著者
中井 真理子 山下 國廣 福江 佑子 池田 透
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
巻号頁・発行日
pp.128, 2013 (Released:2014-02-14)

特定外来生物アライグマの防除では,根絶に向けた低密度状況下における捕獲が課題となっている.本研究では,アライグマの痕跡の確認手段として,アライグマ探索犬の育成を試みた(2009年開始).動物の探索に特化する狩猟犬種群から甲斐犬を選び,行動学と学習理論に基づいたモチベーショントレーニングを採用した.今回の試験は,探索犬とハンドラー(犬の反応を読み取り指示を出す者)の能力確認を目的とした.捕獲したアライグマに VHF発信器を装着し,ラジオテレメトリー法により日中の位置を記録した.探索中の記録はボイスレコーダーと動画撮影で行い,インストラクター(訓練の指導者)とハンドラーの発言の違いを比較した. 夏季の探索試験は,2012年 7月の連続する二日間(アライグマの位置は同じ)に実施.現場は農地に隣接する針広混交林の林縁部で,林床は 100cm前後の草本類が密生する場所.一日目は一部でアライグマ臭気特有の行動が見られたが,ハンドラーの判断ミスで体力を消耗させたため,終了した.二日目は前日に反応を示した谷から絞り込み,朽木根元の樹洞に吠えて告知した.冬季の探索試験は,2012年 12月一日間に実施.現場は積雪約 40cmの平坦な農地で,民家が点在する場所.倉庫群周辺で動きが速くなり,発信音を確認した倉庫の風下で吠えて告知した. 探索犬は,野生アライグマの臭気を敏感に感知できた.ハンドラーは探索犬の反応を観察していたが,時々刻々と変化する風向きや地形などから臭気の流れを推測し的確に探索範囲を選ぶ判断力と経験に不足する部分があった.現場での活動には探索犬とハンドラーのペアが経験を積むことが重要である.また,気温が高いと体力消耗が早い点や探索の障害物となる植物の茂りの点などを考慮して探索計画を立てることで,より効率よく探索できると予想される. なお,本研究の一部は平成 23~ 25年度環境省環境研究総合推進費により実施された.
著者
松本 優作 木崎 速人 池田 裕樹 仲村 昌平 喜納 信也 永井 尭範 那須 隆史 宮本 興治 堀 里子
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
日本薬学会第140年会(京都)
巻号頁・発行日
2020-02-01

目的:現在,国家戦略特区の過疎地等で認められている遠隔薬剤指導(オンライン服薬指導)は,オンライン診療と合わせて医療へのアクセシビリティ改善への寄与が期待されている。本研究では,実際にへき地で実証運用されているオンライン服薬指導を利用する患者が感じるその利点や課題点を,インタビュー調査により探索的に検討した。方法:2019年10月に,オンライン服薬指導を受けた経験のある患者を対象として,インタビューガイドに基づく半構造化インタビューを実施した。インタビュー内容は逐語録化し,コーディング,カテゴリ化(<>で示す)を複数の研究者で行い,質的に分析した。結果・考察:対象者の年代は60代が3名,90代が1名,性別は男女2名ずつであった。患者はオンライン診療・服薬指導に関して,<病院・薬局に行かずに薬の入手が可能>,<医療機関が遠い地域での診療の簡便化>といった地理的課題の解消による利点を挙げるだけでなく,<自分の都合で診療時間の設定が可能>,<働き世代の通院に掛ける時間の省略>といった利便性の向上についても実感していた。一方で,<高齢者のタブレット端末の操作の難しさ>が課題点として指摘された。へき地在住者は高齢で独居の場合が多いことから,高齢者を対象としてタブレット端末への抵抗感をなくしたり,操作を支援したりする取り組みが必要であると考えられた。本調査では,オンライン上での医師への相談から受診を勧められ,疾患に気づいた経験をもつ患者がいた一方で,これまで薬剤師との接点がなかったためか,オンライン上で薬剤師に相談した経験をもつ患者は少なかった。今後,へき地でのオンライン服薬指導の有用性を向上させるためには,へき地における医療や健康サポートにおける薬剤師の関わり方についても同時に検討していく必要があると考えられた。
著者
鍋谷 圭宏 永田 松夫 齋藤 洋茂 滝口 伸浩 池田 篤 貝沼 修 早田 浩明 趙 明浩 外岡 亨 有光 秀仁 栁橋 浩男 河津 絢子 實方 由美 掛巣 孝則 羽田 真理子 福原 麻后 近藤 忠 佐々木 良枝 前田 恵理 吉澤 直樹 内山 友貴 上野 浩明 高橋 直樹 山本 宏
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.1299-1305, 2014 (Released:2014-12-20)
参考文献数
12
被引用文献数
2

