著者
岩見 恭子 小林 さやか 柴田 康行 山崎 剛史 尾崎 清明
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.63-69, 2015 (Released:2015-04-28)
参考文献数
19

福島第一原子力発電所の事故によって放出された放射性物質による鳥類の巣の汚染状況を把握するため,2011年に繁殖したツバメの巣を日本全国から採集し,巣材に含まれる放射性セシウム(Cs-134およびCs137)を測定した.全国21都道府県から集められた197巣のうち182巣について測定した結果,1都12県の巣から福島第一原子力発電所由来の放射性セシウムが検出された.福島県内のすべての巣から放射性セシウムが検出され,Cs-134とCs-137の合計の濃度が最も高いものでは90,000 Bq/kgで低いものでは33 Bq/kgであった.巣の放射性セシウム濃度は土壌中の放射性セシウム濃度が高い地域ほど高かったが,地域内で巣のセシウム濃度にはばらつきがみられた.
著者
柴田 康太郎
出版者
日本音楽学会
雑誌
音楽学 (ISSN:00302597)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.1-16, 2018 (Released:2019-10-15)

1920年代において、日本のサイレント映画は西洋音楽の土着化と舞台から映画へという同時代的な転換との複合的な帰結による改革のなかにあった。当初、1910年代の日本映画は歌舞伎の強い影響下にあった。当時の邦画は舞台劇の一種の安価な代用品とみなされており、ロングショット、長廻し、固定カメラで撮影されていた。音楽演出においても三味線や太鼓などの伝統的邦楽器によって歌舞伎の舞台劇を模倣することが目指されていた。ところが1920年頃になるとこうした舞台志向の映画は、クロースアップやクロスカッティング等の映画に必要な技法を追求せず、古臭い物語に安住することで批判されるようになった。そして新しい邦画を模索する純映画劇運動のなかで、伴奏音楽もまた、洋楽と洋画伴奏のもとで再編成されることになる。しかもこの動きは、歌舞伎などの伝統の根強い時代劇においても浸透し、洋楽合奏や和洋合奏による古典邦楽曲や輸入洋楽曲の演奏、さらには新作伴奏曲をともなって上映されるようになるのである。本論文は、東京における日活の封切館であった浅草富士館や神田日活館の興行実態や伴奏曲をめぐる言説、および伴奏譜の資料考証を交え、複合的にこの再編成のありようを捉え直す試みである。まず浅草富士館の支配人三宅巌の試行錯誤に注目し、歌舞伎的伝統の根強い富士館でどのように洋楽合奏や和洋合奏が導入されたのかを考察する。次いで残る2節では、現存する楽譜資料や同時代の言説の検証により、1926年頃の時代劇伴奏のレパートリー、そして時代劇伴奏の代表的作曲家のひとりであった松平信博の1927年以後の実践を考察し、1920年代後半にどのように楽曲と編成における邦楽と洋楽の折衷ないし再編成が進んだのかを示す。
著者
柴田 康太郎
出版者
美学会
雑誌
美学 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.109-120, 2017 (Released:2018-07-01)

Movie theaters in the silent era had a feature as a concert hall. Especially in Japan in the Taisho era, they were central places where ordinary people heard Western music. Though they are important case for Japanese receptive study of Western music, how film audiences received it had scarcely been investigated. This study, focusing on some theaters in Tokyo especially around 1920 and 1927, tries to show their receptions of Western music. First three sections consider on the audiences’ columns in the pamphlets issued by one of the main movie theaters, Teikokukan in Asakusa. They show that audiences were so interested in Western music which was frequently played as intermission music that, when the same music was used for film accompaniment, it sometimes gained audiences’ attention more than the film it was used for. But until 1927, musical medleys had gradually gained popularity as a new form of intermission music. The popularity was based on each tunes’ associative images which had been formed in audience through their repetitive use in film accompaniment. The peculiar associations formed in the movie theaters gave birth to a unique musical practice.
著者
柴田 康太郎
出版者
美学会
雑誌
美学 = Aesthetics (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.173-184, 2015

