著者
菊地 哲夫 Tetsuo KIKUCHI 東京農業大学生物産業学部産業経営学科 Department of Business Science Faculty of Bio-Industry Tokyo University of Agriculture
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.140-149,

本稿の目的は,仲卸業者の財務状況を把握して,仲卸業者が抱えている経営課題を考察することである。事例として東京都中央卸売市場の仲卸業者を対象とした。財務分析は,収益性,生産性,安定性の3つの視点より行い,さらに総合評価を加えた。その結果,収益性や生産性が他の卸売業(中小企業)に比較して低い点が明らかとなった。現在,仲卸業者の定数制がとられている。経営効率の高い仲卸業者による市場運営を形成してもらうためには,規制を撤廃して参入・脱退を自由にするべきである。また,卸売市場法の改正(2004)により,これまでの業務上の規制が大分緩和された。規制緩和をビジネスチャンスとして,積極的に業務の拡大を図っていくことが望まれる。これらの課題に対処し,経営基盤の強化を図っていくことが重要である。The present paper aims to ascertain the financial situation of intermediate wholesalers and examine business problems that these wholesalers face. As a case study, the present study focuses on intermediate wholesalers in the Tokyo Metropolitan Central Wholesale Market. Financial analysis was performed from the perspectives of profitability, productivity, and stability and an overall assessment was made. The results revealed that the intermediate wholesalers studied had low profitability and productivity compared with other wholesalers (small businesses). Currently, the system for ensuring a constant number of intermediate wholesalers is in place in Tokyo. To ensure high management efficiency in market operations by intermediate wholesalers, the present regulations should be abolished and entry to and withdrawal from the market should be liberalized. In 2004, operating regulations were substantially relaxed following the revision of the Wholesale Market Law. Intermediate Wholesalers should seize the business opportunities liberalized by such deregulation by actively seeking to expand operations. These issues must be addressed and the business framework must be strengthened in order to improve the profitability and productivity of intermediate wholesalers.
著者
君島 利治
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.13-20, 2005-06-20

ラーキンの「広く感じのいい店」は,1961年6月18日に完成し,詩集『降臨節の婚礼』に収められる。5行1連の4連構成,僅か20行の短詩であり,詩人の住んでいたハルにある百貨店が舞台となっている。先ず,その店で売られている安物衣類を観察しながら,詩人は労働者階級の社会における立場の向上によって引き起こされた,階級間のボーダレス化を嘆いている。次に女性物の夜着を詳細に観察しながら,詩人は量産化される労働者階級の生活様式,その本質の軽薄さを批判する。その後の瞑想では,プラトニックな恋愛を擁護すると共に,肉体的な愛のみを重視する女性達を非難している。同時に階級間のボーダレス化は女性によって引き起こされたとも指摘し,女性の家庭,社会での立場が強くなったことに警告を発している。更にはこの詩の中には詩人の性的関心,自慰的衝動も確かに存在している。最終部分に出てくる「恍惚」とは,セックスにおける恍惚状態,階級が上がったと錯覚すること,自慰における射精と多義的に解釈できる。しかし,いずれの場合も「合成的で,真新しく,本質が欠如している」。店で売られている商品を見て回るというありふれた内容の詩ではあるが,そこに隠された詩人の意図は複雑である。少なくとも,プラトニックな恋愛を擁護する詩人の建前の奥には,薄手で派手な色のベビードールやショーティをじっくりと観察し,場合によっては勃起すらしているかもしれない詩人の姿を読み取らねばいけない。
著者
杉原 たまえ 石田 裕 三津浜 三栄子 鈴野 弘子 豊原秀和
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.186-192, 2008-03-15