食道がん外科治療は「高リスク患者に対する高度侵襲手術」であり、特に高齢者では、日本外科代謝栄養学会ESSENSEプロジェクトの基本理念である「侵襲反応の軽減」、「身体活動の早期自立」、「栄養摂取の早期自立」、「周術期不安軽減と回復意欲の励起」を心掛けた手技と管理が必要である。近年、高齢食道がん患者に対する根治切除術も低侵襲化され、「身体に優しい」治療になりつつある。しかし、70歳以上の高齢者では、術後合併症が多い傾向で、食事開始後退院まで時間を要し、経腸栄養継続の意義が高いことが示唆された。高齢者では、oncological(がん治療としての有効性を踏まえた手術選択)、physical(肉体的)、mental(精神的)、social(社会的)な援助が適切に行われ、全人的支援があってこそ、「心にも優しい」術後早期回復が可能になると思われる。そのためには、NST・精神科医や医療ソーシャルワーカーなどを含めた多職種連携が必須である。
著者
大関 信子 大井 けい子 佐藤 愛 葛西 紗幸 池田 礼美
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.213-219, 2012

本研究は,産後1年未満の母親を対象に次子を産みたいがが産まない理由を明らかにすることを目的とした.本研究は,調査結果を基に周産期ケアや母子保健サービスの向上を図り,母親の次子出産意欲向上へつなげるものである.A県在住の1,8OO名の母親へ質問紙調査を実施した.有効回答499名のうち,次子を「望まない」と答えた母親はI4.6%であった.最も重要な因子が経済的側面であった.また,「今回望まない妊娠・出産」と次子を「望まない」とに関連が見られた.女性の心理社会的観点から,以下のケアが次子出産意欲へつながる可能性か示唆された.1.望まない妊娠をした母親に対しては.児の受容と子を持つことの喜びを感じることができるようなケア.2.妊娠・出産がつらく卜ラウマになっている母親に対しては,異常の早期発見と予防,満足感が得られる出産体験となるケア.3.子育てに自信が持てない母親には,子育て支援及び子育ての喜びを発見できるケア.4.経済状況により次子を「望まない」理由が異なることから,母親の状況に応じたケアを優先させることが重要である.
著者
池田 登顕 柴田 昌和 古川 洋高 立壁 大地 神谷 真知子 塩野 浩章
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.C3P3485, 2009

