著者
広川 美津雄 井上 勝雄 高橋 克実
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.21-28, 2002-11-30
被引用文献数
1

近年、製品デザインの現場やデザインマネジメントの立場から、デザインコンセプト策定の重要性が増大している。本研究は、橋梁という特殊な領域におけるデザインコンセプト策定についての先行研究の考察を基礎に、工業デザインの分野において曖昧に使われてきたデザインコンセプトの内容を明らかにし、工業製品のデザインコンセプト策定の方法に関する提案を行った。策定方法は、まずデザイナーが、製品開発の時系列的視点で製品価値を再構成することによってデザインコンセプトを設定する。次に、現在デザインしようとしている製品に求められる要件のうち、評価を定めたり、合意したりすることが困難な要件に対して、デザインコンセプトによって方向性を示す。このような製品価値主導のデザインコンセプト策定により、製品全体の新しい価値を明確にすることができ、以後に続く設計をリードし、製品開発の全体をコントロールできる。
著者
千葉 修 高橋 信年
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.447-455, 2003-06-30
被引用文献数
3

1998年4月28日のGMS可視画像に見られた四国上空の雲の変化に関心を持ち,雲の動態と局地風の関係を調べた.午前中の雲画像は,四国の太平洋側に散在した積雲群を,午後には四国の脊梁山脈を中心に集積した広い雲域を示した.これを局地風の動きと比較すると朝方の雲は沿岸域に隣接する岬や高地で生じた積雲群とみられる.そのあと谷風と主に太平洋側からの海風が内陸奥深く進入し山岳周縁部に雲域を形成した.そして午後には高温位となった四国の山岳域に熱的低気圧が発生し,そこに谷風と海風との連結した風が吹き込み山岳域を中心に雲が広範囲に集積した.結果として午後遅くに高峰付近の雲域は四国の面積の約4割を覆い,その雲頂高度は2000m以上であった.
著者
Limcumpao Joselito A. 掘本 泰介 高橋 英司 見上 彪
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.351-359, 1990-04-15
被引用文献数
1

ネコヘルペスウイルス1型(FHV-1)糖蛋白質(gp)の感染細胞内における局在部位と輸送を調べるために, 単クローン性抗体による間接蛍光抗体法(IFA)を経時的に行った. 抗gp143/108抗体による蛍光はウイルス感染4時間後に細胞膜と核膜部位において初めて認められ, 8時間目以後は核周囲および細胞質内にも明瞭な蛍光が見られた. gp113に対しても同様の部位において反応が見られたが, 8時間目までは蛍光が認められなかった. 一方, 抗gp60抗体による蛍光は感染12時間後に核の近傍および周囲に初めて認められ, 16時間後には核内に, また20時間後には細胞質内にも蛍光が認められた. さらに, これら3種類の糖蛋白質は感染細胞膜表面にも発現されていることが, 未固定感染細胞を用いたIFAにより明らかになった. 次に, ELISA additivity試験により各糖蛋白質上のエピトープマッピングを行ったところ, gp113は2ドメインにより構成されており, そのうち一つは, 部分的に重複する3エピトープを持つウイルス中和反応に関与するドメインであると考えられた. 一方, gp143/108には重複領域を持つ5エピトープで構成される一つの抗原領域が存在し, そのうち1エピトープはこの糖蛋白質を認識する全ての単クローン性抗体と反応するものと考えられた.
著者
三品 美夏 渡邊 俊文 藤井 康一 前田 浩人 若尾 義人 高橋 貢
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.989-993, 1997-11-25
被引用文献数
8

麻布大学附属動物病院に来院した犬152頭 (正常群102頭, 腎疾患群13頭, 心疾患群37頭) に対し, オシロメトリック法を用い, 最高血圧, 平均血圧, 最低血圧, 心拍数の測定を行った. オシロメトリック法で測定した血圧および心拍数は, 正常群では測定回数を重ねるに従い低下し, 安定する傾向が認められた. 前腕部と尾根部において血圧および心拍数を測定したところ, 両者間での測定値に有意差は認められなかった. 性差に関して雄は, 雌に比較して有意 (p<0.05) に高値を示した. 年齢と血圧の関係は認められなかった. 正常群および疾患群の心拍数と血圧の検討では, 各群間で心拍数には差は認められなかったが, 最高血圧, 平均血圧, 最低血圧のすべてにおいて正常群, 心疾患群に比較して腎疾患群は有意 (p<0.05) に高値を示した. このことから, 犬における腎疾患の症例では高血圧が発症していると考えられた.
著者
高橋 映子 佐藤 直之 鎌田 貢壽
出版者
北里大学
雑誌
北里医学 (ISSN:03855449)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.468-477, 1992-08-31