本研究は,南西諸島のような物理的・環境的条件の限定された地域における在来的な自生植物資源の有用性に関する研究である。沖縄県伊江村(伊江島)では,アブラナ科のハマカブラBrassica campestris L.を,マーナと称し,島の人々はかねてから利用してきた。この植物は日本全国で確認されているが,沖縄県においては自生地が限られ,またこれを日常的に食しているのは伊江島だけといわれている。雑草であるがゆえに,この植物の生産に取り組んでいる農家は,2戸に過ぎない。われわれはこのマーナに関する一般的特性に関する聞き取り調査をおこない,さらに栄養分析をおこなった。その結果,特にマーナのポリフェノール含有量は比較的高い数値で,一般的な野菜の10倍程度であった。日常的に利用されながら雑草的な扱いにとどまっているが,成分的には機能性に加え,栄養学的な面でも優れていることが示され,今後食用化が進められるべき素材であることが示唆された。伊江島では製糖工場が閉鎖され,農家の高齢化も伴って耕作放棄が目立ちつつある中で,ラッカセイ,トウガン,花卉につぐ,マーナの特産化が模索されるべきであろう。
著者
中里 厚実
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.205-211, 2016-03-15

我々人類の生活に最も深くかかわってきた酵母の一つにSaccharomyces属が存在する。1838年Meyenによって分離された酵母がS.cerevisiaeと命名されて以来,Saccharomycesに属する多くの酵母が分離されている。一方,S.cerevisiaeには多くの実用酵母が含まれる。すなわち,清酒酵母は葡萄酒酵母やパン酵母と同種と考えられていた。しかし,ビオチンの要求性において清酒酵母と他の実用酵母に差異があることが約半世紀前に初めて認められた。以来,イーストサイジンに対する抵抗性,細胞表面の荷電状態,高濃度アルコール生成など,清酒酵母と他の実用酵母の多くの相違が細胞学的,醸造学的見地から報告された。さらに,1990年代に入り,電気泳動法により生化学的,染色体的見地からの相違が報告された。情報科学の発展と共に2010年代に入り,清酒酵母のゲノム情報も公開されている。
著者
Mojica L.E. Reforma M.G.
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.19-30, 2010-06 (Released:2011-07-26)

玄米は白米よりも栄養分を多く含んでいる健康食品として知られている。玄米は、その消費による健康面の効果だけではなく、経済的かつ生態的な面でも効果を有している点においても評価されており、フィリピンでも再び見直されてきている。多くの研究が玄米消費による健康上の利点を証明している。それらの利点はよく知られているのであるが、本稿では、玄米の需要維持に関する障壁の克服と玄米需要の機会増進という目的の達成とともに、玄米流通のレベルと消費動機、玄米の購買行動と消費行動について明らかにすることを研究目的とする。玄米はロスバニオスとマニラの市場において入手することができる。しかし、ロスバニオスの小売店と比較して、マニラの小売店においては、より多くの銘柄や包装サイズのものが提供されており、より積極的なマーケティング戦略が実施されている。ロスバニオスにおいて実施した消費者調査では、健康維持への動機が消費者を玄米の購入・消費に導いている。彼らは、玄米の重要な属性としてその栄養価値と有機物性を重要視している。健康食品としての玄米のポジショニングは、それ故により多くの情報活動を通して強化しうる。消費者は一般的に玄米を好み、白米の代替品として利用し又は白米と混ぜて利用していた。しかしながら、彼らの健康への関心と玄米に対する嗜好レベルは、彼らの玄米に対する購買行動と消費行動には直接的に表れていない。現在の消費者は、まだ玄米のいわば偶発的な購買者であり利用者であるに過ぎない。調理や料理、食の質・食感、効用の点における便益性のような抽象的な健康の範囲を越えた議論が必要である。玄米に対する一般的な嗜好レベルと消費者の知識の向上は、玄米に関する需要開発の機会の可能性を示している。長い調理時間と食の質・食感に関する問題点を処理するため、また最終的に玄米需要を維持するためには、玄米を主たる原材料、基本的な原材料として利用しうるより多くの調理・加工方法が消費者のために開発され導入されなければならない。
著者
重田 公子 笹田 陽子 樫村修生
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.41-45, 2008-06-15

