著者
戸渡 寛法 宮﨑 悦子 赤木 浩一 中牟田 啓子 片岡 洋平 渡邉 敬浩
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.86-94, 2020-06-25 (Released:2020-07-01)
参考文献数
12

多くの魚に複数の種類の有機ヒ素化合物が含まれているが,化学形態ごとに毒性が異なることから,長期摂取による健康影響のリスクを評価するためには,形態別に濃度を定量する必要がある.本研究では,魚中のモノメチルアルソン酸(MMA),ジメチルアルシン酸(DMA),トリメチルアルシンオキサイド(TMAO),テトラメチルアルソニウム(TeMA),アルセノベタイン(AB),アルセノコリン(AC)を対象としたLC-MS/MSによる分析法を開発し,妥当性を確認した.また,福岡市内に流通する魚10種(計50試料)について総ヒ素濃度および各有機ヒ素化合物濃度を調査した.その結果,総ヒ素はすべての試料から0.53~25 mg/kgの範囲で検出され,カワハギからは8.3~25 mg/kgの範囲で検出された.イワシを除く9種においては,総ヒ素濃度に占める各化合物濃度のうち,AB濃度の割合が最も高かったが,イワシにおいてはAB濃度よりDMA濃度の割合が高く,総ヒ素濃度のうち16~24%を占めていた.養殖マダイにおける総ヒ素,ABおよびACの濃度は天然マダイより低かった.
著者
渡邉 敬浩 片岡 洋平 荒川 史博 松田 りえ子 畝山 智香子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.7-16, 2020-02-25 (Released:2020-04-24)
参考文献数
15
被引用文献数
1

トータルダイエットスタディ(TDS)は,食事を介した化学物質の摂取量推定に有効な方法論であり,有害物質の摂取量推定にも用いられる.TDSにおける試料の分析には,摂取量推定の目的に合致した方法を選択すると同時に,その妥当性を確認することが勧告されている.しかし,妥当性確認に必要な具体的な考え方や方法論は示されていない.そこで本研究では,まず摂取量推定の目的で使用される分析法の性能を評価可能な試料(Samples to estimate methods performance; SEMPs)を開発した.次いでヒ素やカドミウム,鉛を含む元素類の摂取量推定の目的で使用する一斉分析法の妥当性を確認するために,SEMPsにおける各元素濃度を明らかにした.さらに,明らかにした各元素濃度を考慮した添加量を決定し,添加試料と未添加試料のそれぞれを5併行分析した結果から真度と併行精度を推定する,分析法の性能評価方法を確立した.性能評価によって推定した真度と併行精度をCodex委員会のProcedural Manualに収載されているガイドラインに基づき設定した性能規準と比較した結果,検討した一斉分析法が対象とする14元素と14食品群の組合せの多くで性能規準の値を満たしたことから妥当性を確認した.
著者
片岡 洋平 渡邉 敬浩 林 恭子 穐山 浩
出版者
[日本食品衛生学会]
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.269-274, 2018 (Released:2019-05-27)

チョコレートとココアは,カカオ豆から作られる主な製品である。これらの製品は,土壌などの環境に由来するカドミウム(Cd)を含むことが知られている。Cd濃度を調査するために,国内流通していたダークチョコレート,ミルクチョコレート,ホワイトチョコレート,ココア粉末製品を購入した。分析には誘導結合プラズマ質量分析計による妥当性確認された分析法を用いた。チョコレートおよびココア粉末中のCd濃度は,それぞれ0.00021~2.3および0.015~1.8mg/kgの範囲であった。各製品のCd濃度を製品のラベルに記載されているココア固形分の含有量に基づき評価した結果からは,Cd濃度とココア固形分の含有量との間に弱い正の相関があることが示された。調査した180種類のチョコレート製品のうち8製品,140種類のココア粉末製品のうち26製品中のCd濃度は,EUが設定した基準値を超過していた。
著者
片岡 洋平 渡邉 敬浩 白政 優子 松田 りえ子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.146-151, 2012-06-25 (Released:2012-06-30)
参考文献数
14
被引用文献数
3 3

市場に流通するタコ,イカ,ハマグリ,アサリおよびチョコレート中のカドミウム濃度の実態を調査した.食品中の金属に関する試験法の妥当性評価ガイドライン(食安発第0926001号)に従って妥当性を確認した方法により,分析を行った.調査した40試料の海産食品中,31試料から本調査で設定した定量下限の1/2濃度となる0.025 mg/kgを超えるカドミウムが検出されたが,Codexが定める基準値(2 mg/kg)を超過した試料はなかった.全調査試料中の最大濃度は,タコでは0.19 mg/kg,イカでは0.18 mg/kg,ハマグリでは0.38 mg/kg,アサリでは0.16 mg/kgであった.またチョコレートでは,30試料中21試料から0.025 mg/kg以上のカドミウムが検出され,最大値は0.54 mg/kgであった.
著者
片岡 洋平 渡邉 敬浩 林 恭子 小澤 蘭 滝澤 和宏 穐山 浩
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.275-280, 2017-12-25 (Released:2017-12-28)
参考文献数
9
被引用文献数
4

ミネラルウォーター類(MW)製品中の六価クロム分析法を構築し,その性能を評価し妥当性を確認した.さらに定量下限値を推定した本法を用いて,2016年に市場流通していたMW類150製品における六価クロム濃度の実態を調査した.実態調査に併せて分析した添加試料からは93~107%の範囲で回収率が得られ,妥当性確認した分析法の適用性が高いことが示された.調査した150製品のうち65製品から六価クロムが検出され,検出率は43%であった.また,検出された濃度の最小値は0.0001mg/L,最大値は0.0019mg/L,中央値は0.0003mg/Lであった.0.0001~0.0002mg/Lの範囲で六価クロムが検出される製品数が最も多かった.本研究において実施した実態調査では,食品衛生法により設定されている規格値(0.05mg/L)を超過する濃度で六価クロムが検出される製品は発見されなかった.
著者
片岡 洋祐
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-04-01