【目的】<BR>近年,腰部骨盤帯における機能解剖学的知見は増加してきている.特に多裂筋や腹横筋,骨盤底筋群,横隔膜は腰部骨盤帯への安定性に作用するといわれているが,これらの筋の明確な作用はまだ全て明らかにされていない.また,多様な臨床評価方法や運動療法なども紹介されてきてはいるが,明らかな誘発原因のない腰部骨盤帯疾患の発生機序は明確になっていない.今回,仙髄レベルに神経症状や梨状筋症候群,坐骨神経痛を患った症例に対する理学療法を経験した.その際,既存の機能解剖学的知見に基づいて理学療法を展開したが,治療後に症状は軽減したが消失しなかった.この課題を解決し,解剖学的な検証をするために腰部骨盤帯を観察する機会を設けさせていただいた.屍体は大殿筋が中央で切離され,梨状筋下孔が良好に観察できるものであり,仙骨のうなずきおよび腸骨の起き上がり操作介入による検討が可能であった.その結果,梨状筋の弛緩および梨状筋下孔の拡大を触診できた.そこで,前述の症例に対して屍体で得られた機能解剖学的所見と同様の操作を加えることで,各症例の症状に変化がみられるかどうかを検討することとした.<BR>【方法】<BR>仙髄レベルに神経症状や梨状筋症候群,坐骨神経痛を有し,明らかな誘発原因のない腰部骨盤帯疾患症例10名を対象とした.対象者は男性2名・女性8名であり,平均年齢は69.7歳であった.この10名のうち,症状と画像所見とが明瞭に一致したのは1名であり,症例は全て腰椎の後彎により症状が悪化した.この10名に対して以下の3通りの徒手操作をランダムに加え,操作後の症状の変化を,「消失」・「軽減」・「変化なし」の3通りから回答させた.徒手操作は,既存の臨床評価方法を参考にした,A仙骨のうなずき操作,B腸骨の起き上がり操作,C同時にAおよびBの操作である.なお,各操作は1日以上間隔を設け,操作における効果が消失してから次の操作を加えた.また,症例は本研究内容の説明をし,同意を得られた10名である.<BR>【結果】<BR>Aでは3名が「軽減」,7名が「変化なし」と回答し,Bでは2名が「消失」,2名が「軽減」, 6名が「変化なし」と回答した.Cでは全ての症例が「消失」と回答した.<BR>【考察】<BR>既存の知見では,多裂筋・腹横筋・骨盤底筋群および横隔膜は,腰部骨盤帯における安定性確保のための機能を1つのユニットを形成することで担っており,股関節周囲筋が補助的に担っているとされている.さらに,仙骨をうなずかせるように作用する筋は多裂筋であり,腸骨を起き上がらせる筋は大殿筋である.今回の症例では,仙骨のうなずきおよび腸骨の起き上がり操作により症状が消失した.これより大殿筋のロッキング作用によって,腸骨が固定されている環境下で多裂筋が効率的に働き,両者の相互作用によって,梨状筋下孔が拡大することで仙髄レベルでの神経通路が確保されている可能性を示唆された.
著者
池田 真治
出版者
富山大学人文学部
雑誌
富山大学人文学部紀要 (ISSN:03865975)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.1-16, 2018-08-20

本稿では,ライプニッツの延長概念を『ライプニッツ - デ・フォルダー往復書簡』に分析する。第1節ではまず,デ・フォルダーとの論争の経緯を確認する。論争の背景には当時の活力論争があり,それは実体の本性をめぐる論争へと発展する。そこで第2節では,実体の本性をめぐる論争を検討する。延長を物体的実体の単純本性とするデ・フォルダーに対し,ライプニッツは延長概念が,デカルト派の主張するような単純なものではなく,多数性,連続性,共存性へとさらに分析される関係的概念であるとする。さらに,デ・フォルダーが延長概念の独立認識可能性に基づいて自説を主張しているのに対し,ライプニッツは,実体とその様態に関するスコラ的な議論に基づき,延長を実体から抽象される不完足概念とし,延長概念の独立認識可能性を否定する。第3節では,両者の延長概念を詳しく分析する。デ・フォルダーが延長を,物体が持つ他の特徴に対し論理的に優先する,物体の本性だと主張するのに対し,ライプニッツは,延長は実体の本性を構成するものではなく,むしろ,多数の実体から帰結する拡散や反復といった連続性の特徴をもつ,実体の属性にすぎないとする。すなわち,モナドの多が,延長という一様性に論理的かつ存在論的に優先する,というわけである。ロッジは,ライプニッツの延長概念が,「数学的延長」と「現実的延長」に区別されると解釈する。そこで,第4節では,このロッジ解釈を批判的に検討する。本稿では,ロッジ解釈に対し,数学的延長と現実的延長の区別は,それらの性質の観点からというよりも,むしろ「抽象」という構成の観点から明確になされるものである,と主張する。最後の第5節では,抽象の問題に関する歴史を概略し,実際に,抽象の観点から数学的延長と現実的延長を区別している哲学史的根拠を挙げる。以上を通じて,ライプニッツの延長概念を解明するためには,ライプニッツの抽象の理論を含め,そもそも初期近代における抽象の問題をめぐる議論とはいかなるものか,その全体像の解明が不可欠であることを指摘する。本稿の目的は,そのための視座を提供することにある。
著者
吉村 正志 諏訪部 真友子 池田 貴子 小笠原 昌子 ECONOMO Evan
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.39-56, 2020-03