若年女性とその母親を対象とし,母親の痩身志向が次世代の健康に与える影響について,意識調査と発育記録をもとに検討した。対象者の在胎週数は39.3週,出産までの母体重の増加量は10.0kg, 新生児の出生体重は3,108gであった。低出生体重児は5名(6.0%)出現したが,指標として示したKaup指数をはじめ若年女性のBMIおよび体脂肪率に母親の痩身志向の有無による差は認められなかった。胎児の在胎週数は37.8週を超える正規産であるが,低出生体重児の在胎週数は3,000グラム以上の出生体重児と比較して有意に短かいことが認められた。しかし,母体重増加量は他の群と比べ最も増加していた。低出生体重児が成長した現在のBMIは,BMI区分では正常であるが,体脂肪率は30%を超える「隠れ肥満」であり,他の群と比べて有意に高かった。若年女性のやせが著しく増加し,妊娠した時点で低栄養状態にある母親が増えている。健康の一次予防の観点から,母体の健康および体重管理の重要性が示唆された。
著者
藤田 悠記 高橋 俊介 那須 章人 下井 岳 亀山 祐一 橋詰 良一 伊藤雅夫
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.115-119, 2007-09

ウズラ胚体外培養法を応用し,卵殻を使わず人工容器でのニワトリ胚の発生能について検証した。ニワトリ胚は,白色レグホンを用い,孵卵器内で3日間培養した後,卵の内容物を100mlカップ内に空気透過性のあるテフロン膜を卵型に装着した人工容器に移し,ラップで封をした。再び孵卵器内で孵化までの18日間培養した。人工容器は空気の流通を完全に遮断したもの(Type 1),空気の流通を自由に行わせたもの(Type 2),さらに空気の流通量をある程度人工的に調節可能としたもの (Type 3) の以上3タイプを用いた。また,人工容器に移す際には卵殻粉末あるいは乳酸カルシウムを添加した。人工容器を用い培養した結果,孵化させるまでは至らなかったが,卵殻粉末の添加により孵化直前の20日目まで培養することに成功した。最も好成績であったもので培養16日目に76.0%,18日目に52.0%,20日目に12.0%の生存率が得られた。一方,対照として行った,二黄卵卵殻を代用卵殻に用いた場合は60%が孵化したが,人工容器を用いた場合と同様に培養初期(孵卵6日目)と後期(孵卵16日目)に生存率の低下が認められることから,この2つの時期がニワトリ胚の体外培養において重要な時期であると推察された。The developmental ability of chicken embryos in an artificial vessel without eggshell was investigated using the in vitro quail embryo culture method. After White Leghorn eggs were incubated in an incubator for 3 days, the egg content was transferred into an artificial vessel consisting of a 100-ml cup attached with an egg-shaped air-permeable Teflon membrane and sealed with wrap, followed by incubation in an incubator for 18 days until hatching. Three types of artificial vessels were used : Type 1 with complete blockage of air flow, Type 2 with air flow, and Type 3 with controllable air flow. Eggshell powder or calcium lactate was added when the egg content was transferred to a vessel. Although no hatching was obtained, the eggshell powder addition allowed the culture by day 20, immediately before hatching. In the group with the best outcomes, the viabilities on days 16, 18, and 20 of culture were 76.0%, 52.0%, and 12.0%, respectively. In contrast, in the control group using eggshell containing 2 yolks as surrogate eggshell, 60% of the eggs hatched, but the viability decreased at early (day 6) and late (day 16) time points, similar to the eggs cultured in the artificial vessel. These findings suggested that these 2 time points are important for in vitro culture of chicken embryos.
著者
安藤 元一 小川 博 佐々木 剛 大岩 幸太
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.150-156, 2014-09-19

