著者
佐藤 容子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.111-122, 2002-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究は、学級内で仲間達から拒否されている6歳の学習障害児の仲間関係を改善するために、コーチング法を用いた社会的スキル訓練を実施した。訓練前の教師評定と行動観察によると、対象児は仲間との間で、適切なやり取りが少なく、不適切(攻撃的および引っ込み思案的)なやり取りが多かった。訓練は、1回につき約60分間で、特別な訓練室の場面で5セッション、自由遊び場面で4セッション、合計9セッション行った。その結果、ターゲット児の不適切(攻撃的または引っ込み思案的)なやり取りは、教師評価と行動観察のいずれにおいても、訓練とともに減少した。好意的やり取りは行動観察においてのみ増加がみられた。エントリースキルについては明らかな訓練効果はみられなかった。また、本訓練によって、SCR尺度でみた自己コントロールが改善した。
著者
藤原 裕弥 岩永 誠 生和 秀敏
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.145-155, 2007-09-30 (Released:2019-04-06)

これまでの研究において、不安は危険や脅威と関連した認知的テーマを、抑うつは無価値、無能といった認知的テーマを有することが指摘されてきた。近年、多くの研究者は、これらの認知的テーマが注意や記憶といった情報処理過程に影響を及ぼすために、不安者や抑うつ者が中性情報よりも脅威情報を選択的に処理することを報告してきた。本研究では、不安と抑うつにおける注意バイアスや記憶バイアスを検討した研究と、それらの認知バイアスを説明する理論について展望した。その結果、不安者は注意バイアスを示しやすく、抑うつ者は記憶バイアスを示しやすい可能性が示された。また、認知行動療法に対する認知情報処理論的研究の意義と貢献の可能性について考察した。
著者
岡島 純子 谷 晋二 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.201-211, 2014-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
4

本研究では、通常学級に在籍し、仲間との関係がうまくもてない自閉症スペクトラム障害(ASD)児に対して社会的スキル訓練(SST)を実施し、般化効果、維持効果について検討した。その際、(1)機能的アセスメントの実施、(2)標的とされた社会的スキルに関する概念的理解を深めるために、ASDの特性に合わせた教示の実施、(3)標的とした社会的スキルを行動リハーサルする機会を十分に設定するために保護者とリハーサルをするためのホームワークを行った。機能的アセスメントから特定された標的スキルは、働きかけに反応するスキル、エントリースキル、主張性スキル、感情のコントロールスキル、問題解決スキルであり、10セッションからなる個別SSTが行われた。その結果、社会的スキル得点が向上し、放課後に友達と遊びに行く割合が増え、1ヵ月後も維持していた。
著者
深町 花子 荒井 弘和 石井 香織 岡 浩一朗
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.61-69, 2017-01-31 (Released:2017-10-11)
参考文献数
27
被引用文献数
1

本研究の目的はアクセプタンスおよびマインドフルネスに基づいた介入のスポーツパフォーマンス向上への効果について系統的に概観することであった。国内外の複数のデータベースにて「マインドフルネス」や「パフォーマンス」などの関連する検索語を用いて検索を行い、11件の研究を採択した。日本では該当する研究は見られなかった。ほとんどの研究では(n=8)スポーツパフォーマンスを高めるうえでポジティブな結果が得られていた。残りの3件のうち2件でもフォローアップ期にはスポーツパフォーマンスが向上していた。本研究の結果より、アクセプタンスおよびマインドフルネスに基づいた介入は、スポーツパフォーマンス向上に効果的であると思われる。ただし、国内では全く研究が実施されていない。今後は日本のアスリートにおいてもアクセプタンスおよびマインドフルネスに基づいた介入研究が必要である。
著者
古川 洋和 大沼 泰枝
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.155-163, 2013-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、長野県において、うつ病に対する認知行動療法(CBT)についての研修プログラムを実施し、その効果を検討することであった。21名(平均年齢35.57歳)の実践家が研修プログラムに参加した。プログラムでは、6回(計18時間)のワークショップと個別のスーパービジョンが行われた。研修プログラムの効果については、認知療法認識尺度(CTAS)を用いて、プログラム実施前(Pre)、プログラム終了直後(Post)、プログラム終了4ヵ月後(Follow-up)の3時点でCBTの知識についての評定を求めた。また、PreとPost時点において、CBTの実践可能性(0〜100)についての評定を求めた。本研究の結果、CTAS合計得点はPreの値と比較してPostの値が有意に高く、その効果はFollow-up時点においても維持されていた。さらに、CBTの実践可能性についてもPreの値と比較してPostの値が有意に高いことが示された。最後に、本研究の結果をもとに、地域単位で実施するうつ病に対する実証に基づく心理療法の普及と推進について議論した。
著者
境泉 洋 佐藤 寛 松尾 雅 滝沢 瑞枝 富川 源太 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.43-53, 2004-03-31 (Released:2019-04-06)

