著者
鈴木 雅之 荒俣 祐介
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.92.19051, (Released:2021-01-31)
参考文献数
38
被引用文献数
4

The purpose of the present study was to develop a scale for measuring motivation in school-based extracurricular activities/clubs based on organismic integration theory, and to examine the relationship between students’ motivation and instructors’ leadership. In study 1, 304 high school students completed the questionnaire. The results of an explanatory factor analysis identified 5 factors: intrinsic regulation, identified regulation, introjected regulation, external regulation, and non-regulation. In study 2, 870 high school students completed the questionnaire. The results of multilevel analyses indicated that the instructors’ leadership to maintain interpersonal relations and guide club members was positively correlated with students’ intrinsic regulation and identified regulation, and negatively correlated with their non-regulation. Furthermore, the results indicated that students’ perception of their instructors’ leadership to maintain interpersonal relations and guide club members was positively correlated with students’ intrinsic regulation and identified regulation, and negatively correlated with their non-regulation.
著者
植阪 友理 鈴木 雅之 清河 幸子 瀬尾 美紀子 市川 伸一
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.397-417, 2014-02-20 (Released:2016-08-10)
被引用文献数
4

全国学力調査の結果などを受け,教育現場では日本の子どもの学力について,「基礎基本はおおむね良好,活用に課題」と論じられることが多い.しかし,認知心理学を生かした教育実践では,基礎基本が必ずしも十分ではない可能性が指摘されている.そこで本研究では,これらの実践的な知見や認知心理学を参考に開発された,構成要素型テストCOMPASS(市川ら2009)を中学2年生682名に実施し,もし一般的な社会の認識とは異なり,基礎基本が十分なのではないとするならば,特にどのような学力要素が不十分であるのかという実態について検討した.また,調査対象となった生徒の数学担当教師15名に,中学2年生にとって「十分満足」「やや不十分」「極めて不十分」と考えられる基準を評定するよう求めた.教師が評定した基準と,COMPASSの実施結果を比較した結果,数学的概念の不十分さ,基本的な文章題において演算を迅速に決定する力の弱さ,問題解決方略を自発的に利用する力の不十分さなどに課題があることが明らかとなった.これらの結果は,日本の子どもの学力に対する従来の捉え方に再考を促すものである.
著者
備瀬 美香 伊藤 智子 鈴木 雅之
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.129-139, 2018-10-30 (Released:2018-10-30)
参考文献数
52

本研究では,英語学習方略の中でも英文読解方略に焦点を当て,英文読解方略について指導された経験(被指導経験)と方略使用の関連について,個人内相関に着目して検討した.また,被指導経験と方略使用の関連の個人差を説明する要因として,読解意欲と自己効力感に着目した.中学3年生127名を対象に質問紙調査を行い,マルチレベル分析を行った結果,指導された経験の多い方略ほど,生徒はよく使用する傾向にあることが示された.また,これらの関連には個人差があり,読解意欲の高い生徒ほど,指導された方略を使用する傾向が強いことが示された.ただし,被指導経験の効果は非常に大きいのに対し,読解意欲の効果は小さいものであった.したがって,教育実践においては方略指導を行うことが重要であり,読解意欲を向上させるための取り組みも同時に行うことで,より一層の効果がみられる可能性が示唆された.
著者
鈴木 雅之 黒岩 龍 印南 圭祐 小林 俊平 清水 信哉 峯松 信明 広瀬 啓吉
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J96-D, no.3, pp.644-654, 2013-03-01

日本語テキスト音声合成において,任意の入力テキストに対し正しいアクセントを推定することは,自然な合成音声を得るために不可欠である.日本語は,単語が文中で発声されると,アクセントが前後の文脈に応じて変化する,アクセント結合と呼ばれる現象が発生する.本研究では,この日本語のアクセント結合を統計的に自動推定する課題に取り組む.まず本研究の遂行に必要な,文発声時のアクセント情報がラベル付けされた文章データベースを作成した.ここでは6334文の日本語文セットを対象に,日本語東京方言話者の作業者一名が,アクセント句境界,文中の単語アクセント型のラベリングを行った.そしてこのデータベースを利用し,条件付き確率場を用いた日本語東京方言のアクセント句境界及び文中の単語アクセント型推定手法を提案する.アクセント句単位でアクセント結合自動推定の正答率を調べたところ,規則処理(87.48%)と比較して,提案手法(94.66%)はより高精度にアクセント結合を推定できることが示された.更に規則処理によるアクセント結合処理を用いた合成音声と,提案によるアクセント結合処理を用いた合成音声とを,聴取実験により比較したところ,提案手法は合成音声の自然性を有意に向上させられることが分かった.
著者
鈴木 雅之 武藤 世良
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.291-302, 2013-03-30 (Released:2013-05-24)
参考文献数
35
被引用文献数
1 1