イノシシ肉とブタ肉の味について,大学生を対象とした官能検査を行った。両者を焼き肉の形で比較したところ,柔らかさではブタが,香りではイノシシが勝っていた。イノシシ肉各部位(ロース,バラ,モモ)間に有意な味の差は見られなかったが,夏肉の評価は冬肉よりも有意に低かった。ブタ肉価格を100としたときに,回答者が妥当と思うイノシシ肉の価格は平均112-138,中央位100-120,最頻値80-100の範囲にあった。このようにイノシシ肉とブタ肉の評価額に大きな差は無かったが,イノシシ肉をブタ肉の2〜4倍に高く評価した回答者も一部に見られた。回答者の性別による差のみられた項目はなかった。野生動物肉を食べることへの抵抗感はみられなかった。現在のイノシシ肉は家庭消費肉としての価格競争力は有していないので,消費拡大には価格以外の訴求力が必要と思われる。
著者
祝 丹 神藤 正人 蓑茂 寿太郎
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.27-36, 2006-06-30
被引用文献数
1

本研究は北京・頤和園の成立に影響を与えたとされる江南の景観について相互の関係を研究したものである。つまり皇帝が当園を設計し,造営する際に,江南の名勝や景観の何を,どのように参考にしたかを明らかにしようとしたものである。研究の方法は,関連する一次文献,歴史資料,既往研究,詩集絵図などの文献調査を中心とし,現地調査により実態の確認作業を進めた。具体的には,1)江南の名勝風景地からの影響,2)江南名園からの影響,3)江南建築からの影響,4)江南水郷風景からの影響,5)江南市街地からの影響を順に明らかにしたものである。このようにして,5つの側面から頤和園の景観構成に見られる江南景観の影響を解明した。
著者
木村 雄一 増田 宏司 土田 あさみ 大石 孝雄
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.270-274, 2011-03-15

本研究ではイヌのメラノコルチン2受容体(MC2R)遺伝子に存在する一塩基多型(SNPs ; 600G>C, 858G>A)と,「訓練能スコア」との関連性をゴールデンレトリーバー,ラブラドールレトリーバー,ミニチュアシュナウザー,マルチーズ,柴の5犬種,計77個体のゲノムDNAを用いて調査した。77個体のゲノムDNAについて遺伝子型判別を行った結果,ラブラドールレトリーバー,マルチーズ,柴の3犬種において600G>Cの遺伝子型およびアレル頻度に犬種差が認められた。また,600G>C多型によって判別される遺伝子型と訓練能スコアとの間に有意な関連が認められた。
著者
浅利 裕伸 柳川 久 安藤 元一
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.218-222, 2014-12-15

われわれは巣資源が限られた狭小森林において,タイリクモモンガ(Pteromys volans)の巣場所を選択の行動を理解するため,7個体によって利用された巣と利用可能な巣の巣間距離を比較した。雄と雌の距離は有意に異ならなかった。これは,すべての個体が狭小森林内にある巣だけを利用し,近隣のどの巣も利用しなかったためかもしれない。タイリクモモンガが利用可能な巣と比べて有意に近い距離にある巣を非積雪期に利用したため,われわれの結果は夏〜秋での巣場所選択性を示した。一方,積雪期には,利用された巣間の距離と利用可能な巣間の距離に有意な差はなかった。これは,タイリクモモンガが非積雪期に近くの利用可能な巣を選択する一方で,積雪期には数少ない良質の巣を利用するために遠くまで移動したためであると示唆された。特に,タイリクモモンガの保全にあたっては,冬季の巣を含む複数の巣の存在が森林内に不可欠である。
著者
小林 享夫 岡本 崇
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.89-104, 2003-12-30
被引用文献数
1

