著者
山口 邦久 岡 夏生 井崎 博文 高橋 正幸 福森 知治 金山 博臣 菅 政治
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.493-496, 2008-07
被引用文献数
1

31歳男。腎不全末期の状態で緊急入院し, 同日血液透析導入となり, 腎生検よりnephrosclerosisであった。約8ヵ月後に父をドナーとする生体腎移植を施行し, 急性尿細管壊死は認めず, 血流直後より初尿を認め, 免疫抑制剤に拒絶反応もなく経過した。術後3週間頃より10000ml前後の1日尿量が続き, 体重減少, 皮膚乾燥, 血清クレアチニン値の上昇を認め, 尿崩症を疑った。MRIでは下垂体の形態異常は認めず, T1強調画像で下垂体後葉の高信号は保たれ, 尿検査で低張尿は認めなかった。高濃度食塩水テストを施行してのバソプレシン分泌の変化の検討では, 血漿浸透圧は上昇したが血漿バソプレシン濃度の上昇は鈍く, 正常バソプレシン分泌範囲を下回り, 不完全型中枢性尿崩症と診断した。デスモプレシン点鼻の開始により尿量は減少し, 体重, 血清クレアニチン値も安定した。現在もデスモプレシンの点鼻投与を継続し, 経過順調であった。A 31-year-old man was sent to hospital for urgent treatment. He was in the terminal state of chronic renal failure, and was placed under hemodialysis immediately. Proteinuria and hypertension had been notified since adolescence, had been left untreated, and there was no record of his conditions, was. Living kidney transplantation was conducted 8 months later. The donor was his father. After the operation, rejection was not recognized, but urine volume per day was not reduced and maintained the level around 10.000 ml. At the same time, the decrease of body weight and the rise in the serum creatinine concentration were noted. The results of magnetic resonance imaging and the hypertonic saline test (Hickey Hare Test) have formed diagnosis of incomplete diabetes insipidus. Immediately after the administration of desmopressin (rhinenchysis), the decrease of urine volume was recognized, and the body weight and serum creatinine concentration became stable.
著者
牧野 亮哉 高橋 哲郎 野嶋 栄一郎 柳本 成一 梅澤 章男
出版者
福井大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

複数のモダリティからなる情報が同時的、あるいは継時的に提示される時、学習者はどの情報モダリティで与えられる情報を取捨選択するのかという問題、すなわち学習者の認知的な情報処理過程については、これまで組織的な研究がなされてこなかったテ-マである。本研究によって得られた主な成果を以下に記す。1.映像教材の情報処理過程、特に映像と音声の交互作用過程を調べるための方法論的検討を行った。映像教材が学習者に取込まれていくプロセスを、その入力段階において測定するためにアイカメラを利用することを試みた結果、アイカメラで測定される映像の見方が学習者の理解を反映することを示唆するものであった。2.映像と音声の時間的タイミングを実験的に操作して、音声が映像に先行する教材と後行する教材及び同時に提示される教材を作成した。先行と後行のどちらが理解を阻害するかを調べた結果、音声の後行がより理解を阻害するという知見が得られた。映像情報の理解が音声情報に大きく依存していることを示唆する結果である。3.比較的授業に近い場面におけるアプロ-チとして、LL教室のレスポンスアナライザを用いた測定システムを開発した。教材を提示しながら学習者に質問を行い、それに対する回答をアナライザとそれに接続したマイコンにより測定、収集、蓄積するシステムで、これにより時々刻々の学習者の変化を追跡することが可能になった。4.マイコンのグラフィックス機能を利用して、図学授業における説明図を板書図やOHP図に代わる形で提示することを目的として、そのCAI教材化を試みた。開発した教材内容は次のものである。(1)角錐・円錐・角柱・正多面体、線織面等の立体の投像及び直線と各種立体の交点、多面体同士の相貫、曲面体同士の相貫。(2)三角錐・円錐・傾斜三角柱・傾斜円柱・球・ねじれ面・傾斜六角柱等の各種立体の展開図及び測地線の作図。
著者
高橋 美美 川井 八重 川島 美保 刈谷 苗美 朝生 美智 竹本 美佳 安部 多恵 国本 美和 中平 稚奈
出版者
高知大学
雑誌
高知大学学術研究報告. 医学・看護学編 (ISSN:03890473)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.41-46, 2004-12-31
被引用文献数
1

