著者
小郷 直人 池田 哲臣
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 35.21 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
pp.9-12, 2011-06-09 (Released:2017-09-21)
参考文献数
6

放送事業用の連絡無線はVHF帯(160MHz帯)を使用し,報道や番組制作における連絡手段として利用されている.本稿では,携帯型無線機をモデル化し,人体頭部近傍に無線機を設置したときのアンテナ利得,放射パターンへの影響について数値人体モデルを用いて検討した.その結果,人体頭部とアンテナの距離が100mm以上離れていれば水平面内のアンテナ利得,および放射パターンはアンテナ単体と比較して劣化がほとんどないことがわかった.
著者
山浦 潔 伊藤 文就 池田 修 長谷川 匡俊
出版者
一般社団法人 日本接着学会
雑誌
日本接着学会誌 (ISSN:09164812)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.92-96, 2008-03-01 (Released:2014-06-30)
参考文献数
9
被引用文献数
1

汎用的樹脂ポリエチレンテレフタレート(PET)上にインジウム-錫酸化物(ITO)を被覆した導電性透明フィルムに紫外線を照射し,PETの劣化に対するITOの影響を調べた。試料は劣化による重量減少を示し,ITOで被覆されたPETフィルムの重量減少率はPETフィルム単独の場合を上回っていた。さらに,XPSの測定結果はITOとの界面でPETフィルムが分解している事を示した。両結果とも,ITOによる分解促進を示唆する結果である。また,可視紫外光の照射によるITO及びTiO2電極の電位変化を水溶液中で測定したところ,照射によって電極電位は両者とも卑電位方向に変化した。これらの結果から上述のPETの分解がITOの光触媒的な作用(酸化)である可能性がある。この作用を考慮し,エポキシ樹脂接着剤を用いて接着したITOと樹脂フィルムに紫外光照射を行ったところ,接着強度にもITOの影響が観察された。
著者
川合 康央 池田 岳史 益岡 了
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第64回春季研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.282, 2017 (Released:2017-06-29)

本研究は,地域の歴史的文化を伝えるための街並み景観シミュレーションシステムを開発するものである.対象地区として,旧東海道における藤澤宿(現在の神奈川県藤沢市)を選定し,開発環境としてゲームエンジンであるUnreal Engineを採用した.建築物や都市施設などの空間構成要素のモデルデータを3DCG制作環境で作成するとともに,会話可能なキャラクターも再現することとした.宿場町を自由に行動可能なようなインタラクションとして,直感的な動作可能なようゲームパッドによる操作を実装した.本システムは,藤沢市ふじさわ宿交流館において,2016年5月より常設展示され,これまでに3回のシステム更新を行っている.本研究は,江戸時代後期の旧東海道「藤澤宿」を市民に分かりやすく伝え,地域の歴史文化に興味関心を持たせることで,地域の文化継承を支援するシステムを開発することであり,およそ当初の目的を達成したと考えられる.今後,他の宿場町でも自由に再現可能なプラットフォーム化を計画している.
著者
平 智 松本 大生 池田 和生
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

ミツバアケビ果実生産に対する自家不和合性の影響を明らかにすることを目的として、一連の受粉試験を行った。受粉雌蕊の花粉管を観察したところ、自家花粉管は胚珠付近にまで到達していたことから、ミツバアケビは後発型自家不和合性を示すものと考えられた。ミツバアケビの6栽培系統間における交雑(不)和合性を調査したところ、いずれの系統も自家不和合であること、一部の交雑は不和合であることが明らかになった。交雑和合な系統の雄花を用いて人工受粉を行った際の結実率は30%以上であったが、開放受粉での結実率は1%以下であった。また、自家花粉を25%以上含む混合花粉を受粉すると、結実が阻害されることが明らかになった。
著者
池田 透
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.159-170, 2001-01-15 (Released:2018-02-09)
参考文献数
23

日本各地で野生化しているアライグマの現状とその管理課題について考察を試みた.アライグマは雑食性で多様な環境で生息可能であり,逃亡・遺棄によって野生化が生じると,人間を怖れないために人間の生活圏内でも条件にさえ恵まれれば急激に増加する可能性を持っている.また,日本には天敵も存在しないためにアライグマが野山に拡散するに連れて在来の生物へも影響が及び,生態系の撹乱が危惧される.生物多様性条約への批准を機に日本でもようやく移入種問題が取り上げられるようになったが動きは遅く,現在のアライグマ対策は地方自治体が主体となって展開している.農業被害に端を発した北海道の対策は,生態系の保全を念頭においた科学的対策構築へと展開してきたが,法的規制に関連する予防措置や対策継続のための長期的予算確保など問題も多く残されている.今後は移入種問題を危機管理の問題としてとらえ,移入種に対する管理指針の確立とガイドラインの制定とを含めて国家的対策としての体制を整え,自治体との連携作業で事態に対処することが望まれる.
著者
清水 誠治 富岡 秀夫 小木曽 聖 石田 英和 眞嵜 武 池田 京平 上島 浩一 横溝 千尋 高島 英隆
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.423-430, 2018-04-25

要旨●ヒト腸管スピロヘータ症(human intestinal spirochetosis;HIS)の自験例43例について臨床的検討を行った.41例は生検組織またはEMR標本のHE染色で偽刷子縁の所見により,2例は内視鏡検査時に吸引した腸液の直接塗抹で診断された.症状の有無別では無症状例が31例,有症状例が12例であった.生検は主にポリープやびらんから採取され,組織診断は低異型度管状腺腫13例,過形成性ポリープ8例,炎症性変化7例,過形成性結節4例であった.有症状12例中9例は他の疾患が判明し,3例はアメーバ性大腸炎を合併していた.他の原因疾患がみられなかった3例の内視鏡所見は,右側結腸を中心とした半月ひだの浮腫と発赤であった.その内2例では慢性下痢がみられており,腸液の直接塗抹でHISと診断され,遺伝子解析でBrachyspira pilosicoli(BP)が同定された.抗菌薬による治療は1例で行われたのみで,他の症例は無治療で症状が改善していた.HISについての文献的考察を行った.
著者
池田 彩子
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.14, no.12, pp.539-545, 2014 (Released:2017-02-01)
参考文献数
16

