著者
阿部 芳子 長野 宏子 市川 朝子 下村 道子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成20年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.72, 2008 (Released:2008-08-29)

【目的】 食物アレルギーの発症例数が多いものに小麦製品が挙げられており、小麦粉製品の低アレルゲン化等の研究が進められている。かん水添加の有無およびpHの変化が小麦たんぱく質のアレルゲン成分の変化におよぼす影響を検討した。 【方法】 湿麩および麺の調製には強力粉(粗たんぱく質12.3%)を用いた。麺へのかん水添加は粉重量の1%とした。湿麩をpH 2からpH 11の緩衝液で抽出後、凍結・UTH液で溶出した。麺生地とゆで麺は凍結乾燥後アセトンパウダー試料とし、緩衝液(pH8.0)で抽出した。低分子部分はHPLCにてアミノ酸分析を行い、高分子部分はSDS-PAGE電気泳動後、タンパク質をPVDF膜に転写して小麦アレルギー患者の血清との抗原抗体反応を行った。 【結果】 各pH溶液抽出の湿麩たんぱく質は、小麦アレルゲンである16kDa付近で、反応が現れていたが、pH 11のかん水抽出試料では反応がすくなかった。生地および麺はいずれもロイシンが多く、GABAも存在していた。かん水生地と水生地のPAGEでは31kDa付近に濃いバンドが現れ、15~16kDaにもバンドがあり、同様の傾向を示した。ゆで麺ではかん水添加の有無で泳動パターンに差があり、かん水麺では生地で現れたバンドの多くが薄くなって消失していた。水麺では生地より増加傾向を示した。従って、かん水麺では加熱でアレルゲンのバンドが変化減少することがみられた。ゆで麺を小麦アレルギー患者の血清と抗原抗体反応させた結果、小麦たんぱく質の主要なアレルゲンのバンドが消失していた。特にアレルギー反応を起こしやすい15~16kDa、31kDa付近のバンドが消失したことから、かん水の添加はアレルゲンの除去に効果のあることが考えられた。
著者
池田 昌代 加藤 みゆき 長野 宏子 阿久澤 さゆり 大森 正司
出版者
日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 = Journal of home economics of Japan (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.263-269, 2003-04-15
参考文献数
23
被引用文献数
4

ミャンマーの発酵米麺モヒンガーの成分上の特徴及び,製造工程における微生物相を検討し次のような結果を得た。(1)発酵米麺製造工程には,Bacillus属,Lactobacillus属, Streptococcus属, yeast,moldsが普遍的の存在していた。(2)発酵米麺の一般成分は原料米と比較し,水分,タンパク質,脂肪,灰分,全てにおいて低い値であった。また有機酸は,原料米で見られたクエン酸,フマル酸,シュウ酸が減少し,新たに乳酸が生成されていた。(3)発酵米麺の遊離アミノ酸は,原料米と比較して増加していた。また,発酵米麺からタンパク質を抽出し,電気泳動でタンパク質泳動パターンを観察したところ、原料米の時に見られた20kDa以上のタンパク質が消失していた。さらに14.3kDa付近のバンドが薄くなり,6.5kDa以下の低分子のバンドが増加していた。このことから発酵による米タンパク質の低分子かが明らかになった。
著者
堀 光代 平島 円 磯部 由香 長野 宏子
出版者
岐阜市立女子短期大学
雑誌
岐阜市立女子短期大学研究紀要 = Bulletin of Gifu City Women's College (ISSN:09163174)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.55-59, 2010

A survey was conducted among 534 college freshmen (2008-2009, age:18-20) to investigate effects of cooking practices in home economics classes at junior high school and high school on students' cooking skills. With increasing the number of times they have experienced cooking practices, the number of students, who liked cooking and had a specialty dish, increased. Students with experiences in cooking have acquired cooking skills compared with students without experiences in cooking at junior high and high schools. We found that cooking practices at schools were quite effective on learning cooking skills for students, especially for students, who did not cook home.
著者
木村 孝子 山澤 和子 堀 光代 長屋 郁子 横山 真智子 辻 美智子 川田 結花 土岐 信子 長野 宏子 西脇 泰子 山根 沙季
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2015

