著者
鈴木 知花
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.93-104, 2021-03-30 (Released:2023-03-30)
参考文献数
35

本論文は,公私二元論によってその社会性・政治性を否定され私的領域にのみ適用可能だとされてきたケアの倫理を,公的領域における社会福祉ひいては社会福祉政策の理念を基礎づけるものとして位置づける。代表的ケア論者たちの視点から,ケアの倫理を基盤とした社会福祉政策のあり様を理念的に探究することによって,近年の日本の障害者政策がいかにリベラリズム(正義の倫理)によって特徴づけられてきたのかを明らかにする。特に障害者自立支援法とその改正法である障害者総合支援法の根底にあるのは,リベラリズムが前提とする「強い」個人像である。 本論文はリベラリズムに代わるオルタナティヴとしてケアの倫理の視座から社会福祉のあり様を見つめることによって,人間一般が種として脆弱性を内包し,相互依存的なケアの関係性の中で生きるものであることを基調とする社会福祉政策が要請されることを提起する。
著者
渡邊 裕文 大沼 俊博 高崎 恭輔 谷埜 予士次 鈴木 俊明
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.561-564, 2014 (Released:2014-09-25)
参考文献数
13
被引用文献数
6 1

〔目的〕座位での腹斜筋の活動を明確にすることである.〔対象〕本研究に対する同意を得られた健常男性7名とした.〔方法〕テレメトリー筋電計MQ-8を用い,左側腹斜筋に複数の電極を配置し,座位にて側方移動距離を変化させ筋電図を測定した.座位での筋電図積分値に対する相対値を求め,移動距離による相対値の変化を検討した.〔結果〕側方移動距離の増大に対し,移動側腹斜筋群では筋電図積分値相対値に変化が認められず,反対側腹斜筋群ではこの値が全電極で増加傾向を示し,内腹斜筋単独部位とその直上の2電極で有意に増加した.〔結語〕座位で側方体重移動をリハビリテーションに用いる時,移動反対側内腹斜筋による骨盤の挙上作用に着目する必要のあることが示唆される.
著者
三宅 紀子 酒井 清子 曽根 保子 伊坂 亜友美 鈴木 恵美子 倉田 忠男
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成25年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.75, 2013 (Released:2013-08-23)

【目的】アスコルビン酸(ASA)は調理過程において容易に酸化、加水分解されてジケトグロン酸(DKG)になる。ASA酸化生成物は反応性が高いジカルボニル構造を有することから、タンパク質とのメイラード反応が懸念される。近年このメイラード反応が生体内においても進行し、様々な疾病に関わることが報告され、飲食物由来のメイラード反応生成物の健康への影響についても関心が向けられるようになった。本研究ではASA酸化生成物と食品タンパク質との反応生成物の生体への影響について検討を行った。【方法】食品の加熱調理のモデル系として、ASA、DKG(50mM)とカゼイン(10mg/ml)との反応をリン酸緩衝液(0.1M、pH6)中、70℃で一定時間行い、ジカルボニル化合物の生成をHPLC法により定量した。また、反応生成物の高分子画分を用いて、ヒト腸管上皮モデル細胞Caco-2について増殖への影響をMTT法により、AGEレセプター(RAGE)のmRNA発現をリアルタイムRT-PCR法により調べた。【結果】DKGとカゼインとの加熱反応の過程において、数種のジカルボニル化合物の生成が確認され、その中でグリオキサール(GO)量は反応初期において高く、反応時間15分以降GO量が著しく減少した。DKGとカゼインとのメイラード反応生成物(DKG-Casein)の培養細胞への影響を調べたところ、GOおよびMGの場合よりも低濃度での細胞増殖抑制が示された。さらにCaco-2のRAGEのmRNA発現は、DKG-Casein処理により、カゼイン処理の約1.4倍に有意に上昇した。よって、食品中のASA由来メイラード反応生成物が生体に影響を与える可能性が示唆された。
著者
鈴木 壮衛
出版者
駒澤大学
雑誌
駒澤大學文學部研究紀要 (ISSN:04523636)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.A90-A106, 1970-03

