著者
小森 由美子 見田 貴裕 二改 俊章
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.245-250, 2008 (Released:2009-02-16)
参考文献数
21
被引用文献数
2 2

870名の非医療従事者ボランティアを対象に鼻腔内ブドウ球菌保菌について調査した結果,223名から248株のメチシリン耐性株(MRSA 12株,MRC-NS 236株)が分離された.中学生以上ではどの年齢層においても耐性菌の保菌率は23~25%であったが,小学生は40.9%,就学前の小児は70.0%と高い検出率を示した.同居家族から複数のメチシリン耐性菌が分離されたケースを抽出したところ38家族が該当した.これに医療従事者の家族を含む組合せを加え,計45家族について家族内伝播が疑われた耐性株96株でパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)を行った.ボランティアを「親子」,「夫婦」,「兄弟姉妹」,「祖父母と孫」という関係性から見ると58組の組合せが存在し,このうち24組はPFGEパターンが「同一または極めて関連性が高い」と考えられる菌株を保菌していた.特に小学生以下のボランティアを含む組合せではPFGEパターンの一致率が高く,家族内でのメチシリン耐性菌伝播の要因のひとつに「小児」の存在があることが示唆された.しかし医療従事者を含む組合せにおけるPFGEパターンの一致率については,非医療従事者同士の組合せと差が見られなかった.
著者
卓 興鋼 吉田 佳督 大森 豊緑
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.254-266, 2011
被引用文献数
16

近年,わが国においてもエビデンスに基づく医療(EBM)の提供が求められており,その根拠となる学術論文のシステマティックレビューおよびメタアナリシスの重要性は,ますます高まっている。システマティックレビュー報告は,疾病の診断および予後,予防対策などに広く活用されている。これまでいくつかの研究でシステマティックレビュー報告の質が評価された結果,報告の質は全体的に不十分であった。1996年,メタアナリシス報告の質を向上させるために,国際研究グループが「QUOROM(メタアナリシス報告の質)声明」という指針(guidance)を作成した。さらに,QUOROMの項目等について検討してきた運営委員会は,2009年6月,その改訂版を作成し,「PRISMA(システマティックレビューおよびメタアナリシスのための優先的報告項目)声明」と名づけた。このPRISMA声明では,システマティックレビューの概念および実践面におけるいくつかの発展が見られる。本稿では,著者らがこれまでシステマティックレビューおよびメタアナリシスを行ってきた経験を踏まえ,PRISMA声明の概要と展望について概説する。
著者
山本 喜一郎 大森 正明 石井 清士 森岡 孝朗
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.7-10, 1972-04-30 (Released:2010-03-09)
参考文献数
6

青森県三戸町泉山地先の馬淵川で採集した下りウナギにサケまたはカラフトマス下垂体を投与し十分成熟させた10個体についてその孕卵数を数えた。その結果, 体長71.8cm卵巣採集時の体重860g, 成熟度指数54.6%のもので1, 166, 070粒, 体長85.5cm体重2, 020g, 成熟度指数66.3%のもので3, 023, 040粒と算定され, 自余の個体の孕卵数はこの両者の間の数値を示した。
著者
金森 務 片寄 晴弘 新美 康永 平井 宏 井口征士
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.139-152, 1995-01-15
参考文献数
17
被引用文献数
13

本稿ではジャズセッションシステムのための音楽認識処理について述べる。ジャズセッションは、演奏者および聴取者がライブ演奏を楽しむために行われる音楽形態である。メロディー、ハーモニー、リズムなどを通じて、演奏者の意図の交換が行われている。我々はリアルタイムのノンバーバル・コミュニケーションの研究対象として、音楽セッションのモデル化とそのシステム化を行っている。音楽セッションにおける奏者間の伝達要素を機能的に、1)論理的制約:事前の打ち合わせや音楽理論によって全体の進行を方向づけるメッセージ、2)感性惰報:奏者の心理的な状態を示すメッセージでそれ自体は強い制約ではなく、応答については相手の性格に大きく委ねられるもの、に分類し、これらのメッセージの抽出機構と反応機構に墓づいたセッションシステムの構築を行っている。音楽近知覚という問題を一般性を特っていると思われる部分と個性による部分に分けることで、セッションシステムのユーザ・インタフェースという観点から扱いやすい形に整理した。また、音楽の情動を扱うための枠組みとして、音楽の期待感を扱う認識、分かった時点での喜ぴを扱う認識、マクロ的に情動を扱う認識の機構について述べる。システムはリアルタイムで動いており、音楽聴取部では筆者の一人である音楽家の実践的経験則をインプリメントしている。ここでは、昔楽聴取部についての実験結果を示した。
著者
森田 桂
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.375-381, 1977-05-01 (Released:2009-11-13)
参考文献数
67
被引用文献数
3 3

