著者
森谷 ★ 小田 史郎 中村 裕美 矢野 悦子 角田 英男
出版者
日本バイオフィードバック学会
雑誌
バイオフィードバック研究 (ISSN:03861856)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.61-70, 2002-09-22 (Released:2017-05-23)

芳香のセラピー効果の判定には,主観的な感情による評価と客観的な生理的効果の両面から確認する必要がある.私たちは,クレペリンテストを45分間負荷した後,カモミール茶(または同量・同温の白湯)を飲ませ,自律神経機能(心電図R-R間隔データと体温)と感情指標(質問紙MCLによって測定した快感情,リラックス感,不安感)の変化を同時に測定した.カモミール茶を飲んだ後にリラックス感得点が上昇した.一方,自律神経機能では心拍数と交感神経活動の指標とされるLF/HF比の低下が大きく,末梢皮膚温の上昇が大きかった.カモミール茶を飲んだ後のリラックス感得点の変化量と自律神経機能の変化量の間に,有意な相関が認められた.これらの結果から,客観的に評価される生理指標の値と主観的な感情得点がかなり良く対応すると考えられる.
著者
宇野 彰 春原 則子 金子 真人 粟屋 徳子 片野 晶子 狐塚 順子 後藤 多可志 蔦森 英史 三盃 亜美
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.245-251, 2010 (Released:2010-08-31)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

本研究の目的は, 発達性ディスレクシア (DD) と後天性の大脳損傷によって生じる失読失書例との共通点と相違点について要素的認知機能の発達や局在化に関して検討することである. DD群は10名の右手利き例である. 失読失書例は右利きの男児2名である. 失読失書症例KYは8歳にてモヤモヤ病術後, 脳梗塞にて軽度失語症を発症し, その後軽微な失語症とともに失読, 失書症状が認められた発症半年後から追跡している症例である. 症例MSは, 8歳時の脳梗塞により健忘失語が観察された10年以上追跡してきている現在21歳の症例である. いずれも, 失語症状は軽微で失読失書症状が中心となる症状であった. SLTAではDD群, 失読失書例ともに読み書きに関連する項目以外は定型発達児群と差がなく音声言語にかかわる項目は正常域であった. DD群における局所血流低下部位は左下頭頂小葉を含む, 側頭頭頂葉結合領域であった. また, 機能的MRIを用いた実験により, 左下頭頂小葉にある縁上回の賦活量に関して典型発達群と比較して異なる部位であった. 一方, 失読失書2例における共通の大脳の損傷部位は左下頭頂小葉であった. DD群ではROCFT (Rey-Osterrieth Complex Figure Test) において遅延再生得点が平均の-1SDよりも得点が少なかったが, 失読失書2例においてはともに得点低下はなかった. 一方, 発達性ディスレクシアと後天性失読の大脳機能低下部位は類似していたが, 非言語的図形の処理能力は, 発達性ディスレクシア群で低く, 後天性失読例では保たれていた. 後天性言語的図形である文字と非言語的図形の処理は, 少なくとも8歳までの発達途上で機能が分離されてきているように思われた.
著者
石井 正則 金田 健作 関 博之 小林 直樹 八代 利伸 小林 毅 吉田 茂 栄 春海 森山 寛
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.604-613, 1994-10-15 (Released:2011-08-10)
参考文献数
4

めまいや耳鳴を主訴とした患者の中には, 症状の増悪に患者の心理的因子や環境因子が関係することがあり, その治療には心身症としての側面を考慮する必要がある。とくにメニエール病では, ストレスが発症に関与していることが多く, ときとしてその治療に難渋することもある。そこで, 心身症や神経症に対して優れた臨床効果の報告がある抗不安薬 (Ethyl Loflazepate, メイラックス ®) を使用し, メニエール病を中心にめまいや耳鳴を主訴とした疾患に対してその臨床効果を検証した。その結果, この薬剤の内服により動揺感, 悪心・嘔吐, 耳鳴の大きさなどにその改善度や有用率が高いことがわかった。しかも心理検査のCMI検査や健康調査表でも服用後にCMIの値や健康調査の値が有意に低下することを認めた。以上により抗不安薬であるメイラックス ® が自律神経症状や動揺感を主体としためまい感や耳鳴の大きさに対する自覚症状を和らげる効果を示すことがわかった。
著者
森 暢平 河西 秀哉 茂木 謙之介 舟橋 正真 松居 宏枝 加藤 祐介
出版者
成城大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

日本の立憲君主制研究は、「日本史」の枠組みで検討されるか、英国との比較のなかでしかなされてこなかったのが現状であり、日本の立憲制のモデルになったドイツとの比較があまり行われてこなかった。そのため本研究は、ドイツの公文書館に所蔵される史料および日本の宮内公文書館の史料を中心に、ドイツ人研究者を交えて、日独の立憲君主制の比較研究を行う。具体的には、(1)新たな立憲君主制論の構築、(2)「宮廷システム」をドイツからの移転という視点で捉え直す研究、(3)皇族の位置づけをドイツの模倣という観点から再検討する研究の3つの分野から研究をすすめる。
著者
小山 直人 森 幹大 中井 宏施 北川 忠生
出版者
日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.81-86, 2011