【目的】日本各地には、各地域の自然環境の中から育まれた食材を中心とした日常食または行事食がある。しかし現代は、地域の伝統的な料理が親から子へ伝承されにくい傾向にある。そこで1960~1970年頃までに定着してきた岐阜県岐阜地域の郷土料理と、その暮らしの背景を明らかにするために聞き書き調査を実施した。<br>【方法】日本調理科学会「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」調査に参画し、岐阜県岐阜地域の本巣市、山県市、瑞穂市を調査した。対象者はその地で30年以上居住した60歳代~80歳代女性9名で、家庭の食事作りに携わってきた人である。<br>【結果】農業が主であった本巣市・瑞穂市では、日常食は米、小麦、自家栽培された作物を中心に朝はご飯、味噌汁、漬物、昼は農作業のため弁当(白飯、梅干しや紅しょうが、芋の煮物)、農作業の合間には「みょうがぼち」、夜は雑炊に漬物を食した。混ぜご飯の「おかきまわし」もよく食べられた。山県市は急峻で石灰質の土地のため、白飯は貴重であり、飯に小麦粉を混ぜてこね、みょうがの葉で巻いた餅を食した。里芋や芋茎、干した里芋の葉、手作りのこんにゃくを使った料理、味噌も家で作り、芋を使った味噌煮は日常食であった。本巣市、山県市では大根の古漬けをしょうゆや味噌味の煮物にしていた。伝え継ぎたい家庭料理には、みょうがぼち、芋もち、里芋の煮っころがし、芋茎の酢の物や煮物、おばこ煮、十六ささげの味噌和え、千石豆の胡麻和え、桑の木豆のフライ、ねぐされもち、おかきまわし、味噌煮などがある。
著者
辻 美智子 堀 光代 西脇 泰子 木村 孝子 長屋 郁子 坂野 信子 長野 宏子 山澤 和子 山根 沙季 横山 真智子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】岐阜県に伝承されている家庭料理の中で、おやつとして食べられている料理の特徴についてまとめることを目的とした。<br />【方法】日本調理科学会特別研究「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」のガイドラインに沿い、岐阜県の家庭料理について平成24年~27年に聞き書き調査を行った。調査対象地域を岐阜、西濃、中濃、東濃、飛騨の5圏域に分類した。対象者は調査地で30年以上居住し、家庭の食事作りに携わった43名である。聞き書き調査の結果からおやつに関する料理を抽出し、圏域別に特徴をまとめた。<br />【結果】岐阜圏域の「みょうがぼち」は、空豆餡を小麦粉生地で包み、茗荷の葉を巻き、蒸して作られ、初夏の食材を活かし田植えの合間に食されていた。西濃圏域の今尾地区の「竹寒天」は、竹神輿の材料である竹の中に寒天液を流し込んで作られ、左義長に出されていた。中濃圏域では初午の「まゆだんご」や端午の節句や田植え休みの「ぶんだこ餅」など、米や米粉に砂糖や小豆を加えたおやつを作り、ハレの日に食されていた。中濃・東濃圏域では、新米の収穫時期に「五平餅」が作られ、来客時にも供されていた。東濃圏域の「からすみ」は、米粉に好みの味(黒砂糖、抹茶、胡桃、紫蘇など)を加えて蒸したものであり、桃の節句には欠かせないものであった。また、秋には特産の利平栗を用いた「栗きんとん」や「栗蒸し羊羹」も親しまれていた。飛騨圏域の「甘々棒」はきな粉を主原料とした飴菓子であり、かつて寒冷地の農業普及に大豆の栽培が奨励され、大豆を美味しく食べる工夫がされていた。内陸県である岐阜県のおやつは、田畑や山などで収穫される季節の食材を活かし、小麦粉・米・米粉に砂糖、小豆などを用い、折々の喜びを食にも込めていた。
著者
堀 光代 鈴木 徹 長野 宏子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.63, no.12, pp.771-780, 2012 (Released:2014-02-14)
参考文献数
26
被引用文献数
2

SDS electrophoresis and antigen-antibody reactions were carried out in order to investigate the effects of bacterial enzymes isolated from Indian nan and chapati on the decomposition of allergenic proteins in wheat flour.  The salt-soluble and -insoluble fractions of the allergenic proteins were treated with the crude enzymes produced by microorganisms isolated from Nan and chapati. The results of antigen-antibody reactions indicated that only three microorganisms isolated from chapati, 00-IND-016-1, 00-IND-016-3 and 00-IND-016-4, could decompose the allergenic proteins.  These three also exhibited 99% similarity to B. subtilis and B. amyloliquefaciens when analyzed with an API 50 CHB/E medium kit. A phylogenetic tree based on the 16SrRNA sequences showed that the three microorganisms were close to B. methylotrophicus and B. amyloliquefaciens.
著者
堀 光代 平島 円 磯部 由香 長野 宏子
出版者
岐阜市立女子短期大学
雑誌
岐阜市立女子短期大学研究紀要 (ISSN:09163174)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.55-59, 2010

