著者
小室 修 粕谷 英樹
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.928-934, 1991
被引用文献数
20

本論文では、基本周期のゆらぎと振幅のゆらぎを独立に制御できる新しい分析合成システムを用いて、正常音声の場合について、基本周期ゆらぎのどのような性質が音声の声質に寄与しているかを調べた。聴取実験により、定常母音においては、基本周期ゆらぎのトレンド成分(遅い成分)が原音声の品質を保持するために特に重要であることが分かった。そこで、トレンド成分の特徴を簡単に制御できる基本周期ゆらぎの生成モデルを提案した。聴取実験により、提案したモデルによるゆらぎの方が正規性白色雑音のゆらぎよりも、原音声の品質を保存する上で優れていることが分かった。また、基本周期が大きく変化する非定常母音では、基本周期の変化の概形を保存するだけで原音声の品質を保存することが分かった。
著者
遠藤 康男 粕谷 英樹
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.338-341, 1993
被引用文献数
3 2

嗄声における基本周期 (周波数) , 振幅系列のゆらぎを定量化するために比較的良く用いられるさまざまなゆらぎパラメータについて比較検討を行った.パラメータとしてjitter/shimmer factor, 変動指数, ジッタ/シマーパラメータを用いた.これらのパラメータと熟練した耳鼻科医がGRBAS尺度に関して評定した聴覚的評点との関係という観点から比較検討を行った.喉頭癌, 声帯ポリープ, 反回神経麻痺患者が発声した持続母音の52例を用いた実験により, ジッタ/シマーパラメータが病的音声の聴覚的印象と最も対応が良いことを示した.
著者
遠藤 康男 粕谷 英樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.81, no.7, pp.1031-1041, 1998-07-25
参考文献数
25
被引用文献数
5

音声における周期ごとのゆらぎは知覚される自然性, 声質を記述するのに重要である.この周期ごとのゆらぎを考慮した音声の分析・変換・合成システムを提案する.システムにおいてゆらぎは, 基本周期ゆらぎ(ジッタ), 実効値ゆらぎ(シマ), 周波数スペクトルゆらぎに分けられ, 自己回帰移動平均(ARMA)モデルで定式化される.このモデルはゆらぎの大きさだけでなくスペクトル特性も定量化する.周波数スペクトルは主成分スペクトル成分に変換され次元が大幅に縮小される.この主成分スペクトルに対しARMAをあてはめる.実験の結果以下のようなことが示された.(1)日本語母音/a/の周波数スペクトルは8個の主成分スペクトル成分で表される.(2)モデルはもとのゆらぎを再現できる.(3)原音声と再合成した母音信号は聴覚的にほとんど違いがない.このシステムはさまざまな音声の研究分野で有用である.
著者
小林 義和 松尾 浩一郎 渡邉 理沙 藤井 航 金森 大輔 永田 千里 角 保徳 水谷 英樹
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.69-78, 2013-09-30 (Released:2013-10-18)
参考文献数
10
被引用文献数
3

