著者
ティン ティ ティ 濱 裕光 鳥生 隆 ティン パイ
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.441, pp.239-244, 2013-02-14

本論文では、公共空間において持ち主不在の不審物やじっとしていて全く動かない人を検知するための埋込み型背景モデリング技術を提案する。ここでは統計的背景を埋め込むことにより、2変量背景モデルを強化した多変量背景モデルをべースとした新しい背景差分アルゴリズムを導入する。さらに、論理的、統計的解析を行い、関西国際空港、学内キャンパスで撮影されたビデオやPETS 2006データセットを用いて実験を行い、提案手法の有効性を確認した。
著者
堀内 貴司 千葉 靖伸 浜本 武 宇津呂 武仁
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLC, 言語理解とコミュニケーション (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.200, pp.93-100, 2002-07-09

本論文では,WWW上の報道記事サイト等から日本語および英語など,異なった言語で書かれた文書を収集し,多種多様な分野について,分野固有の固有名詞(固有表現)や事象・言い回しなどの訳語対応を半自動的に獲得する枠組を提案する.特に本論文では,言語を横断して内容的に関連した日英報道記事を収集する手法について述べ,さらに,言語横断関連報道記事検索により自動収集された日英関連記事対から,半自動的に訳語対応を獲得する手法を提案する.評価実験においては,評価用記事集合に対して言語横断関連報道記事検索の性能を評価した後,言語横断関連報道記事検索の性能と訳語対応獲得の性能の相関について分析した結果について詳しく述べる.
著者
前花 晋作 金城 寛 上里 英輔 山本 哲彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.102, pp.85-88, 2006-06-09

本論文では,遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm: GA)で学習するニューロ制御器(Neurocontroller: NC)を用いて,四輪車両のライントレース制御を行なう.四輪車両はdriftlessシステムと呼ばれる非ホロノミッタ系である.四輪車両のような非ホロノミック系を制御する方法として,時間軸状態制御法などのchained formへの変換を必要とする制御方法が提案されてきたが,chained formへの変換を用いる方法には,初期値に限界があるなどの問題点があった.そこで本研究では,chained formへの変換を必要としないGAで学習するNCによる制御システムの設計を行なう.
著者
大枝 真一 天野 恵理子 山西 健司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IBISML, 情報論的学習理論と機械学習 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.286, pp.123-130, 2013-11-05

試験は学習者のスキルを測る手段として用いられる.したがって,試験の各設問には解くために必要なスキルが設定されており,学習者がそのスキルを習得していなければ各設問に正答する事はできない.その設問とスキルの関係は関係行列としてQ-matrixと呼ばれ,見識者によって定義されていた.先行研究では,試験結果からNon-negative matrix factorization(NMF)を用いてQ-matrixを自動的に抽出する試みがなされている.しかしながら,それらは学習者のスキルの時間変化を考慮していなかった.教育過程による学習効果をより深く理解するためには,時間とともにどのように潜在的にスキルが習得されていくか解析することが非常に重要である.本研究ではNMFをオンライン化することにより,蓄積された試験結果からQ-matrixを抽出するとともに,時間変化する学習者の潜在スキル状態も抽出することを試みる.また,論理値で構成される行列を因子分解するBoolean matrix factorization(BMF)とNMFとの抽出結果の比較を行う.計算機実験の結果,学習初期から終期の試験結果から学習者の潜在スキルの習得過程を可視化することが可能であることがわかった.
著者
原 賢 武藤 健一郎 知加良 盛 関 良明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ISEC, 情報セキュリティ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.285, pp.123-128, 2011-11-07

クラウドサービスの普及にともない,遠隔からシステムを安全に制御するためのプロトコルであるSSHを一般のユーザが利用する機会が増えると考えられる.一方,SSHのように暗号アルゴリズムを用いたプロトコルにおいては,暗号の危殆化に対する対処が必要である.そこで,SSH接続時に危殆化した暗号アルゴリズムの利用を避けるよう,ユーザへ設定変更を働きかけることを検討した.一般ユーザでも実行可能であり,かつ有効な対策行動を探索するため,SSH接続時の使用暗号アルゴリズムの決定方法を仕様と実装の両面で確認した.その結果,クライアントの暗号アルゴリズム設定リスト内の優先順位が接続時に利用する暗号アルゴリズムを支配的に決定することがわかった.そこで,SSHにおける暗号危殆化状況を可視化するために,クライアントと接続対象サーバの暗号設定情報の取得方法を調査し,SSH接続時に考えられる全ケースについて表示内容を考案し,一部を実装したので報告する.
著者
宮城 亮太 池部 実 猪俣 敦夫 藤川 和利 砂原 秀樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SITE, 技術と社会・倫理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.429, pp.17-22, 2011-02-21