本報告は1998年8月および2000年3月に東京都小笠原村母島において,著者の1人岡本により採集された28点の植物病害標本上に認められた,植物寄生菌類の同定結果とそれらに関する若干の菌学的補遺について述べたものである。すなわち16科19属19種の植物上に22種の菌類と未同定2属の菌類による28種類の病害が観察された。これらのうちハチジョウススキ紫眼斑病菌Ascochyta miscanthi, マルバツユクサ斑点病菌Cercospora japonica, リュウケツジュ赤斑病菌Microsphaeropsis boninensis, シマギョクシンカ褐斑病菌Mycosphaerella tarennicola, およびヘクソカズラ灰褐斑病菌Phyllosticta boninensisの5種はそれぞれ新種として発表した。また日本新産種としてホウライショウ灰色葉枯病菌Fusicoccum vagans(Dothiorellaより転属処理),シュロガヤツリ灰色葉枯病菌Ascohyta papyricola, ムニンセンニンソウ褐斑病菌Ascochyta vitalbae, グアバ・モモタマナペスタロチア病菌Pestalotiopsis toxica, マンゴー灰色葉枯病菌Phomopsis mangiferae, パパイアホモプシス葉枯病菌Phomopsis papayae, マンゴー褐色葉枯病菌Phyllosticta anacardiacearumの7種を記録した。そのほか小笠原未記録種としてColeosporoum eupaederiae(ヘクソカズラさび病菌,種名変更),Colletotrichum capsici(パッションフルーツ炭疽病菌),Fusicoccum aesculi(キュウリ褐色葉枯病菌),Pestalotiopsis adusta(ヘクソカズラペスタロチア病菌),Pseudocercospora paederiicola(ヘクソカズラ角斑病菌),Pseudocercosporella oxalidis(ムラサキカタバミ褐斑病),Septoria pastinacina(パッションフルーツ円斑病菌,種名変更)の7種が加えられた。上記の菌類を加えて小笠原産の植物寄生菌は約170種となる。
著者
塩澤 信良 目加田 優子 秋山 嘉子 林 かほり 森 佳子 和田 智史 上岡 洋晴 川野 因 Nobuyoshi SHIOZAWA MEKATA Yuko AKIYAMA Yoshiko HAYASHI Kaori MORI Keiko WADA Satoshi KAMIOKA Hiroharu KAWANO Yukari 東京農業大学大学院農学研究科食品栄養学 東京農業大学大学院農学研究科食品栄養学 東京農業大学大学院農学研究科食品栄養学 東京農業大学大学院農学研究科食品栄養学 東京農業大学大学院農学研究科食品栄養学 東京農業大学大学院農学研究科食品栄養学 東京農業大学地域環境科学部教養分野 東京農業大学応用生物科学部栄養科学科 Department of Food and Nutritional Science Graduate School of Agriculture Tokyo University of Agriculture Department of Food and Nutritional Science Graduate School of Agriculture Tokyo University of Agriculture Department of Food and Nutritional Science Graduate School of Agriculture Tokyo University of Agriculture Department of Food and Nutritional Science Graduate School of Agriculture Tokyo University of Agriculture Department of Food and Nutritional Science Graduate School of Agriculture Tokyo University of Agriculture Department of Food and Nutritional Science Graduate School of Agriculture Tokyo University of Agriculture Fundamental Arts and Sciences Faculty of Regional Environment Science Tokyo University of Agriculture Department of Nutritional Sciences Faculty of Applied Bio-Science Tokyo University of Agriculture
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.185-192,