1.武道は,仏教そのものではなく,医療そのものでもないけれど,ただ「行」としてのgong-fuを基本として成り立っているという点で,かかる三者は明らかに一つに結びつく接点を見出される。2.かかる三者は,調身調息調心という生理心理的反映であり,その全体的な相互連関として捉えることもまた可能である。3.東洋は言うまでもなく生命智,体験智,全体智,内面智による機能主義医療,主観的あるいは直観的医療に立つ診断治療過程であり,まさにそこには人間の根源的な問題が具有されている。それに対し欧米的な診断治療過程は経験知・理論知・外面知・部分知をもって疾病を処理する点で,まさにそれを科学医療と呼ぶことができよう。そのように東洋は西洋と異なるが,その両者は相互依存の関係であり,つまり人間でたとえれば男と女との関係の存在に類似している。4.武道,仏教,医療のいずれも精神の分析そのものより,むしろ精神の統合をするところに大きな意味がある。精神統合とは診断治療を超えて人間のもつ無限なる潜在的諸能力の開発と人間的実存の根底を発見に努めることなのである。
著者
武村 裕之 今岡 泰憲 守川 恵助 北山 可奈 稲葉 匠吾 楠木 晴香 橋爪 裕 小澤 香奈 鈴木 優太 西川 涼太 天白 陽介 岡田 誠
出版者
一般社団法人 日本呼吸理学療法学会
雑誌
呼吸理学療法学 (ISSN:24367966)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.2-10, 2023-03-25 (Released:2023-03-25)
参考文献数
27

目的:慢性閉塞性肺疾患(Chronic obstructive pulmonary disease:COPD)急性増悪患者への骨格筋評価は身体機能を判断する上で重要である。筋輝度(Echo Intensity:EI)は骨格筋の非収縮性組織を反映し注目されている。しかし,身体機能と骨格筋の非収縮組織との関係性は不明である。本研究ではCOPD急性増悪患者のEIと身体機能の相関関係を調査したので報告する。方法:2019年5月から12月に当院へ入院したCOPD急性増悪患者17名を対象とした。調査項目は初回理学療法介入時に測定した。超音波検査には日立製作所社製のF37を使用し,大腿直筋(Rectus femoris: RF)の遠位1/3のEIを測定した。画像解析にはImage Jを使用し,8−bit Gray Scaleによるヒストグラム解析を行った。身体機能評価はShort Physical Performance Battery(SPPB),6分間歩行距離(Six minutes walk distance:6MWD)とした。統計学的解析はSpearmanの順位相関係数を用いて,EIと身体機能項目との関連を調査し,統計処理はEZR version 1.38を使用し有意水準を5%とした。結果:EIはSPPB(r=−0.59 p<0.01)と負の相関を認めたが,6MWDとは相関を認めなかった。結論:COPD急性増悪患者におけるRFのEIと身体機能の相関関係を調査し,RFのEIはSPPBと中等度の負の相関を認めた。
著者
鈴木 渉 中村 文彦 有吉 亮 田中 伸治 松行 美帆子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.22-00169, 2023 (Released:2023-03-20)
参考文献数
12

鉄道駅での改札通過データには,乗車券単位で駅での入出場の情報が長期的に記録されており,利用頻度や利用時刻といった個人単位の交通行動データの取得が可能である.そこで本研究では,昨今の急速な社会情勢の変化に伴う,個人ごとの利用頻度や利用時刻の変化に着目し,習慣的な鉄道利用減少の特性を明らかにすることを目的とする.まず,各々の変化量と,年齢や性別,券種といった個人ごとの属性との関係性を整理した.そして,重回帰分析を用いて,習慣的な鉄道利用が減少した人の中でも,定期利用でなくなった若年層の利用習慣の変化がより大きい可能性があること,また定期利用でなくなった若年層であるほど乗車時刻が変化した一方,定期利用を続けており年齢の高い層ほど乗車時刻が変化していない可能性があることを,定量的に明らかにした.
著者
鈴木 満
出版者
秋田大学史学会
雑誌
秋大史学 (ISSN:0386894X)
巻号頁・発行日
no.62, pp.1-16, 2016-03
著者
鈴木 宣明
出版者
上智大学
巻号頁・発行日
1992

博士論文
著者
境澤 由起江 中村 泰敏 小杉 素子 西田 昌史 和田 真 鈴木 康之
雑誌
研究報告アクセシビリティ(AAC) (ISSN:24322431)
巻号頁・発行日
vol.2022-AAC-20, no.6, pp.1-7, 2022-12-02

本研究では,時間情報を高精度に伝えることのできる聴覚からの刺激と,予測を生起させるリズムの時間的構造に着目し,DTW(Dynamic Time Warping)で手拍子リズムの評価を行うアプリを試作した.主要ユーザーとしては小学生を想定している.ゲームは,前半が手拍子音によるガイドあり,後半はガイド無しとして,手拍子によるリズムへの同期と継続のトレーニングを促す仕様とした.短期的評価では,ガイド手拍子とのズレが小さくなり,手拍子タイミングの正確性と精度,恒常性が向上し,アプリを使うことで時間知覚が向上できる可能性が示唆された.
著者
楊 水木 藤田 雅章 乗松 敏晴 鈴木 良平
出版者
West-Japanese Society of Orthopedics & Traumatology
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.1182-1183, 1984-06-25 (Released:2010-02-25)
参考文献数
2