市民のヒアリ監視活動への参画,および外来種リテラシーの向上を目指した体験型ワークショップ(以下,WS)を開発した.ヒアリの日本国土への定着を阻止するためには,専門家だけでなく市民ひとりひとりがヒアリ監視のスキルと意識を持つことが,きわめて有効なリスク対策となる.本WS は,外来種問題という社会が抱える喫緊課題に対する問題解決の手段としての側面と,市民が身近な自然の生物多様性を学ぶ環境学習の側面を併せ持つ.そのため,ヒアリや外来種に対する危機意識の醸成だけではなく,生き物への純粋な興味や知識欲をくすぐるエンターテイメント性を意識してプログラムをデザインした.加えて,生物を扱うWS で最も講師のスキルと経験が求められるパートである野外観察・採集と顕微鏡観察を省略するために,アリ類の精密拡大模型を作成した.これにより,専門性を担保しつつも,専門家でなくとも実施可能な比較的手軽で汎用性の高いWSとなった.WS のコンパクト化を実現したことで,危機管理WS の命題である実施範囲の拡大へとつながった.ヒアリ対策のニーズの高い沖縄県において継続的にWS を実践し,改良を重ねて本WS が完成した.WS の前後でとった参加者へのアンケート調査結果から,本WS の最適な実施対象は小学校中学年であること,参加者の「ヒアリ」のキーワード認識率はWS 前から高い水準にあること,そしてWS 参加によって「ヒアリ」および「外来種」のキーワード認識率が上昇することが明らかになった.
著者
田中 雄一郎 大塩 恒太郎 伊藤 英道 佐瀬 泰玄 池田 哲也 川口 公悠樹 梶 友紘 久代 裕一郎
出版者
一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
雑誌
脳卒中の外科 (ISSN:09145508)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.1-6, 2020 (Released:2020-03-27)
参考文献数
12

For many years, neck clipping of large internal carotid artery paraclinoid aneurysms has been challenging. However, recent technical developments in coil embolization and flow diverters have been associated with great advancements. Indeed, reducing surgical complications related to neck clipping in the era of interventional radiology is essential. The basic techniques include 1) preparation of the cervical carotid artery, 2) cannulation of the carotid artery, 3) craniotomy, 4) sectioning of the falciform ligament, 5) removal of the anterior clinoid process, 6) preparation of the ophthalmic artery, 7) temporary arterial occlusion, and 8) intraoperative angiography or indocyanine green videoangiography. Key points of the surgical techniques include appropriate preparation of the parent artery and selection of the aneurysm clips. Here, some technical details, including the removal of the anterior clinoid process, the separation of the distal dural ring and the transposition of the sphenoparietal sinus, are described to both avoid surgical complications and improve the visual outcome.
著者
池田 安隆
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.10-29, 1979
被引用文献数
7

大分県中部の第四紀火山地域には,短く屈曲に富んだ正断層が多数発達するが,その多くが地溝をなして分布している.このうちの主要な2つの地溝万年山地溝および速見地溝について,その具体的な発達過程を明らかにすることを試みた。両者は筑紫熔岩の流出後,およそ80~50万年前に活動を始めた.断層運動と並行して地溝内での火山活動があり,万年山地溝では万年山熔岩が,速見地溝では山陰系の火山岩類が噴出した.これらの噴出口の配列から,地溝中心部にはマグマの通り道となった開口割れ目が存在すると考えられる.速見地溝の北西縁では内側の断層の方が外側の断層より活動時期が新しい.これは開口割れ目を境にして両側のブロックが展張していくとすれば説明できる.地溝周辺の隆起も,開口割れ目の生成に伴う周囲の変形として説明できる.地溝を形成する断層運動自体は,開口割れ目の生成に伴う付随的な運動であろう.
著者
小林 哲郎 池田 謙一
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.120-130, 2008-11-30 (Released:2017-02-10)
被引用文献数
2