A survey was conducted among 534 college freshmen (2008-2009, age:18-20) to investigate effects of cooking practices in home economics classes at junior high school and high school on students' cooking skills. With increasing the number of times they have experienced cooking practices, the number of students, who liked cooking and had a specialty dish, increased. Students with experiences in cooking have acquired cooking skills compared with students without experiences in cooking at junior high and high schools. We found that cooking practices at schools were quite effective on learning cooking skills for students, especially for students, who did not cook home.
著者
長野 宏子 大森 正司 庄司 善哉 飯渕 貞明 荒井 基夫
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.219-226, 1994-03-15
被引用文献数
4

中国等の多くの国の小麦粉発酵食品は自然発酵によっているところが多い.タイやインドネシアの伝統的な小麦粉発酵食品に関与している微生物の検索を行い,ガス発生する微生物を分離・同定し,その性質を明らかにした.パームジュースをスターターとする蒸し菓子(khanom taan)のドウからEnterobacter cloacaeを単離した.揚げパン(paathong koo)のドウからは,Klebsiella planticolaおよびProteus mirabilisを単離した.発酵性細菌の安全性は既に確認されている.単離した細菌であるE. cloacae, K. planticolaを用いて饅頭を製造した結果,良好な膨化を示し,十分にスターターとしての働きをもつものであった.
著者
長野 宏子 大森 正司 矢野 とし子 庄司 善哉 西浦 孝輝 荒井 基夫
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.389-393, 1992

植物由来の<I>Enterobacter cloacae</I> GAO と, 腸由来の<I>E.cloacae</I> IAM 12349, <I>E.coli</I> IAM 12119 との簡易判別法開発のための検討を行った.<BR>(1) <I>E.cloacae</I> GAO の生育はグルコース, アスパラギンを含むG培地にリンゴジュースを添加すると約2倍に, カザミノ酸を添加すると約3倍に促進された.<BR>(2) GAO の炭素源としてはリンゴジュース中に存在するブドウ糖とショ糖がIAM 12349に比べよく資化された.セロビオース, リボースがよく資化されており, 特にキシロースはIAM 12349ではごくわずかな資化性であるが, GAOではよく資化された.<BR>(3) GAO は, pH4から10までの広い範囲で生育が可能であり, <I>E.coli</I> はpH7以下, pH10では生育せず, またGAO はエスクリン分解陽性であったが, IAM12349, <I>E.coli</I> は陰性であり相違が明らかであった.<BR>以上の結果より簡易判別法になりうるものであった.
著者
篠原 久枝 長野 宏子 磯部 由香 秋永 優子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】日本調理科学会特別研究平成24~25年度「次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理」の聞き書き調査を元に,宮崎県の家庭料理の主菜の特徴を明らかにすることである。<br>【方法】平成24~26年度に県内の8地区11ヶ所の昭和2年~昭和22年生の女性35人を対象に,昭和30~40年代から作られていた家庭料理について聞き書き調査を行い,主菜に分類される料理を抽出し特徴について検討した。<br>【結果】昭和30~40年代は、多くの農家の庭先で鶏が飼われていたが、卵は貴重品であり生で食したり、卵焼きにして弁当のおかずとした。正月や祭り、屋根の吹き替えなどの行事がある時には、鶏をつぶして刺身や煮物、すき焼きにして食された。大ばらし(足分け)までは男性の仕事であった。北部山間部では、豚一匹を使った料理(諸塚村)やアシナガやキイロなどの蜂の子を使った料理(五ヶ瀬町)も見られた。魚介類は地域差が見られ、北部沿岸部(延岡市)では、ぐち、いか、鰯、アジなどが多くとれ、日々の食事に魚を切らすことはなかった。内陸部や山間部では、昭和30年代までは、塩をしていない魚(無塩)は滅多に手に入らず、塩イワシやイワシの丸干しが食されていた。北諸県地区(都城市)では、イワシの丸干しをてんぷらにした「魚んてんぷら」が運動会や田植えのさのぼりの時のご馳走であった。南那珂地区(日南市)ではイワシのすり身に豆腐と黒砂糖を合わせて揚げた「飫肥のてんぷら」が冠婚葬祭の時に食されていた。豆腐は各家庭で作られていたが、東臼杵南部の椎葉村では、焼畑で栽培した大豆を使って、平家カブの葉や藤の花を入れた「菜豆腐」が作られていた。以上より、ひなたの海幸・山幸を活かした主菜が各地区でみられた。
著者
吉村 美香 長野 宏子 辻 福美 Anh To Kim 大森 正司
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.10, pp.603-610, 1998-10-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

