著者
馬場 香織
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本年度4月から9月までは,制度的変化と発展に関する理論を勉強する一方で,全世界における年金改革の状況を特に民営化を焦点に量的分析を行ない,第二世代改革を説明するにあたって制度的要因に注目することの妥当性を示すことができた。平成22年10月からは約1ヶ月間メキシコシティに滞在し,米州社会保障研究所図書館などで関連資料の収集を行ない,また,同研究所教育担当長のアントニオ・ルエスガ氏へのインタビューを行なった。11月末からはアルゼンチンに移り,連邦社会保障庁(ANSES)資料室での一次資料収集および各界関係者へのインタビューを行なった。インタビュイーは元ANSES高官ミゲル・フェルナンデス氏,元民間年金基金運用会社監視局高官ラウラ・ポサーダ氏,元民間年金基金運用会社組合長オラシオ・ロペス氏,アルゼンチン労働センター社会保障担当局長リディア・メサ氏,年金問題専門弁護士アレハンドロ・シベッティ氏などである。これらの資料やインタビューを通じて,アルゼンチンにおける年金制度第二世代改革についての各方面からの見方を知ることができ,こうしたデータを理論にフィードバックすることで,理論の精緻化も可能となった。第二世代改革がなぜ起こり,そしてなぜ各国間で違いが見られるかについて,短期的要因と長期的要因を複合的に見る必要がある。とりわけ,長期的要因,すなわち制度的発展の様態・第一世代改革におけるveto構造・財政的移行コストという,制度的・構造的要因を詳しく明らかにすることは,ラテンアメリカ年金制度改革に関する研究においても新しい視点であり,これを政治・経済状況といった短期的要因と組み合わせてみることで,より高い説明力をもった理論枠組みを期待できる。
著者
浅賀 英人 吉田 博一 馬場 廣太郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.357-363, 2002
被引用文献数
2

スギ花粉飛散期におけるエバスチンの効果および発現時期,持続性の検討を行うために,2000年3月5日,周囲を多くのスギ林に囲まれた宇都宮市森林公園にて野外比較試験(single blind)を実施した.試験当日は快晴に恵まれたこともあり,公園内の測定で235個/cm^2と大量のスギ花粉が飛散した.特に投薬を行った10時からの2時間は1時間に50個/cm^2を越える大量のスギ花粉が飛散し,この期間におけるプラセポ内服群の鼻症状は急激に悪化した.エバスチン内服群においてはこのスギ花粉大量曝露下の内服後2時間目からすでに症状改善傾向を認めた.またその効果は,24時間後の翌朝10時まで持続して認められた.エバスチンは,スギ花粉飛散期の大量曝露下における症状を即効性をもって抑制し,その効果は1日1回の内服により24時間得られるものと考えられた.また野外比較試験は,スギ花粉飛散期に行うことにより患者の症状を自然経過のまま観察,評価することが可能であり,抗アレルギー薬を含むさまざまな花粉症治療の臨床効果判定に有用であることが示唆された.
著者
田村 淳 北口 和彦 崎久保 守人 上村 良 大江 秀明 吉川 明 石上 俊一 馬場 信雄 小川 博暉 坂梨 四郎
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7, pp.1565-1572, 2008 (Released:2009-01-06)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

当院外科入院患者において,腸炎症状を発症した症例に偽膜性腸炎またはMRSA腸炎を疑ってバンコマイシンの経口投与を行ったのでその投与状況と効果について検討した.2001年1月から2005年4月までの外科入院患者4867例のうちバンコマイシンの経口投与を受けた症例は41例で,約9割が手術症例であった.その内訳はCD抗原陽性で偽膜性腸炎と診断された症例が10例,便培養検査にてMRSA腸炎と診断された症例が10例,これらを疑ってバンコマイシンを投与したが検査結果により否定された症例が21例で,臨床症状からの正診率は49%であった.治療により全例において症状は軽快し,腸炎による死亡例は認められなかった.腸炎発症前に投与された抗菌薬をセフェム系とカルバペネム系に分けて検討すると,後者の方が腸炎発症リスクが高いと考えられた.手術部位別の比較では,MRSA腸炎は上部消化管手術後に多く発症する傾向がみられた.バンコマイシンはこれらの腸炎の標準的治療薬であるが,腸内細菌叢を攪乱することによりVRE等の新たな耐性菌感染症の発症リスクとなるため,適正な投与基準を設ける必要があると思われる.
著者
馬場 眞知子 福田 豊
出版者
一般社団法人社会情報学会
雑誌
日本社会情報学会学会誌 (ISSN:09151249)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.5-17, 2009-09-30
被引用文献数
2 3