近年,周術期口腔機能管理による全身合併症の予防効果が明らかになり,平成 24 年度から周術期口腔機能管理が保険診療報酬としても評価されるようになった。今回われわれは,周術期口腔機能管理(口腔管理)を行った患者における口腔内の特徴と,歯科的介入が肺炎予防に及ぼす影響を明らかにすることを目的に,当院で平成 24 年の 1 年間に口腔管理を行った患者 196 名について後方視的に調査した。原疾患への治療法や実施した歯科処置の内容について調査し,依頼の 82% を占めた上部消化管外科,心臓血管外科・循環器内科,耳鼻咽喉科,血液内科の上位 4 科においては,診療科によって口腔内状況や歯科治療に差があるか統計的に分析した。また,上部消化管外科から口腔管理依頼のあった 35 例(口腔管理群)を対象に,口腔管理を行っていない上部消化管外科手術症例(非口腔管理群)129 名と比較して,術後肺炎発症に差があるか検討した。歯科処置に関しては,どの診療科の患者に対しても歯周処置が多く実施されていた一方で,抜歯,義歯への対応は,耳鼻科,心臓血管外科・循環器内科の患者で有意に高かった。上部消化管手術後の肺炎発症率は,非口腔管理群では 7.8%(10/129 例)であったが,口腔管理群では 5.7%(2/35 例)と統計学的に有意に低かった(p=0.04)。 以上の結果より,周術期口腔機能管理の対象者では,何らかの歯科的介入が必要であり,また,依頼元の診療科ごとに口腔内の問題や対応に特徴が現れることが示唆された。さらに,周術期口腔機能管理が全身合併症の予防に効果的であることが改めて示唆された。
著者
遠藤 康男 粕谷 英樹
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.338-341, 1993-10-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
11
被引用文献数
2 2

嗄声における基本周期 (周波数) , 振幅系列のゆらぎを定量化するために比較的良く用いられるさまざまなゆらぎパラメータについて比較検討を行った.パラメータとしてjitter/shimmer factor, 変動指数, ジッタ/シマーパラメータを用いた.これらのパラメータと熟練した耳鼻科医がGRBAS尺度に関して評定した聴覚的評点との関係という観点から比較検討を行った.喉頭癌, 声帯ポリープ, 反回神経麻痺患者が発声した持続母音の52例を用いた実験により, ジッタ/シマーパラメータが病的音声の聴覚的印象と最も対応が良いことを示した.
著者
神谷 英樹 峰野 博史 小佐野 智之 角野 宏光 石川 憲洋 水野 忠則
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IA, インターネットアーキテクチャ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.460, pp.67-72, 2009-02-26
被引用文献数
1

携帯電話やPDAなどの位置測位可能な携帯端末の普及に伴い,GoogleMapやNaviTimeに代表されるロケーションアウェアネスなサービスの提供が注目されている.このようなサービスを提供するために任意の位置に存在する情報端末を,位置に基づきP2Pで効率良く探索する様々な手法が提案されてきた.しかし,既存の手法は効率の良い探索を実現するために多くのノード情報を管理するスーパーノードなどの特殊ノードが要求され,スケーラビリティの点で現実的とはいえない。そこで,本研究ではP2Pネットワークにスモールワールド理論を適用し,特殊ノードを使わずに低リンク次数で位置に基づく探索を効率的に行う手法を検討・提案する。
著者
木戸 博 粕谷 英樹
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.337-344, 2001-05-01
被引用文献数
13

通常発話の声質を表す日常表現語について研究を進めている。自然音声の聴取実験を通して, 同じ音声を複数の他者が評価した値から, 声質表現語の抽出を行った。了解性の高い25語の声質表現語を評価項目として, 性別や年齢を考慮した被験者90名を対象に, 吟味した男声18例を評価させる聴取実験を行った。実験結果を統計分析した上で,反意語を調べたところ, 声質表現語は男女被験者とも同じ6対の表現語対と反意語を持たない一つの表現語に凝縮できた。また, 聴取印象の因子として, 音色因子に対応する3因子を抽出した。以上の結果は, 自己評価法で得られた155名の自己評価値に基づく結果と同質であり, 得られた表現語対は, 声質表現語として一般性を持つものと判断できる。
著者
松田 勝敬 森 大毅 粕谷 英樹
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.67-75, 1999-12-30
被引用文献数
1

