著者
若岡 敬紀 水田 啓介 柴田 博史 林 寿光 西堀 丈純 久世 文也 青木 光広 安藤 健一 大西 将美 棚橋 重聡 白戸 弘道 伊藤 八次
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.120, no.3, pp.202-208, 2017-03-20 (Released:2017-04-19)
参考文献数
23
被引用文献数
6 6

頭頸部領域に発生する神経内分泌小細胞癌は比較的まれであるが, 悪性度が高く早期にリンパ行性・血行性に転移を来し予後不良といわれている. またその発生頻度の低さから標準的な治療法は確立されていない. 今回われわれは2006年から2014年までに当科および関連病院で経験した頭頸部原発の神経内分泌小細胞癌8症例の治療法と経過について検討したので報告する. 平均年齢は60.9歳 (38~84歳), 男性3例, 女性5例であった. 原発部位の内訳は, 鼻副鼻腔3例, 耳下腺2例, 中咽頭2例, 下咽頭1例であった. 下咽頭の1例は, 扁平上皮癌が混在した混合型小細胞癌であった. 治療法は小細胞肺癌に準じた化学療法や放射線治療が主体であった. 1次治療の化学療法の内容は4例で白金製剤と VP-16 を使用していたが, 最近では症例を選んで3例で白金製剤と CPT-11 を使用していた. 1次治療終了後完全奏功と判断したのは5例あったがいずれも平均8.4カ月で再発した. 2次・3次治療で手術もしくは放射線治療を行うことができた2例は現在まで非担癌生存中である. 原病死した6例のうち, 所属リンパ節再発が制御できなかったのは1例, 遠隔転移が制御できなかったのは5例であり, 生存期間中央値は16.0カ月, 5年生存率は25%であった. 遠隔転移を制御することが予後の改善につながる可能性があり, そのための治療法の確立が望まれる.
著者
新井 智之 柴 喜崇 渡辺 修一郎 柴田 博
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.165-172, 2011-06-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
45
被引用文献数
3

【目的】本研究では歩行周期変動と他の運動機能,転倒との関連を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は地域在住高齢者124人(平均年齢74.2 ± 7.7歳)とした。歩行周期変動は小型の加速度計を用いて10m歩行時に測定し,連続する1歩行周期時間のデータから変動係数を算出した。歩行周期変動と他の運動機能との関係は相関係数により検討し,転倒の有無を従属変数,運動機能を独立変数とした多重ロジスティック回帰分析を行い転倒に関わる運動機能を検討した。【結果】歩行周期変動と有意な相関を示した運動機能は10m快適歩行速度,10m最大歩行速度,Timed Up and Go Test,6分間歩行距離,Functional Reach Test,最大等尺性膝伸展筋力,30-s Chair Stand Test(|r| = 0.31〜0.58)であった。また多重ロジスティック回帰分析の結果,歩行周期変動のみが転倒に関わる要因として抽出された。【結論】歩行周期変動は総合的な歩行能力を示す指標であり,高齢者の転倒発生に関わる有用な指標であるといえる。
著者
柴田 博
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.17-23, 2013 (Released:2016-02-01)
参考文献数
15
被引用文献数
3 2

国際的比較データをみると,1人あたりの脂肪摂取量が多いほどその国の平均寿命は有意に長いことが分かる。筆者たちの高齢者の地域比較研究では余命の長い地域は短い地域と比較して脂肪摂取量が多い。同一地域の縦断研究も脂肪摂取の多い群の余命が長いことを示している。欧米には脂肪の過剰摂取の害も示されている。しかし,欧米の半分程度しか脂肪を摂取していない日本人にその結果を外挿することは誤りである。
著者
川崎 健吾 桑田 英悟 石橋 秀則 矢尾 知博 前田 和弘 柴田 博信 石田 清 津留 正臣 中溝 英之 森 一富 下沢 充弘
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J104-C, no.10, pp.308-318, 2021-10-01