日本に定住する外国人は2007年末には総人口の1.69%と,日本ではかつてない外国人の増加に伴う様々な課題や問題が起き,多文化共生は行政の大きな課題となってきている。一方ICTの発展は著しく,行政の電子化が本格的に進められようとしている中,ICTが多文化共生にどのように活用できるかという検討はほとんど行われていない。既に多くの行政のWebサイトでは、外国人向けの外国語ページが見られるが,それが定住する外国人支援から見てどのような内容であるかの検証はほとんどされていない。定住する外国人にとってこれらの行政Webサイトが有効に活用され,行政サービスを受けやすくすることは,多文化共生にとって重要な課題だと考えられる。本稿では都道府県のWebサイトに見られる外国人向けのページについて調査し、その内容とユーザビリティについて簡単な評価を試み、ICTが多文化共生にどのように活用することができるか、その可能性について考察した。その結果,都道府県Webサイトで外国人支援として有効と考えられる項目を抽出することができた。またこれらの項目を用いたユーザビリティ評価では,外国人支援として高い評価を得る都県と低い評価となった都県の大きく2つのグループに分けられ,その取り組みに差があることがわかった。
著者
馬場 哲晃 笠松 慶子 土井 幸輝 串山 久美子
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.11, pp.1-6, 2010-08-16

著者らはこれまでペルチェ素子を用いた温冷呈示インタラクションに関する研究を継続しており,本稿ではその知見をビデオゲームインタラクションに応用する.これまでビデオゲームにおける皮膚感覚呈示では振動モータを利用したものが主であり,温冷呈示のインタラクション手法に関する検討が少ない.そこで本研究では実際にペルチェ素子を配したゲームコントローラとシステムを自作し,ペルチェ素子の各出力条件 (100,80,60%) におけるユーザの反応時間を測定・検証した.結果としてユーザの反応時間と温度変化速度は冷却試行においては関連があることや,ゲームシステムに利用するための反応時間に関する知見を得ることができた.上記を応用し,実際にビデオゲームシステムを制作し,ユーザからの意見やその様子をまとめた.We have been continuing a study about thermal sensation interaction with peltier modules. In this paper we shall apply the techniques of interaction to a video game. It is major to use a vibration motor for tactile sensation in video game interactions. But there are few studies for applying thermal sensation to a video game. Then we experimented with response time of users under the condition 100,80,60 % output of our prototype controller device. As a result, we found there is a relation of response time and temperature change speed, and a concrete numerical parameter of a peltier element for a video game interaction. Based on above result of the experiment, we made video games that offer thermal sensation to users, and describe user's reactions.
著者
南 俊朗 馬場 謙介
出版者
九州情報大学
雑誌
九州情報大学研究論集 (ISSN:13492780)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.13-25, 2014-03