本研究は人工芒硝泉による足浴が自律神経活動に及ぼす影響について検討することを目的とした。健康な若年男女計6名(男性3名 : 20.7±0.6歳,女性3名 : 21.3±0.6歳)を対象に,人工芒硝泉浴,淡水浴,湯なし条件(対照座位)の足浴条件を1日1条件,ランダムな順序で施行した。対象者には20分間座位安静をとってもらい,引き続き足浴前値の測定を行った。足浴は座位にて41℃(33L)の温湯に両足膝下約10cmまで15分間浸漬して行った。足浴終了後は対象者自身が水分を拭き取り,両足を毛布で覆い,60分間座位安静を保った。その間,心拍数,心拍変動周波数に基づく自律神経活動,鼓膜温を測定するとともに,体感温度,眠気,疲労感などの主観的評価をVisual Analogue Scale(VAS)を用いて記録した。その結果,人工芒硝泉浴及び淡水浴により体感温度は有意に上昇したが,鼓膜温及び心拍数に有意な変動は見られなかった。また淡水浴後は交感神経活動の有意な亢進が認められたが,人工芒硝泉浴後はそれが見られなかった。本結果から人工芒硝泉による足浴は足浴後の交感神経活動の亢進を抑え,疲労感の低減に寄与する可能性が示唆された。This study was conducted to estimate the effect of a footbath with sodium sulfate (Na2SO4) on autonomic nervous system (ANS) activity. Each of three young healthy males (age, 20.7±0.6 years) and females (age, 21.3±0.6 years) participated in 3 conditions in random order, footbaths with or without Na2SO4, and a sitting position without water as a control. Each subject sat on a chair and kept quiet for 20min with heart rate (HR) stabilized, and subsequently basal measurements were conducted. In a sitting position, they dipped their calves 10cm under their knee joints into hot water (41℃, 33L) for 15min. Immediately after the bathing, they removed moisture, covered their knees with a blanket and sat for 60min thereafter. Counts of HR, ANS activity based on frequency of HR variability, and a core temperature using an eardrum thermometer were measured. The degree of thermal comfort such as relatively hot or relatively cool, sleepiness and fatigue were also estimated using visual analogue scales (VAS). As a result, both footbaths with and without Na2SO4 significantly increased the subjective thermal comfort, while the core temperature and HR counts were unaffected. Sympathetic nervous system (SNS) activity was significantly increased by the footbath without Na2SO4, but not with Na2SO4. These observations suggested that in the footbath, Na2SO4 might have an inhibitory effect on increased SNS activity, and induce some depressive effects on feeling of fatigue.
著者
多田 耕太郎 小泉 亮輔 寺島 晃也 中村 優 鈴木 敏郎 鈴木 敏郎
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.167-174, 2012-12-14
被引用文献数
1

豆乳生産時の副産物であるオカラを添加して冷凍ソーセージの解凍後の品質評価を行った。塩漬肉の5,10および15%をオカラで置換した冷凍ソーセージを製造し,その解凍後の品質を検討した。すなわち,真空包装したソーセージを-20℃で7日間冷凍保存した後に解凍した。その結果,オカラ無添加のソーセージは冷解凍後に多量のドリップ流出がみられたのに対し,オカラを添加したソーセージは冷解凍後のドリップ流出が顕著に抑制され,歩留まりが向上した。さらに冷解凍後にオカラ無添加ソーセージのテクスチャーは顕著に低下したが,オカラを10%まで添加することにより低下が抑制された。官能評価では,オカラ無添加の冷凍ソーセージは低評価になったのに対し,オカラ10%添加の冷凍ソーセージはオカラ無添加の非冷凍ソーセージと同等の高評価を得た。オカラを15%添加したソーセージは冷凍の有無にかかわらず官能評価は低かった。これらのことから,冷凍ソーセージにオカラを添加することで食物繊維を含有させ,保水性を向上させることができた。また,10%程度のオカラ添加が良好な品質を備えた冷凍ソーセージを加工する上で適当であることが明らかになった。
著者
足達 太郎 鳥海 航 大川原 亜耶 高橋 久光
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.259-263, 2008-12 (Released:2011-07-26)

キャベツ畑に、ハーブ類のカモミール(カミツレ)およびキンレンカ(ノウゼンハレン)をそれぞれ混作した区と、キャベツを単作して化学合成殺虫剤を施用した区および施用しない区をもうけ、キャベツの主要害虫であるダイコンアブラムシ・モンシロチョウ・コナガの個体数変動と捕食寄生性天敵による寄生率を比較した。試験の結果、各害虫ともそれぞれの個体数がほぼピークとなる時期に、処理区間で個体群密度に有意な差がみられた。ダイコンアブラムシは、カモミール混作区における個体群密度がキンレンカ混作区やキャベツ単作/殺虫剤無施用区または施用区よりも高かった。モンシロチョウの幼虫個体数は、キャベツ単作/殺虫剤無施用区>キンレンカ混作区>カモミール混作区>キャベツ単作/殺虫剤施用区の順に多かった。また、モンシロチョウの卵数は、両ハーブの混作区における値がキャベツ単作区(殺虫剤施用および無施用)における値よりも多かった。コナガは、キャベツ単作/殺虫剤施用区およびカモミール混作区で幼虫の個体数が多かった。いっぽう、モンシロチョウの幼虫におけるアオムシコマユバチの寄生率は、キャベツの生育中期において、キンレンカ混作区およびキャベツ単作/殺虫剤無施用区で最も高かった。これに対し、コナガ幼虫におけるコナガコマユバチの寄生率は、処理区間で有意な差は認められなかった。
著者
荒井 歩 植田 寛
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.307-314, 2010-03-15
被引用文献数
1