マイクロ波の送信モジュールには小型化と低コスト化が求められる.提案する送信モジュールは,高集積に適するSiデバイス上に制御回路を構成し,最終段の1W級の増幅器にSi-GaNスタック型増幅器を採用したことで,送信モジュールで使用するデバイスプロセスの数を減らし電源電圧の数を最少化することで電源回路を簡易化することが可能である.試作では,GaNチップを基板に内蔵し,Siチップと電源回路素子のチップインダクタを基板上に表面実装した3次元実装構造とすることで,モジュール面積7 mm x 7 mmの小型な実装構造を実現した.試作した送信モジュールは,L~C帯において広帯域な動作が可能であり,出力電力はL帯で34.8 dBm,S帯で32.0 dBm,C帯で25.8 dBmが得られ,0.6 dB-rms以下の振幅誤差と1.8 deg.-rms以下の移相量誤差の特性が得られた.
著者
原田 謙 杉澤 秀博 柴田 博
出版者
日本老年社会科学会
雑誌
老年社会科学 (ISSN:03882446)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.350-358, 2009

<p> 本研究は,シルバー人材センターの退会に関連する要因を明らかにすることを目的とした.データは,全国279センターの現会員と退会者の男女,合計5,553人から得た.</p><p> 分析の結果,第一に「仕事仲間」および「発注者側の態度・対応」に関する満足度が高い者ほど,シルバー人材センターを退会する傾向が低かった.一方,「配分金」や「就業体制」に関する満足度は,退会とは有意な関連がみられなかった.第二に,センターで事務職の仕事を希望する者は,その他の仕事を希望する者に比べて退会する傾向が2倍以上であった.この影響は男性および三大都市圏において顕著であり,センターが受注する仕事と会員が希望する仕事のミスマッチの問題が示唆された.第三に,センター以外のところで就業している日数が多い者ほど,退会する傾向が高かった.この影響は,男性および地方圏において顕著であり,再就職活動の一環としてセンターに関与している高齢者の存在を示唆していた.</p>
著者
柴田 博
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.9-20, 2015
被引用文献数
1

Thanatology(死生学)はgerontology(老年学)と共に1903年,免疫学者メチニコフにより創出された用語である。この2つの学問は,科学(自然,社会)および人文学(哲学,宗教,文学など)の双方の分野からなる学際的な学問である。<br>人間の死の問題は生活の質(quality of life, QOL)の問題と統合的に把えなければならない。しかし,学問の進捗としては老年学の方が先行し,死生学は遅れたためそれは不十分にしか成されていない。1980年代まで死の問題を扱うことは宗教,哲学,生命倫理学以外の分野ではタブー視される傾向にあったのである。<br>この四半世紀,老年学のQOLにanalogousにQOD(D)(quality of dying and/or death)の実証的な研究が北米を中心に盛んになっている。これらの研究は従属変数としてのQOD(D)を操作概念化し,提供されるケアとの関連で,終末期のQOLを評価しようとするものである。死の質を測定するための尺度の開発により,実証研究は今後も大きく進むものと考えられる。<br>しかし,死の学問は終末期のきわめて短いスパンの問題に限局されてはならない。もっと長い人生のスパンにおけるQOLとの関連でも論じられなければならない。それは量的研究ではなく文学,病跡学にみられるようなnarrativeな方法を採ることになるであろう。本論文では,死生学にまつわるいくつかのトピックスについての,筆者の私見を述べた。死生学における位相的意義は明確にし得ないが。
著者
鈴木 隆雄 杉浦 美穂 古名 丈人 西澤 哲 吉田 英世 石崎 達郎 金 憲経 湯川 晴美 柴田 博
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.36, no.7, pp.472-478, 1999-07-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
27
被引用文献数
54 44