(1) 酸肉にはいずれの試料においても,LBSもしくはTATACのどちらか,または両方の培地に生育が見られた.また,ポテトデキストロース寒天培地においては全ての試料で生育が普遍的に見られた.層そして,DHL寒天培地において多くの試料で生育が見られた.(2) 一般成分を分析した結果,豚肉のpHは5.61で,酸肉(ネムチュア)のpHは3.81と低かった.また,乳酸の生成が顕著に見られた.(3) 遊離アミノ酸は,酸肉(ネムチュア)の方が多く含まれ,特に旨味成分のグルタミン酸が多く,次いでアラーン,ロイシンなどが多く含まれていた.これは,豚肉のタンパク質の自己消化による変化とほぼ一致した.(4) SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動及びペプチドパターンの分析の結果,発酵によって肉タンパク質が分解し,低分子タンパク質やペプチドの生成が認められた.
著者
堀 光代 阿久澤 さゆり 下山田 真 吉田 一昭 長野 宏子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.205, 2005

【目的】国内産・県内産小麦の生産量が年々増加している現状である。各地で生産から消費までの取り組みについて行われているが、今回は、製粉工程が異なる岐阜県内産小麦について製パン性を比較検討することを目的とした。【方法】2003年に岐阜県で生産された小麦「中国152号」と「タマイズミ(関東123号)」の2種類について製粉工程の違いから(細)と(粗)に分類した計4種類と、対照として外国産小麦1CW(カナダ産)を用いた。パンの材料配合は、小麦粉に対し、砂糖(6.8%)食塩(2.0%)酵母(1.12%)水(68.0%)とした。小麦粉は粒度分布と色差を測定し、ドウはファーモグラフによるガス発生量の測定を行った。ホームベーカリーにてパンを焼成後、質量・体積・色差等の測定とあわせてパンの品質評価と官能検査を行った。【結果】(1)小麦粉の粒度分布は(細)と(粗)では差が認められ、色差も感知できる程度の差が見られた。(2)ガス発生量は、県内産小麦粉は対照である1CWと異なった結果を示し、ガス保持力等に差が見られた。(3)パンの比容積は1CWが高く、県内産小麦粉両品種の(細)と(粗)ではいずれも(粗)ほうが低い比容積であった。色差の測定結果は、小麦粉の測定値より製パン時の色差に顕著な差が見られた。パンの品質評価では、(粗)が(細)より低い評価であった。両品種の(細)における比較は、品質評価では外観は1CWに劣る評価であったが、味・香りは1CWに近い評価であり、官能検査の結果もほぼ一致していた。
著者
土岐 信子 山根 沙季 長野 宏子 川田 結花 木村 孝子 辻 美智子 長屋 郁子 西脇 泰子 横山 真智子 山澤 和子 堀 光代
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2015

【目的】日本各地には、各地域の自然環境の中から育まれた食材を中心とした日常食または行事食がある。しかし現代は、地域の伝統的な料理が親から子へ伝承されにくい傾向にある。そこで1960~1970年頃までに定着してきた岐阜県東濃地域の郷土料理と、その暮らしの背景を明らかにするために聞き書き調査を実施した。<br>【方法】日本調理科学会「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」調査に参画し、岐阜県東濃地域の瑞浪市、恵那市、中津川市を調査した。対象者はその地で30年以上居住した70歳代~90歳代女性8名で、家庭の食事作りに携わってきた人である。<br>【結果】自家栽培した作物を中心に、日常食はご飯、味噌汁、漬物が基本であった。また小麦をうどん屋に持ち込み、うどんに加工して煮込みうどんや素うどんなどで食した。山間部のため、野山の食材を中心にした料理が多く、おかずには季節の野菜や芋類を使った煮物、大豆の煮豆や炒り豆、蕗の佃煮、蜂の子の佃煮、醤油味噌などを食していた。味噌やたまり、蒟蒻などの加工品も作っていた。また乳牛や山羊、鶏、鯉、蜂の子を飼う家もあり、牛乳や卵も手に入った。魚は保存性の高い塩漬けした秋刀魚、鰯などを利用したが、昭和30年代にはスーパーマーケットができ、生の魚や肉なども手に入るようになり利便になっていった。この地で伝え継ぎたい家庭料理として、五平餅、朴葉寿司、蜂の子ご飯、さんま飯、栗おこわ、栗きんとん、栗蒸し羊羹、からすみ、朴葉餅、年取りのおかず、煮なます、柚べし、鯉こくなどがある。
著者
長野 宏子 大森 正司 矢野 とし子 庄司 善哉 西浦 孝輝 荒井 基夫
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.389-393, 1992-05-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
20
被引用文献数
1