クラウド環境と呼ばれる計算資源の利用形態では,ユーザが要求する計算資源を割当てることが可能である.このクラウド環境において計算資源を効率良く利用するには,実行中のサービスを常時監視し,変化する処理量や負荷に応じた計算資源割当てを動的に行う必要がある.本稿では,オープンソースのクラウド基盤ソフトウェアEucalyptusを用いた環境において,計算資源の動的割当てを行う機構を提案し,評価した.
著者
皆川 昇子 中澤 仁 徳田 英幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ASN, 知的環境とセンサネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.166, pp.1-5, 2014-07-23

GPSやセンサ搭載のモバイル端末の普及により,多くの端末から収集した位置,環境,ユーザ情報を解析し,様々な統計情報を取得可能なモバイルセンシングが注目を集めている.しかし,データを提供したユーザのプライバシが侵害される恐れがある.そのため,プライバシ保護手法の提案と評価を行う.本提案手法は次の特徴を持つ.端末側はセンシングデータとは異なるデータをある規則に従い選択し,サーバへ送信する.サーバ側はその規則を利用して実際の統計情報を再構築できる.このとき,サーバは個々の端末のセンシングデータを知り得ないため,ユーザのプライバシが保護される.さらに,既存手法と比較し,再構築における精度が向上することをシミュレーションにより示す.
著者
齋藤 毅 後藤 真孝
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.100, pp.1-6, 2009-06-18
被引用文献数
2

歌唱指導による歌声中の音響特徴の変化を分析し,その変化が歌唱力評価与える影響を調査した.3名の男性アマチュア歌唱者が歌唱指導を受ける前,及び後に収録した歌声(歌謡曲歌唱)を対象に,歌声特有の各種音響特徴を分析した結果,歌唱ホルマントに類似した3kHz付近のスペクトルピークの生起,及びF0変動成分であるオーバーシュートとヴィブラートにおける特性の変化を確認した.聴取実験によってF0情報及びスペクトル情報の変化に対する歌唱力変化を調査した結果,F0変化を指導前から指導後のパターンに変化させた場合の方がスペクトルを変化させた場合に比べて歌唱力の向上が大きい結果となった.また,個々の音響特徴の歌唱力評価への寄与度を比較した結果,ヴィブラート,歌唱ホルマント,オーバーシュート,プレパレーションの順で大きいことが明らかとなった.
著者
楊 雲輝 坂田 和実 鈴木 文明 新貝 鉚蔵
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MBE, MEとバイオサイバネティックス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.685, pp.137-139, 2001-03-15

線虫 Caenorhabditis elegansのシナプス結合は、White らの電子顕微鏡を用いた研究によって明らかにされている。線虫の頭部にある神経環では、神経突起が環状に密集し多数のシナプス結合が存在し、その周囲には多数の神経細胞が存在する。これまでの種々の実験結果から、神経環・それを構成する神経細胞群が C. elegansの中枢機能を果たしていることが示されている。本研究では、White らのデータを利用し、更にC. elegansと類似の神経回路を持つAscaris suumの電気生理学データを基にすることで、神経環回路のシミュレーションを行った。
著者
森本 龍太郎 松宮 雅俊 竹村 治雄 横矢 直和
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MVE, マルチメディア・仮想環境基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.716, pp.103-110, 2001-03-15
被引用文献数
1

地形モデルを生成するためのモデリングシステムでは,ユーザの思い通りの多様な地形を容易に生成できる必要がある.本研究では,この要求を満たすために,没入型仮想環境と3次元操作可能なペン型デバイスを用いることで,直感的で対話的な操作による地形モデリングシステムを提案する.提案環境は,傾斜型ディスプレイを表示装置として用いることで,ディスプレイ面による2次元平面と,ディスプレイ上に映し出された映像を立体視した3次元空間により構成される.ユーザはこの2次元平面に対して地形の外観の特徴を表した図形を描画し,この図形を3次元空間に直接引っ張り上げ,斜面の傾斜具合を設定することで地形のモデリングを行なう.本稿では,提案するモデリングシステムについて詳しく述べ,実際のモデリング結果と実験によって本研究の有効性を検証する.
著者
住谷 美登里 福島 幸子 福田 豊 瀬之口 敦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SANE, 宇宙・航行エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.218, pp.1-6, 2005-07-22
被引用文献数
2