茶は時代により異なる社会需要に応じて,産地を変化させ,茶の栽培・製茶技術をつくりだしてきた。また,茶の生産に適した自然環境が,茶産地の形成に深く関わっている。そこで本研究では,日本における茶産地の発祥状況や形成過程を整理すると共に,地形・水系を把握した上で,茶産地における景観構造を明らかにすることを目的とした。研究対象地として,茶の生産に適した自然環境状態により栽培地が選定されていた近代以前からの産地25地区を選定した。調査分析の結果,茶産地の発祥要因は,発祥の祖の相違により4タイプに分類された。また,茶産地の形成過程は,主導者や生産・流通体制などの茶産業のあり方の相違により5タイプに分類された。茶産地の地形構造は,茶産地と河川の立地関係により4タイプに,茶産地と傾斜分布関係から3タイプに整理された。最後に景観構造のタイプ分類を行い,茶産地の景観構造は発祥時期や発祥要因によって特徴づけられると共に,これらの要因が茶産地としての選定にも影響を及ぼしていることが明らかとなった。
著者
関岡 東生
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.175-184, 2012-12-14

近年,一般市民を対象とした森林教育の充実が望まれる中,林業普及指導事業にも森林教育の実施主体として機能することが期待されつつある。林業普及指導事業では,1990年代より,普及の対象に一般市民を加えるとともに,一般市民を対象とする普及活動においては,林家や林業研究グループが直接的な実施主体として機能することが企図されてきた。本論文に際しては,こうした現状を踏まえ,まず,林業研究グループの現状を把握し,それをもとに,林業研究グループ自身が森林教育の実施主体としての活動を望むものであるのか,さらには,その機能を有するものであるのか否かを検証し,そして,この機能の充分な発揮を妨げる要因を把握することを主な目的としている。調査は,全国の全ての林業研究グループ(1,487グループ)を対象として,郵送による質問紙法によって実施した。その結果,[◯!1]多くのグループで活動が停滞しつつある。[◯!2]休眠あるいは解散を余儀なくされるグループが頻出している。[◯!3]グループの多様化が進み,活発なグループとそうでないグループの格差が増大しつつある。[◯!4]会員規模の減少などの事態を招きつつある。という林業研究グループの現状が明らかとなった。さらに,森林教育の実施については,[◯!1]既に一定のグループが実施実績を有すること,[◯!2]しかしながら,一般市民を対象とした実践のための研修等については極めて不十分な状況にあるということが確認され,林業研究グループは森林教育の実践主体として期待される存在でありながらも,実践の充実を期する上では多くの課題を有することが明らかになった。
著者
青木 いづみ 進士 五十八
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.120-129, 2002-09-20
被引用文献数
1

本研究は,東京都の建築紛争において特に,高さを問題とする紛争を対象に,紛争建築物の階数をその周辺範囲の建築物の平均階数と比較してどの程度突出すると紛争となるか分析し,住民の建築物の高さに対する許容限界について把握することを目的とした。紛争建築物の影響圏は紛争建築物から半径300mの範囲とした。また用途地域・地域性による許容限界の違いについて考察した。その結果,(1) 許容限界は影響圏の建築物の平均階数と相関関係にあり,(2) 許容限界は住居系地域ではY=1.9422X-1.2376,商業系地域ではY=3.0172X-2.7344,工業系地域ではY=6.3698X-8.7268の近似直線で表すことができた。(3) 許容限界は山の手・川の手のような地域性によって異なること,また(4) 影響圏内建築物の平均階数が3階以下で2階建てが70%以上を占めるような町並みでは,建築紛争を避けるためには,住居系・商業系地域では3階,工業系地域では4階を住民の許容限界と見なす方が安全である。