問題解決療法(PST)のうつ症状に対する改善効果は、これまで多くの研究によって明らかにされているが、その効果をメタ分析によって検討した研究は行われていない。そこで本研究では、10の研究を用いてPSTの軽度うつ症状に対する改善効果についてメタ分析の視点から検討した。本研究から得られた結果は以下のとおりである。(1)PSTの軽度うつ症状に対する改善効果は、統制群より大きい。(2)セッション数(7 or more sessions、6 or fewer sessions)にかかわらず、PSTの軽度うつ症状に対する改善効果は統制群より大きい。(3)治療形式(グループ形式、個別形式)にかかわらず、PSTの軽度うつ症状に対する改善効果は、統制群より大きい。(4)治療終結期において、PSTの軽度うつ症状に対する治療効果はSSRIより小さいが、フォローアップ期において、PSTの軽度うつ症状に対する治療効果はSSRIより大きい。これらのことから、PSTは軽度うつ症状に対する治療法として有効であり、薬物療法と併用して治療に用いる有用性が示唆された。
著者
山本 彩
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.193-203, 2015-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

自閉スペクトラム症(ASD)の支援方法は急速に発展してきた。しかし開発された支援方法は本人へ直接支援することを前提としており、本人が支援を拒否する場合について介入方法は整理されていない。支援を拒否する本人の、支援への動機づけを高めるためには、物質依存者とその家族を包括的に支援するCommunity Reinforcement and Family Training(CRAFT)が参考になると考えられる。ただしASD特性を考えると、CRAFTをそのまま応用適用するのではうまくいかないと考えられる。また、CRAFTは基本的に激しい家庭内暴力や犯罪行為があるIPを臨床試験の対象から除外するが、地域支援では危機介入場面に多く出会う。そこで筆者はCRAFTにASD支援、危機介入を組み合わせたプログラムを作成した。本稿ではそのプログラムを紹介し、考察を加える。
著者
田中 利枝 高橋 高人 佐藤 正二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.85-97, 2016-01-31 (Released:2019-04-27)

本研究は、小学6年生に対して社会的問題解決訓練を実施し、訓練効果・維持効果、および、ストレス反応に及ぼす影響について検討した。児童175名は、それぞれ訓練群84名と統制群91名に割り付けられ、訓練群の児童は、担任教師によって4セッション(各45分)からなる介入を受けた。その結果、訓練を受けた児童は、友人とのトラブル場面においてポジティブに問題を捉える問題志向を向上させ、解決の目標としての認知的解決スタイルを習得し、それらは訓練終了3カ月後も維持されていることが明らかとなった。解決策の案出数は、訓練終了11カ月後も訓練効果が維持されていた。また、訓練群の児童では、訓練直後においてストレス反応のうち不機嫌・怒りに低減効果が示された。中学校進学後の11カ月後フォローアップ測定において、解決策の案出数以外に介入の維持効果はみられなかった。中学校入学後の維持促進の操作の必要性が示唆された。
著者
神原 広平 尾形 明子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.215-223, 2015-09-30 (Released:2019-04-06)

認知の歪み理論は認知療法の代表的なモデルであり、ネガティブな自動思考やスキーマが抑うつをもたらすと考えている。一方、うつ病患者の認知機能は著しく低下していることが明らかになっている。そこで本研究では、ネガティブな自動思考やスキーマに認知機能がどのような効果を及ぼすかについて検討するため、大学生81名に神経心理学検査と質問紙調査を行った。その結果、注意の切り替えに関する認知機能の低さがネガティブな自動思考を説明していた。本研究から、認知機能の低さは認知の歪みの高さに関係することが明らかになった。
著者
石川 利江 佐々木 和義 福井 至
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.10-17, 1992-03-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
18