本研究では,学業水準の高い高校に所属している生徒を対象に,一般的な高校生の学業水準と自身の学業水準との比較過程が,学業的自己概念に与える影響について検討した。また,社会的比較の影響を調整する要因として,生徒の持つ達成目標に着目し,調整効果についても検討を加えた。高校生589名を対象に質問紙調査を実施し,解析を行った結果,国語と数学の両科目において,学業成績と学校内での比較過程,栄光浴効果の影響を統制しても,一般的な高校生との比較過程が学業的自己概念に影響を与えていることが示された。この結果から,平均的な基準と比較して,自身の学業水準を高いと捉える生徒ほど,高い学業的自己概念を持つ傾向にあることが示唆された。また,社会的比較の効果に関して,達成目標による調整効果はみられなかった。
著者
西村 多久磨 古村 健太郎 鈴木 雅之
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.89.16350, (Released:2018-09-20)
参考文献数
17
被引用文献数
1

This study focuses on perceived functions of studying for the high school entrance examination and investigates the effect of these functions on individual differences in academic performance and depressive mood. In the prestudy, 325 potential items concerning the functions were obtained from 93 students (35 boys, 58 girls) in the 9th grade during the high school examination period. In the primary study, 311 students (163 boys, 148 girls) in the 9th grade participated in the questionnaire survey. The result of factor analysis revealed five potential functions: improving academic behaviors, enhancing a sense of competitiveness, analyzing one’s level of understanding, considering a career goal, and enhancing a sense of time constraint. The results of the multiple regression analysis indicated that the function of the analyzing one’s level of understanding and enhancing a sense of competitiveness were positively correlated, and the considering a career goal was negatively correlated with academic performance. The results also showed that the enhancing a sense of time constraint was positively correlated and the improving academic behaviors were negatively correlated with depressive mood.
著者
備瀬 美香 伊藤 智子 鈴木 雅之
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S41054, (Released:2017-10-13)
参考文献数
12

本研究は,英語学習方略の中でも英文読解方略に着目し,中学校における方略指導の実態を明らかにすることを目的とした.中学英語教師85名と中学3年生303名を対象に調査を行った結果,中学校ではボトムアップ方略の指導が重視されている可能性が示唆された.また,教職歴の長い教師ほどトップダウン方略の指導を行う傾向にあることが示された.さらに,生徒の方略被指導経験と動機づけの関係について検討した結果,方略の種類に関係なく,方略を指導された経験の多い生徒ほど読解意欲や効力感が高く,長文が好きである傾向にあった.
著者
鈴木 雅之 武藤 世良
出版者
Japan Society of Personality Psychology
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.291-302, 2013
被引用文献数
1

本研究では,学業水準の高い高校に所属している生徒を対象に,一般的な高校生の学業水準と自身の学業水準との比較過程が,学業的自己概念に与える影響について検討した。また,社会的比較の影響を調整する要因として,生徒の持つ達成目標に着目し,調整効果についても検討を加えた。高校生589名を対象に質問紙調査を実施し,解析を行った結果,国語と数学の両科目において,学業成績と学校内での比較過程,栄光浴効果の影響を統制しても,一般的な高校生との比較過程が学業的自己概念に影響を与えていることが示された。この結果から,平均的な基準と比較して,自身の学業水準を高いと捉える生徒ほど,高い学業的自己概念を持つ傾向にあることが示唆された。また,社会的比較の効果に関して,達成目標による調整効果はみられなかった。
著者
鈴木 雅之 市川 伸一
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.191-197, 2016
被引用文献数
2

Calculation problems such as "12×7÷3" can be solved rapidly and easily by using certain techniques; we call these problems "efficient calculation problems." However, it has been pointed out that many students do not always solve them efficiently. In the present study, we examined the effects of an intervention on 35 seventh grade students (23 males, 12 females). The students were instructed to use an overview strategy that stated, "Think carefully about the whole expression", and were then taught three sub-strategies. The results showed that students solved similar problems efficiently after the intervention and the effects were preserved for five months.
著者
鈴木 雅之 西村 多久磨 孫 媛
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.372-385, 2015
被引用文献数
7