Heymann腎炎(HN)の発症機構とこれにかかわる病因抗原-抗体系を明らかにする目的で,HN発症ラットと,15-deoxyspergualin (DSP)を用いてHNの発症を抑制したラットの免疫系を比較検討した。31匹のLewisラットに近位尿細管刷子縁蛋白(FxlA)を完全フロイントアジュバントと共に0週に120μg,4週に60μg免疫し,HNを発症させた。ラットを生食投与群,DSP 0.25mg/kg, 0.5mg/kg, 1.0mg/kg, 2.0mg/kg投与群の5群に分け,DSPを50μlの生食と共に腹腔内に投与した。生食投与群のラット6匹すべてが,8週までに20mg/日以上の陽性蛋白尿を呈したが,DSP投与群では,用量依存性に蛋白尿が抑制され,DSP 1.0mg/kg, 2.0mg/kg投与群ラットは,14週まで1匹も陽性蛋白尿を示さなかった。14週に得た腎の糸球体へのIgG沈着は,生食投与群で典型的HNの所見を呈したが,DSP投与群では用量依存性に抑制され,DSP 1.0mg/kg, 2.0mg/kg投与群では組織学的にHNの発症が阻止された。血清中の抗FxlA抗体価は,生食投与群では,6過に33505±2024 (SD) cpmと最高値を示したが,DSP投与量に依存して抑制され,DSP 1.0mg/kg投与群では,最高値が7309±3614cpmと抑制された。陽性蛋白尿を示し組織学的にHNを発症したラットの血清IgGは,FxlA中のgp700 (700kDの糖蛋白),gp440, gp330を4週以降14週まで沈降させた。同一血清IgGは,糸球体蛋白中のgp700を4週以降14週まで沈降させたが,糸球体蛋白からgp440, gp330を沈降させなかった。この血清IgGは,蛋白尿出現と同時に糸球体蛋白中の95kD抗原を一過性に沈降させた。DSP 1.0mg/kg投与群の血清IgGは,FxlA中のgp700, gp440, gp330を4, 6, 8週に沈降させたが,糸球体蛋白中のgp700をまったく沈降させなかった。またこの血清IgGは,95kDの糸球体蛋白を一過性に沈降させた。DSPは,糸球体蛋白gp700に対する抗体産生を選択的に抑制することでHNの発症を阻止した。これらの結果からHNの糸球体抗原は,gp700と95kDの抗原であることが明らかになった。gp700は,糸球体への病因抗体沈着を起こす主要な抗原で,95kDの抗原は,蛋白尿出現に関与する抗原である。
著者
高橋 紀子 岡田 ミヨ子 長谷川 由紀子 佐藤 紀子 成田 琢磨 神谷 千鶴 浅沼 義博
出版者
秋田大学
雑誌
秋田大学医学部保健学科紀要 (ISSN:13478664)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.58-67, 2004-03-31

糖尿病患者に対し,教育入院用クリニカルパスを作成し,7例に適用した.このパスの中での栄養士の果たす役割は,アウトカムを「食事療法の必要性が理解でき,ご飯などの秤量ができ,退院後も継続できる」とした.入院期間は平均24日であり,この間に全例において, 3回栄養指導を行うことができた.入院時に調査した患者の食事状況については,7例中6例が間食をしていた.また,食事傾向は7例中5例が基本量よりも多く食べていた.また,7例中2例では食事療法に対する家族の協力は得られず,問題を抱えていた.教育入院前後のBody Mass Index (BMI)は,入院時27.4±4.8,退院時26.7±4.6であった.また,収縮期血圧は,各140±26mmHg,117±18mmHgであった.BMI,収縮期血圧ともに入院により有意に改善した.血液検査成績として,空腹時血糖, HbAlcを測定した.空腹時血糖は,入院時182±40mg/dl,退院時132±52mg/dlであった.また,HbA1cは,各10.0±1.8%, 8.0±0.9%であった.空腹時血糖,HbA1cともに入院により有意に改善した.退院時に,食事療法の理解度を調査した.摂取エネルギー量や主食・主菜・副菜の組み合わせの理解は7例ともあった.また,食品交換表の理解は,「ある」が3例,「1部ある」が3例であり,「ない」は1例のみであった.糖尿病教育入院用クリニカルパスを用いて管理栄養士が食事療法に介入することは,計画的に栄養指導を行うことができる,栄養士がチーム医療のなかに積極的に入ることができる等の理由により有意義であると考える.
著者
島田 博祐 高橋 亮 渡辺 勧持 谷口 幸一
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.375-387, 2002-11-30

本研究の目的は、加齢および居住環境要因(入所施設とグループホーム)の適応行動に対する影響を障害程度別に検討することである。対象者は40歳以上の中高齢知的障害者188名であり、適応行動尺度(ABS)および高齢化に関する調査票を材料に用いた。結果として、(1)障害程度にかかわらず「自立機能」に50歳以降における適応得点の低下と不適応者の増加が認められ、中軽度群では「身体的機能」「経済的活動」および「責任感」に、重度群では「掃除洗濯」「仕事」および「心理的障害」の領域に同様の低下が認められた、(2)居住環境要因に関しては「経済的活動」「移動」「一般的自立機能」「台所仕事」の領域で、障害程度に関係なく入所生活者の適応能力がグループホーム生活者より低く、中軽度群での「数と時間」「言語」および「計画性」、重度群での「自己志向性」と「社会性」でも同様の差が認められた。