させ、さらにRhoキナーゼを活性化させることによって、脳血管に異常収縮を引き起こしていた。3)SPCは、SrcファミリーチロシンキナーゼおよびRhoキナーゼを細胞質から細胞膜へ移動させた。4)EPAは、Srcファミリーチロシンキナーゼの細胞膜への移動を阻止した。これらの成果により、EPAは、Ca2+シグナル系および血管の正常なCa2+依存性収縮には影響を与える事無く、Srcファミリーチロシンキナーゼの機能を阻害する事によって、特異的に脳血管の異常収縮を阻害することがわかった。
著者
小林 誠 岸 博子 川道 穂津美 加治屋 勝子
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

血管病は合計すると我国死因の第二位であり、また、突然死の主要な原因となる難病である。申請者らは、血管病の主因となる血管異常収縮の原因分子としてスフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)を発見した。本研究では、SPCによって引き起こされる血管の異常収縮に関わる新規の原因シグナル分子を同定し、その制御機構について明らかにすることを目的とした。その結果、以下の事を明らかにした。1.ヒト血管においては,SPCによる血管異常収縮は,コレステロール依存性であることが判明した。さらに,コレステロールが蓄積する膜ラフトが重要である事がわかった。この研究成果は,Circulation Research誌の編集者から,コレステロールと血管異常収縮の直接の関連性を初めて証明した報告として,Editorial Sectionで特別に紹介され,絶賛された。 2.膜ラフトに局在するFynチロシンキナーゼの重要性について検討した。スキンド血管にFynのリコンビナント蛋白(ワイルド・タイプ、ドミナント・アクティブ体,ドミナント・ネガティブ体)を導入する事により,Fynが,SPCによる血管異常収縮において重要な役割を果たしている事が分かった。3.従来のCa2+による収縮現象のみならず,Rhoキナーゼを介したCa2+によらない収縮現象をin vitro motility assay 系によって証明する事ができた。4.膜ラフトモデル膜として,ハイブリッドリポソームを作成することに成功した。これを応用して,SPC,EPAが,濃度依存性にラフトモデル膜に結合する事を明らかにした。5.ヒト血管から高純度のラフト分画を精製することに成功した。さらに機能的プロテオミクスによりヒト血管の膜ラフトに局在する新規蛋白を複数個同定した。6.以上の異常収縮のシグナル伝達経路を阻止できる新規の候補分子を複数個同定した。
著者
川道 穂津美 岸 博子 加治屋 勝子 高田 雄一 小林 誠
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.133, no.3, pp.124-129, 2009 (Released:2009-03-13)
参考文献数
17
被引用文献数
1

狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患やくも膜下出血後の脳血管攣縮などの疾患は,合計すると我が国の死因の第2位を占める.これらの血管病の原因は2つあり,一つは,長い年月を掛けて発症する動脈硬化であり,もう一つは,急性発症の血管攣縮,すなわち,血管平滑筋の異常収縮である.この血管異常収縮は,血圧維持を担っている細胞質Ca2+濃度依存性の正常収縮とは異なり,Rhoキナーゼを介する血管収縮のCa2+感受性増強(Ca2+-sensitization)によることが知られているが,その上流の分子メカニズムについては不明な点が多い.本稿では,この血管異常収縮の原因分子の1つとして見出されたスフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)が引き起こすSPC/Srcファミリーチロシンキナーゼ/Rhoキナーゼ経路について解説する.SPCとRhoキナーゼを仲介する分子として同定されたSrcファミリーチロシンキナーゼに属する分子群の中でも,Fynが血管異常収縮に関与しているという直接的証拠を蓄積してきたので,本稿では,これらの直接的証拠を得た方法と結果について解説する.さらに,Fynを標的にしてその機能を阻害する事によって,Ca2+依存性の血管収縮には影響を与えず,SPCが引き起こす血管異常収縮のみを選択的に抑制する分子標的治療薬として同定されたエイコサペンタエン酸(EPA)の効果について記述する.
著者
島 義弘 上嶋 菜摘 小林 邦江 小原 倫子
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.36-43, 2012-03-20 (Released:2017-07-27)