本研究では, 中学生の学習動機づけの変化を規定する要因として, 「テストの実施目的・役割に対する学習者の認識」であるテスト観に着目して研究を行った。中学1—3年生2730名を対象に, 定期テストが実施される度に調査を行い(2013年6月, 9月, 12月, 2014年2月の計4回), マルチレベル分析によって学習動機づけとテスト観の個人内での共変関係を検討するとともに, 構造方程式モデリングによって, テスト観が学習動機づけに与える影響について検討を行った。これらの分析の結果, テストの学習改善としての役割を強く認識することによって, 内的調整や同一化的調整といった自律的な学習動機づけが高まることが示された。その一方で, 学習を強制するためにテストが実施されていると認識することによって, 内的調整が低下し, 統制的な学習動機づけとされる取り入れ的調整と外的調整は高まることが示された。以上のことから, 中学生のテスト観に介入することによって, 自律的な学習動機づけを維持・向上させることが可能であることが示唆された。
著者
Manalo Emmanuel 鈴木 雅之 田中 瑛津子 横山 悟 篠ヶ谷 圭太 Sheppard Chris 植阪 友理 子安 増生 市川 伸一 楠見 孝 深谷 達史 瀬尾 美紀子 小山 義徳 溝川 藍
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

3年目である本年は、21世紀型スキルの促進ということに焦点を当てて研究を行った。この結果、様々なワークショップや授業を開発した。具体的には、大学教員の質問スキルの向上を目指すワークショップの開発、小学校教員による効果的な学習法指導の開発、高校生の批判的思考と探究学習を促進する実践の提案などを含む。さらに、教育委員会と連携した実践なども行った。こうした研究の結果、研究代表者であるEmmanuel Manaloと分担研究者である植阪友理を編者に含む、英語の書籍を刊行した。この書籍は、自発的な方略を促進するためのあり方を具体的に提案するものであった。この本の論文はいずれも、査読付きであり、このうち9本は本プロジェクトに関わるメンバーが執筆している。のこり10本は海外の研究者が執筆している。海外の著者にはアメリカのUCLA (University of California Los Angeles) やPurdue University、スイスの ETH Zurich、ドイツの University of Munster (Germany) 、University of Hong Kongなどといった一流大学の研究者が含まれており、国際的な影響力も大きなものとなったと考えられる。さらに、日本心理学会、教育工学会などといった国内学会において発表を行った。さらに、EARLI (European Association for Research in Learning and Instruction) やSARMAC (Society for Applied Research in Memory and Cognition) といった国際学会においても発表した。
著者
岡田 温司 篠原 資明 鈴木 雅之 小倉 孝誠 並木 誠士 喜多村 明里 水野 千依 柳澤 田実 松原 知生
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

肖像には二重のベクトルがある。ひとつはモデルへと引き戻されるもの(モデルに似ていると思わせるベクトル)、もうひとつはモデルから観者へと表出してくるもの(モデルの性格や内面性が表われていると思わせるベクトル)である。この反対方向の運動は、「肖像」を意味するイタリア語「リトラット」とフランス語「ポルトレ」に象徴的に表われている。前者は、「後方へと引き戻す」という意味のラテン語「レ-トラホー」に、後者は「前方へと引き出す」という意味の同じくラテン語「プロ-トラホー」に由来するのである。かくのごとく「肖像」は、模倣と表出、後退と前進、現前と不在、顕在と潜在、保管と開示、隠匿と暴露、ピュシス(自然)とアレーテイア(真理)、これら両極の引き合いや循環性のうちに成立するものなのである。
著者
鈴木 雅之
出版者
The Japanese Association of Educational Psychology
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.226-239, 2014
被引用文献数
4

本研究では, 大学入試場面における競争の機能を高校生がどのように捉えているか, すなわちどのような受験競争観を有しているかについて検討を行った。また, 受験競争観によって学習動機や受験不安, 学習態度がどのように異なるかを検討した。まず予備調査を実施し, 受験競争観尺度を作成した結果, 受験競争観には, 心身の消耗や学習意欲の低下, 友人関係の悪化といった「消耗型競争観」と, 自己調整能力や学習意欲の向上, 友人関係の親密化といった「成長型競争観」の2つの側面があることが示唆された。そして高校2年生576名を対象に本調査を行った結果, 高校生は消耗型競争観よりも成長型競争観を強く有しており, 大学入試における競争をそれほど否定的には捉えておらず, むしろ肯定的に捉えている可能性が示唆された。さらに, 消耗型競争観を強く持つ学習者ほど外的な学習動機や受験不安が高い一方で, 成長型競争観を強く持つ学習者ほど学習の価値を内在化し, 受験を乗り越えるためだけの学習を取らない傾向にあることが示された。これにより, 大学入試における競争が学習者に与える影響は, 受験競争観によって異なることが示唆された。