著者
坂本 光 桑原 久治
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.34, no.12, pp.652-659, 1993-12-25 (Released:2010-09-30)
参考文献数
5
被引用文献数
1

各種布帛の紫外線遮蔽性を調査し, 次の結果を得た;1) 繊維素材としては芳香族ポリエステル繊維, 次いで羊毛が他素材より高い遮蔽性能を有している.2) 布帛の仕様と紫外線遮蔽性の関係は次の通り;(1) 目付の高い布帛ほど遮蔽性が優れている.(2) 通気度の小さい布帛ほど紫外線を遮蔽する.(3) 透け性が小さいほど遮蔽性が高い.(4) 織物の方が編物より遮蔽性が優れている.(5) 使用される繊維がステープルファイバーの方がフィラメントヤーンより紫外線を遮蔽する.(6) フィラメントヤーンでも延伸糸より仮撚加工糸の方が遮蔽性に優れている.(7) 布帛の色相が暗いほど, また濃色であるほど紫外線遮蔽性能が高い.同じ色調であれば明度Lの低下と共に遮蔽性は直線的に向上する.また遮蔽性が小さい原布は改善効果が大きい.
著者
井上 誠章 桑原 久実 南部 亮元 石丸 聡 橋本 研吾 桑本 淳二 増渕 隆仁 金岩 稔
出版者
一般社団法人 水産海洋学会
雑誌
水産海洋研究 (ISSN:09161562)
巻号頁・発行日
vol.84, no.3, pp.187-199, 2020-08-25 (Released:2022-03-17)
参考文献数
43

魚礁効果に関する多くの研究は漁業に依存しない調査データによるものであり,商業漁業によって得られた漁業依存データを用いた研究は少ない.漁獲量および漁獲量を努力量で除して計算されたCPUE(Catch per unit effort)は魚礁効果のほか,操業海域や漁船能力,資源の年および季節変動の影響を受ける.そのためCPUEをそのまま用いた解析からは資源密度にあたえる魚礁効果を偏りなく評価できない.本研究ではメダイ,ヒラマサおよびイサキについて,上記の問題を避けるためCPUE標準化の手法を応用して効果範囲を定量評価した.メダイ資源密度は,魚礁海域では天然海域の約7.0倍であり,効果範囲は魚礁中心から約350 mと推定された.ヒラマサの効果範囲は約100 m,イサキでは魚礁の近接海域に限定されると推定された.
著者
桑原 尚史
出版者
関西大学
雑誌
情報研究 : 関西大学総合情報学部紀要 (ISSN:1341156X)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.95-107, 2022-01-30

本稿は,ヒトの進化過程におけるヒトの情報行動の形成を概観することを目的とした.その結果,本研究においては,ヒトの進化および情報行動の形成を方向付けた要因として次の2つの要因が指摘された.ひとつは,乾燥化および寒冷化という環境の変化の要因である.もうひとつは,ヒトの生態学的地位の低さという要因である.ヒトは,この生態学的地位の低さを,道具の使用および集団の形成という2つの行為で克服し,環境の変化を生き延びた.そして,本研究においては,道具の使用および集団の形成は,発声器官を変化させ,言語を複雑化させ,社会的知性を発達させ,ヒトの脳を進化させたとの考察がなされた.
著者
松井 利郎 桑原 滋 伊福 靖 下田 満哉 筬島 豊
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.116-121, 1991-02-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
12
被引用文献数
2

柑橘果皮油のテルペンレス化を目的として,減圧(4~5mmHg)の蒸留法の適用を試みた.モデル系を用いて,以下のことを明らかにした.1) リモネンとシトラール2成分系で,リモネンの分別蒸留を試みたところ,沸点はリモネン濃度の低下とともに上昇し,特に体積分率が0.4以下で顕著であった.2) リモネン,リナロール,シトラール3成分系においては,リモネンの濃度は60℃まで顕著に減少し,それ以上ではほぼ一定となった.一方,リナロールの沸点は61℃であったことから70℃付近までは含有率が顕著であったが,それ以降では含有率は急激に低下した.従って,目的とする組成のテルペンレスオイルを作製するには抽出温度の設定が重要となることが明らかとなった.つぎに実試料のテルペンレス化を試み,以下のことを明らかにした.3) レモン果皮油のテルペンレス化は60℃, 30分間で最大となり,リモネン含量は約1/26に減少した.一方,シトラールは50℃でテルペンレス化を行ったとき最も効率よく濃縮され,全体の約27%を占めた.4) バレンシアオレンジ果皮油においては,香気寄与の高いリナロールの含量が50℃, 30分間の蒸留で約7倍となり,より芳香性に富むオイルを得ることができた.
著者
桑原 崇通 原 和生
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.119, no.7, pp.610-625, 2022-07-10 (Released:2022-07-11)
参考文献数
86

