著者
藤塚 吉浩
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.63, 2007

<BR>I. 研究目的<BR> 日本列島南部では台風の進路の関係から、民家には強い風雨への備えが必要である。本発表では、多くの強い勢力の台風が通過する高知県東部をとりあげ、伝統的な民家のかたちにある強い風雨への備えについて検討する。<BR> 本報告ではまず、高知県東部の歴史的な集落の形成にかかわる自然条件と社会経済的な背景について、広域的に考察する。次に、強い風雨に備えるための伝統的建造物に関して、その機能と地理的分布の関係を考察するとともに、残存状況についても検討する。<BR><BR>II. 高知県東部の伝統的建造物の分布<BR> 室戸半島の歴史的集落のうち、戦災がなく、都市化の影響を受けなかったところでは、第二次大戦前の伝統的な建造物が残されている(図1)。<BR> 室戸半島の港は、岬付近の岩礁に建設されたものがあり、その近くに集落が形成されている。岬は三方向を海に囲まれ風を遮るものがなく、特に風が強くなるため、室戸岬の高岡や行当岬の新村のように、石垣で民家を囲っているものが多い。石垣を構成する石は大きく、より堅固になるように積まれている。<BR> 海岸からの強風を受ける小高い丘のところでは、吉良川町の丘地区のように、民家をいしぐろで囲むものが多い。いしぐろは河原の丸石などを積んだり、割石を使って、外観を整えたものもある。旧街道沿いには、丸石や割石を整然と積んで、意匠面を重視したものが多い。<BR> 旧街道沿いや市街地中心部では、建物の壁面や前面に水切り瓦の使われることが多い。これは、空間的制約から石垣やいしぐろを置けないためと、浜堤や近くにある民家が強風を緩和し、水切り瓦で壁面の浸食を防ぐことができるためである。土蔵や民家の壁面には、水切り瓦とともに、耐水性のある土佐漆喰も併用されている。<BR> 徳島県に近い東洋町の旧街道沿いでは、蔀張が多くみられる。街道に面して間口があり、空間的制約から強い風雨を効果的に防ぐ仕組みとして用いられたのである。地理的に京阪神地方に近く、交易により、蔀張の建築様式がもたらされたことも、高知県で最も東に位置する東洋町に多くみられる要因である。<BR><BR>III. 伝統的建造物の残存状況<BR> 高知県東部における、強い風雨を防ぐための伝統的な建造物の残存状況は、その性質により次の差異がある。<BR> 石垣やいしぐろは、石の採取が容易でないことや石工の減少等により、より費用の安価なブロック塀やコンクリート塀にかえられている。水切り瓦は、左官職人の減少により技術の継承は容易でないが、近年その優れた意匠が評価され、新築に取り入れられるものも少なくない。蔀張は、空調施設の導入やアルミサッシへの改修により、取り外されたり、取り壊されるものが多い。<BR> いしぐろや水切り瓦は、優れた意匠から文化財として指定されるものも多い。高岡や新村にある石垣は、文化財としての価値は十分認識されていない。蔀張は、木製のため老朽化しやすく、放置すれば消滅する危機にある。<BR> 強い風雨を防ぐ伝統的な建造物は、先人の知恵によって生み出され、風土に適する優れたものである。歴史を後世に伝える文化財として、伝統的建造物をまもり受け継ぐことは、今後の重要な課題である。<BR>
著者
水谷 泰之 大塚 裕之 森島 大雅 藤塚 宣功 片山 雅貴 石川 英樹
出版者
日本膵臓学会
雑誌
膵臓 (ISSN:09130071)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.785-791, 2013 (Released:2014-01-18)
参考文献数
16
被引用文献数
1 8

患者は65歳,男性.検診で膵管拡張を指摘され当科受診となった.US,単純および造影CTで主膵管拡張を認め,膵実質内に明らかな腫瘤は指摘出来なかった.EUSで主膵管は体尾部で4mmと著明な拡張を認め,その頭側に境界不明瞭で辺縁不整な低エコー領域を認めた.膵上皮内癌を念頭におきERCPを施行した.主膵管は頭体部移行部で限局性狭窄を来たし,尾側膵管は数珠状拡張を呈していた.膵液細胞診の結果は陰性であった.画像診断で腫瘤の認識は困難であったが,膵管像からは膵癌を強く疑い膵頭十二指腸切除を行った.病理学的所見は,主膵管と分枝膵管に低乳頭状増殖を示し,PanIN1からPanIN3に相当する異型上皮の置換性増殖を認めた.検索の限り明らかな浸潤像は確認されなかった.
著者
山子 茂 梶 弘典 藤塚 守
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2016-05-31

