著者
沢井 かおり 渡辺 賢治
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.311-315, 2015 (Released:2016-02-09)
参考文献数
11

発熱と易疲労感は感染症や悪性腫瘍,膠原病で生じるが,原因不明のことも多い。今回発熱と易疲労感が長期間続く女性に対し,消化器症状に注目して半夏瀉心湯を用いたところ,著明に改善した症例を経験したので報告する。 症例は47歳女性で,3年前月経不順や不正出血とともに発熱と易疲労感が出現した。夕方から38°C弱の発熱があり,朝から倦怠感が強く就業不能のこともあった。血液検査で肝機能,腎機能,炎症反応などに異常はなく,腹部CT 検査は子宮筋腫を認めるのみであった。漢方医学的診断はやや虚証,寒熱錯雑証,気滞・瘀血で,軟便・下痢傾向という消化器症状と心下痞鞕に注目して半夏瀉心湯を投与したところ,1ヵ月で発熱は37°C前後に低下し,身体が楽になって就業不能の日が減った。5ヵ月後には体温が36°C台となり,易疲労感は消失した。半夏瀉心湯は,消化器症状があり心下痞鞕を呈する症例の様々な症状に有効である可能性が示唆された。
著者
渡辺 博明
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.65-74, 2007 (Released:2018-10-01)

スウェーデンの環境党は支持率5 %前後の小政党であるが、1998年から2002年までの2期8年にわたって閣外協力の形で社民党政権を支え、その影響力は無視できないものとなっている。環境党は88年に議会進出を果たした当初、他党との協力の可能性を否定していたが、やがて社民党との交渉を通じた政策決定への関与を模索するようになり、98 年選挙で「要政党」 となると閣外協力に踏み切った。かつて圧倒的な優位を誇った社民党の勢力に翳りが見え始め、同党と環境党および左翼党との協力が進むと、他方で保守・中道4党も、従来には見られなかった周到な協力体制の構築によって政権奪取を目指し始めた。左右二大陣営間のバランスの変化が環境党の議会政治戦略の変化につながった一方、同党が「左派ブロック」入りしたことで、今日のスウェーデンの政党政治において、多党化と政党支持構造の流動化にもかかわらず、「ブロック政治」の作用が強まることとなった。
著者
渡辺 博明
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.15-25, 2005 (Released:2018-10-01)

スウェーデンでは、1920年代以降、最大勢力の社会民主主義を中心に、共産主義、保守主義、自由主義、農民勢力のそれぞれの政党からなる5 党制の時代が長く続いた。 しかし、1980年代末から新党の参入が相次ぎ、長期安定を誇った同国の政党システムにも明確な変化が表れた。 その背景には、政党支持構造の流動化と政治的争点の多様化があった。他方、そうした変化が進む中でも、主要政党が左派と右派に分かれて対峙する「ブロック政治」の枠組みは、双方に新たな政党を加える形で存続し、それと結びついた社民党の優位も続いている。こうしたことから、スウェーデンの政党システムについては、時とともに不安定化要因を多く抱え込みながらも、今までのところ、包括的な対抗軸に基づいて作動する従来の形態が辛うじて維持されているといえる。
著者
渡辺 綾子 田中 秀樹
出版者
日本応用心理学会
雑誌
応用心理学研究 (ISSN:03874605)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.189-197, 2020-03-31 (Released:2020-06-29)
参考文献数
19

This study's objective was to clarify how new mothers perceive and cope with a lack of sleep during the early postpartum period. Semi-structured interviews were conducted with 10 mothers; the responses were analyzed using the KJ method. Mothers held the belief that being a mother means not sleeping, but also felt anxiety at not knowing what comes next and experienced unique hardships that differed from mother to mother. In addition, the first factor contributed to irritation at those around them and embarrassment, which in turn had knock-on effects on the latter hardships. Effective coping strategies included recognizing the preciousness of "now, " comparing their current situation with the past or those of other mothers, setting their mind at ease, and anti-perfectionism, which led mothers to overcome their difficulties with tricks and help from others. Our results suggest that providers need to understand how mothers perceive and cope with sleeplessness during the early postpartum period, design training contents so that they can visualize the next stages of motherhood, and offer specific solutions to help them sleep.
著者
荻 芳郎 樋口 健 渡辺 和樹 渡邊 秋人
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.97-103, 2007 (Released:2007-12-13)
参考文献数
12