本研究の目的は,2つの社会的不安尺度,Fear of Negative Evaluation Scale(FNE) SocialとAvoidance and Distress Scale(SADS)の日本版標準化であり,健常者300名と対人不安を訴える32名の被検者を調査対象として両尺度の信頼性と妥当性の検討を行うことである。その結果,以下のようなことが明らかになった。(1)日本版FNEとSADSの内的整合性は充分高いものである。(2)両尺度は因子的妥当性,臨床的妥当性が高く,社会的不安の高い者を判別できる尺度である。(3)再テスト法によって得られた両尺度の信頼性係数は,臨床的に用いる質問紙としては充分高いものである。(4)両尺度は,MASとSTAIと有意な高い相関が得られた。したがって,日本版FNEとSADSは,臨床的あるいは研究上の有用性が高いものであることが示唆された。本研究の結果は,社会的不安理論の枠組みで論じられた。
著者
大塚 明子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.171-181, 2003-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究は、17歳の身体醜形障害(BDD)を伴う強迫性障害(OCD)の女性患者に対して、曝露反応妨害法(E/RP)を中心とする認知行動療法(CBT)を行った結果、 CBT開始3か月間で不潔恐怖を主とする強迫観念、強迫行為やBDD症状に改善がみられた事例の報告である。治療においては、治療への動機づけや継続性を高める心理教育、治療意欲を高める課題を設定し、宿題でE/RPを繰り返し、成功体験をセルフモニタリングすることを通して、セルフコントロール力を高めることに重点が置かれた。最後に、本研究の結果をもとに、OCDと生物学的ならびに認知行動学的な共通性が指摘されているBDDに対するCBTの効果について考察した。
著者
境 泉洋 平川 沙織 野中 俊介 岡崎 剛 妹尾 香苗 横瀬 洋輔 稲畑 陽子 牛尾 恵 溝口 暁子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.167-178, 2015-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、ひきこもり状態にある人(以下、ひきこもり本人)の親を対象としたCRAFTプログラムの効果を検討することであった。本研究においては、CRAFT群7名、自助群7名が設定された。その効果測定として、ひきこもり状態の改善、相談機関利用の有無、否定的評価尺度、セルフ・エフィカシー尺度(以下、エフィカシー)、心理的ストレス反応尺度(以下、SRS-18)、ひきこもり家族機能尺度(以下、家族機能)について親に回答を求めた。その結果、自助群よりもCRAFT群において、ひきこもり状態の改善やひきこもり本人の相談機関の利用が多く認められた。また、CRAFT群、自助群のいずれにおいても、親の「エフィカシー」が向上し、SRS-18の「抑うつ・不安」、「不機嫌・怒り」、家族機能の「正の強化」、「負の強化」が改善された。考察においては、親の年齢、ひきこもり期間を統制したうえで無作為割り付けによる効果検証の必要性が指摘された。
著者
長江 信和 増田 智美 山田 幸恵 金築 優 根建 金男 金 吉晴
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.113-124, 2004-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
2

外傷後認知尺度は、外傷体験者の認知を測る尺度である(Foa et al., 1999)。外傷後認知は、否定的なライフ・イベントの体験者にみられる外傷的反応の予後に影響を及ぼすと考えられる。本研究では、大学生における否定的ライフ・イベントの体験の分布を調べるとともに、その体験者を対象として日本版外傷後認知尺度の尺度化を試みた。大学の教場で調査を行った結果、回答者2,622名のうち53.5%は自然災害や交通事故などの体験者であることが判明した。一方、外傷後認知尺度の翻訳版がバックトランスレーションの手続きを経て作成された。否定的ライフ・イベントの体験者に対して郵送調査を行った結果、Foa et al.(1999)と同様の3因子が見いだされ、良好な再検査信頼1生と基準関連妥当性が確認された。日本版外傷後認知尺度は、否定的ライフ・イベントの体験者である大学生一般に適用できる可能性が示唆された。
著者
山本 彩
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.115-125, 2014-05-31 (Released:2019-04-06)

厚生労働省研究班は社会的ひきこもりを、その背景要因によって精神障害群、発達障害群、パーソナリティの偏り群の3群に分類し各々のストラテジーを提案した。また本人に相談動機がない場合の方法としてCommunity Reinforcement and Family Training(以下、CRAFT)を推奨した。しかし2013年現在CRAFTを社会的ひきこもりへ応用した報告は数件見られるのみである。また社会的ひきこもりの背景に自閉症スペクトラム障害(以下、ASD)特性がある場合、CRAFTとASD特性への支援を組み合わせる必要が指摘されている。筆者はASD特性を背景にもつ社会的ひきこもりへ、CRAFTとASD特性への支援を組み合わせた介入を行うことで支援導入に成功した2事例を経験した。本稿ではその介入方法と経過を報告し、最後にASD特性を背景にもつ社会的ひきこもりへCRAFTを応用適用することの意義や課題について考察を加えた。
著者
高石 昇
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.39-46, 1997-03-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