In Japanese film history, the late 1930s was known as a period when interest in filmic "realism" rose. This study examines how this interest in filmic realism influenced musical accompaniment in narrative films in the late 1930s. It mainly focuses on two complementary aspects of filmic realism: one based on naturalist/ socialist realism in literature and the other based on a new conception of filmic representation that emphasized audiovisual realism. This study investigates the contrasting influences of these two aspects. One influence was the decrease in the use of non-diegetic music, a practice reported in contemporary texts that can be confirmed by existing realist films. The first half of the paper analyzes contemporary discourse on filmic realism and anti-musical accompaniment arguments and reveals that musical accompaniment was considered unsuitable for both the above-mentioned aspects of realism. This influence, however, was not restricted to the decrease in use of non-diegetic music. In fact musical accompaniment was not completely abandoned, and some contemporary Japanese film composers sought an effective way of using it in realist films. The latter half of this paper shows the efforts of Fukai Shiro, one such leading Japanese composer, in this regard.
著者
柴田 康太郎
出版者
美学会
雑誌
美学 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.173-184, 2015-06-30 (Released:2017-05-22)

In Japanese film history, the late 1930s was known as a period when interest in filmic "realism" rose. This study examines how this interest in filmic realism influenced musical accompaniment in narrative films in the late 1930s. It mainly focuses on two complementary aspects of filmic realism: one based on naturalist/ socialist realism in literature and the other based on a new conception of filmic representation that emphasized audiovisual realism. This study investigates the contrasting influences of these two aspects. One influence was the decrease in the use of non-diegetic music, a practice reported in contemporary texts that can be confirmed by existing realist films. The first half of the paper analyzes contemporary discourse on filmic realism and anti-musical accompaniment arguments and reveals that musical accompaniment was considered unsuitable for both the above-mentioned aspects of realism. This influence, however, was not restricted to the decrease in use of non-diegetic music. In fact musical accompaniment was not completely abandoned, and some contemporary Japanese film composers sought an effective way of using it in realist films. The latter half of this paper shows the efforts of Fukai Shiro, one such leading Japanese composer, in this regard.
著者
岡 大祐 関根 芳岳 大津 晃 青木 雅典 林 拓磨 馬場 恭子 中山 紘史 栗原 聰太 宮尾 武士 大木 亮 宮澤 慶行 柴田 康博 鈴木 和浩
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.155-158, 2021 (Released:2021-03-28)
参考文献数
9

自己血管による内シャント(arteriovenous fistula: AVF)は本邦における慢性透析用バスキュラーアクセスの中で最も多い.AVF造設術は一定の割合で不成功例を認めるが,本邦において大規模RCTは行われておらず,AVFの初期開存に影響を与える因子の詳細な解析は行われていない.今回AVF造設術を施行した症例群をレトロスペクティブに解析し,初期開存に影響を及ぼす因子を解析した.対象とした119例の内,シャント閉塞をきたした症例は15例(12.6%)であり,初期開存に影響を与える因子として有意差を認めた項目は深部静脈血栓症(deep vein thrombosis: DVT)の既往のみであった.過去の論文にて開存率に影響を与える因子とされている,性別,年齢,糖尿病の既往などの因子よりも,血栓素因の有無がAVF初期開存に重要な影響を与える可能性が示唆された.
著者
堀口 敏宏 趙 顯書 白石 寛明 柴田 康行 森田 昌敏 清水 誠 陸 明 山崎 素直
出版者
日本海洋学会沿岸海洋研究部会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.7-13, 2000-02
被引用文献数
6

船底塗料などとして使用されてきた有機スズ化合物(トリブチルスズ(TBT)及びトリフェニルスズ(TPT))によって,ごく低濃度で特異的に誘導される腹足類のインポセックスのわが国における経年変化と現状の概略を種々の野外調査結果などに基づいて記述した.1990~1991年の汚染レベルに比べると近年の海水中の有機スズ濃度は低減したと見られるものの,イボニシの体内有機スズ濃度の低減率は海水中のそれよりも緩やかであり,またその低減率が海域により異なっていた.また環境中の有機スズ濃度の相対的な減少が観察されるものの,イボニシのインポセックス発症閾値をなお上回る水準であるため,インポセックス症状については全国的に見ても,また定点(神奈川県・油壺)観察による経年変化として見ても,十分な改善が認められなかった.この背景には,国際的には大型船舶を中心になお有機スズ含有塗料の使用が継続していることとともに,底泥からの再溶出の可能性及びイボニシの有機スズに対する感受性の高さなどが関連していると推察された.
著者
堀内 一穂 柴田 康行 米田 穣 大山 幹成 松崎 浩之 箕浦 幸治
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