The lower formant frequencies of whispered vowels are known to be slightly higher than those of modal vowels. This paper attempts to interpret this phenomenon acoustically, based on an electrical circuit model of the vocal tract. Perceived naturalness of whispered vowels is shown to be associated with bandwidth of the lower formant and spectral tilt resulting from loose acoustic coupling between supra- and sub-glottal systems through a small glottal chink. Perceptual significance of the frequency shift of the lower formant in whispered vowels is also studied. Perceptual experiments showed in that vowel boundaries between modal and whispered vowels were not changed in four of six subjects for the /o/-/a/ stimuli and in two of six for the /i/-/e/ stimuli. The results indicated that frequency shift of the lower formant in whispered vowels is not necessarily associated with the compensation for vowel boundary shifts.
著者
田口 望 藤内 祝 成瀬 文和 佐分利 紀彰 浅井 嗣久 小谷 久也 丸山 高広 福岡 保芳 柳瀬 章雅 水谷 英樹 金田 敏郎
出版者
Japanese Society of Oral and Maxillofacial Surgeons
雑誌
日本口腔外科学会雑誌 (ISSN:00215163)
巻号頁・発行日
vol.32, no.11, pp.2127-2132, 1986
被引用文献数
4

In regard to the correction of ankylosis of the TMJ, this paper describes a new technique by arthroplasty and the insertion of silicone coated cast vitallium glenoid fossa.<BR>The purpose of this method is to obtain good fixation, good shock absorbing properties, and to prevent adhesion again, malocculusion and dead space. Offering extreamely good results and satisfaction expressed by the patient.
著者
白井 拓史 笠松 紀雄 橋爪 一光 山谷 英樹 半沢 儁 籾木 茂 佐々木 一義 岩崎 幸司
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.414-418, 1998
被引用文献数
1

症例は35歳, 女性。他院にて昭和57年より胸部X線写真上異常陰影を指摘されており, 血尿, 鞍鼻を認めることより臨床的にWegener肉芽腫症と診断され, 経過観察されていた。平成8年3月, 喘鳴, 呼吸困難にて当院に緊急入院。気管支鏡的に著明な浮腫性声門下狭窄が認められ, 緊急的に気管内挿管を行った。気管切開を施行し, ステロイド剤および免疫抑制剤を投与した。治療により浮腫はすみやかに改善したが, 気管の瘢痕性狭窄と多発陥凹を形成し遷延化したため, ST合剤を投与したところ, 軽度瘢痕狭窄を残しほぼ改善した。声門直下部はWegener肉芽腫症のtargetであるといわれている。本例は, 臨床経過14年目に発症した気道病変の経過を気管支鏡にて追跡しえた興味深い症例と考えられたので, 若干の文献的考察を加えて報告する。
著者
朝比奈 たまき 水谷 英樹 杉村 泰郎 兼子 隆次 千賀 勝広 上田 実
出版者
Japanese Society of Oral and Maxillofacial Surgeons
雑誌
日本口腔外科学会雑誌 (ISSN:00215163)
巻号頁・発行日
vol.44, no.9, pp.750-752, 1998-09-20
参考文献数
10
被引用文献数
3

Rheumatoid arthritis (RA) is a chronic inflammatory disease with immunologic abnormalities. Although the temporomandibular joint (TMJ) can be involved, early changes of the TMJ affected by RA are unclear, and the treatment for temporomandibular disorders (TMD) in patients with RA is not established yet. Physiotherapy is effective for general joints with RA but its effect for RA of the TMJ is unknown. The clinical effects of physiotherapy for TMD in RA patients was investigated. Five patients with RA visited our department with complaints of the TMD. Physiotherapy, including exercises of TMJ movement and mastication training were stasted, bilaterally and simultaneously. Clinical findings showed an increase in maximal interincisal distance with no pain after therapy in 4 patients. No patient had anterior open bite or TMJ ankylosis in the follow-up period (2.5 to 5.3 years). These results suggest that physiotherapy is also effective for the TMD in RA patients.
著者
佐々木 結花 山岸 文雄 八木 毅典 山谷 英樹 黒田 文伸 庄田 英明
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR TUBERCULOSIS
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.77, no.6, pp.443-448, 2002-06-15
被引用文献数
3