11ヵ月の問,重症高所恐怖症と外出恐怖に悩む一症例が9日間でイメージ系統的脱感作を達成し,次いで28日間の現実脱感作によって,全治に至ることが出来た。短期治癒の要因として,病態としては,社会恐怖その他の神経症の合併のないこと,罹病期間の比較的短いこと,患者特性として,高い知的レベル,強い治療動機づけ,回避傾向の少なさなどが考察された。投薬は本治療前後に変法なく,従ってその効果は相殺されると思われ,また,恐怖に対する認知再構成も困難であり,本例の治療経験は改めて脱感作法のすぐれた有効性とその適応要因を示していると思われる。
著者
伊藤 大輔 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.13-22, 2009-01-31 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、致死性のないトラウマが外傷後ストレス反応、トラウマ体験後の認知に及ぼす影響を検討するとともに、致死性のないトラウマ経験者の認知と外傷後ストレス反応の関連を、致死性のあるトラウマ経験者との比較から検証することであった。大学生302名を対象に、外傷体験調査票、改訂版出来事インパクト尺度、トラウマ体験後の認知尺度が施行された。その結果、重篤な外傷後ストレス反応を発症・維持していた人数に、致死性のあるトラウマ経験群と致死性のないトラウマ経験群で有意差はみられなかった。また、自責の念は、致死性のないトラウマ経験群のほうが有意に高かった。さらに、トラウマ体験後の認知と外傷後ストレス反応の関連は、致死性のあるトラウマ経験群のほうが致死性のないトラウマ経験群と比較して強いことが示された。以上の結果から、今後、致死性のないトラウマ経験者の特異的な認知内容を検証する必要性が示唆された。
著者
原 信一郎 小宮山 博朗 前田 基成 中川 哲也
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.28-36, 1993-03-31 (Released:2019-04-06)

27歳男性の一次性夜尿症患者に対して,認知行動療法的アプローチを施行した結果,治癒にいたった症例を経験した。Kimmel法を柔軟に適用し,排尿我慢訓練を行なった。同時に,経時的に膀胱の超音波エコー像を撮り,患者に膀胱容量の増加を画像的にfeedbackすることによって我慢訓練を強化することに努めた。また,夜尿の持続は膀胱が小さく尿を保持できないため,という患者の強い思いこみの修正も行なった。この画像的feedbackの試みは,簡便で侵襲性もなく,患者の治療意欲をより高めていくすく・れた方法であると思われた。
著者
吉田 裕彦 井上 雅彦
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.311-323, 2008-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
2

本研究は、通常学級に在籍している自閉症児におけるボードゲーム(SSTゲーム)を利用した社会的スキル訓練の効果について検討することを目的とした。通常学級での朝の自由時問における行動を般化場面として事前に測定した。訓練は、ボードゲームをクラスの仲間とともに20分の休み時間を利用して4週間に8回実施した。ゲームにおいてプレーヤーは、サイコロをふり、出た目の数だけコマを進める。チャンスカードのマスにとまると、カードに指示されたロールプレイを仲間と演じる。正しく演じられると2人ともにポイントシールを与えられる。その結果として、ターゲットにされた社会的スキルが向上し、般化場面における相互交渉が増加した。SSTゲームの効果と有効性について考察する。
著者
齋藤 順一 柳原 茉美佳 嶋 大樹 岩田 彩香 本田 暉 大内 佑子 熊野 宏昭
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.15-26, 2017-01-31 (Released:2017-10-11)
参考文献数
30
被引用文献数
1

本研究の目的は、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)のコア・行動的プロセスである価値づけ、コミットされた行為を測定する尺度を作成し、その信頼性と妥当性を検討することであった。研究1における探索的因子分析の結果、本尺度は【動機づけ】・【行動継続】・【強化の自覚】の3因子から構成された。本尺度は、十分な内的整合性、収束的および弁別的妥当性が確認された。研究2では、構成概念妥当性を、共分散構造分析により検討した。その結果、【強化の自覚】・【動機づけ】が高まることで【行動継続】が高まり、主観的幸福感が増加することで、結果的に体験の回避が減少する可能性が示唆された。今後は、臨床群、異なる年齢層などの幅広い属性を持つ被験者を対象として、信頼性と妥当性を検討していくことで、本尺度の有用性を確認する必要がある。