The effect of PC e-mail usage on social tolerance was investigated by analyzing representative survey data collected from electorates in Yamanashi Prefecture, Japan. The results showed that PC e-mail usage had a positive effect on social tolerance because it allows for mediating communications with heterogeneous others. These results are a clear-cut contrast to previous research, which showed that mobile-phone e-mail usage had a negative effect on social tolerance because of the increasing homogeneity of personal networks. The results indicated that while the technological limitations of mobile phone e-mail usage selectively strengthen communications with homogeneous others through the exchange of short messages, PC e-mail usage facilitates communications between heterogeneous people, because it is suitable for the exchange of the longer messages necessary for sharing the assumptions made during correspondence. From the viewpoint of nourishing "bridging" social capital, it is suggested that the promotion of PC e-mail should be encouraged by establishing appropriate policies and that the functional development of the use of the Internet on mobile phones should be empirically investigated.
著者
白井 康子 池田 滋 伊藤 英夫 横井 聰
出版者
Japan Society on Water Environment
雑誌
水環境学会誌 = Journal of Japan Society on Water Environment (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.32, no.12, pp.661-664, 2009-12-10
被引用文献数
3

Japanese rose bitterling, <I>Rhodeus ocellatus kurumeus</I>, is an endangered freshwater fish in Japan. Both the expansion of the habitat of an alien subspecies, <I>R. o. ocellatus</I>, and the increased chances of hybridization between the two subspecies have threatened the genetic identity of <I>R. o. kurumeus</I>. To conserve <I>R. o. kurumeus</I> in Kagawa Prefecture, 17 populations were genetically monitored in 2006. Two individuals in a pond were found to harbor <I>R. o. ocellatus</I> type mitochondrial DNA through PCR-RFLP analysis. Then the contaminated population was transplanted to a closed Bio-top water system to prevent contamination in other ponds. Three-day pond drying was found to be insufficient to eradicate <I>R. ocellatus</I>.
著者
上田 昇平 渡邊 琢斗 池田 健一 兵藤 不二夫
出版者
公益財団法人 自然保護助成基金
雑誌
自然保護助成基金助成成果報告書 (ISSN:24320943)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.76-80, 2020-01-10 (Released:2020-01-10)
参考文献数
10

アルゼンチンアリ(以下,本種)は,南米を原産地とする世界的な侵略的外来種であり,国内の12都府県で定着が確認されている.本種は侵入先で在来アリ類を駆逐することで生態系機能を撹乱するとされる.本研究では,安定同位体分析を用いて本種の食性を検証し,本種と在来アリ類の競合機構を明らかにすることを目的とした.2015年,大阪府堺市では本種の侵入が確認されており,本研究グループは,環境省・地方行政と連携して本種のモニタリング調査と防除に継続して取り組んでいる.2017年10月から2018年6月にかけて本調査地から採集した本種と在来アリ8種を用いて安定同位体分析を行い,δ15N値の種間比較から,アリ類が動物質と植物質のどちらを餌として利用しているかを推定した.本種のδ15N値は,同所的に分布するアリ類の中で2番目に高く,捕食者であるオオハリアリやウロコアリ類と同程度であったこの結果は,本調査地において本種は高次消費者であり,動物類を餌として利用していることを示している.
著者
井谷 基 岩山 幸子 繁田 絵実 池田 慈子
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.061-066, 2015 (Released:2015-02-17)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

手術室の空気清浄度を保つことにより周術期感染を減少させるエビデンスは確立されており,その空調は厳密に管理されている.手術室内では,術野に対する飛沫感染,接触感染を予防するために手術着,マスク,キャップ等を着用している.さらに手術室内の空気清浄度を恒常的に維持するために(1)高性能フィルタを通した換気を行い,(2)垂直層流を保ち,(3)塵埃数減少のために在室者数を,(4)陽圧維持のためにドアの開閉回数を制限している.しかし高度な設備によるシステムも,手術室の在室者が一人でも不適切な行動を行えば容易に破綻する.高水準の環境が保てるよう麻酔科医をはじめ,外科医・看護師が共通の理解を持って手術室環境の維持に努める必要がある.