シクロパラフェニレン(CPP)を母骨格とする環状π共役分子の材料への応用を見据えた大量合成法の確立とその応用と、CPPの反応性の解明に基づく後修飾法によるCPP誘導体の合成について検討を行った。前者では、ウェットプロセスを用いた有機電子デバイスへの応用に向けて問題となっていたCPPの溶解度の解決を図った。テトラアルコキシ[10]CPPにおいて異なるアルキル置換基を持つ誘導体を前年度ダイハツ下方法でグラムスケールで合成し、溶解度の確認と、ウエットプロセスを用いた薄膜作成について検討を行った。その結果、アルキル置換基を選ぶことで[10]CPPの薄膜を作成することに成功した。さらに、作成したCPP膜の光学特性と電荷移動度とを始めて測定することに成功した。その結果、CPP単体の分子軌道エネルギーからの予想とは異なり、n型半導体特性を示すことを明らかにした。ブトキシ[10]CPPのSCLC領域(0.7 MV cm-1)における電子移動度は4.5 x 10-6 cm2 V-1 s-1と高いものではなかったが、今後のCPPのデバイス研究におけるベンチマークとなるものと考えている。後者では、芳香族化合物の代表的な反応である求電子置換反応について、臭素化反応について検討した。その結果、サイズの小さなCPPでは、2分子の臭素がCPPに付加反応を起こすことを見出した。反応は選択的にCPPにおける二つのパラフェニレン単位のイプソ位のみで起こると共に、反応するパラフェニレン単位の場所も厳密に制御され、いずれの反応においても単一の生成物が得られた。さらに、理論計算から反応性および位置選択性が熱力学的安定性により支配されており、付加による芳香族性の解消とひずみエネルギーの緩和とのバランスで決まっていることが分かった。さらに、付加体から種々のCPP誘導体へと選択的に変換できた。
著者
日野 正輝 富田 和暁 伊東 理 西原 純 村山 祐司 津川 康雄 山崎 健 伊藤 悟 藤井 正 松田 隆典 根田 克彦 千葉 昭彦 寺谷 亮司 山下 宗利 由井 義通 石丸 哲史 香川 貴志 大塚 俊幸 古賀 慎二 豊田 哲也 橋本 雄一 松井 圭介 山田 浩久 山下 博樹 藤塚 吉浩 山下 潤 芳賀 博文 杜 国慶 須田 昌弥 朴 チョン玄 堤 純 伊藤 健司 宮澤 仁 兼子 純 土屋 純 磯田 弦 山神 達也 稲垣 稜 小原 直人 矢部 直人 久保 倫子 小泉 諒 阿部 隆 阿部 和俊 谷 謙二
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

1990年代後半が日本の都市化において時代を画する時期と位置づけられる。これを「ポスト成長都市」の到来と捉えて、持続可能な都市空間の形成に向けた都市地理学の課題を検討した。その結果、 大都市圏における人口の都心回帰、通勤圏の縮小、ライフサイクルからライフスタイルに対応した居住地移動へのシフト、空き家の増大と都心周辺部でのジェントリフィケーションの併進、中心市街地における住環境整備の在り方、市町村合併と地域自治の在り方、今後の都市研究の方向性などが取組むべき課題として特定された。
著者
真嶋 哲朗 藤塚 守 川井 清彦 遠藤 政幸
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2005

様々な光機能性クロモフォアを修飾したDNAを用いて、DNA内の光電荷分離、電荷移動機構を明らかにし、高効率・長寿命電荷分離を実現した。さらに、光機能性DNA分子ワイヤー、光エネルギー変換などの光電変換デバイスや、高効率DNA損傷法への展開を行い、DNA光ナノサイエンスの創製を試みた。