図書館が学習グループの構成支援サービスを提供することにより図書館は利用者にとっての"ソーシャルメディア"になることができる。これはネットワーク時代の図書館における新規サービスへの1つの試みとしての意義があり,また近年の大学図書館において利用者が長時間図書館に滞在するような環境づくりの切り札的存在となっているラーニングコモンズ(LC) 空間の有効活用にも寄与することになる。このような背景の下,本稿は図書館の貸出記録に基づいた学習グループの構成という手法について議論し,1つの方法を提案する。本手法においては,学習グループのメンバは貸出記録から定義される利用者の興味分野の類似性や専門度等に基づいて選定される。このような目的やアプローチによる研究はこれまで十分なされておらず,本論文の議論も未だ初歩的レベルにはあるものの,将来の図書館サービスとして大きな潜在的重要性をもつ。
著者
馬場 金太郎
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲 (ISSN:09155805)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, 1956-08-05
被引用文献数
1
著者
馬場 俊輔 山田 陽一 日和 千秋
出版者
(財)先端医療振興財団
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究においては、培養細胞と生体吸収性足場技術を利用して、新生骨の力学的機能を考慮した足場を開発することにある。足場は、天然歯やインプラント周囲欠損部に対する治療において骨芽細胞の発育を促し、また細胞だけでは十分な量が得られない場合はそれらを補填するために用いるものであるが、現在市販されている足場であるハイドロキシアパタイトやリン酸カルシウム系材料は骨の再生能の点において満足できるものではなく、さらに骨細胞形成能においても評価できるものではない。これらの問題点は、自己由来の骨芽細胞と足場の組み合わせによって、細胞成長能を十分に促進させることができないことにある。さらに、これらの足場は、足場としての機能を考えた場合、生体に埋植後、一定期間に自分の骨に置き換わることを期待する生体吸収性足場ではないことから、吸収性が備わり、さらに内部の気孔性が高く、骨芽細胞や血管が進入しやすく、加えて口腔内で咬合力を負担しうる強度を有する構造でなければ、再生骨を機能的に評価することは困難である。今回の研究では、この問題を解決するために、エナメル質、セメント質、歯根膜、歯槽骨の起源である自己由来の未分化問葉系幹細胞(MSCs)と最適化設計した生体吸収性足場を用いて咬合支持に耐えられる培養骨を開発し、天然歯の周囲骨、歯槽骨はもちろんのことインプラント周囲の骨を再生させる点に特徴がある。今回の研究においては生体吸収性の足場を設計することにより、培養骨芽細胞の活性度に応じた足場材の構造を最適化することができ、より効率的骨再生に加え、創傷治癒、骨形成促進作用も期待できる足場を開発した。PRPと細胞の関係や、これまでの臨床研究の結果を参考にして、カゴ状の編み込み型足場に細胞を播種する計画を策定した。これは組織再生用足場としてPLA繊維1本で編み上げた織物構造体の足場で、カゴ形状で内部に空洞を有しており,ここに細胞を入れることにより細胞の着床率を上げ,大きな欠損部に用いる目的で作成したものであり、現在実用化されているものは細胞をスカフォールドの内部まで播種することが困難であるが,このスカフォールドは開口部を有しており,臨床時に内部に播種して必要寸法に切断することが可能で,手術時に欠損部に合わせて形成できる.また,スカフォールドと欠損部の界面で体液が循環できる構造となっている点で有用である。ここに播種する細胞の最適化を計るべく、細胞培養条件の検討も行った結果、足場に播種する細胞の接着効率だけからではなく、足場の力学特性も関与させる必要があることが明らかとなった。さらに、曲げ強度に問題があり操作性を向上させる必要から、PLA繊維の周囲にPCLのバインダーで強度を補った。また,ヒト問葉系幹細胞をかご型スカフォールドに接着させ、培養を行った。その結果、PLAで製造されたスカフォールドの生分解速度は遅く、細胞の増殖及び骨系への分化誘導が可能であったがスカフォールドは6ヶ月以上の長期に亘り外形を保持されたままであった。これらのことから、スカフォールドの吸収分解速度と培養骨芽細胞の骨再生速度の調節が重要な課題となったため、PLA繊維のin Vivoにおける挙動を確認するための動物実験をしたところ12週間で骨の再生が確認され足場の吸収も確認された。細胞のみの移植と比較しても良好な結果が得られた。
著者
早川 文代 馬場 康維
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.437-446, 2002-05-15
被引用文献数
3

"Mattari," which is a term for describing food properties, was clarified by a questionnaire to 496 young people in the metropolitan area around Tokyo. The respondents were first asked when and how they had known the term, and the answers reveal that "mattari" is a vogue-word. Second, the association between "mattari" and 52 kinds of food was studied. The panel was asked how "mattari" an item is: very, a little, not at all, and "I've never eaten." The data were analyzed by quantification method III, and their item category values were obtained. Order was apparent among the data categories, showing that there was a common conception of "mattari." Order was also found among the evaluated items, meaning that scaling of "mattari" was possible, so that the intensity of "mattari" for each kind of food could be quantitatively obtained. Sweets or dairy products such as custard cream, fresh cream, butter cream and carbonara sauce were very "mattari." Third, the panel was asked whether 53 kinds of terms-for describing food properties were close to "mattari" or not. The terms close to "mattari" were "sticky," "mild," "spreading slowly in the mouth" and "rich."
著者
馬場 美次
出版者
一般社団法人照明学会
雑誌
照明学会誌 (ISSN:00192341)
巻号頁・発行日
vol.83, no.12, pp.885-886, 1999-12-01

静岡県のほぼ中央に位置し,徳川家ゆかりの地として栄えてきた静岡市.その歴史に関わる数々のモニュメントは,緑豊かな公園として市民に親しまれている駿府城址に代表されるように,今でも市民生活の身近なところで息づいている.県の経済や文化の中心地としての役割を果たす都市機能を充実させながら,一方では町の歴史を誇り,自然に憩う人々の生活を大切に育む町づくりがおこなわれているこの街に,新しい文化と情報発信の象徴ともいえる静岡朝日テレビの新社屋が誕生した.この新社屋のスタジオからは,より一層生活に密着した数々の番組が制作され,市民に提供されている.静岡県内で開催される催し物やさまざまな情報,トピックスなどが紹介される生ワイド番組『おはよう静岡』.県内で最も盛んなスポーツのひとつでもあるサッカーの中継,そして高校野球の地区大会の中継といったスポーツ番組.そのほか,CM制作やVTR収録番組の制作など,多様な番組づくりがスタジオを中心として行われている.