日本国内空域では、現在29,000ft以上を飛行する航空機の垂直方向の管制間隔は2,000ftである。航空交通量の増加に対応するため、2005年秋に日本国内空域において29,000ft以上の垂直間隔を2,000ftから1,000ftに短縮するRVSM(短縮垂直間隔)が導入される予定である。航空機は出発前に巡航する高度を要求する。他の航空機との水平方向の間隔を確保するため要求高度とは異なる高度を管制機関から承認されることがある。RVSM導入により、このような場合において要求高度と承認高度の差である高度変更量が小さくなることが期待される。そこで、羽田、成田空港からの出発便が通過する地点での航空交通量、要求高度と承認高度について調査した。また簡単なモデルにてRVSM導入時の高度変更量の推定を行ったところRVSM導入前と比較して高度変更量が1/2以下になった.
著者
山中 直明 大木 英司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SSE, 交換システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.98, no.566, pp.1-6, 1999-01-28

ユーザのPCの蓄積能力が大幅に向上し、ディジタルビデオのコンテンツを配信するプッシュ型サービスが中心となった次世代ネットワークのアーキテクチャを提案した。コンテンツの識別子(コンテンツID)をユーザが網内の各ノードに定義し、各ノードは配下にこのコンテンツを転送すべきか否かでフィルタリングする(テーブルルックアップ)。転送は、すべてシェアードメディア型のブロードキャストセレクションで行い、各網リソースは、一時的には1つのコンテンツをフルスピードで転送するために占有されるバースト転送型のネットワークを提案する。
著者
鈴木 規之 津田 徹 齋藤 利文 森山 京平 ザモーラ ジェーンルイ フレスコ 樫原 茂 藤川 和利 山口 英
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MoMuC, モバイルマルチメディア通信 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.384, pp.49-54, 2012-01-12
被引用文献数
1

大規模災害時において,建物の倒壊や負傷により移動できない被災者を救出するためには,発生直後から如何に迅速な救助活動を行うかが重要となる.しかし,災害時には,既存の通信インフラが使用できないため,被災者の情報を入手することが困難となる.そこで,本稿では,各ユーザのスマートフォン間で蓄積運搬転送型通信を行うことで,被災者からの救助要請メッセージを伝搬し,救助者が被災者の状態や位置を把握できるアプリケーション(SOSCast)の設計を提案し,実装する.SOSCastは救助要請メッセージに含まれている被災者のGPS情報と,救助要請メッセージの受信者のGPS情報を用いて,多くの救助要請メッセージを収集することで,被災者の位置の把握を行うことができる.また,プロトタイプシステムを用いた実験評価では,被災者のGPS情報が誤差を含んでいる,または取得できない場合においても,受信者のGPS情報をもとに被災者の位置を推測できることを示した.
著者
加藤 稔 久原 理央 森 澄人 今崎 充智
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ICM, 情報通信マネジメント (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.132, pp.17-22, 2014-07-03

近年のクラウドサービスでは,テナントのユーザが自由に自身のネットワークトポロジを仮想化環境上に構築でき,複数のテナントが同じIPセグメントを重複作成しても通信制御が可能となっている.この技術は,通信制御ノードがネットワーク名前空間を用いることによって実現している.しかし,ネットワーク名前空間は,ノード固有のOSカーネル空間に作成されるため,他ノードと共有することができず,故障した通信制御ノードに収容されていたネットワーク名前空間を使用するテナントは,他の通信制御ノードが正常であっても通信できなくなる.したがって,このネットワーク名前空間を用いる通信制御ノードは,通信システムにおける単一故障点となり得る.本稿では,OpenStackのネットワーキングコンポーネントであるNeutronを使用した,ネットワーク名前空間を用いる通信制御ノードにおけるフェイルオーバ手法について検討し,テナントの通信遮断時間を短縮するための新たな高可用基盤を提案する.
著者
樋口 三郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.260, pp.59-60, 2014-10-11

プログラミング課題を,テスト入力に対する出力に基づいて裁定することを考える.乱数を利用するランダムアルゴリズムを含むプログラムの場合には,統計的検定に基づいて採点する方法,乱数発生ユニットとその処理を行うユニットに分割して採点する方法が考えられる.連続乱数発生器の採点方法を提案する.
著者
溝渕 翔平 西村 竜一 入野 俊夫 河原 英紀
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.52, pp.279-284, 2014-05-17

