著者
高野 了太 澤田 和輝 野村 理朗
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第85回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PC-054, 2021 (Released:2022-03-30)

畏敬は,現在の認知的な枠組みが更新するような広大な刺激に対する感情反応である。従来,雄大な自然等の刺激から生じる畏敬が自己主体感を低下させ,目の前の超越的な出来事を説明するための新たな意味体系(神等)を見出すよう動機づけること等が指摘されている。これらの知見は,畏敬が「人は行いにふさわしい成果をこの世界で与えられる」という公正世界信念(Belief in a just world,以下BJWとする)と関わる可能性を示唆する。BJWは対象を自己としたBJW-自己と,他者としたBJW-他者の2種からなり,例えば,BJW-自己は,自分の運命をコントロールする点から自己主体感と正に関わる一方,BJW-他者は,世界に意味体系をもたらす点から宗教的信仰心と正に関わることが示されている。ゆえに本研究では,日常的に畏敬を経験する傾向(気質畏敬)とBJW-自己・他者の関連を検討した。結果,他のポジティブ感情の効果を統制した際,気質畏敬は,BJW-自己を負に,BJW-他者を正に特異的に予測した。これらの結果は,畏敬が,自他の対象によって異なる形で,世界を理解するための枠組みとしての信念と関わることを示唆する。
著者
町野 ひろみ 野村 理 和田 簡一郎 熊谷 玄太郎 田中 直 浅利 亨 石橋 恭之 花田 裕之
出版者
弘前大学大学院医学研究科・弘前医学会
雑誌
弘前医学 (ISSN:04391721)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2-4, pp.108-112, 2021 (Released:2021-03-15)
参考文献数
9

目的 : 津軽地方での外傷診療において,我々はりんご農作業に関連した頚髄損傷をしばしば経験するが,その受傷機転や臨床像には不明な点がある. 本調査の目的は,りんご農作業により生じた頚髄損傷の受傷機転と臨床経過を明らかにすることである. 対象と方法 : 2015年1 月から2019年8 月までに弘前大学医学部附属病院高度救命救急センターに搬送された,りんご農作業に関連した頚髄損傷症例を対象とした.診療録より患者の属性,発生月,受傷機転,神経学的重症度および予後についての情報を抽出した. 結果 : 同定された10例のうち9 例が男性であり, 5 月と6 月に多発した( 7 例).受傷機転は2 つに分類され,乗用草刈 機運転に関連するもの( 5 例)と梯子などからの墜落( 5 例)であった.退院時のAmerican Spinal Injury Association Impairment Scale( AIS) は,Aが1例,Bが2 例,Cが2例,Dが3例,Eが2例だった. 結語:りんご農作業に関連する頚髄損傷は5 から6 月に好発し,乗用草刈機運転,梯子上の作業中に発生していた.重 症例も観察され,予防策の構築が急務である.
著者
王 穎楠 野村 理恵 森 傑
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.1015-1020, 2012
被引用文献数
1

2005年10月の中国共産党16期5中全会で採択された第11次5ヶ年計画(2006~2010年)において、「社会主義新農村建設」(以下、「新農村建設」)という政策が重要な歴史的任務と位置付けられ、中国の都市と農村間の経済格差解消に関わる一連の政策措置が提出された。これらは、農業の近代化、農民の収入増を目指すとともに、集落の生活環境の総合整備事業も具体的に位置づけられている。新たな小都市の建設や、集落移転も導入されており、中国各地で大規模な農村集落の整備事業が起こっている。本研究は、2005年より「社会主義新農村建設」政策のもと全国各地で大規模な農村集落の再整備が相次いでいる中国において、整備中の「尚庄新村」を事例として、現行の新農村建設の政策と具体的な実践のモデルを解明し、「新農村建設」における集落再整備の手法と特徴を明らかにすることを目的とする。
著者
吉岡 京子 笠 真由美 神保 宏子 鎌倉 由起 齋藤 夕子 野村 理恵 大熊 陽子 大屋 成子 平林 義弘 黒田 眞理子
出版者
日本ヘルスサポート学会
雑誌
日本ヘルスサポート学会年報 (ISSN:21882924)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-10, 2016 (Released:2016-09-05)
参考文献数
23
被引用文献数
1

