著者
石田 淳
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.1_113-1_132, 2011 (Released:2016-02-24)
参考文献数
47

The UN General Assembly's “Declaration on the Granting of Independence to Colonial Countries and Peoples” in 1960 rejected the imposed international standard of domestic governance. But the recent wave of responsibility to protect and transitional justice (including the establishment of International Criminal Tribunal for the Former Yugoslavia, International Criminal Tribunal for Rwanda, and International Criminal Court) resurrected the practice which the international society of sovereign states abandoned half a century ago. A variety of atrocities are now considered to be crimes of international concern so that the state, in which they take place, is held responsible to protect their victims and prosecute their perpetrators while the international society is prepared to intervene if it fails to do so.   Realists would argue that this combination of protection of the weak and prosecution of the strong deprive the latter of their incentives to make political compromises at the table of international or domestic bargaining, and as a result impede “negotiated settlement” and “negotiated transition.” The primary purpose of this article is to examine and question the validity of this realist claim.
著者
石田 淳
出版者
新潟国際情報大学国際学部
雑誌
新潟国際情報大学国際学部紀要 = NUIS journal of intenational studies (ISSN:21895864)
巻号頁・発行日
no.5, pp.101-107, 2020-04

国際政治学分野に教科書は数多あれどもリーディングスは滅多に見かけない。なぜなら、そもそも論争らしき論争がないからである。そしてこの論争の不在は、専門領域ごとの研究者の棲み分けに由来する。この状況は研究の持続的発展を触発するものではない。とは言え、論争がなかった訳ではない。ただし、その意味が正確に理解されなければ、学知の蓄積はない。その論争とは、冷戦期日本の防衛姿勢の「意図せざる結果」をめぐる議論である。高坂正堯の「現実主義者の平和論」は、坂本義和の「中立日本の防衛構想」を、西太平洋におけるアメリカを基軸としたハブ・アンド・スポークスの同盟構造に起因する《同盟のディレンマ》を直視するものではないため、所期の安全保障効果をもたないと評価した。しかし坂本は、同時代のシェリングのコミットメント論を意識しつつ、《安全保障のディレンマ》を直視しない防衛構想は、所期の安全保障効果をもたないと論じていたのである。
著者
鈴木 基史 飯田 敬輔 石黒 馨 岩波 由香里 栗崎 周平 多湖 淳 石田 淳 小浜 祥子 中山 裕美
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2018-04-01

主な実績として以下の3つを挙げる。最も重要な成果は、本研究計画に即して初年度から進めてきた分析をまとめあげるため、代表者・分担者が下記の題目の論文の作成に着手し、進めたことである。その過程として、9月に研究会を開催して代表者が方向性を提示し、その後、調整を経て各論文の題目と構成の決定を行った。いずれの論文も科研題目「国際制度の衰微と再生の政治経済分析」に合致し、研究計画で予定されている方法を駆使して作成されるものである。石黒馨「貿易協定と貿易戦争の緩衝」、石田淳「事前協議制度と同盟ディレンマの緩和」、岩波由香里「国連平和維持活動と部隊派遣」、鈴木基史「国際開発援助制度の危機とポピュリズムの台頭」、栗崎周平「外交使節制度の進化と国際システムの形成」、飯田敬輔「グローバル貿易レジームと米国リーダーシップの言説」、中山裕美(土井翔平との共著)「 国際難民制度の危機のテキスト分析」、鈴木基史(松尾晃隆・宇治梓紗との共著)「国際金融サーベイランス制度の比較テキスト分析」、多湖淳「非核三原則と国民の認識変化」、小濵祥子(大槻一統との共著)「核抑止制度と第二撃」第二の実績として、2019年6月28日に京都大学において日本学術会議の主催、本科研研究共催の学術フォーラム「グローバル政策ネットワークと国際機関」を主導した。同フォーラムは、本研究課題と合致し、代表者の鈴木が責任者として趣旨説明を行い、分担者の飯田敬輔教授が本科研課題に関連する研究報告を行った。第三に、研究協力者の宇治梓紗京都大学講師が、本科研研究の方法として掲げているサーベイ実験を気候変動制度を対象として実施した。これらの研究の進捗状況の確認と関連研究報告を行うことを趣旨とした研究会の開催を2020年3月に予定していたが、感染問題で中止とせざるを得なかった。その後、メール審議によって進捗状況の確認を行った。
著者
大矢根 聡 宮城 大蔵 佐々木 卓也 村井 良太 井上 正也 多湖 淳 石田 淳 葛谷 彩 福島 啓之 長久 明日香
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

日本の国際関係研究においては理論・歴史間の対話が欠けており、相互刺激に基づく研究上の新たな展開は稀薄である。本研究では、過去および海外の対話状況を検討し、今日可能な理論・歴史対話の条件や方法を考察した。国際関係のマクロ理論の論争や合理的選択論の普及を背景に、理論・歴史対話は困難になっている。しかし日本やアメリカなどでは、理論を換骨奪胎しながらも利用し、歴史研究の対象や観念を転換した例がある。今日、理論的パラダイムを歴史研究に応用し、歴史から抽出したパターン自体を理論化するのは難しい。しかし理論上の基本的概念は、歴史的に吟味すべき課題を抱えており、また歴史的現象を再解釈する手がかりになる。
著者
石田 淳
出版者
日本感情心理学会
雑誌
エモーション・スタディーズ (ISSN:21897425)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.25-29, 2017-10-01 (Released:2018-01-10)
参考文献数
27