植物由来のEnterobacter cloacae GAO と, 腸由来のE.cloacae IAM 12349, E.coli IAM 12119 との簡易判別法開発のための検討を行った.(1) E.cloacae GAO の生育はグルコース, アスパラギンを含むG培地にリンゴジュースを添加すると約2倍に, カザミノ酸を添加すると約3倍に促進された.(2) GAO の炭素源としてはリンゴジュース中に存在するブドウ糖とショ糖がIAM 12349に比べよく資化された.セロビオース, リボースがよく資化されており, 特にキシロースはIAM 12349ではごくわずかな資化性であるが, GAOではよく資化された.(3) GAO は, pH4から10までの広い範囲で生育が可能であり, E.coli はpH7以下, pH10では生育せず, またGAO はエスクリン分解陽性であったが, IAM12349, E.coli は陰性であり相違が明らかであった.以上の結果より簡易判別法になりうるものであった.
著者
堀 光代 長野 宏子 阿久澤 さゆり 下山田 真 吉田 一昭
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.31-37, 2010 (Released:2014-12-05)
参考文献数
22

岐阜県産小麦粉(中国152号)の製パン性を製粉方法による粒度の面から検討した。ロール製粉機による製粉(中国152号(I)),テストミルによる製粉(中国152号(II))の2種類で製粉し,これらの小麦粉粒度,色差,製パン性等を比較した。小麦粉の平均粒度は,中国152号(I)95.5μm,同(II)56.9μmであった。粒度分布タイプも異なり,中国152号(I)にふすまの混入が示唆された。小麦粉の色差は「感知できるほど」の差がみられた。製パン結果では,比容積は中国152号(II)が(I)より高い結果であった。パンの色差は,小麦粉の色差結果より差が大きかった。パンのクリープ試験結果では,中国152号(II)は1CWに近く,中国152号(I)と(II)には顕著な差がみられた。パンの品質評価は,中国152号(I)の焼き色と色相の2項目が低かった。官能評価では中国152号(I)は(II)と比較して香り以外のすべての項目で低い評価であった。
著者
長野 宏子 大森 正司 庄司 善哉 飯渕 貞明 荒井 基夫
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.219-226, 1994

中国等の多くの国の小麦粉発酵食品は自然発酵によっているところが多い.タイやインドネシアの伝統的な小麦粉発酵食品に関与している微生物の検索を行い, ガス発生する微生物を分離・同定し, その性質を明らかにした.パームジュースをスターターとする蒸し菓子 (khanom taan) のドウから<I>Enterobacter cloacae</I>を単離した.揚げパン (paathong koo) のドウからは, <I>Klebsiella planticola</I>および<I>Proteus mirabilis</I>を単離した.発酵性細菌の安全性は既に確認されている.単離した細菌である<I>E.cloacae, K.planticola</I>を用いて饅頭を製造した結果, 良好な膨化を示し, 十分にスターターとしての働きをもつものであった.
著者
加藤 みゆき 長野 宏子 大森 正司
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.737-740, 2010-11-15 (Released:2013-07-01)
参考文献数
7
被引用文献数
1

The distribution method and consumption of tea products (except green tea) in Vietnam were studied. Fresh tea leaves are distributed in bundles like vegetables in South Vietnam, while in Hanoi, North Vietnam, fresh tea leaves are put into baskets and sold. Che xanh fresh tea leaves are infused by hot water together with ginger to serve for drinking. It presents a cool feel, although having some grassy smell.
著者
長野 宏子 粕谷 志郎 鈴木 徹 下山田 真
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