Genetic disturbance in wild populations of Medaka (Oryzias latipes) has resulted from the introduction of populations originating from commercial strains. To clarify the genetic composition of orange-red type and wild type commercial strains of O. latipes ('himedaka' and 'kuromedaka', respectively), polymerase chain reaction-restriction fragment length polymorphism (PCR-RFLP) and sequencing analyses of the mitochondrial cytochrome b gene were conducted for Medaka populations cultured in 2 fish farms and others purchased from 21 aquarium fish shops. All 'himedaka' populations showed a high frequency of the B27 mitotype, an original mitotype of 'himedaka', and a low frequency of the B1a mitotype, an introduced mitotype from wild populations in Okayama or Nara Prefectures. 'Kuromedaka' populations, originating from cultured populations, were characterized primarily by the B27 and B1a mitotypes, being a result of hybridization between wild populations and 'himedaka'. All 'kuromedaka' populations originating from wild populations had their own native mitotypes, although some also had the B1a mitotype, which was inferred as being of 'himedaka' origin.
著者
森 将輝 渡辺 利夫
出版者
日本基礎心理学会
雑誌
基礎心理学研究 (ISSN:02877651)
巻号頁・発行日
pp.37.3, (Released:2018-12-06)
参考文献数
37

People are generally unable to correctly determine the fixation point from the gaze direction when facing another person. This study investigated this tendency from the viewpoint of the anisotropy of space. Experiment 1 showed that compared with the physical space, the gaze perceptional space was 1.227 times larger laterally and 0.516 times narrower sagittally, suggesting that the gaze perceptional space has an orthotropic property. Furthermore, this space had an anisotropic property in the oblique direction. In Experiment 2, the space was constructed from the verbal cues of distance and angle, with the same size as the physical space in Experiment 1. Compared with the physical space, the space constructed from the verbal cues was 0.866 times larger laterally and 0.783 times narrower sagittally. These results show that the gaze perceptional space differs from the space constructed by verbal cues in terms of the degree of anisotropy. They also suggest that gaze direction was not judged on the basis of quantitative verbal representation concerning distance and angle.
著者
森元 逞 田代 敏久 竹澤 寿幸 永田 昌明 谷戸 文廣 浦谷則好 鈴木 雅実 菊井 玄一郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.37, no.9, pp.1726-1735, 1996-09-15
参考文献数
21
被引用文献数
5

日本語から英語へ翻訳可能な音声翻訳実験システム(ASURA)を開発した. ASURAでは 分野間の移植性を確保できるよう 一般的な日本語話し言葉の表現を網羅するとともに 音声認識と言語翻訳のコンポーネントのいずれも 名詞や動詞などの分野に依存する辞書項目を容易に入れ替え可能な構成としている. また 音声認識や言語翻訳にともなって発生する暖昧さ(複数の候補)に対処するため 正しい候補を効率良く選択できるようにコンポーネント間 サブコンポーネント間で機能分担を行い また候補の探索メカニズムを組み込んでいる. 本論文では このようなASURAのシステム構成について述べ また システムの性能評価を行い このシステム構成の有効性を示す.We have developed the experimental speech translation system ASURA, which translates from Japanese to English. In order to keep high portability to various domains, most of the common expressions in spoken Japanese are covered, and both the speech recognition and language translation components are constructed so that domain-dependent lexical items such as nouns and verbs are easy to replace. Furthermore, all of the components and sub-components in the system share functionalities so that they can effectively reduce ambiguities created in the course of speech recognition and language translation processing. The candidate search mechanisms are also incorporated for the same purpose. This paper describes the configuration and performance evaluation of the system, and demonstrates the effectiveness of the configuration.
著者
桜井 雄太 森 貴久
出版者
帝京科学大学
雑誌
帝京科学大学紀要 = Bulletin of Teikyo University of Science (ISSN:18800580)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.11-15, 2016

We investigated whether Japanese land snails like hydrangea in rain season, which is a typical image for Japanese. Wesurveyed five sites in Uenohara, Yamanashi, central Japan, to collect land snails and record vegetation between May andJuly, 2006. We found more than 400 snails of eight species, most of which were Euhadra peliomphala and Acusta despectasieboldiana. E. pelimphala were found on leaves of hydrangea more frequently than expected from vegetation at the sites,whereas A. despecta sieboldiana were frequently found on other leaves of plants than hydrangea, cherry and Poaceae grass.We also tested whether E. pelimphala prefer hydrangea leaves to cherry or Poacea leaves by experiments in a laboratory, andfound no preference of hydrangea to other species. These findings suggest that the image of land snails on hydrangea duringrain season is a biologically correct image at least for E. pelimphala , but the snail is not necessary prefer hydrangea leavesmuch better to other plants.
著者
升田 裕樹 岡田 睦 鈴木 浩文 森田 晋也 郭 江 山形 豊 林 偉民
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会学術講演会講演論文集 2014年度精密工学会秋季大会
巻号頁・発行日
pp.57-58, 2014-09-01 (Released:2015-03-01)