胆膵疾患は膵管癌や自己免疫性膵炎,胆管癌など多彩な疾患が存在し,その治療方針は異なる.人工知能(AI)アルゴリズムの1つであるdeep learningは,特徴量を抽出することなく直接画像を解析することが可能である.今回われわれはTORIPOD声明などを参考にAI文献の評価チェックリストを作成し,胆膵領域のAI文献を評価した.胆膵領域AIの報告は膵腫瘍・膵囊胞・膵炎診断や検出,予後予測や病理グレード予測など多岐にわたる報告を認めたが,evidenceが高い外的検証を行った報告は少なかった.AIを日常臨床で使用するために薬事承認が必要であるが,それを得るためには前向きに大規模な多施設データを収集する必要がある.
著者
塩野 裕之 桑原 修 前田 元 太田 三徳 宮崎 実
出版者
The Japanese Association for Chest Surgery
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.8, no.7, pp.773-778, 1994-11-15 (Released:2009-11-10)
参考文献数
10

国立療養所刀根山病院外科において縦隔郭清を伴う肺癌切除術 (以下, 肺癌切除術) 後の乳糜胸を10年間で8例経験した.4例は保存的に治癒したが, 残る4例は再開胸術を要した.後者では再開胸術前に脂肪を経口投与することにより, 胸管損傷部位が明らかとなった.そこで術後乳糜胸予防を目的として, 麻酔導入時に経鼻胃管より脂肪 (牛乳) を注入し, 胸管の流量を増加させ, 縦隔郭清時および術野洗浄時に胸管と乳糜瘻が容易に視認できるようにした.最近14ヵ月間の肺癌切除症例55例全例に対してこの方法を併用したところ, 術後乳糜胸の発症は認めず, また注入に伴う合併症はなく, 乳糜胸予防に有効と思われた.
著者
猪股 美沙紀 桑原 亜海 石崎 裕佳 齊藤 展士 平田 恵介
出版者
Saitama Physical Therapy Association
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.21-24, 2022 (Released:2022-06-04)
参考文献数
11

【はじめに】片脚着地動作における非接触型前十字靭帯損傷では膝関節外反の他に体幹側屈が危険因子と言われている。膝関節外反が生じやすい着地環境には傾斜面が想定される。本研究は,傾斜面環境での片脚着地動作において,衝撃吸収時の対応戦略を明らかにすることを目的に動作解析を行った。【方法】成人男女9名にて,傾斜面,および平坦面への片脚着地動作における膝関節と体幹関節角度の違いを比較した。【結果】膝関節外反最大角度は平坦面に比べ,傾斜面で有意に大きかった。着地により骨盤の着地脚側への傾斜,体幹の非着地脚側への側屈角度変化が生じたが,傾斜面の方が有意に小さかった。【考察】傾斜環境では膝関節外反が増大した一方,体幹の動揺を抑える対応が平坦面よりも行われていた。これは,姿勢の平衡維持や視線の安定を図る前庭と視覚の制御により体幹と頭頸部の固定性を高める課題依存的な戦略が傾斜環境で行われた可能性がある。
著者
山﨑 達枝 桑原 裕子 松井 豊
出版者
一般社団法人 日本災害医学会
雑誌
日本災害医学会雑誌 (ISSN:21894035)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.80-88, 2022-04-13 (Released:2022-04-13)
参考文献数
11

【目的】東日本大震災を体験した看護管理職が、災害にどのような点で苦労したのかを把握し、看護管理職の退職意向との関係を探索的に検討する。【方法】同震災発生から4年後に、被災地域内13医療施設77名の看護管理職を対象に個別配布・郵送回収による質問紙調査を実施した。調査期間は2015年6–7月であり、68名から有効回答(88.3%)を得た。【結果】多くの看護管理職が業務多忙による苦労を経験していた。退職したいと思った人は61.8%であり、退職意向に影響する要因として、震災後の職場の雰囲気の悪化や職場の人間関係の板挟みになることによる苦労が影響していた。しかし、看護管理職に行われた心理支援は11.8%にとどまっていた。【考察】被災した看護管理職の苦労として「人間関係の問題」があり、この問題が退職意向に結びついていた。
著者
桑原実 等編
出版者
岩崎書店
巻号頁・発行日
1961