The purpose of this paper is to analyze structural statics and dynamics of a rotating shaft with a thin-walled open cross-section having one symmetrical axis. For the shaft, flexural-torsional coupling must be considered because the centroid axis and the shear-center axis do not always coincide. After deriving the governing equations of motion for a uniform shaft rotating at a constant angular velocity, we propose methods to estimate static deflection and dynamic stability. Numerical calculations for cantilever shafts with and without internal damping indicate that the distance between the centroid and the shear-center contributes to the dynamic instability. Moreover, an application of the methods to an elastically supported model indicates that a spin-axis antenna rod for future scientific satellites under consideration is dynamically stable in the operational spin-rate.
著者
浦山 文隆 渡辺 吉男 矢野 敬一 馬場 尚子
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.25-30, 2007 (Released:2007-07-24)
参考文献数
8
被引用文献数
3 3

太陽観測衛星「ひので」可視光望遠鏡には分子状コンタミネーション付着にセンシティブな光学系が搭載されている.これら付着は,望遠鏡内部に使用されている有機材料からのアウトガスにより生じる.「ひので」は日本時間2006年9月23日に打ち上げられ,同年10月25日から可視光望遠鏡による太陽観測が開始された.観測開始から約2カ月の間,光学系の一つである排熱鏡近傍の温度が急上昇した.この原因として,コンタミネーションが排熱鏡に付着し,排熱鏡の太陽光吸収率が増加した可能性が高いことが判った.また,フライト前に実施した数値解析結果と比較したところ,主鏡及び副鏡での太陽光吸収率変化Δαs計算値は温度データからのΔαs概算値に傾向が概ね一致した.しかしながら,排熱鏡でのΔαs計算値は温度データからのΔαs概算値を下回った.数値解析においては,材料表面からのコンタミネーションの脱着効果,汚染源となる材料の急激な温度上昇を考慮する必要があることが判った.
著者
長戸 公 渡辺 実
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.164a-168, 1974-03-10 (Released:2010-03-19)
著者
渡辺 賢悟 伊藤 和弥 近藤 邦雄 宮岡 伸一郎
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.58-65, 2010 (Released:2010-07-13)
参考文献数
18
被引用文献数
2

キャラクタデザインは,ゲームやアニメといったコンテンツ制作において重要な作業である.デザイン作業は複数人のアイデアを,コミュニケーションを介してまとめながら進められるが,絵が描けるデザイナと描けない者の間でアイデアの視覚化の能力に差があるため,アイデアを交換・共有するのが難しい現状がある.本研究では,絵が描けない者のアイデアの視覚化を支援するため,絵画手法の1つであるコラージュに着目する.複数の既存画像から一部分を切り出し,組み合わせるだけの作業で視覚化を行えるシステムを提案する.画像合成処理にPoisson Image Editingを用いることで,高品質なコラージュ結果を実現する.また,合成部品の切り取りを簡単にするため,部品領域の最適化処理を実装する.作成したシステムと,従来のソフトウェアを使用して視覚化した結果を比較し,システムの実用性を検証する.
著者
阿部 雅樹 渡辺 大地
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.93-101, 2010 (Released:2010-10-01)
参考文献数
18
被引用文献数
2

近年、アクションや格闘を主題としたアニメーションやビデオゲーム等の創作コンテンツ上では、エネルギーの塊が強く発光、形状変形を伴いながら特定の目標地点へ移動するといった現象を攻撃方法の1つや特殊効果として用いる事が多い。本研究は、3次元のビデオゲーム等のインタラクティブな創作コンテンツ内における新たなエネルギー波表現方法を提案する。本手法はボリュームレンダリング手法の1つであるレイキャスティング法と基本的な概念は同様である。線積分式となる関数を用いてエネルギー波の3次元分布状況を規定することで、ボリュームデータ生成処理を省くことを可能とした。更に積分計算にGPGPUを使用することで、描画処理速度の向上を図った。このことにより、エネルギー波の光の強さを正確に表現しつつ、エネルギー波の形状変形をリアルタイムで実現した。
著者
渡辺 努 渡辺 広太
出版者
東京大学大学院経済学研究科
雑誌
経済学論集 (ISSN:00229768)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.26-55, 2016-12-01 (Released:2022-01-25)
参考文献数
29