母親は母子相互作用において,子どもへの関わりを決定する際に多様な情報を使用していることが示されている。本研究では,母親が使用する情報が母親自身の内的作業モデルによってどのように異なるのかを検討した。第1子が9ヶ月の母親29名を対象として,質問紙調査と自子以外の乳児が映った映像を刺激として用いた面接調査を実施した。質問紙では,"不安"と"回避"の2次元の内的作業モデルを測定した。映像刺激は3ヶ月児と9ヶ月児が映った15秒のビデオクリップ各5つであり,これらを視聴した後に何に着目して子どもへの関わりを決定するのかを尋ねた。母親の回答を「乳児の情動」「乳児の行動」「母親の主観性」「育児経験」「周囲の環境」の5カテゴリーに分類した上で,内的作業モデル("不安"と"回避"の2因子)を説明変数とした回帰分析を行ったところ,3ヶ月児のビデオクリップに対しては,"不安"が高いほど,また"回避"が低いほど「乳児の行動」への言及が多かった。一方,9月見のビデオクリップに対しては"不安"が高いほど「乳児の情動」への言及が多く,"回避"が高いほど「母親の主観性」に基づいた言及が多くなる傾向が認められた。以上の結果から,母親自身の内的作業モデルの違いによって母親が使用する情報は異なり,"不安"が高いほど乳児に起因した情報を多く使用し,"回避"が高いほど乳児に起因した情報から注意を背ける傾向があることが示された。

1 0 0 0 OA 隆鼻術問答集

著者
林熊男 著
出版者
林病院出版部
巻号頁・発行日
1922
著者
小林 豊一 原田 ひとみ 柴田 健介 廣瀬 俊一
出版者
The Japanese Society of Inflammation and Regeneration
雑誌
炎症 (ISSN:03894290)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.383-386, 1993

The effect of several agents on mitogen-induced proliferative response<I>in vitro</I>was studied by using colorimetric MTT [3- (4, 5-dimenthyl-2-thiazolyl) -2, 5-diphenyl-2H tetrazolium bromide] assay. Immuno-modulator levamisole and TOK-8801 enhanced concanavalin A and lipopolysaccharide response in murine splenocytes at concentrations of 10<SUP>-6</SUP>-10<SUP>-5</SUP>M and 10<SUP>-4</SUP>M, respectively. Immunosuppressant mizoribine decreased dose dependently this response.<BR>These results show that MTT assay may be a useful method for the evaluation of immunological affecting agents on cell proliferative response.

1 0 0 0 OA 佃島雨晴

著者
小林清親 画
出版者
福田熊治良
巻号頁・発行日
1880
著者
朴 秀吉 福永 潔 小林 昭彦 小田 竜也 村田 聡一郎 佐々木 亮孝 大河内 信弘
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.16-22, 2012-01-01 (Released:2012-01-21)
参考文献数
22

はじめに : アルブミン製剤は術後患者や重症患者に広く使われているが,近年,適正使用が勧められている.そこでわれわれは肝細胞癌切除術後患者を対象にアルブミン製剤の使用指針を厳守し,術後経過に与える影響について検討を行った.方法 : 対象は2005年9月から2010年5月までに肝細胞癌に対して切除術を行った72例である.2008年9月以降,使用指針を厳守し,アルブミン製剤使用を制限した.症例を制限前の36例と制限後の36例に分け,患者背景因子,手術因子,術後アルブミン製剤使用量と術後血清アルブミン値,大量腹水発症率,在院死亡率,術後在院日数について比較検討を行った.結果 : 制限後群は男性が多く,ICG-R15が高値であったが,それ以外の患者背景因子,手術因子に有意差を認めなかった.術後1週間のアルブミン製剤使用量は制限後群で有意に少なく,それに伴い血清アルブミン値は有意に低値であった.大量腹水は制限前群に3例(8.3%),制限後群に5例(14%),在院死亡は制限後群に1例(2.8%)認めたが,これらの術後因子については術後在院日数を含めて両群間に有意差を認めなかった.考察 : 肝細胞癌切除術において術後にアルブミン製剤の使用を制限し,血清アルブミン値が低値であったが,術後経過に有意な悪影響を及ぼさなかった.さらなる検討が必要であるが,肝細胞癌切除術後にアルブミン製剤の使用量を節減できる可能性がある.