プラズマは光・荷電粒子・ラジカル等からなり、その医療応用においてはさまざまな可能性が示唆されているものの、確立された理論に基づく医療技術あるいは装置は未だ確立されていない。特に、中枢神経組織へのプラズマの作用についてはほとんど研究が進められておらず、その作用や医療応用の可能性すら議論できる状況にない。そこで、ラット大脳皮質を対象に大気圧プラズマ照射がどのような作用を有するかについて、光組織酸化反応との相違点から明らかにしてきた。具体的には、光組織酸化の場合、一過性のシナプス伝達抑制が引き起こされるが、プラズマ照射ではそういった神経伝達への影響は小さかった。また、強い光組織酸化反応では周辺細胞の脱分極現象が引き金となって片側大脳皮質にSpreading depressionが発生し、グリア前駆細胞やミクログリアが一斉に増殖を開始する一方、プラズマ照射ではSpreading depressionを発生させることなく多数の増殖細胞を出現させることを発見した。こうしたプラズマによる細胞増殖の誘導と組織再生との関係について分子メカニズムを解明し、さらに、再生誘導に最適なプラズマ照射条件を見出した。

1 0 0 0 OA 水の基礎化学

著者
片岡 洋右
出版者
一般社団法人 表面技術協会
雑誌
表面技術 (ISSN:09151869)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.128-133, 2000-02-01 (Released:2009-10-30)
参考文献数
14
著者
片岡 洋右 山田 祐理
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第38回ケモインフォマティクス討論会 東京
巻号頁・発行日
pp.26-27, 2015 (Released:2015-10-01)
参考文献数
8

固体の融解で得られる液体における分子運動を見やすくするために、面心立方格子の単位胞の融解を分子動力学法で調べた。その結果,基本セルに4個の系でも864分子系の融解同様に振動的運動に加えて拡散運動が存在するという分子運動の特徴が見えることが分かった。
著者
岩崎 基 片岡 洋行
出版者
国立がんセンター(研究所及び東病院臨床開発センター)
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ブラジル在住日系人のヘテロサイクリックアミン摂取量を把握するための質問票を開発し、加熱食品中のヘテロサイクリックアミン含有量データベースを作成するために、ブラジルでよく用いられる調理法を用いて肉・魚類を調理しヘテロサイクリックアミンの分析を行った。その結果、食材、調理法、焼き具合(3-4 段階)、マリネの有無、皮の有無などの条件別のデータベースが整備され、質問票により摂取量推定が可能となった。
著者
片岡 洋行 齋藤 啓太
出版者
就実大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

ファイバー固相マイクロ抽出(SPME)法またはインチューブSPME法を用いて皮膚ガス及び皮膚滲出液中の揮発成分や唾液成分を非侵襲的かつ簡便迅速にサンプリング、抽出濃縮した後、ガスクロマトグラフ-質量分析(GC-MS)法または液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)法との連結により高感度分析する方法を開発した。ファイバーSPME/GC-MS法を用いて、揮発性アルデヒド類や含硫化合物などの体臭成分の分析法を確立し、喫煙や食品摂取の影響を解析した。また、インチューブSPME/GC-MS法を用いて、コルチゾールやテストステロンなどのストレス・疲労関連ホルモン類や8-イソプロスタン及び8-OHdGなどの酸化ストレス関連化合物の自動分析法を確立し、喫煙による酸化ストレスの影響を解析した。これらの方法は、口臭や体臭の診断、疾病診断への応用が期待される。
著者
廣本 敏郎 尾畑 裕 挽 文子 横田 絵理 木村 彰吾 中川 優 澤邉 紀生 伊藤 克容 諸藤 裕美 片岡 洋人 藤野 雅史 鳥居 宏史 河田 信 西村 優子 河田 信 西村 優子
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究では組織コンテクスを重視する管理会計研究を行い、日本的管理会計は自律的組織を前提とする学習と創造の経営システムに組み込まれていること、市場志向のイノベーションに対する従業員のコミットメントを強化するシステムであること、カレントな業績の向上を目指すだけでなく適切な組織文化・風土作りと密接に関連していることなどを明らかにした。更に、管理会計は企業のミクロ・マクロ・ループを適切に形成する経営システムの中核的システムであるという新たな命題を提示した。
著者
片岡 洋子 伊藤 葉子 高野 俊 鶴田 敦子 宮下 理恵子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.226-237, 2011-01-01

In 1963, the Japanese National Curriculum Standards for upper secondary school made home economics the compulsory subject for only female students. However, some home economics teachers in Kyoto Prefecture, who had opposed to the subject as "an education to become good wives and wise mothers", were united to create alternative home economics education as a coeducational subject. They requested Kyoto Board of Education to change home economics education from female-only to coeducational subject which resulted in the implementation of coeducational home economics in 1973. This study aims to clarify the process to implement home economics as a coeducational subject, and analyze the theory of school subjects in 1960s to 1970s in Kyoto Prefecture. Results were as follows 1. In Kyoto Prefecture, not only many teachers but also the Board of Education supported the principle of coeducation. This was one of the reasons which contributed to realize coeducational home economics despite the opposition by the National Curriculum Standards. 2. Teachers who promoted coeducational home economics attempted to home economics from an education to become good wives and wise mothers to an education about managing a new family life based on couples' gender-equal relationship. 3. The theory of coeducational home economics needs to be composed of sciences and cultures, and to be revised from the subject dealing only home maintenance skills to that of family life education including historical, social, and scientific perspectives.