The purpose of this study was to understand the life situation of elderly people who show only a small age-related decline in their motor abilities. A quantitative analysis of body abilities was carried out on 16 elderly people who participated in a fall prevention class. Three years later, the same analysis was carried out again on the same people. The following criteria were measured; (1) the length of their maximum step, (2) the time it takes to walk 10 meters, and (3) a functional reach test. As a result, the participants were classified into two groups. People who showed no change or improved in two or more criteria were assigned to the first group, and people who worsened in two or more criteria were assigned to the second group. Next, the researcher interviewed the district public health nurse about the lives of the subjects, and carried out a qualitative analysis. After analyzing all of the date, the following features were found in "the improved group"; (1) they have some roles in their homes and communities, (2) they were highly interested in their health, (3) they had social gatherings, and they had been leading active lives. In "the worsened group," the following feature was found; they had been leading inactive lives for the three years of the observation period.
著者
中嶋 正之 竹田 繁 高橋 裕樹
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.50, pp.1-2, 1995-03-15
被引用文献数
2

近年,交通計測の自動化がすすめられている中で,一つの情報源である車種認識が注目を集めている.車種認識の主な用途としては,次のような例があげられる.1.車種別の断面交通流計測2.有料道路および駐車場等での課金の自動化3.犯罪捜査への情報補完現在,有料道路等で実用化されている方式は,車番情報等から車種を租分類するというものである.今後は,それらの情報だけでなく,車両の形状特徴や表面特徴なども用いることで,車種認識の詳細化を図る必要がある.本稿では,簡単かつ高速に処理できるよう,車両の側面画像から得られるいくつかの形状特徴を用いて,車種認識をおこなう方法を提案する.
著者
西川 俊 高橋 秀知 小林 正幸 石原 保志 柴田 邦博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.78, no.11, pp.1589-1597, 1995-11-25
被引用文献数
31

講演,講義などにおいて,健常者の話をリアルタイムで(即時に)ほとんど正確かつ忠実に文字に変換,表示し,聴覚障害者に伝える新しい音声情報の伝達手段として,リアルタイム字幕表示システム(RSVシステム)の研究開発に成功した.従来,聴覚障害者への音声情報の伝達手段は,口語(読唇術)と手話通訳と要約筆記しかなく,どの方法も大きな欠陥を持っていた.最近,コンピュータを利用したリアルタイム文字化システムの開発が試みられているが,多くの問題がある.RSVシステムでは,1991年に我々の1人(柴田)が開発した日本語高速入力用ステノワードキーボードを大幅に改良し,パソコンに接続する.そして,話者の話を高速入力,かな漢字変換し,高速字幕合成装置に送る.これを字幕として話者などを映したビデオ映像に合成し,リアルタイムで表示できる.このシステムの大きな特徴は,先にすべての読みを表示し,その後でかな漢字混じり文を表示することにより,聴覚障害者の中でも特に言語力の低い者に対する情報伝達を配慮したことである.そして,視聴実験により,この読みの効果を検証し,報告する.
著者
小浦 誠吾 小笠原 致道 上田 成次 高橋 康子 関 由美子 鴨居 道明 田中 十城 則武 晃二 片岡 孝義
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.96-101, 1994-08-05
被引用文献数
3

前報で水田用除草剤の処理方法としてACN発泡性大型錠剤(以下通称のACNジャンボ剤とする)の畦畔からの投げ込み方法を検討し、活性成分の水中拡散性が良く、その後の水中成分濃度の低下も早く、環境安全性にも優れていて実用性が高いことが明らかにされた。本報では、表層剥離と藻類に対するACNジャンボ剤の効果を検討し、実用性を考察した。1.50m^2規模の圃場試験によると、表層剥離に対しては、発生前〜発生盛期の処理において、速効的に高い防止効果が認められ、その後の発生も認められなかった。浮上程度60%の時期(発生率100%)の処理では、十分な効果はなく、薬量を増やす必要があると思われた。一方藻類に対しては、発生盛期の2時期の処理ともに処理1日後には効果が顕著に現れ、それ以降3週間以上にわたって抑制していた。2. 10a規模の水田試験でも、50m^2圃場での試験と同様に高い効果が認められた。3.2倍量試験でも、薬剤投入地点を含めて水稲に対する薬害は認められなかった。従って、表層剥離と藻類がすでに発生している水田でも、それらの発生盛期までの間に他のジャンボ剤との組み合わせ処理をすれば水中拡散性が妨げられることがなくなるため、そのジャンボ剤が十分にその効果を発揮することができるものと考えられた。
著者
沖永 希世 高橋 千太郎 津越 敬寿 工藤 善之 古谷 圭一 荒木 庸一
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 = Journal of Japan Society for Atmospheric Environment (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.12-20, 2000-01-10