本研究の目的は、特定妊婦のうち精神疾患を有する者の特徴とその関連要因を解明することである。平成25年に特定妊婦として登録された55人のうち、精神疾患なし群は31人(59.6%)、精神疾患あり群は21人(40.4%)であった。二群比較の結果、精神疾患あり群の方が精神疾患なし群に比して、母子世帯である者、近隣の相談相手がいない者および妊婦健診の受診状況が不定期な者が有意に多かった。また、抑うつ状態や不眠、不安といった症状を精神疾患あり群の方が精神疾患なし群に比して有意に多く有していた。保健師が予測した支援でも、産後の病状悪化や医療機関への受診支援、母親の睡眠確保の必要性が精神疾患あり群の方が精神疾患なし群に比して有意に多く、治療継続支援を行った者の割合も有意に高かった。本結果から、精神疾患を有する特定妊婦に対して、妊婦健診の受診状況の確認や困り事について相談にのることと、妊娠期から精神科や産科と緊密に連携しながら支援していくことの必要性が示唆された。
著者
島 義弘 福井 義一 金政 祐司 野村 理朗 武儀山 珠実 鈴木 直人
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.83, no.2, pp.75-81, 2012 (Released:2012-11-20)
参考文献数
26
被引用文献数
4

This study examined the effects of internal working models of attachment on cognition about emotion in facial expressions. Ninety-five university students participated in a survey and an experiment. The results revealed that (a) effects of internal working models of attachment emerged when there were discrepancies between facial expressions and the emotions that should be rated, (b) “anxiety” did not affect the rating scores or reaction times, and (c) participants who scored high in “avoidance” needed more time to judge the absence of emotions in facial expressions. These results indicate that the dimension of “avoidance” affects automatic information processing.
著者
前川 絵里 森 傑 野村 理恵
出版者
Architectural Institute of Japan
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.80, no.711, pp.1057-1065, 2015
被引用文献数
2

This study aims to clarify the relationship between the change in spatial structure resulting from the development of Sapporo Underground Pedestrian Space and human behaviors, as well as their spatial cognition. The characteristics of spatial and distance cognitions and their change were analyzed by sketch-map experiment and walking experiment. As a result of the analysis, the following points of the characteristics of spatial and distance cognitions and their change have become clear. 1) The pedestrians' spatial cognition has been improved in accuracy. 2) The pedestrians' spatial cognition is getting more restrictive.
著者
日道 俊之 小山内 秀和 後藤 崇志 藤田 弥世 河村 悠太 Davis Mark H. 野村 理朗
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究
巻号頁・発行日
2018
被引用文献数
54

<p>Empathy is a multi-dimensional concept with emotional and cognitive components. The Interpersonal Reactivity Index (IRI) is a multi-dimensional scale of empathic traits. Although some researchers have attempted to translate the IRI into Japanese, these translated scales had limitations with content and construct validity, and measurement invariance. We therefore attempt to overcome these limitations by developing a new Japanese version of the IRI (IRI-J). We used three approaches to assess the validity and measurement invariance of the IRI-J. In Study 1, content validity was tested using back-translation, and construct validity was confirmed through a comprehensive investigation of a web-based survey using six other scales. Results indicate that the factor structure of the IRI-J was equivalent to that of the original version, and that the IRI-J had adequate reliability and construct validity. In Study 2, measurement invariance by gender was confirmed using data from four web-based surveys. These results suggest that the factor model of IRI-J for each gender is equivalent. The present study thus provides an improved measure of empathic traits for the Japanese population.</p>
著者
野村 理朗 近藤 洋史 柏野 牧夫
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.40-40, 2007