くらしの絵や空想画,物語の絵,等の鑑賞を作品写真(含原色刷)を示して解説。 (日本図書館協会)
著者
齋藤 洋子 富山 芳丈 上甲 宏 岡安 啓介 桑原 淳 西木戸 理子 皆川 京子 海老原 次男 対馬 健祐 富田 慎二 堀田 総一 松本 尚志
出版者
一般社団法人 日本消化器がん検診学会
雑誌
日本消化器がん検診学会雑誌 (ISSN:18807666)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.46-60, 2014 (Released:2014-02-15)
参考文献数
32

上部消化管X線造影検査被験者755人に尿中抗H.p抗体(以下H.p)法とペプシノゲン(以下PG)法を実施し, 読影を前向きに行い, H.p法とPG法の結果と対比した。X線画像上H.p未感染相当正常胃をA1, 慢性萎縮性胃炎をC2-4とした。PG法陽性は三木の基準(PGI≦70.0ng/mlかつPGI/II≦3.0)を用いた。除菌歴なし群は651人(86.2%)であった。H.p法陰性者の割合は40歳未満75%, 40歳代61%, 50歳代44%, 60歳以上31%であった。X線画像上のA1は275人中261人(95%)がH.p法・PG法陰性であり, Cの354人中322人(91%)がH.p法・PG法のいずれが陽性であった。X線画像上H.p未感染相当正常胃粘膜症例の殆どがH.p法・PG法(三木の基準)陰性群であった。現在実施されているX線法による胃がん検診の「異常なし」の判定は, H.p未感染相当正常胃粘膜に限るべきであり, 毎年の受診勧奨は不要である。背景粘膜を読影できる医師が充足できない場合, 画像の撮影と読影が不要で簡便である, H.p法+PG法に一次スクリーニングの位置を譲ることになろう。
著者
越 正毅 桑原 雅夫 赤羽 弘和
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.458, pp.65-71, 1993-01-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
7
被引用文献数
19 9

1980年代の初頭から, わが国の高速道路のいくつかのトンネルや縦断勾配の変化するサグなどが交通容量上のボトルネックになることが知られてきた. 本稿は, これらの地点において観測された交通現象を報告するとともに, ボトルネックとなる理由と渋滞のメカニズムに関する仮説を述べたものである. これらの地点の容量は, 渋滞が発生する前においても通常の単路容量と比べるとかなり低いが, 一旦渋滞が発生すると一段と容量が低下し, 渋滞長が長くなるに従い, ますます低下してしまう. 本稿では, この現象のメカニズムを追従挙動に基づいて分析し, ドライバーが渋滞列の中を走行する時間と周囲の明るさ等が追従挙動と関連していることを示唆している.
著者
横山 能文 森 真理 平手 友章 篠田 邦大 桑原 祐也 宮﨑 太地 大城 一航 金山 朋子 野田 美香 山下 達也 門井 絵美 神田 香織
出版者
The Japanese Society of Pediatric Hematology / Oncology
雑誌
日本小児血液・がん学会雑誌 (ISSN:2187011X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.198-201, 2019 (Released:2019-09-10)
参考文献数
9

10歳女児.発熱,頭痛を主訴に近医を受診した際に,白血球高値,貧血,血小板減少を認め当科紹介受診となった.骨髄検査にてAML(FAB-M2)と診断し,治療を開始した.1コース終了時点で寛解を確認したが,FLT3-ITD陽性と判明し造血幹細胞移植を行う方針となった.初診時陽性であった末梢血WT1mRNAは,1コース終了時より<5.0×101を維持していたが4コース終了時点で1.3×102に上昇を認めた.前処置CY+TBI,GVHD予防FK506+sMTXで臍帯血移植を行い,day32に生着を確認した.Day35で行った骨髄検査では寛解を維持していたが,末梢血WT1mRNAは1.7×102(day34),2.3×102(day39)と上昇を認めた.day40よりFLT3阻害薬sorafenib 200 mg/bodyの内服を開始した.末梢血WT1mRNAはday81より<5.0×101を維持し,その後約2年間sorafenib内服を継続した.現在内服終了後1年が経過し,末梢血WT1mRNAは<5.0×101を維持し,再発を疑う所見を認めていない.本例においてFLT3-ITD陽性AMLに対する移植後維持療法としてのsorafenib内服は,安全かつ有効であったと考えられた.
著者
長尾 多美子 桑原 知巳
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.172-178, 2021-05-25 (Released:2021-11-25)
参考文献数
7