The unpleasant odor of sulfur-containing organic substances has long been an annoyance to human beings as exemplified by the fact that the stench issued by the skunk is represented by 1-butanethiol and that many other mercaptans and hydrogen sulfide are currently under severe environmental regulations.By the advent of recent chromatographic separation techniques together with micro-analytical tools, a variety of pleasant and unpleasant odorous substances have been isolated and characterized as being the aroma-bearing substances of many kinds of foods.The present paper reviews these sulfur-containing substances in relation with their characteristic aroma of beef, “shiitake” an edible mushroom (Lentinus edodes Sing.), “sho-yu” a Japanese Soy-Sauce, tomato, potato and potato chips, coffee, cocoa, roasted nuts, bell peppers, and others.
著者
大森章男 永瀬 謙二
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日泌尿会誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.77, pp.1331-1342, 1986
被引用文献数
1

カルシウム含有尿路結石症のrisk factorである高カルシウム尿症について検討した.まず,本邦健康成人15名を対象として,Ca制限食摂取後,一定の絶食期間をおいた上,経口Ca負荷を行い,その前後におけるCaおよびc-AMPの排泄動態から,当施設における正常域をつぎのごとく設定した.すなわち,絶食時尿中Ca排泄量8.04±6.0mg/100ml GF×100,Ca負荷後尿中Ca排泄量19.02±6.4mg/100ml GF×100,絶食時尿中c-AMP排泄量19.02±6.4mg/100ml GFx100,絶食時尿中c-AMP排泄量3.28±1.44nmol/100ml GF,Ca負荷後尿中c-AMP排泄量2.20±0.88nmol/100ml GFであった.正常Ca尿結石患者(29例)では,健康成人と同様の変動を示し,これらの患者にはCa代謝に異常を思わせる所見がなかった.しかしながら,高Ca尿結石患者(31例)では絶食時尿中Ca,c-AMP共正常で,Ca負荷後尿中Caが増加し,c-AMPは正常のもの(Type1),絶食時尿中Ca,c-AMP共に高値で,Ca負荷後尿中Caはさらに増加し,尿中c-AMPは正常値に戻るもの(type2a),絶食時尿中Caは高値を示すが,c-AMPは正常で,Ca負荷後尿中Caの増加は軽度で,c-AMPは依然正常域にあるもの(type2b),の3つの病型にわけられた.このうち,type1は青壮年の男子に多く,蓚酸Caを主成分とする結石を有し,腸管におけるCa吸収亢進が病因と考えられた.type2aは女子に多く,リン酸Caを主成分とする結石を有し,腎からのCa漏出によるものと思われた.type2bは高年齢層に多くみられ,骨吸収亢進が関与していることが示唆された.さらに結石型原発性上皮小体機能亢進症患者(8例)につき同様の検索を行ったところ,Ca負荷後も尿中c-AMPは高値のままで,上皮小体機能の抑制がみられず,さらに血清Caが対照例,高Ca尿症例に比し有意に高度に増加する特徴を示した.この事実は原発性上皮小体機能亢進症の診断に有用であると思われた.
著者
森田 克行
出版者
一般社団法人 日本考古学協会
雑誌
日本考古学 (ISSN:13408488)
巻号頁・発行日
vol.10, no.15, pp.139-148, 2003-05-20 (Released:2009-02-16)