衝動性の特徴は、即時的な報酬をもとめ中長期的なリスクを犯してしまうことと、行動の制御が不十分であることの二つに大別される。本研究では、後者のメカニズムに焦点をあて、Go/Nogo課題において衝動性の指標となる反応遂行エラー(commission error)、課題遂行時の脳活動、さらにはセロトニン2A受容体遺伝子多型性を指標とし、行動の制御プロセスにかかわる機能的連関について検証した。実験の結果、同遺伝子多型のサブタイプであるAA接合型をもつ被験者の誤答数が他タイプのものと比較して多いこと、さらにはfMRIにより、同タイプにおける前頭前野腹外側部の過活性化が確認された。その一方で、脳内報酬系の回路に存在する視床下部、線条体などの諸領域におけるタイプ間の差異は見出されず、以上のことから衝動的行動は、報酬への感受性、すなわち脳内報酬系の機能不全に起因するものではなく、抑制系統の問題によって生じうるという可能性が示唆された。
著者
野村 理朗 大平 英樹 羽田 薫子
出版者
日本感情心理学会
雑誌
感情心理学研究 (ISSN:18828817)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.87-97, 2002-10-30 (Released:2009-04-07)
参考文献数
42
被引用文献数
1

The affective primacy hypothesis asserts that positive and negative affective reactions can be evoked with minimal stimulus input. This phenomenon has been tested using subliminal affective priming technique, however, these techniques are not robust enough and have not been fully explored. The aim of this study was to clarify existence of the affective primacy and the underlying mechanism by a neuroimaging method using event related functional magnetic resonance imaging (fMRI). Fourteen participants were scanned during a task in which they evaluated presented facial expressions of "anger, " "neutral, " or "happiness." Target stimuli were faces expressing weak and ambiguous anger expressions, which were presented just after a presentation of either (1) faces with strong anger expressions as affective stimuli, neutral faces, or a non-face object; or (2) flash as a control stimuli of 35ms duration. Processing of facial expressions in each condition commonly increased regional blood oxygenation level-dependent (BOLD) activity in the bilateral inferior frontal gyrus and left anterior cingulate gyrus. We identified the anterior part of anterior cingulate gyrus showed significant activation in the anger prime condition compared with the other three prime conditions. This suggests that the affective priming effect engendered especially in the anterior cingulate cortex. This suggests that a part of the neurophysiological substrates that underlies the subliminal affective priming has been identified.
著者
野村 理朗 野村 靖幸
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究課題は、認知科学領域において関心の高まっている「衝動性」という心理行動的現象の制御メカニズムについて、脳領域間の情報伝達を担うセロトニンの機能、およびこれを調節する遺伝子の塩基配列の個人差(遺伝子多型: gene polymorphism)に着目し、その個人差に関わる包括的な視点から、衝動的行動の制御メカニズムを明らかにした。具体的には、行動実験、脳機能計測、遺伝子解析により基盤となる脳内機構、およびこれへのセロトニントランスポータ、セロトニン2A受容体遺伝子多型の影響を示すとともに、こうした制御機構の基盤としての前頭前野腹外側部の関与を明らかにした。
著者
野村 理朗 筧 一彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎
巻号頁・発行日
vol.98, no.503, pp.43-50, 1999-01-18
被引用文献数
7

顔の表情を認知する際、悲しみの表情等では部分情報が重要となり、笑顔では全体情報が重要となることが知られている.本研究では、部分・全体情報を統制した合成顔画像を用いて、不快感情を隠すために表出される「偽りの微笑」の認知における知覚方略を検討した.まず、表情の微笑らしさを判断する際に重要となる情報を明らかにした。次に、微笑カテゴリにおける微笑の真偽判断にはいかなる情報が重要となるか検討した.これらの結果から、微笑らしさには表情の全体的情報が、微笑カテゴリにおける真偽判断では部分の情報が利用されることから、偽りの微笑の認知には部分・全体の両情報が重要となることが示唆された.