比較的健康な地域在宅高齢者527名を対象として, 面接聞き取り調査, 身体属性の測定, 腰椎骨密度および歩行能力などの運動能力を1992年の初回調査時に測定し, その後5年間追跡調査を行ない, その間での2回以上の複数回転倒者について, その関連要因の分析を行なった.その結果, 2回以上の複数回転倒者では非転倒者あるいは1回だけの転倒者に比較して初回調査時において, 自由歩行速度, 最大歩行速度, 握力などの運動能力や, 皮下脂肪厚, および老研式活動能力指標総得点などで有意な差が認められた. さらに, 5年間での追跡期間中の複数回転倒の有 (1), 無 (0) を目的変数とする多重ロジスティック回帰モデルによる分析を行なった結果,「過去1年間の転倒経験」が最も強い正の, そして自由歩行速度および皮下厚が負の有な関連として抽出された.このような地域高齢者を対象とする縦断的追跡研究の結果から, 転倒や転倒に基因する多くの骨折に対して,「過去の転倒経験」を問診で詳細に聞き取ることや, 簡便な「自由歩行速度」を測定することにより, 転倒ハイリスク者をスクリーニングすることが可能であり, ひいては転倒・骨折予防に極めて有効な指標となることが考えられた.
著者
杉谷 繁樹 野口 耕司 松下 睦 下地 昭昌 柴田 博次 赤星 義彦
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.987-989, 1989-08-25

抄録:22歳男子で両側性に長母趾屈筋腱腱鞘炎があり,右側は狭窄性腱鞘炎が著明で疼痛を伴った弾撥現象及びlockingを生じたため腰麻下に腱鞘切開術を施行して良好な結果を得られた.手術時所見は他の報告例のほとんどが示すように,踵骨載距突起下の線維性pulley内で腱は著明に変性して紡錘状に肥大しており,これが弾撥現象の原因と推察された.また変性部位には比較的新しいと思われる縦断裂を認めた.この弾撥現象は14歳頃に発現しており,この発生機転には明らかにスポーツの関与(短距離走)が考えられ,長母趾屈筋腱が繰り返しbowstringの作用を受けたため腱の変性を生じたものと推察される.主にクラシックバレエによる障害として同様の報告が散見されるが,他のスポーツを含めて一種のスポーツ障害として本障害を念頭に置く必要があろう.
著者
七田 恵子 大場 京子 芳賀 博 上野 晴美 柴田 博 松崎 俊久 高橋 重郎 斉藤 紀仁
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.260-267, 1977-07-30 (Released:2009-11-24)
参考文献数
24

東京都養育院老人ホームの老年者 (男子724名, 女子1,239名) 計1,963名を対象として血清コレステロール, トリグリセリドを測定し, 皮脂厚, 老人環, 収縮期血圧, 拡張期血圧, 心電図所見との関連について検討した.1) 血清コレステロール分布はほぼ正規型を呈し, トリグリセリドはやや右方に偏った分布を描いたが対数変換を行うと幾分偏りが是正された.2) 5歳間隔の平均値で血清コレステロールの加齢変化を検討すると, 男子は横ばい, 女子は加齢とともに減少傾向を示した. トリグリセリドについても同じ傾向であった. すべての年齢層で性差を認め, 男子に比し女子は有意に高値であった.3) 各変量における単相関係数を求めると, 血清脂質と皮脂厚の間に男女いずれも有意な相関が示された (血清コレステロール: 男子r=0.215, 女子r=0.241, トリグリセリド: 男子r=0.254, 女子r=0.327, いずれもp>0.001). 血清脂質と老人環の関係は男子のトリグリセリドにおいてのみ低い正相関 (r=0.101, p>0.05) がえられた. 夜間排尿回数と女子のコレステロールおよび, 夜間排尿回数と男子のトリグリセリドの間に低い負の相関がえられた. 血清脂質と血圧の関係では, 女子においてコレステロールと収縮期血圧との関係を除いて低い正相関々係を示し, 男子ではトリグリセリドと拡張期血圧の間にのみ低い正相関を示した.4) 血清コレステロール. トリグリセリドに関し, 年齢, 皮脂厚・老人環, 夜間排尿回数, 収縮期血圧, 拡張期圧の6項目に対する偏相関係数を求めると血清脂質と肥満の指標である皮脂厚との関連は単相関と同様強いが, 皮脂厚などの要因を除外すると, 血清脂質と年齢および血圧との相関は低くなった. 男子において老人環および夜間排尿回数とトリグリセリドの間に有意な相関が認められた.5) 血清脂質レベルによる心電図所見出現率に関して, 高脂血群に有意に高率である所見は見出せず, 低脂質群に心房細動ならびに高電位出現率の高い傾向が認められた. 年齢変化を鋭敏に表わした異常Q, ST-T所見についても脂質レベルによる一定の関係はなかった.
著者
七田 恵子 大場 京子 芳賀 博 上野 晴美 柴田 博 松崎 俊久 高橋 重郎 斉藤 紀仁
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.38-43, 1977-01-30 (Released:2009-11-24)
参考文献数
24
被引用文献数
2 1

