著者
野村 理朗 Rappleye Jeremy 池埜 聡 高橋 英之
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

もとより複合的な高次感情である「畏敬」は,喜び・怒り・悲しみといった基本感情とは異なり,それを生じさせる規定条件に不明な点が多い。この正負の方向へと分岐しうる畏敬の発生機序の解明が重要課題であるとともに,AI等の開発,自然災害等に関わる心理支援への応用などの可能性も秘めている。本研究は,心理学,比較文化,ロボット工学等の領域を横断して連携し,複合感情としての「畏敬」の効用,およびその個人差の基盤となる心理・生物学的機構を明らかにするとともに,フィールド調査やロボットを用いた構成論的アプローチを取り入れた方法論により,「畏敬」の応用までを視野にいれた革新的知見を得ることを目指す。
著者
増田 真平 高橋 英之 栗原 正仁 山内 康一郎
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第22回全国大会(2008)
巻号頁・発行日
pp.280, 2008 (Released:2009-07-31)

顔画像を推薦するシステムとして、従来はタグ情報を用いた手法が多用されて来た。しかし、この手法ではユーザーが複数のタグに対してどのように重みを付加しているか考慮できない.そこで本研究では他人が主観的につけた顔の評価値の平均値を疑似メタ情報として利用可能かどうかを考察した。
著者
高橋 英之 伴 碧 佐武 宏香 遠藤 信綱 守田 知代 浅田 稔 下條 信輔
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2015論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.395-399, 2015-09-18

正弦波に応じてリズムを変動させる太鼓をたたくぬいぐるみロボットを開発,正弦波のパラメータがどのようにその ロボットとの被験者のリズムインタラクション(交互太鼓たたき課題)における主観的感覚に影響を与えるのかにつ いて調べてきた.その結果,リズムを決める正弦波周期が長くなればなるほど,ロボットが被験者に追従していると いう社会的感覚が生じ,その結果,ぬいぐるみロボットに対する親しみなどの主観的印象が向上することが示された.
著者
高橋 英之 伴 碧 近江 奈帆子 上田 隆太 香川 早苗 石原 尚 中村 泰 吉川 雄一郎 石黒 浩
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:21888760)
巻号頁・発行日
vol.2019-HCI-181, no.13, pp.1-7, 2019-01-14

心に働きかけることで,人間の暮らしを豊かにするヒューマンエージェントインタラクションの研究が多数行われている.一方で既存の研究は,ユーザーとエージェントとが特定の状況で短時間だけ相互作用することを想定する場面設定が殆どであり,従来のエージェントを長時間使用した際には,かえってユーザーがその存在に飽きてしまったり,“あざとさ”を感じてしまったりするリスクがある.本稿では,五感刺激を組み合わせて空間に提示するシステムとロボットを連動させることで,心に持続的に影響を与える続ける空気感エージェントのデザイン原理とそれに期待される価値についての議論を行う.
著者
高橋 英之
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

対人応答性(他者に対する社会的態度の構築能力)が弱い自閉症などの発達障害者の療育手法として,単純で振る舞いを予測しやすいロボットとの交流を通じて対人応答性を引き出す試みがある.しかし対人応答性を定量的に評価する指標がこれまで殆ど無かったため,ロボットによる療育効果の客観的評価が難しかった.申請者は対人ゲームをプレイ中の独自の行動指標(エントロピー)と脳計測(fMRI)から,対人応答性を定量的に評価する客観的指標を開発した.
著者
高橋 英之 西村 望 大森 隆司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.461, pp.437-442, 2010-03-02
被引用文献数
1

自分の心を言葉だけで正確に語れるとは限らない.特に芸術などに対する嗜好性は,言葉で正確に表現することが困難である.本研究では,絵画鑑賞者の嗜好が鑑賞中の視線の動き(絵画上のオブジェクトに対する注意配分)に反映されるという仮説を立て,絵画鑑賞者の嗜好を視線の動きだけから推定することを試みた.我々の実験の結果,まず絵画に対する嗜好性と絵画鑑賞時の視線の動きの間には定量的な関係性があること,そしてこれらの関係性を利用することで視線の動きから絵画鑑賞者の嗜好をある程度即時的に推定可能であることが示唆された.
著者
鹿子木 康弘 高橋 英之 松田 剛
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究では,視線入力インタフェース技術を用いた独自の参加型認知実験パラダイムを構築し,今まで方法論的な限界により検証不可能であると考えられていた乳児の他者に対する道徳的ふるまいを明らかにすることを目的とする。本研究により,従来研究から漠然と示唆されていた乳児の道徳性の 実証が可能になるとともに,乳児の行動そのものを測るという乳児研究手法のコペルニクス 的転回が実現できると期待している。また,乳児の道徳的行動を直接観測することで,分断 が叫ばれる現代社会に横たわる様々な問題の背後に存在する道徳性や暴力性の発達的要因の解明がより進むことも期待される。
著者
高橋 英之 島谷 二郎 小山 虎 吉川 雄一郎 石黒 浩
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:21888760)
巻号頁・発行日
vol.2018-HCI-176, no.21, pp.1-4, 2018-01-15