広汎空洞型肺結核 (<I>b</I>I3) 症例を臨床的に検討した。対象は95例, 平均年齢は49.5±13.0歳であった。結核発見動機は, 有症状受診84例, 他疾患管理中10例, 他疾患受診時偶然発見1例で, 全例が喀痰塗抹陽性であった。社会背景として職業は入院時無職31例, 日雇労務者24例, 生活保護受給者25例と, 社会的弱者が多数であった。入院時病状として重症例が多数であり栄養状態は不良であった。当院入院中に死亡した症例は19例 (20.0%) で全例男性であり, 結核発見動機は全例有症状受診で, 入院から死亡までの期間 (在院日数) は35.0±39.8日と短期であった。有症状受診例84例の受診の遅れの期間は5.5±5.0カ月であり診断の遅れの期間は0.3±0.9カ月と短期間であった。<I>b</I>I3症例は発見の遅れの長期化により重症化し, 受診の遅れがその大部分を占めた。予後不良であるこの病型が生じないために発見の遅れを短期化するよう多様な予防対策の実施が望まれる。
著者
森 大毅 粕谷 英樹
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音声言語情報処理(SLP) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.55, pp.55-62, 2001-06-01
被引用文献数
2

音声対話システムのための言語モデルとしてsuperwordモデルを提案しており、パープレキシティの点で優れていることがわかっている。本報告では、音声対話システムの応答タイミングの高度な制御を目的として、superwordに基づく話者交替の予測モデルを提案する。話者交替/非交替のキューとなる表現の抽出のため、superword確率から計算されるキューの強度を定義した。キューの強度に従って抽出したsuperwordには、話者交替に関係があると思われる表現が多く含まれていた。また、一部のタスクに対してはキューの強度分布が実際の話者交替/非交替によって異なることから、提案した予測モデルの有効性が示された。The superword model is a data-driven framework for dialogue modeling and its superiority was shown in our previous works. In this report, we propose a superword-based turn-taking prediction model for precise control of responce timing of spoken dialogue systems. First, cue intensity is defined with superword probability in order to extract cue expressions for turn-taking or turn-holding. Extracted superword set is shown to include a lot of relevant expressions to turn-taking. Finally, the effectiveness of the proposed prediction model for some tasks has been revealed by showing the difference of cue distribution according to actual turn-taking / turn-holding.
著者
小池 三奈子 粕谷 英樹 菊地 義信 堀口 利之
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

韻律制御可能な電気式人工喉頭(Pitch controllable electrolarynx ; PC-EL)の訓練プログラム開発とPC-ELによる発話(PC-EL音声)の評価を行った.訓練は,平板型4モーラ単語から始め,アクセント句,イントネーション句,文と進め,ピッチ操作に慣れた段階で,抑揚型アクセントの語を訓練した.2週間の訓練で,7名中5名が自発話で訓練目標を達成した.訓練後のPC-EL音声はピッチ固定型電気喉頭(PF-EL)の音声と比較して,より肉声に近いと評価された.
著者
〆谷 直人 鉢村 和男 西田 陽 大谷 英樹
出版者
北里大学
雑誌
北里医学 (ISSN:03855449)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.97-103, 1994-04-30
被引用文献数
2

CRP (C-reactive protein)は炎症マーカーとして血漿蛋白成分の中で臨床的にもっとも利用されているが,その微量定量法の臨床的意義については,なお十分に明らかにされていない。そこで, non-radioisotopic immunoassayの1種である高感度測定装置PAMIA-30 (Counting Immunoassay)によるCRPの微量定量について検討し,迅速性,再現性に優れ,測定感度が0.4μg/dlまで可能であることが分かった。本法を用いて成人の正常値について検討すると,20〜59歳の834名(男性472名,女性362名)では4.0〜235.3μg/dlの範囲にあり,年齢別では若年者よりは高齢者において高値を示し,また男性よりも女性に低い傾向が認められた。