- 著者
-
金森 紘代
藤井 聡
- 出版者
- 公益社団法人 土木学会
- 雑誌
- 土木学会論文集 (ISSN:24366021)
- 巻号頁・発行日
- vol.79, no.3, pp.22-00039, 2023 (Released:2023-03-20)
- 参考文献数
- 27
土地の境界と所有者を明らかにする「地籍」の整備は,災害からの早期復旧,都市開発や公共インフラ整備の迅速化に大きく貢献する.しかし市町村主体で行われてきた地籍調査事業の進捗率には大きな地域差があり,日本全域では対象面積の半分を超えたにすぎない.地籍整備を推進すべく,国は様々な施策を打ち出しているが,それらは現場の作業効率促進に主眼がおかれ,不動産登記制度を母体とするわが国の地籍整備遅延の本質的な問題について,十分な議論がなされていない.本稿では,既往調査や過去の記事,国会・市町村議会の会議録から得られた知見を整理し,総合的に考察した結果,現行法制度ならびにその実質運用,そして1951年の事業開始時より幾度となく指摘されてきた地籍調査事業への国予算の不足が,整備遅延の原因であることを明らかにする.