自分があらかじめ記述した考えをロボットが代わりに述べ,それを論破するという自己客観視システムを構築した.このシステムを用いた予備実験から,一定数の被験者がロボットを通じた自分自身との対話を通じて考え方や価値観を変化させることが示された.本研究ではこのようなシステムが持つ意義について考察したい.
著者
高橋 英之
出版者
大阪大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究プロジェクトの目的は,子供のロボットに対する親近的な興味の背後にあるメカニズムに迫り,それを生み出す脳内メカニズムをモデル化することにある.ロボットへの親近的な興味の背後にあるメカニズムを探るために,オキシトシンというホルモンに注目した成人を対象とした人間とロボットの交流実験の解析を行った.その結果,オキシトシンはロボットへの親近的な興味を増大させる機能があること,ただしそのような親近的な興味を生じさせるにはロボットにインタラクティブ性があることが重要なことが分かった.この研究は成人を対象としたものであり,今後,子供で類似の実験を行う予定である.また本研究計画では,子供とロボットのみの関係ではなく,子供と母親の関係性についても考える必要がある.本年度は子供と母親の関係性を記述する力学系のモデルをRNNPBネットワークというニューラルネットワークモデルを用いて構築した.その結果,子どもとロボットの身体的能力の差異が子供と母親の多様な関係性を生み出すことが示唆された.今後はこのモデルに,報酬系に相当するシステムを埋め込み,親近的な興味がどのように生じるのかをシミュレーションで明らかにしていきたいと考えている.以上,本研究プロジェクトではロボットへの親近的な興味の背後にあるメカニズムに多様な観点からアプローチすることができた.その一方で,メインのスコープとしていた子供のロボットに対する興味の計測については現状ではまだ予備実験に留まっており,今後より掘り下げて成果をだしていく必要がある.
著者
宮崎 美智子 高橋 英之 岡田 浩之 開 一夫
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 = Cognitive studies : bulletin of the Japanese Cognitive Science Society (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.9-28, 2011-03-01
参考文献数
56
被引用文献数
1

The emergence of “Sense of agency” contributes to self-recognition. However there are few useful experimental paradigms for evaluating the development process of the sense of agency in young infants because the sense of agency is a subjective sense and young infants cannot verbally describe their internal experience. In this article, we propose a new experimental paradigm for examining the sense of agency using on-line eye tracking which we named “eye-scratch task”. This task enables us to evaluate the emergence processes of the sense of agency by a trajectory of voluntary eye movement. Besides, this task enables direct comparison of eye movement trajectories between infants and adults in common criteria. Hence, we can discriminate whether an infant feels the sense of agency or not by comparison with adults. Further, we analyzed participants' behavior in the task by the concept of feed-forward model that are the most famous computational frameworks for motor control and sense of agency. And we claim that our new infant's model based measurement give fruitful suggestions to the computational modeling for the development process of the sense of agency and self-recognition.
著者
三宅 智仁 河合 祐司 朴 志勲 島谷 二郎 高橋 英之 浅田 稔
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第32回 (2018)
巻号頁・発行日
pp.1F2OS5a02, 2018 (Released:2018-07-30)

ロボットと共同作業をし,それが失敗したとき,人間はその失敗を自分とロボット,どちらの責任だと感じるのだろうか.本研究では,共同で行ったゲームが失敗した際の相手エージェントの責任と心の知覚を評価することで,その関係を明らかにすることを目的とする.さらに,相手エージェントとして,人,ロボット,コンピュータの三種類について比較することで,人の場合と人工物の場合で,責任帰属に変化があるかを調査する.実験の結果,課題を成功させるために重要な心の知覚が高いほど,失敗に対する責任は小さくなることがわかった.「相手は課題の成功のために行動している」という印象が責任を低減させたと考えられる.また,課題による相手エージェントの心の知覚の減少量と責任の大きさに関係があることがわかった.このことから,課題前に相手に対して抱いていた期待が課題中に裏切られることが,相手への責任帰属につながる可能性がある.これは,人条件で顕著である一方で,人工物に対してはほとんど見られなかった.人に比べると,人工物が心を持っていることを期待していないことがこの原因であると考えられる.
著者
高橋 英之 堀井 隆斗
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第31回全国大会(2017)
巻号頁・発行日
pp.1G2OS21b1, 2017 (Released:2018-07-30)

我々は刹那的な体験を言語などの共有信念にプロジェクションすることで他人と社会的インタラクションを行っている.このようなプロジェクションはコミュニケーションする上で有用であるが,もともとの刹那的体験そのものに含まれていた情報が欠損することで創発の可能性が失われる.今回の発表では刹那的体験から共有信念へのプロジェクションのダイナミクスをモデル化し,インタラクションに宿る創発現象について議論をしたい.
著者
高橋 英之 石黒 浩
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第32回全国大会(2018)
巻号頁・発行日
pp.3D1OS7a03, 2018 (Released:2018-07-30)

近年,様々なコミュニケーションロボットが開発されている.これらのロボットは,人間のパートナーとして生活に溶け込み,我々の暮らしをより豊かにすることが期待されている.我々は,コミュニケーションロボットが提供する一つの価値として,ロボットとの交流により,人間の自己の外部投影を促進し,行動変容を引き起こすことで個人の成長につながる“気付き”を生じさせることにあると考えている.本発表では,「ロボットを用いた自己開示の促進」と「ロボットを用いた批判的思考の促進」という二つの具体的な研究事例を紹介することで,ロボットが促す自己変容過程のモデル化について議論したい.