我が国では1995年から2013年春まで消費者物価(CPI)が趨勢的に低下するデフレが続いた.このデフレは,下落率が毎年1%程度であり,物価下落の緩やかさに特徴がある.また,失業率が上昇したにもかかわらず物価の反応は僅かで,フィリップス曲線の平坦化が生じた.デフレがなぜ緩やかだったのか,フィリップス曲線がなぜ平坦化したのかを考察するために,本稿ではデフレ期における価格硬直性の変化に注目する.本稿の主なファインディングは以下のとおりである.第1に,CPIを構成する588の品目のそれぞれについて前年比変化率を計算すると,ゼロ近傍の品目が最も多く,CPIウエイトで約50%を占める.この意味で価格硬直性が高い.この状況は1990年代後半のデフレ期に始まり,CPI前年比がプラスに転じた2013年春以降も続いている.この価格硬直性の高まりがフィリップス曲線を平坦化させた.第2に,前年比がゼロ近傍の品目の割合とCPI前年比の関係をみると,CPI前年比が低ければ低いほど(CPI前年比がゼロに近づけば近づくほど)ゼロ近傍の品目の割合が高くなるという関係がある.インフレ率が低下すると価格据え置きに伴う機会費用が小さくなるためと解釈できる.1990年代後半以降の価格硬直化は,グローバル競争などの外生的要因によるものではなく,CPIインフレ率の低下に伴って内生的に生じたことを示唆している.第3に,品目別価格変化率の分布の形状を米国や英国などと比較すると,米国などでは上昇率2%近傍の品目が最も多く,最頻値がゼロの日本の分布と異なっている.また,価格変化率の品目間のばらつきをみても,米国などではインフレ率が2%近傍のときにばらつきが最小値をとるのに対して,日本ではゼロインフレでばらつきが最小になる.これらの結果は,米国などでは各企業が毎年2%程度の価格引き上げを行うことがデフォルトなのに対して,日本ではデフレの影響を引きずって価格据え置きがデフォルトになっていることを示唆している.第4に,シミュレーション分析によれば,長期にわたってデフレ圧力が加わると,実際の価格が本来あるべき価格水準を上回る企業が,通常よりも多く存在する状況が生まれる.つまり,「価格引き下げ予備軍」(できることなら価格を下げたいと考えている企業)が多い.一方,実際の価格が本来あるべき価格水準を下回る「価格引き上げ予備軍」は少ない.この状況では金融緩和が物価に及ぼす影響は限定的である.我が国では,長期にわたるデフレの負の遺産として,「価格引き下げ予備軍」が今なお多く存在しており,これがデフレ脱却を難しくしている.
著者
渡辺 政隆
出版者
科学技術社会論学会
雑誌
科学技術社会論研究 (ISSN:13475843)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.10-21, 2008-06-30 (Released:2021-08-01)

In Japan, there has been a long tradition of activities for Public Understanding of Science and Technology (PUST). In this paper I discuss about the PUST movement and its history. While it is difficult to specify the starting point of such activities, we can recognize one of the most important year for the PUST movement in Japan. It was 1960 when the science week was established and Japan Science Foundation was founded. Japan Science Foundation is the first foundation that specialized to promoting public interest and understanding of science and technology. The second important year was 1996 when Japan Science and Technology Corporation (JST) was founded and PUST Team was set up in it. JST is one of the biggest funding agencies of science and technology in Japan. During those years there was little influence of overseas movements on Japan. But from around 2000 "Science Communication Movement" has been introduced from mainly UK. Now Japan's policy for promoting public engagement or awareness of science and technology has turned to Science Communication. In such a situation we should try to create Japan's way of science communication.