世界中の伝統的な発酵食品から食品に関与しているたんぱく質分解能微生物の探索・保存をペプチドの機能性を検討した。目的は、伝統発酵食品由来微生物の探索・保存とデータベース化を続けることと、その微生物が産生する酵素の機能性への関与を検討することである。特に、プロテアーゼ活性の強いコラゲナーゼ様酵素を産生する微生物(Bacillus属)の産生する酵素の有効性を探ることである。食由来微生物の保存とデータベース化は、生物多様性下において、タイ、ベトナム、中国、カンボジアとMOUを締結でき、公開可能な状況になった。たんぱく質分解能があり、普遍的に存在しているBacillus属を同定し、Bacillus subtilisの16S rDNA結果より、系統樹を作成した。B.subtilis M2-4株の産生する精製酵素の特徴を検討した結果、分子量は、33kDaと推定し、N-末端アミノ酸配列はAQSVPYGISQIKAPAであり、サブチリシンと同じであったが、小麦粉発酵食品からは初めて分離された微生物であった。酸性カゼインに対する分解フラッグメントのC末端は、特に親水性アミノ酸Arg,Gln,疎水性アミノ酸Val,Ile等のアミノ酸であり、ペプチダーゼの可能性がある。牛乳たんぱく質β-ラクトグロブリンに対する酵素作用には、B.subtilis DBの濃縮粗酵素を用い分解能を検討した。β-ラクトグロブリンは、短時間でペプチドに分解され、ペプチドファラグメントのN-terminalアミノ酸配列は、β-ラクトグロブリンアミノ酸配列の23、36と一致し、β-ラクトグロブリンのアレルギーエピトープ部分の分解能があった。この酵素はアレルギー患者にとって低アレルギーなど機能性食品になる可能性をもっているものである。人々の知恵の結晶である「発酵食品」中の微生物が利用される可能性のあるものとなった。
著者
磯部 由香 平島 円 堀 光代 長野 宏子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成26年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.4, 2014 (Released:2014-08-29)

【目的】調理の重要な操作として「切り方」が挙げられる。本研究では,大学の調理実習で「切り方」の扱うための知見を得ることを目的とし,大学生と専門学校新入生の「切り方」の知識とその操作を行う自信度について分析し,学生の調理技術について検討した。 【方法】2010~2013年に大学・短大・専門学校に入学した学生1,149名に対し,20種類の「切り方」の知識とその自信度についてアンケート調査した。それぞれの項目について「できる」「ほぼできる」「少しできる」「たぶんできる」「できない」「知らない」から選択回答させた。その結果から20種類の切り方をクラスター分析により分類した。 【結果】学生が「知っている」切り方は「リンゴの皮むき」「みじん切り」「ジャガイモの皮むき」の順で多かった。しかし,学生が「できる」と回答した,すなわち自信度の高い切り方は「輪切り」「みじん切り」「いちょう切り」の順だった。「皮むき」については自信度が低かった。学生の自信度により切り方を分類したところ,自信度の高い切り方が7種類,個人差の大きい切り方5種類,自信度の低い切り方8種類と3つに分類された。自信度の高い切り方は高等学校までの教科書に多く記載されている切り方で,自信度の低い切り方は教科書にほとんど記載されていなかった。したがって,学生の調理技術を高めるためには経験することが重要であり,大学の授業で扱う必要があるとわかった。また,大学で調理実習を行う予定の学生と行わない学生に分けて切り方を自信度別に分類したが,調理実習を行う学生のほうが自信度の高い切り方が少なかった。実習を行う予定の学生のほうが調理の難しさを理解しているのではないかと推察された。
著者
長野 宏子 大森 正司 庄司 善哉
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.38, no.10, pp.865-869, 1987-10-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
10
被引用文献数
3

小麦粉製品の膨化に関して昔から, 伝統的に酵母以外の微生物と考えられるものが, 日本の一部で用いられてきた.このように蒸し物として中国料理で用いられ, また秘伝とされている発麺 (スターター) を聴聞により調製することを検討し, 饅頭をつくることが可能となった.1) 発麺発酵条件を検討した結果, 水を用いるよりも, リンゴ浸漬水を用いるほうが, スターター (発麺) を調製するのに適していた.また, 発麺の調製条件は, 30℃で4時間を要した.2) 発麺を用いて饅頭を作るための, 2次発酵時間は, 30℃で4時間を要し, また発麺の小麦粉に対する割合は, 5~10%でよかった.3) 発麺とパン酵母を用いて饅頭を作り, 官能検査をした結果, 有意差はなかった.とくに発麺を用いた饅頭は酵母臭がないものであった.4) 発酵ドウ中の微生物を光学顕微鏡で観察した結果, 桿菌のみが存在し酵母は存在しなかった.