本研究では通常歌唱をグロウル系統の歌唱音声の印象をもつ音声に変換するシステムの検討を行っている.先行研究では簡単な信号処理で歌唱音声にグロウルらしさを付与する方法が提案された.本報告では提案手法で用いる特徴付与のパラメタを対話的に操作し,歌唱音声にグロウルらしさを付与するGUIについて紹介する.提案手法は時間変調による基本周波数の高速な時間振動の付与,FIRフィルタによる処理範囲に共通した帯域強調処理,及び近似時変フィルタによる第3フォルマント周辺の高速な時間変調の付与の3つより構成されている.提案手法は変換処理に分析・合成を必要としないためリアルタイム処理を可能とし,ライブで一種のエフェクターとして用いることが出来る.GUIの開発は主にデモやポスターセッションの場で本手法による処理内容と処理の影響について直感的理解を促すことを目的としている.開発したGUIは実際にポスターセッションの場で操作し,操作性やデザイン性についてコメントを頂きたい.
著者
大久保 貴之 辻 純一 徳永 憲洋 古川 徹生
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.480, pp.381-386, 2009-03-04
被引用文献数
1

本研究の目的は,ダイナミクスの「集合」を扱うニューラルネットワーク(Multi-Dynamics Learning Network:MDLN)を開発することである.このMDLNには次の3つの機能を求める.i)教示されるダイナミクスの可観測状態変数から,非可観測状態変数とそのダイナミクスを推定すること.ii)推定するダイナミクス間の順序づけを行うこと.iii)順序づけしたダイナミクス間の内挿補間を行うこと.本論文ではこれら3つの機能を満たすMDLNの実現において既存のアプローチでは限界があること,その理由と解決方法について議論する.そしてシミュレーションを行い,われわれの主張する論理の整合性を検証したので報告する.なお本研究では,既存のアプローチにとしてRecurrentNeural Network(RNN)を機能モジュールとするモジュラーネットワーク型SOM(mnSOM)とParametric Bias(PB)法を用いたRNNPBの2つのニューラルネットワークを用いて検証を行った.
著者
今川 直樹 中垣 淳 宮永 喜一 吉田 則信
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CAS, 回路とシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.573, pp.51-56, 2001-01-17

音声信号のスペクトル推定法として、線形予測法があげられる。従来の線形予測法では、女性や子供の声などのピッチ周波数の高い音声信号を分析する場合、ピッチの影響を受けることによって必ずしも正確なスペクトル包絡の形やホルマント周波数を推定できるとは限らなかった。したがって、ピッチの影響を取り除くことが重要になってくる。本論文では、線形予測法によって音声信号のスペクトル包絡を推定する過程の中で、ケプストラム分析を用いることによって、入力音声信号のピッチの影響を取り除いてからスペクトル包絡を推定する手法を提案する。本論文のスペクトル推定法を用いてピッチ周波数の高い子供の声を分析すると、従来の線形予測法に比べてより精度の高いホルマント周波数の推定ができる。
著者
齋藤 大輔 松浦 良 朝川 智 峯松 信明 広瀬 啓吉
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.406, pp.189-194, 2007-12-13
被引用文献数
6

本報では,ケプストラムベクトルの方向成分が声道長の変化に対して強く依存していることを理論的,実験的に示す.さらにこの依存性がn次元のケプストラム空間における回転として表出されることを示す.音声認識の研究においては,年齢や性別の違いといった歪みを取り除くため,声道長正規化(VTLN)とよばれる技術が広く用いられている.VTLNはスペクトルドメインにおける周波数ウォーピングによって実現されるが,ケプストラムドメインでは線形変換c=Acとして表現する事ができる.しかしこの変換行列Aの幾何学的な性質に関しては今まで十分に議論されてこなかった.本研究ではn次元空間における幾何学を通して,これらの変換が全てのケプストラムベクトルをおよそ等しく回転させる事を示す.さらに分析再合成音を用いて,実際にケプスラムベクトルが回転している事を実験的に確認した.身長180cmの話者と身長120cmの話者を比較した場合,そのケプストラムベクトルがおよそ直交していることがわかった.本報の結果から従来の音声認識システムが子供の声のような特異音声を苦手とする一因を定量的に示す事ができた.