地下生活環境における空気質の特性に関する知見を得るために,東京都の営団地下鉄銀座線の駅構内における空気中浮遊粒子状物質の質量濃度,化学組成,並びに粒子径分布について検討した。ダストカウンターによって測定されたSPMの質量濃度の近似値は,おおむね0.06〜0.12mg/m^3であり,いずれの駅でもビル管理法の基準値を下回る結果であった。地下鉄駅構内SPMの大気質量濃度の近似値には各駅ごとに顕著な変動が見られたが,その変動パターンは測定日にかかわらず比較的一定であった。一方,地下鉄駅近傍の地上部分の質量濃度には駅間の変動が認められず,各駅間でみられた質量濃度の差は,換気状態や空調システムといった各駅固有の要因によるものと推察された。SPMの粒子径分布の特徴は粒径範囲0.3〜0.5μmの相対濃度が測定したすべての駅構内で近傍の地上より低い値を示した。一方,粒径範囲0.5〜1.0,1.0〜3.0μmのSPMの相対濃度は駅講内の方が近傍の地上より高い値を示した。すでに大規模な地下街においても,同様な傾向が見いだされており,一般的な地下空間におけるSPMの粒子径分布の特徴と考えられた。駅構内で捕集されたSPMは,SEM-EDXおよび蛍光X線分析により地上で採取されたSPMに比べて相対的に金属ヒューム状粒子が多く,その主成分として鉄が多く含まれていることが示された。
著者
石田 等 川上 用一 高橋 宏典 関本 利一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ICD, 集積回路
巻号頁・発行日
vol.97, no.481, pp.43-47, 1998-01-22

マクロストリップ線路は、無線通信機器の回路構成要素として広く用いられている。しかし、この線路は、周波数が高くなると、電磁波の伝搬速度が周波数に対し独立で無くなる。この現象は、マクロストリップ線路の分散特性として広く知られている。我々は、E-Oプローバを用いて、線路上を伝わる進行電磁波の位相定数と減衰定数を直接観測した。これらの測定定数から、実効比誘電率 (波長短縮率) および伝送損失が解析的に求められる事を示した。PTFEとBTレジンの波長短縮率の周波数依存性を求めた。
著者
高橋 勝己 武田 保孝 村沢 靖 小森 隆三 杉野 栄二
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.45, pp.167-168, 1992-09-28

並列推論マシン『PIM/m(Parallel Inference Machine/model M)』は、第五世代コンピュータプロジェクトの一環として開発を行なったものであり、先に開発した並列推論マシンのプロトタイプである『マルチPSI』の後継機として位置付けられている。従って、PIM/mの構成が2次元格子状であることや、各要素プロセッサがCISCタイプであることなどの基本設計はマルチPSIを継承したものとなっている。しかし、PIM/mでは、要素プロセッサの性能向上やプロセッサ数の増大に対応するために、パイプライン・アーキテクチャの採用やRefuge Stackの導入といったいくつかの改良を行なっている。『CSP(Console System Processor)』は、このPIM/mの立ち上げや、異常発生時の処理、ファームウェア/ソフトウェアのデバック支援など、PIM/mの開発や運用を行なうためのシステムである。このCSPは、マルチPSIのCSPをPIM/mに合わせて改良したものである。本稿では、PIM/mのCSPにおける要素プロセッサ内部の資源アクセス方法など、PIM/mの各要素プロセッサのメンテナンスを行なう機能について報告する。
著者
石井 里枝 高橋 邦彦 堀江 正一
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.201-212, 2006
被引用文献数
2 9

高速液体クロマトグラフィー—エレクトロスプレーイオン化/質量分析計(LC-ESI-MS/MS)を用いた農作物中の残留農薬一斉分析法を検討した.LC/MS/MS条件はポジティブモード,MRMで,LC条件はカラムにAtlantis dC18を,移動相に酢酸-酢酸アンモニウム-アセトニトリル系を用いて分析した.前処理法はアセトン抽出した後,飽和食塩水とヘキサンの液-液分配,さらにENVI-Carbカートリッジカラムで精製した.本法による各農薬の定量下限値は5 ng/g以下であった.また,50 ng/g濃度での添加回収試験で60~130%の回収率が得られたのは80成分でRSD (%)も15%未満であった.本法を適用して50農作物について実態調査を行ったところ,9作物から7農薬が検出された.
著者
西口 克彦 小野 行徳 藤原 聡 猪川 洋 高橋 庸夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ED, 電子デバイス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.549, pp.23-28, 2006-01-19