年縞堆積物中のベリリウム10を分析し, 同一の堆積物から得られた既存の炭素14記録や, 本研究にて新たに分析されたアイスコアのベリリウム10記録と比較することで, 最終退氷期の太陽活動変動曲線を抽出することに成功した.その結果, 太陽活動は退氷期の古気候変動を支配するものではないが, 気候変動イベントのトリガーには成り得ることが分かった.また, 古木から単年分解能で効率的に炭素14 を分析する手法や, 年縞堆積物から単年分解能でベリリウム10を分析する手法が確立された
著者
柴田 康 松本 茂樹 吉田 賢史
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 21 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.173-174, 1997 (Released:2018-05-16)
参考文献数
11

インターネットはこの1, 2年で急速に一般家庭に浸透しつつあり、教育的利用への期待が高まっている。英語教育では、電子メールを取り入れ国際交流などの多くの実践報告がある。また、マルチメディアを駆使し、遠隔地で英会話などの授業を受けられるシステムなども報告されている。ここでは、数学教育の立場からインターネットの教育的利用とその意義と可能性についてさぐってゆく。
著者
西野 貴裕 上野 孝司 高橋 明宏 高澤 嘉一 柴田 康行 仲摩 翔太 北野 大
出版者
一般社団法人 日本環境化学会
雑誌
環境化学 (ISSN:09172408)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.177-186, 2013 (Released:2014-06-20)
参考文献数
36
被引用文献数
2 1

13 kind of Perfluorinated compounds (PFCs) in the mainstream of Tamagawa River and its inflows (tributaries, and effluents from Sewage Treatment Plants) were analyzed, and the loads of PFOS, PFOA and other 4 compounds were evaluated. The concentrations of PFOS and PFOA were found to be much lower than those of 2005 since 2009. This result indicates that the Stockholm Convention on Persisitent Organic Pollutants (POPs) and 2010/2015 PFOA Stewardship Program are effective. The cumulative load of PFCs that was accumulated in the inflows sequentially from Nagata Bridge, as the uppermost point in this study, closely resembled the measured load at each sampling point in Tamagawa River. These results indicate that PFCs were scarcely degraded, volatilized, during flow down the river. The ratio of PFCs with longer chain length such as PFUnDA and PFTrDA in sediment samples were much higher than those of water ones.
著者
豊嶌 啓司 柴田 康弘
出版者
全国社会科教育学会
雑誌
社会科研究 (ISSN:0289856X)
巻号頁・発行日
vol.85, pp.1-12, 2016-11-30 (Released:2018-05-25)

本小論の目的は,社会科で育成される思考の操作を概念の活用と捉え,新たな事実判断の再構成として他者との関係構築思考を評価する問題の開発とその検証である。概念活用の思考評価では,概念的知識の活用による,他者との関係構築思考が重要である。そのための評価枠組みとして「学習者中心のデザイン」(LCD)の援用が有効であることを,指導と評価を通して実証的に明らかにした。成果は以下の3点である。1点目は,従前の社会科では活用としての思考評価は不十分であることを指摘した。2点目は,再文脈化つまり概念的知識の活用による社会科固有の関係構築思考についての評価問題を作成するための,具体的な11個の「足場かけ方略」及び問作スキルを明らかにした。3点目は,これらをもとに開発した評価問題を中学校社会科で実施し,その成果を検証した。その結果,我々が提案する「足場かけ方略」は,生徒が解答しつつ「新たに学ぶ」段階的な思考方略として,社会科の活用としての思考評価において有効であることを実証的に明らかにした。
著者
南浦 涼介 柴田 康弘
出版者
全国社会科教育学会
雑誌
社会科研究 (ISSN:0289856X)
巻号頁・発行日
vol.79, pp.25-36, 2013-11-30 (Released:2017-07-01)