This article tries to outline the positioning of emotions in sociological action theories, and further explore possible development of explanation of social phenomena incorporating psychological generation mechanism of emotions, with relative deprivation theory as an example. In sociology, emotions, in particular negative emotions which would lead to social change, cannot be ignored as “live coals” which affects actor’s action tendency and prepares potential actions. As shown in the application of the Yitzhaki (1979) theory, micro-macro-theoretic models explaining macro state change via micro psychological generating mechanisms of emotions has great potential in predicting the dynamics of social change.
著者
大矢根 聡 山田 高敬 石田 淳 宮脇 昇 多湖 淳 森 靖夫 西村 邦行
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

日本の国際関係理論は海外の諸理論の輸入に依存し、独自性に乏しいとされる。本研究は、過去の主要な理論に関して、その輸入の態様を洗い直し、そこに「執拗低音」(丸山真男)のようにみられる独自の問題関心や分析上の傾向を検出した。日本では、先行する歴史・地域研究を背景に、理論研究に必然的に伴う単純化や体系化よりも、現象の両義性・複合性を捉えようとする傾向が強く、また新たな現象と分析方法の中に、平和的変更の手がかりを摸索する場合が顕著にみられた。海外の理論を刺激として、従来からの理念や運動、政策決定に関する関心が、新たな次元と方法を備えたケースも多い。
著者
石田 淳一
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

長期間の足場のある算数授業は既習事項を手がかりに学ぶという信念を形成し、算数学力の向上に効果的であった。また算数シナリオや授業記録を用いた話し合い指導は、子どもが聴いて考えて伝え合う「学び合い」のある授業づくりに役立った。さらに1時間の授業の中に、協同学習を取り入れて、解法の見通しを相談させたり、問題をグループで解決させたりすることは、新しい学びの習得を促進するだけでなく、仲間と協力して学ぶカを育てるのに効果的であった。
著者
石田 淳
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.203-218, 2009-09-30 (Released:2010-03-30)
参考文献数
28
被引用文献数
2

本稿の第一の目的は,Raginによって提唱されたファジィ集合を用いた質的比較分析(fsQCA)の手法,とくにファジィ集合から真理表を作成しブール代数分析につなげるアプローチを紹介することである.第二の目的は,ファジィ集合を扱うというfsQCAの特性を活かしたさらなる応用の可能性,具体的には,fsQCAをいくつかの指数から作られる合成指数の再構成に用いるという応用の仕方を提案することである.本稿では特に,fsQCAを用いて,国連開発計画によって提唱され毎年データが公開されている人間開発指数を,主観的幸福感や選択の自由についての自己評価といった,人々の主観的評価をも考慮した指数に再構成することを試みる.
著者
石田 淳
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.211-228, 2003-09-30 (Released:2009-01-20)
参考文献数
13
被引用文献数
5

階層イメージならびに階層帰属意識にかんするFKモデルは,「中」意識肥大現象などの人々の階層イメージ,階層帰属意識の傾向性を見事に説明している.しかしながら,FKモデルは同一客観階層内での階層帰属意識のばらつきをうまく説明することができない.本稿は,FKモデルに新たな公理を加えた修正モデルを提唱する.新たな公理は,スキャニング・プロセスの打ち切り条件を定めるものであり,行為者の階層イメージ形成過程において,他者の階層的地位の認識にかかるコストを軽減するための「認識の効率性」を仮定したものである.この修正モデルによって,同一客観階層内での階層帰属意識のばらつきが表現されるとともに,経験的データとの適合性も改善される.また,認識の効率化によって生じる意図せざる結果としての「格上げバイアス傾向」が生じる条件も修正モデルによって明らかになる.
著者
石田 淳 浜田 宏
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.109-125, 2005 (Released:2007-07-06)
参考文献数
16
被引用文献数
2

浜田・石田 (2003) は, J. ローマーの「機会平等の原則」というアイデアに基づき, 性別や親の地位などの機会の差を仮想的に調整した社会のジニ係数を分析する方法を定式化した. しかしながら, 浜田・石田 (2003) では, ローマー・モデルと仮想的機会調整分析法の仮定の違いが明確に規定されておらず, 機会不平等調整前後のジニ係数の差が統計的に有意であるかどうかも考慮されていなかった.そこで本稿では, ローマーの規範的モデルと仮想的機会調整分析法の違いを明確化しつつ, ブートストラップ法を応用することにより, 機会調整前後のジニ係数の有意差検定を行う手法を提唱する. さらに, 機会変数が比率尺度である場合の分割数に関する問題についても言及し, 分析法の理論的性質を明らかにする. また分析例としてSSMデータを用い, 不動産相続額を機会変数とみなして, 所有不動産額と世帯所得という結果の配分への影響を検証する.
著者
石田 淳
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.97-108, 2005 (Released:2007-07-06)
参考文献数
13
被引用文献数
1

数理社会学は, 社会学の一分野であるという意味で, 経験科学に属する. 本稿ではこの基本的な認識を確認しつつ, FKモデルにおけるモデルの検証にかんする問題を指摘する. 具体的には, モデルの初期条件となる「客観階層システム」の想定の仕方によって, モデルと経験的データとの適合度が変わるという問題を指摘し, 理論的に検討を加える. モデルの検証についての厳密な検討を経ることによって, FKモデルの, ひいては数理社会学のより一層の発展が期待される.