MOSFET技術で作製した室温で動作する単一電子転送素子と高感度電荷検出素子の複合デバイスについて報告する.転送素子は直列に接続された2つの細線FETで構成され、各FETを交互に開閉することで単一電子が電子蓄積部へと転送される。ハーフピッチ50nmの作製技術とバイアス条件の最適化により室温での単一電子転送が可能となった.また、微小チャネルを有する電荷検出用FETを電子蓄積部に近接して配置することで単一電子検出が可能となり、室温で0.005e/〓Hz@2Hzという高感度を得ることに成功した。高速な電子転送と長い電子保持を生かした応用例も示す.
著者
堤 拓哉 高橋 章弘 千葉 隆弘 苫米地 司
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会構造系論文集 (ISSN:13404202)
巻号頁・発行日
vol.72, no.613, pp.29-34, 2007
被引用文献数
4 2

Snowdrift formation on and around buildings can be serious problems in snowy cold region. The planning of buildings in such areas should consider the position of snowdrifts. A wind tunnel experiment using model snow is a useful tool for estimating snow accumulation on building. However, the law of similarity for this experiment has not been revealed. In this study, the authors have been investigated the effects of turbulence intensity on snowdrift. We carried out wind tunnel experiments using model snow particle under the different turbulence intensity of air flows. Snowdrifts on the leeward of the snow fence were compared under the several conditions.
著者
栗畑 博幸 高橋 友和 目加田 慶人 井手 一郎 村瀬 洋 玉津 幸政 宮原 孝行
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.674, pp.55-60, 2006-03-10

本報告では車載カメラ映像から雨天時に現れる画像特徴を抽出し,それを用いた状況別降雨認識手法を提案する.車載カメラを用いた運転支援技術の一環として,撮影時刻や降雨量の異なる様々な状況において天候,特に降雨の認識を試みる.具体的にはフロントガラスに付着した雨滴により変化する画像特徴を,昼夜の状況に適した方法を用いて検出することによって降雨の認識を行う.昼間の映像の場合には,様々な形状の雨滴画像から主成分分析を用いてテンプレートを作成し,テンプレートマッチングにより雨滴を検出する.我々はこれまで画像中の空領域からの雨滴検出手法を提案してきたが,本報告では入力画像を複数フレームにわたって平均化することで,画像全体からの安定した雨滴検出を行う手法を提案する.また雨滴検出結果をフレーム間で照合することで,より精度の高い雨滴検出が期待される.夜間の映像の場合には,雨滴による散乱光を定量化する.撮影時刻や降雨量の異なる実映像を用いて実験を行った結果,昼間の場合,画像全体から適合率0.97,再現率0.51と,従来と同程度の検出精度が得られた.また夜間の場合,83%の降雨判定成功率が得られた.これらのことから提案手法の有効性を確認した.
著者
高橋 均 飯田 克実 高橋 保夫
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.161-169, 1971-10-29

水田裏作にイタリアンライグラスを栽培する場合に,水稲収穫後の播種適期間が短かいので栽培面積を拡大することが困難である。そこで,イタリアンライグラスの省力播種法とくに不耕起まき栽培について検討した。1)イタリアンライグラスの発芽にとっては,耕起の有無・砕土程度の精粗にかかわらず地表面に播種したままの方が良く,覆土すると発芽率が低下した。すなわち,最も省力的な不耕起まきによって十分の発芽苗立を確保できるが,降雨が不十分で土壌水分含量が低い場合には不安定である。2)圃場の播種準備作業を省略して播種床の条件が悪いほどイタリアンライグラスの初期生育が不良であった。とくに不耕起まき栽培では耕起まき栽培に比べて初期生育が劣り,1番刈収量が明らかに低下し,2番刈でもやや減収した。3番草以降には耕起の有無の影響はみられなかった。3)不耕起の場合には土壌の固相割合が高くて気相割合が低く,硬度が高いことも減収の一因になっていると考えられるが,土壌中の可溶態N含量の低下がイタリアンライグラスの初期生育を抑え,1〜2番刈収量を低下させる大きい原因であると考えられる。4)土壌中の可溶態N含量の低下を補なうために晩秋に追肥を1回追加すると,1番刈収量は耕起した場合と同程度になった。すなわち,土壌中のN含量を高めてイタリアンライグラスの生育を維持するには,耕起作業を省略して晩秋の1回の追肥におき代えることが可能である。5)水分蒸発に伴なって土壌が収縮する際に生ずる亀裂から,雨水に肥料分が溶解して流亡することが,土壌中可溶態N含量の低下の大きい原因であると考えられる。したがって,この溶脱の程度は亀裂の発生に影響する土壌水分の減少程度・土性あるいは水稲の栽培法等により異なり,イタリアンライグラスの減収程度および追肥の効果もこれらの条件によって異なるものと考えられる。