本研究は,生徒が社会科を学習する際の「学習観」に焦点を当てた研究である。現時点でこの「学習する意味」に着目した研究は多くない(Evans,1989,1990;村井,1996;佐長,2012)。しかし,「学習観」の形成と教師が行う実践には大きな関係があり,実践が生徒の「学習観」に与える影響は大きいと考えられる。本研究では,(1)生徒は,1年間の社会科学習を通してどのような社会科学習観を身につけたか,(2)生徒が身につけた「社会科学習観」には,教師のどのような影響があったか,(3)教師は社会科の目的や教育意図を,社会科指導においてどのように込めていく必要があるか,という点について探索的に考察していくことを目的とする。本研究は,いくつかのデータを取り扱っている。1つは,南浦ら(2011)を基にした4月〜3月の1年間におこなった質問紙による量的データである。2つめに,授業実施者である柴田に対するインタビュー,3つめに,授業を受けていた5人の抽出生徒の卒業後のインタビューという質的データである。インタビュー中,生徒たちは,自らの「社会科学習観」に強く影響を与えたこととして,第1に「日常的継続的な学習活動」第2に,教師が行った社会科学習の意味についてのさまざまな言葉がけ,第3に学校環境の変化を指摘した。この事例からは,教師が学習者の「社会科学習観」を変容させるためにはいくつかの要素が必要であることが推察される。第1に,教師は社会科学習の目的を単元レベルのみならず,日常的な学習活動やことばのレベルにおいても学習の目的を入れ込んでいく必要があるということである。第2に,教師は,こうした実践を柔軟に展開していくと同時に,演繹的に自身の教育目標からカリキュラムのレベルでコントロールしていく必要がある。第3に,教師が学校改革の中心的存在となり,学校で支持される「学習観」と教科で支持されるそれを関連づけていくことも重要である。この事例研究の結果から,筆者らは,社会科実践研究は単元レベルのみではなく,さらに具体的な実践レベルとカリキュラム・レベルを関連づけたものにしていく必要性を示した。
著者
中山 博之 加藤 敏江 浅見 勝巳 服部 琢 柴田 康子 荒尾 はるみ 別府 玲子
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.381-387, 2006-08-31 (Released:2010-08-05)
参考文献数
9
被引用文献数
1 3

言語習得前高度難聴で長期間 (3年以上) 人工内耳装用児25名 (6~11歳) と言語習得前あるいは習得中の中等度から重度難聴の補聴器装用児61名 (6~17歳) を対象とし, 自作の各種語音聴取検査と保護者に対して家庭での聞こえに関する質問紙での評価を行い, 語音聴取能を比較検討することにより, 人工内耳適応聴力閾値を推定した。その結果, 難聴のみの単一障害である人工内耳装用児の語音聴取成績は, 0.5・1・2・4kHzの4周波数平均聴力レベルが70dB台の補聴器装用児に相当しており, 4周波数平均聴力レベルが90dB以上の高度難聴児は人工内耳の適応であると考える。また, 4周波数平均聴力レベルが70dB台と90dB台の補聴器装用児の4周波数平均装用閾値は各々41dB, 53dBであったことから, 補聴器調整後も4周波数平均装用閾値が50dB以上の場合は, 人工内耳の適応を考慮するべきであろう。
著者
伊藤 友文 柴田 康二 森田 英憲 杉村 寛 加藤 春哉 小林 幸司 佐々木 岳嗣
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.137-141, 2021 (Released:2021-01-26)
参考文献数
4

従来のHVエンジン始動時ショック制御は,2つのモータジェネレータ(MG)で独立に駆動系の制振を行い,それぞれの定数を実車で適合してきた.今回,実車レスのモデルベース開発実現の為,2つのMGを協調させ制御系全体を制御するモデルを構築し,制振効果の増大が可能な新制御であるMG協調制振制御を開発した.