ビタミンK代謝に及ぼすビタミンEの影響を明らかにするために,ラットのビタミンK濃度に対するトコフェロール摂取の影響を調べた。ラットにα-トコフェロール(αT)添加飼料を6週間摂取させたところ,肝臓以外のさまざまな組織のフィロキノン(PK)濃度が低下した。また,PK経口投与後の組織への移行を調べたところ,αTによっていくつかの肝外組織のPK濃度が低下した。さらに,トコフェロール異化の律速酵素であるトコフェロール水酸化酵素が,PKの水酸化も触媒することが明らかになった。PKの水酸化は,PK異化の第一段階である。そこで,トコフェロールの異化を阻害するゴマリグナンが,PK濃度に与える影響を調べたところ,セサミン添加飼料の7日間の摂取によって,肝臓のPK,メナキノン-4 (MK-4),トコフェロール濃度が上昇した。以上の結果から,体内のPK濃度は,トコフェロール代謝の変動によって大きく影響を受けることが明らかになった。
著者
若桑 みどり 栗田 禎子 池田 忍 川端 香男里
出版者
川村学園女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

(1)若桑の研究成果。インドの独立運動において、とくにベンガル地方の文学と美術において女神カーリの復活または興隆があったことを明らかにした。この精神的起源として宗教家Vive kanandaによるカーリ崇拝の復興を指摘し、その信仰が男性的原理、暴力と国家主義の原理に支配されるイギリス帝国主義の男性性に対立するインドの女性性という対立軸の形成にあったことを示した。黒いカーリは先住民族の人種的出自を示すものであり、男性支配以前の母系制的インドの再支配を意味する。これは岡倉天心によって、西洋対東洋の図式に置き換えられ、汎アジア主義へと変容した。(2)池田の研究成果。植民期の日本絵画には「支那服を来た女性像」が頻出するが、それは植民地化された中国の可視化であり、植民され中国を「女性」として隠喩するものであった。また同様に日本女性が支那服を着る画像も生産されたが、それは西洋に対立する日本と中国を汎アジア化するものであった。これらがすべて女性像であったことは、これによって男性による日本帝国主義が、植民地と女性を統治し、自己の卓越性を表象するものであった。(3)栗田の研究マフデイー運動に参加した女性戦士は男装してそのジェンダーを隠蔽した。指導者は独立運動の展開のために女性のエネルギーを最大限必要としたにもかかわらず、女性が性別役割の境界線を超えることを欲しなかったためである。このことはインドにおいてガンジーらが女性のエネルギーを主軸として不買抵抗運動を成功させたことと対照的であり、ヒンズーの文化の基層をなす母系制的土台と、イスラームの父権主義の差異を示すものである。
著者
池田 貴儀
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.428-433, 2010-10-01 (Released:2017-04-25)
参考文献数
25

感情労働とは,肉体労働,頭脳労働と並ぶ第三の労働のあり方であり,サービス業において重要な要素とされている。感情労働による感情のコントロール技術は,利用者をはじめ様々な人と接する図書館員にとって,種々の業務をこなしていく上で欠かせないスキルといえる。その一方で,感情をコントロールすることは,本来の感情と業務として求められる感情との間にズレを生じさせる。感情労働は人と接することで満足感や充足感を得る肯定的な面とともに,感情のズレによりストレスの増加やバーンアウトの誘発を招くという否定的な面を持ち合わせている。本稿では,この感情労働という視点に着目し,図書館業務との関わりについて紹介する。
著者
金子 信博 井上 浩輔 南谷 幸雄 三浦 季子 角田 智詞 池田 紘士 杉山 修一
出版者
日本土壌動物学会
雑誌
Edaphologia (ISSN:03891445)
巻号頁・発行日
vol.102, pp.31-39, 2018

人間によるさまざまな土地管理は,そこに生息する土壌生物にも大きな影響を与え,土壌生物群集の組成やその機能が,さらにそこに生育する植物の生長にも影響している.農業においても保全管理を行うことで土壌生物の多様性や現存量を高めることが必要である.日本におけるリンゴ栽培は,品種改良と栽培技術の向上により,世界的に高い品質を誇るが,有機栽培は困難であると考えられている.青森県弘前市の木村秋則氏は, 独自の工夫により無施肥, 化学合成農薬不使用による有機栽培を成功させている.その成功の理由については地上部の天敵が増加することや,リンゴ葉内の内生菌による植物の保護力が高まることが考えられているが,土壌生態系の変化については十分調べられていない.そこで,2014 年 9 月に, 木村園(有機) と隣接する慣行リンゴ園, 森林の 3 箇所で土壌理化学性,微生物バイオマス,小型節足動物,および大型土壌動物の調査を行い,比較した.有機の理化学性は,慣行と森林の中間を示したが,カリウム濃度はもっとも低かった.AM 菌根菌のバイオマス, 小型節足動物, 大型土壌動物の個体数は有機で最も多く, 慣行で最も少なかった.特にササラダニの密度は有機が慣行の 10 倍であった.落葉と草本が多く,土壌孔隙が多いことが,有機での土壌生物の多様性および現存量を高めており,植物に必要な栄養塩類の循環と,土壌から地上に供給される生物量を増やすことで,天敵生物の密度を高めることが予測できた.