今城塚古墳は,淀川流域に所在する古墳時代後期の大形前方後円墳として知られ,二重の周濠をもち,総長350mを測る古墳の規模から三島古墳群の盟主墳として注目されてきた。また『記紀』や『延喜式』などの史料にある継体天皇の「(三島)藍野陵」に比定されるなど,早くからその重要性が指摘され,昭和33年には史跡に指定されている。しかしながら古墳の実態については,近年まで本格的な調査もおこなわれず,簡便な測量図とわずかに採集された埴輪類のほかには有用な資料も少なくて,永らく「まぼろしの藍野陵」であった。高槻市教育委員会では,史跡整備事業の一環として,平成8年から詳細測量調査並びに規模確認調査を継続的に実施したところ,墳丘,造出,内濠,内堤,外濠について,その形状や規模など様々なデータが得られた。また,あらたに内堤で百数十体にものぼる形象埴輪で構成される大規模な埴輪祭祀区が検出されるなど,多大な調査成果がもたらされた。その一方で,伏見地震や戦国時代の城砦構築による古墳の改変の様子が明らかになるなど,「荒陵」と揶揄された今城塚古墳のベールが漸く剥がされてきた,と言ってよい。継体陵論とのかかわりでは,新池遺跡での調査成果とも相まって,古墳の時期比定の作業がすすみ,太田茶臼山古墳(現継体陵)が5世紀中頃,今城塚古墳が6世紀前半の築造であることがほぼ確定し,今城塚古墳を「藍野陵」とみる可能性はますます高まってきた。今後の調査並びに出土埴輪の整理が進捗し,今城塚古墳の実態が明らかになれば,大王陵の研究に大きく寄与するのみならず,古墳時代の解明にむけても,貴重な定点が得られることにもなろう。
著者
深山 貴文 高梨 聡 北村 兼三 松本 一穂 山野井 克己 溝口 康子 安田 幸生 森下 智陽 野口 宏典 岡野 通明 小南 裕志 吉藤 奈津子
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.130, 2019

<p>フィトンチッドとも呼ばれる森の香り物質は、主にゴム様の香りのイソプレン(C<sub>5</sub>H<sub>8</sub>、以下ISO)と、樹脂香のα-ピネンに代表される複数のモノテルペン(C<sub>10</sub>H<sub>16</sub>、以下MT)からなる。ISOは主に広葉樹、MTは針葉樹の葉から大量に放出され、その量は人為起源の揮発性化合物より多いため、地球のオゾンやエアロゾルの原因物質として非常に重要であるが観測例は少ない。本研究では、2015年12月から2018年12月までの3年間、森林総合研究所(KHW、YMS、FJY、API、SAP)と琉球大学(OKI)の全国6林分の微気象観測タワーサイトにおいて230回、日中の森林大気中のISOとMT(主要8種の合計)の採取を実施し、濃度の季節変動特性と気温-濃度関係の評価を行った。ISOはコナラ-アカマツ林のYMS、MTはスギ-ヒノキ林のKHWで最大値が観測され、主要樹種が放出源となっていると考えられた。全サイトで最高気温が観測された8月のMT濃度は高かったが、亜熱帯のOKIは8月、暖温帯のYMSとKHWは5~6月、冷温帯のFJY、API、SAPは7月にピークが観測された。この違いは、亜熱帯のOKI以外ではMTが冬季に葉内に蓄積され、北方ほど放出開始直後の高放出の時期が遅れて生じている可能性が考えられた。</p>
著者
目崎 孝昌 佐竹 利子 福森 武 池田 善郎
出版者
The Japanese Society of Agricultural Machinery and Food Engineers
雑誌
農業機械学会誌 (ISSN:02852543)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.61-71, 2005-09-01 (Released:2010-04-30)
参考文献数
12

米粒における短時間の水の移動に関する研究は, 洗い仕上げ無洗米のような精米後の処理技術を開発するために重要である。米粒内への吸水速度は, 乾燥や精米後の表面処理状態によって大きく影響を受けることが予測される。しかしながら, 微視的な穀粒構造の中で水移動を観察することは困難であった。本研究では, 液体窒素による急速冷却効果を利用して, 浸透水の氷結晶化による微細構造の変化をとらえ, 精白米中の吸水現象を可視化することを試みた。その結果, 精白米のデンプン胚乳 (デンプン貯蔵組織) では, まず水は複粒デンプンを通過し, 二次的に単粒デンプンを通って浸透した。さらに, 白米表面に糊粉層を残すと穀粒への吸水が妨害されることが確認され, アリューロン層を残すことは水浸入の防止策となるものと考えられる。