X線望遠鏡では微弱なX線を観測するために反射鏡の形状精度,表面粗さは高精度なものが要求される.ダイヤモンド工具による超精密切削は研磨面に匹敵する表面粗さを短時間で得られる.近年,無電解Niおよび電解Niにおいて1mm程度の厚膜めっきが可能となった.そこで,本研究は電解ニッケルメッキ試料を超精密ダイヤモンド旋削し,送りや工具摩耗による試料表面粗さの変化や工具の摩耗について実験的に調べた.
著者
森下 英理子
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.774-783, 2018

<p>ワルファリンに代わる新しい経口抗凝固薬として直接経口抗凝固薬(DOAC)が登場したが,大出血の合併症は依然として認められ,より出血リスクの少ない抗凝固薬の候補として近年第XI因子阻害薬が注目されている。静脈血栓塞栓症(VTE)を発症した患者の約2~3割でがんの合併を認める。最近,担がん患者のVTE再発または大出血の複合アウトカムを検討した国際大規模臨床試験にて直接活性化第X因子阻害薬エドキサバンが低分子へパリンに対して非劣性であることが明らかにされた。また,抗凝固薬の重大な副作用として出血があり,緊急中和治療は重要な問題である。最近,ワルファリンの中和剤として4因子プロトロンビン複合体製剤が利用できるようになり,DOAC内服患者の中和剤としても期待できる。さらに,ダビガトランの特異的中和剤としてイダルシズマブが登場し,ダビガトランの抗凝固作用を迅速かつ完全に中和することが明らかとなった。</p>
著者
有瀬 和美 西崎 紗矢香 森田 珠恵 八木 祐助 武内 世生
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.422-427, 2015 (Released:2016-01-26)
参考文献数
9
被引用文献数
1

自動尿量測定器によって耐性菌が伝播する危険性は以前から指摘されている.2011年11月,メタロβラクタマーゼ陽性のS.maltophiliaが10日間で4例検出された.当該病棟にある自動尿量測定器の細菌培養により,S.maltophiliaは検出されなかったが,メタロβラクタマーゼ陽性のMDRPが検出された.自動尿量測定器の使用は危険と考え,廃止に向けての介入を開始した.まず,病院内にあるすべての自動尿量測定器の細菌培養を行い,MDRP, S.maltophilia,およびESBL産生大腸菌が検出されたため使用中止すべき,と院内に広報した.その後,診療科別の自動尿量測定器使用患者数と蓄尿患者数を毎月集計し,公表する事とした.さらに,自動尿量測定器の使用目的や廃止の可能性について,各診療科医師や病棟看護師と個別に検討した.その結果,病院全体の自動尿量測定器使用患者数は,2011年11月の86人から,2012年6月には2人に減少した.そして,2012年7月末にすべての自動尿量測定器を撤去した.蓄尿患者数は,2011年11月の10人から,2012年6月には4人に減少した.その後,蓄尿は検査のために指定された日のみに行うだけとなった.危険の「見える化」,実態調査,調査結果の広報,スタッフとの個別検討などにより,自動尿量測定器の廃止を達成できたと考える.
著者
森村 進
出版者
一橋大学大学院法学研究科
雑誌
一橋法学 (ISSN:13470388)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.207-221, 2002-06

論文タイプ||研究ノート
著者
中川 裕志 湯本 紘彰 森 辰則
出版者
言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.27-46, 2003-01

本論文では,専門用語を専門分野コーパスから自動抽出する方法の提案と実験的評価を報告する.本論文では名詞(単名詞と複合名詞) を対象として専門用語抽出について検討する.基本的アイデアは,単名詞のバイグラムから得られる単名詞の統計量を利用するという点である.より具体的に言えば,ある単名詞が複合名詞を形成するために連接する名詞の頻度を用いる.この頻度を利用した数種類の複合名詞スコア付け法を提案する.NTCIR1 TMREC テストコレクションによって提案方法を実験的に評価した.この結果,スコアの上位の1,400 用語候補以内,ならびに,12,000 用語候補以上においては,単名詞バイグラムの統計に基づく提案手法が優れていることがわかった.
著者
縄手 雅彦 佐藤 基次 森本 大資 藤川 浩一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.90, no.3, pp.763-770, 2007-03-01
被引用文献数
5 3

上肢の機能に障害がありキーボードを使用して文字入力できない人のためのソフトウエアキーボードに必要な機能を検討した.アテトーゼなどにより机上のマウスを操作できない場合には文字入力はハンディマウスやトラックボールマウスを用いてソフトウェアキーボードにより行われることになるが,標準のスクリーンキーボードはキーサイズが小さく使いづらいことが問題になる.そこで,日本語入力として効率の良い50音順配列をもち,カーソル移動を移動平均法により平滑化する機能を実装したキーボードを開発した.上肢の機能障害をもつ被験者2名にハンディマウス及びトラックボールマウスを用いて文字入力実験を行ってもらったところ,移動平均を用いると文字入力が改善されることが確認された.文字入力にかかる時間には大きな変化はないものの,カーソル移動において行き過ぎることが減少し,ねらったキー上でクリックしやすくなることにより文字入力が楽になったと推測される.