都老人ホームに居住する65歳以上の男724名, 女1,239名, 計1,963名を対象として集団検診を行い, 諸種臨床検査成績における加齢変化を検討し, 次の如き結果を得た.1) 老人環: 老人環出現率は年齢が進むにつれ有意に増加し, 程度も増強し, 加齢変化を顕著に現わす指標と考えられた. また老人環と血清コレステロールとの関係は認められなかった.2) 夜間排尿回数: 就寝してから朝起床するまでの排尿回数は, 加齢とともに頻回となり, この傾向は男に比し女に強く認められた.3) 肥満度: 肥満について身長, 体重より算定した肥満度ならびに栄研式皮厚計を用いて計測した皮下脂肪厚の両面より加齢変化をみると, 女では加齢にともないるいそう傾向が認められた. この関係は肥満度に較べ皮下脂肪厚により強く表現された. しかし男では加齢による体格変動は一定の傾向を示さず横ばいであった.4) 血圧: 収縮期血圧は加齢とともに上昇し, 拡張期血圧は下降の傾向がみられるが, とくに女に顕著な変化が認められた.5) 心電図: 加齢にともなう心電図異常はST-T変化, 脚ブロック, PQ延長, 心房細動, 左軸偏位であり,とりわけST-T異常の出現が目立った.6) 血清脂質: コレステロールの平均値について男は概して横ばい, 女は加齢とともに明らかな低下を示す. 中性脂肪は男・女ともに平均値の減少化をみるが, 女により強い傾向が認められた.
著者
尾﨑 章子 荻原 隆二 内山 真 太田 壽城 前田 清 柴田 博 小板谷 典子 山見 信夫 眞野 喜洋 大井田 隆 曽根 啓一
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.50, no.8, pp.697-712, 2003 (Released:2014-12-10)
参考文献数
23
被引用文献数
2

目的 100歳以上の長寿者(百寿者)の QOL を調べ,男女差,地域差を明らかにするとともに,100歳を超えてもなお高い QOL を実現している百寿者に関して生活習慣,生活環境との関連について検討を行った。方法 1999年度の「全国高齢者名簿」に登録された100歳以上の高齢者11,346人を母集団とした。男性は全数,女性は 1/2 の比率で無作為抽出を行った。死亡,住所不明,不参加の者を除く1,907人(男性566人,女性1,341人)に対し,個別に訪問し,質問紙を用いて聞き取り調査を行った(2000年 4~6 月)。本研究では百歳老人の QOL について a. 日常生活動作の自立,b. 認知機能の保持,c. 心の健康の維持の観点から検討した。独立変数は,食生活,栄養,運動,睡眠,喫煙習慣,飲酒習慣,身体機能,家族とした。分析は SPSS11.0J を使用し,男女別に多重ロジスティック回帰分析を行った。結果 1. 男性の百寿者は女性の百寿者と比較して数は少ないものの,QOL の高い百寿者の割合は日常生活動作,認知機能,心の健康のすべてにおいて男性が女性に比べ多かった。 2. 百寿者数は西日本に多いものの,QOL の高い百寿者の割合に関して地域による有意な差は男女とも認められなかった。 3. ①日常生活動作の自立の関連要因:男性では,運動習慣あり,視力の保持,自然な目覚め,常食が食べられる,同居の家族がいるの 5 要因が,女性では,運動習慣あり,常食が食べられる,視力の保持,自然な目覚め,食欲あり,同居の家族がいる,転倒経験なしの 7 要因が日常生活動作の自立と有意な関係にあった。②認知機能の保持の関連要因:男性では,自然な目覚め,視力の保持,運動習慣あり,よく眠れている,常食が食べられるの 5 要因が,女性では,聴力の保持,自然な目覚め,視力の保持,食欲あり,同居の家族がいる,運動習慣ありの 6 要因が認知機能の保持と有意な関係にあった。③心の健康の維持の関連要因:男性では,視力の保持,運動習慣あり,よく眠れている,常食が食べられるの 4 要因が,女性では,視力の保持,食欲あり,運動習慣あり,1 日 3 回食事を食べる,同居の家族がいる,常食が食べられる,自然な目覚めの 7 要因が心の健康の維持と有意な関係にあった。結論 百寿者の日常生活動作の自立,認知機能の保持,心の健康の維持に共通して関連が認められた要因は,男性では運動習慣,身体機能としての視力,食事のかたさであり,女性では,運動習慣,身体機能としての視力,自然な目覚め,食欲,同居家族であった。これらの検討から,QOL の高い百寿者の特徴は,男性では,①運動習慣がある②身体機能としての視力が保持されている③普通のかたさの食事が食べられる,女性では①運動習慣がある②身体機能としての視力が保持されている③自分から定時に目覚める④食事を自らすすんで食べる(食欲がある),⑤同居の家族がいること,が明らかになった。これらの要因の維持が超高齢者の高い QOL の実現に関与している可能性が示唆された。
著者
藤原 佳典 柴田 博 原田 謙 新開 省二 吉田 裕人 星 旦二
出版者
東京都立大学都市研究センター
雑誌
総合都市研究 (ISSN:03863506)
巻号頁・発行日
vol.81, pp.39-48, 2003