A 37 years old female ruptured the plantar fascia of the foot without associated injury to the achilles tendon while she was under a low posture with the knee flexed, ankle plantar flexed and MP joint dorsiflexed during badminton play.It can be considered that the rupture was brought out by the Windlass Action of the plantar fascia due to extreme dorsiflexion of the MP joint. A surgical primary suture was performed with an excellent result.
著者
鈴木 江津子 Suzuki Etsuko
出版者
神奈川大学日本常民文化研究所
巻号頁・発行日
pp.137-156, 2016-11-30

本稿は、筆写稿本「二神漁業協同組合文書」と写真集「二神漁業協同組合文書」(常民研による現地調査撮影本)を主軸に、戦後実施された二神島の漁業制度改革について書き上げたものである。筆写稿本「二神漁業協同組合文書」は、一九五〇年代初頭、水産庁の委託により財団法人時代の日本常民文化研究所が全国の漁村史料を収集したときに作成されたものである。記録によると、愛媛県の漁業史料の採訪は昭和二六年に実施されている。当時借用の「二神漁業協同組合文書」については、筆写が行われ、終了したものは所蔵者に返却された。現在は、原史料の筆写稿本のみが国立研究開発法人水産総合研究センター中央水産研究所図書資料館と神奈川大学日本常民文化研究所の双方に架蔵されている。 漁業制度の改革は「漁業法」と「漁業組合法」の二つの法律の制定が企図され、まず、昭和二三年「水産業協同組合法」が制定され、翌二四年「新漁業法」が制定された。この戦後の改革によって、明治末期以来続いてきた旧来の漁業制度が廃止され、漁場における基本的秩序が改められた。漁協の性格も大きく改変され前進した。二神島においても、戦時統制下の漁業会は解散され、その施設や資金は新しく設立された二神漁業協同組合へと引継がれた。戦後の制度改革によって、漁業権の再分配という大きな目標は成し遂げられ、漁業協同組合が漁業権の主体となることが実現した。 二神漁業組合が制度的に成立したのは、明治三六年と記録されている。この後、昭和一〇年に、保証責任二神漁業協同組合に組織設定され、平成一一年には、二神・怒和島・津和地が合併して、中島三和漁業協同組合二神支所となり現在も存続している。漁業制度の改革によって、漁業や漁業組合が近代化へと進行していった意義について、未だ、現地に残存している古文書の調査も含め、更なる探求が今後の課題となろう。
著者
鈴木 良美 森山 ますみ 五味 麻美 持田 恵理
出版者
一般社団法人 日本公衆衛生看護学会
雑誌
日本公衆衛生看護学会誌 (ISSN:21877122)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.72-79, 2018 (Released:2018-08-27)
参考文献数
24

目的:本研究の目的は,発達障害を有する外国人小児への保健師による早期発見と支援や,その活動上の困難を,親の国籍による違いも踏まえて明らかにすることである.方法:外国人人口の多い上位100市区町村保健センター241ヵ所へ,無記名自記式質問紙を郵送した.結果:48ヵ所から回答を得た.健診での外国語版質問紙や公的通訳の活用は,外国人人口の多い本調査の対象自治体でも6割程度であった.発達障害を有する外国人小児への保健師活動の困難は,言葉や文化の違いを背景に,情報収集や判断という支援の初期段階からすでに生じていた.また南米よりもアジア系外国人が多い自治体の方が,保健師が活動上の困難を感じる割合が高い項目が多かった.考察:今後,発達障害を有する外国人小児の早期発見と切れ目ない支援のためには,さらなる言語的支援体制の整備や,保健師と外国人双方の理解の促進とそのための情報源の体系化などが求められる.
著者
石橋 陽子 松薗 絵美 合田 智宏 横山 文明 菅井 望 関 英幸 三浦 淳彦 藤田 淳 鈴木 潤一 鈴木 昭 深澤 雄一郎
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.108, no.5, pp.759-768, 2011 (Released:2011-05-11)
参考文献数
24
被引用文献数
2

急性壊死性食道炎の4例を経験した.4例とも初発症状は吐血で,上部消化管内視鏡検査では特徴的な黒色食道を呈した.発症時の基礎疾患は,3例がケトアシドーシス,2例が糖尿病であった.3例は保存的に軽快し,死亡例を1例認めたが死因は急性壊死性食道炎によるものではなく,基礎疾患である敗血症が予後を規定した.急性壊死性食道炎はまれな疾患ではあるが,緊急内視鏡における鑑別診断として念頭に置くべきであると考える.
著者
鈴木 一成
出版者
一般社団法人 色材協会
雑誌
色材協会誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.623-636, 1981-10-20 (Released:2012-11-20)
参考文献数
37
被引用文献数
2 2