2018年2月に障害者支援施設で発生した感染性胃腸炎のアウトブレイク事例について報告する.当該施設は感染管理専門家が不在のため,発生要因の調査依頼を受け分析を行った.集団感染を検知したのは2月6日で,入所者4名と職員1名の合計5名が発症した.その後,2月14日に収束するまでの8日間で入所者20名(全利用者40名)と短期入所者1名,および職員6名(全職員42名)の合計27名が発症した.アウトブレイク期間の後半4日間の発症者の大部分は職員であった(入所者1名,職員4名).入所者の支援記録から2月4日に発熱,軟便,黒色吐物の嘔吐により転院した入所者が確認され,また介助した職員も発症していたことから,本入所者が感染源と考えられた.流行曲線は一峰性であったことから,集団感染検知後の感染対策は機能したと考えられた.本アウトブレイク事例では,①流行期に発熱・消化器症状を呈する入所者への初期対応ができていなかったこと,②発症した利用者の嘔吐や下痢の処理を担当した職員が発症したこと,③利用者の発症が収束した後も職員の発症が継続したことから,感染管理専門家が不在の障害者支援施設等においては「職員に対する継続的な感染対策教育の必要性」が重要であると考えられた.

1 0 0 0 人間素描

著者
桑原武夫著
出版者
筑摩書房
巻号頁・発行日
1976
著者
黒田 藍 村山 洋史 黒谷 佳代 福田 吉治 桑原 恵介
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.21-097, (Released:2022-02-28)
参考文献数
35

目的 孤立や孤独を防ぎ,かつ食事を確保する方策として食支援活動が行われてきたが,その実践に関する学術的知見は乏しい。本稿では,住民がボランティアで食支援活動を行う地域食堂のコロナ下での活動プロセスを記述し,地域食堂の活動継続が利用者や住民ボランティアにもたらした効果について予備的に検証することを目的とした。方法 本研究は東京都内の独居高齢者が多く居住する大規模団地にて,飲食店と同水準の食品衛生管理体制のもと運営されている地域食堂「たてキッチン“さくら”」で筆頭著者が実施するアクションリサーチの一部である。2020年2月から同年5月までの地域食堂の活動を報告対象とした。活動プロセスは運営の活動記録,運営メンバーと住民との対話記録,活動時の画像記録を用いて記述した。地域食堂の利用住民10人と住民ボランティア6人との対話記録をKJ法に基づき分類し,彼らが認識する地域食堂の活動継続がもたらした効果を評価した。活動内容 対象期間中に地域食堂の役員や住民ボランティアは定期的に会議等を行い,市民向け新型コロナウイルス感染症対策ガイドや保健医療専門職の助言,利用者の意見等を参考にしながら,運営形態の検討と修正を続けた。結果として,地域食堂は高齢住民ボランティアが中心となって住民の食と健康を守るために週5日の営業を継続した。店頭の販売個数は形態変更に伴い5月に半減した一方(2020年2月4,670個,同5月2,149個),各戸への配食数は需要の増加に伴い3月以降増加した(2020年2月301個,同5月492個)。事後評価の結果,地域食堂の新型コロナウイルス感染症対策は外食業の事業継続のためのガイドラインを遵守していた。活動継続の効果として,地域食堂利用者では〈食の確保〉,〈人とのつながり〉,〈健康維持増進〉の3つのカテゴリー,住民ボランティアでは〈社会とのつながり〉,〈健康維持増進〉の2つのカテゴリーが抽出された。結論 住民ボランティアが,住民の食と健康を守るとの活動理念を確認しながら,新型コロナウイルス感染症の対策情報等を参照し,ステークホルダーを巻き込み,一般に求められる水準の感染症対策を取り入れて食支援活動を継続していた。この取組継続は,住民の食確保や健康支援に加え,住民同士のつながり維持に役立ったことが示唆された。