先進三カ国の主要都市、東京とニューヨーク、パリの健康水準の実態を都心部、周辺部、全体に分けて検討した。同一主要都市内では中心部で平均寿命が短く、AIDS・結核発症者の割合が多かった。高齢期の総死亡率や主要な疾患別死亡率については主要都市内での格差よりも主要都市聞での年齢階級別の相違のほうが顕著であった。とりわけマンハッタン地区は年齢階級の上昇とともにパリ中心部地区及び東京都23特別区に比べて相対的に死亡率の低下を認めた。乳児死亡率・新生児死亡率については主要都市間及び同一主要都市内でもニューヨーク全体つまり、マンハッタン地区の外側が高かった。次に、高齢期の総死亡率と乳児死亡率について三主要都市ごとに中心部地区の分布及び相関を見た。各死亡率に対するマンハッタン20区のばらつきが目立った。また、65才以上総死亡率と乳児死亡率の相関関係についてはパリ中心部地区のみ両者に有意な負の相関がみられた。三主要都市間あるいは内部の健康水準の格差をもたらす規定要因を明確にするには、今後、三主要都市における衛生行政に関する指標、人口学的指標及び社会・経済学的指標を含めて国際比較の視点から学際的・総合的に相関関係を検討する必要性が示唆された。We reported healthy standard of the three international megalopolises, Tokyo, New York, and Paris, in advanced countries, comparing with central area and around it respectively. Central areas had shorter life expectancy, and had more incidence of AIDS and tuberculosis in every three city. In terms of age-specific total death rate in older persons and main diseases, there was more remarkable difference among inter-cities than among inner-cities. Whole New York City, around Manhattan area showed highest infant mortality rate (IMR) and neonatal mortality rate in every area in the three cities. Total death rate for older persons showed significantly inverse correlation with IMR only in 20 central wards in Paris.
著者
柴田 博仁 堀 浩一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.1000-1012, 2003-03-15
参考文献数
39
被引用文献数
5

本研究の目的は,「書きながら考え」「考えながら書く」デザインプロセスとしての文章作成を支援する環境を構築することである.本稿では,試行錯誤的な文章作成の状態から文章の全体構造が明確になる段階までのプロセスを一貫して支援する新たな枠組みを提案する.枠組みの特徴は,表現の自由度が高い二次元空間と,全体構造の把握が容易な木構造表現とを,書き手の思考プロセスを阻害することなく統合する点にある.提案する枠組みの検証を目的とし,文章作成支援システム iWeaver を試作した.システムを利用した文章作成プロセスの分析から,提案する枠組みの有用性を確認する.The goal of this research is to support a considering-while-writing and writing-while-considering process as a design process. We propose a novel framework to support writing process from ill-formalized state to well-formalized state consistently. Its characteristic is to integrate a two-dimensional space, which has a flexibility in expression, and a tree, which is superior for over viewing a whole document structure, so as not to contradict writers' natural thinking. Based on this framework, we have built a system named iWeaver. In a user study, we show that our framework is an effective aid for constructing documents.
著者
柴田 博仁 堀 浩一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.1000-1012, 2003-03-15

本研究の目的は,「書きながら考え」「考えながら書く」デザインプロセスとしての文章作成を支援する環境を構築することである.本稿では,試行錯誤的な文章作成の状態から文章の全体構造が明確になる段階までのプロセスを一貫して支援する新たな枠組みを提案する.枠組みの特徴は,表現の自由度が高い二次元空間と,全体構造の把握が容易な木構造表現とを,書き手の思考プロセスを阻害することなく統合する点にある.提案する枠組みの検証を目的とし,文章作成支援システム iWeaver を試作した.システムを利用した文章作成プロセスの分析から,提案する枠組みの有用性を確認する.
著者
柴田 博仁 大村 賢悟
出版者
社団法人 日本印刷学会
雑誌
日本印刷学会誌 (ISSN:09143319)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.049-057, 2017 (Released:2017-03-18)
参考文献数
35

This paper explains how the evaluation of letter contents and the personality of the senders vary according to presentation media and document styles of letters. We conducted a two-way factorial design experiment. The first factor was presentation media: paper and electronic media. The second factor was document styles: mails with a Gothic font, postcards written in a Mincho font, postcards written in a handwriting-like font, and handwritten postcards. It was observed that presentation media strongly affect the evaluation of the personality of the senders. Sending paper letters improves the feeling of familiarity between recipients and senders. Next, the document styles strongly affect evaluation of the contents of letters. Handwritten letters improves the evaluation of letter contents. Finally, the feeling of appreciation is highly evaluated in handwritten letters on paper. Based on the result, we discuss how to select presentation media and document styles depending on situations.
著者
芳賀 博 柴田 博 松崎 俊久 安村 誠司
出版者
The Japanese Society of Health and Human Ecology
雑誌
民族衛生 (ISSN:03689395)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.217-233, 1988
被引用文献数
41 9

本研究は,初回調査時に比較的健常であった地域在宅老人の10年間の追跡的調査に基づいている.研究の目的は,加齢に伴うADLの変化を明らかにし,さらには,ADLの維持に関わる要因を初回調査時の身体,心理,社会的側面から検索することである. 対象は,昭和51年の初回調査に応じた69~71歳の東京都小金井市在住の男女422名である.このうち,10年後の追跡調査に応じた者は,250名であり,死亡者は102名であった. 得られた主な結果は次のとおりである. 1.10年間に死亡した者は,継続調査群に比べて初回調査時のADL総合点は低い傾向にあった. 2.10年後のADLは,歩行,食事,排泄,入浴,着脱衣のいずれにおいても低下を示し,とくに歩行の低下が最も大きかった. 3.10年後に5項目全てが「半介助」あるいは「介助」に属するいわゆる"寝たきり老人"は,男の3.7%,女の2.1%のみであった.このうち,脳卒中及び骨・関節疾患を有する者を除くと"寝たきり老人"はさらに少なかった(男2.3%,女0.8%). 4.ADLの低下は,女より男に大きい傾向であったが,その差は有意ではなかった. 5.10年後のいわゆる「老化」にともなうADL低下に有意に関連する身体的要因は,高血圧の既往「あり」(男),心電図所見「異常」(男),「肥満」(女)であった. 6.心理的要因では,ベントソ正確数が「低い」(男),身体についての悩み「あり」(女)で有意なADLの低下を認めた. 7.社会的要因では,社会活動性が「低い」ほど有意なADLの低下を示した(男女). 以上の日常生活動作能力の変化に関する予知因子の検討の結果,男女とも社会活動性が10年後のADLの転帰にもっとも関係していた.このことから,社会活動性を維持し,あるいは高めることが日常生活動作能力の保持に役立ち,余命の延長にもつながることが推測された.