著者
宇野 亨
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J104-B, no.11, pp.821-829, 2021-11-01

電磁波は異なる媒質の境界で反射・透過をするだけではなく表面波となって境界面を伝搬する.身近にある媒質に対する表面波は古くから研究されてその性質はよく知られているが,誘電率も透磁率も任意の値を取り得るメタマテリアルの登場によって改めて見直す必要がでてきた.一方,測定装置の感度とダイナミックレンジが格段に向上したことや高速・高性能信号処理法が開発されたことなどによって従来は無視できるほど小さいとされてきた現象も十分観測可能になってきた.このため思いもよらぬ観測信号に悩まされることもあるが,これは新たな観測システムを構築できる可能性があることもまた示唆している.本論では,著者とそのグループが行ってきたアンテナと表面波に関する幾つかの研究成果とそれに関連する話題をオムニバス形式に紹介して読者の参考に供したい.
著者
今井 亨 松井 章典
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J105-B, no.5, pp.454-457, 2022-05-01

マイクロストリップアンテナの素子外側近傍に,水平方向に置かれた金属柱が放射特性に与える影響についての検討を加えた.金属柱を付加することにより放射指向性が鋭角化し,素子単体に比べ2 dB程度の高利得化を図ることが可能となる設計資料を得た.
著者
村田 真一 松田 崇弘 西森 健太郎
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J105-B, no.3, pp.229-239, 2022-03-01

無線信号が送出されている位置を推定する波源推定技術は,現在あるいは将来の無線通信技術における周波数有効利用のための一つの重要な技術である.本論文では,複数の無人飛行機(UAV: Unmanned Aerial Vehicle)を用いて波源推定を行う技術について検討する.各UAVはアレーアンテナを搭載し,アンテナ信号処理推定された信号の到来方向(DOA: Direction of Arrivals) より,波源推定を実現する.波源とUAVの間で見通し内(LOS: Line-of-Sight)伝搬路が確保されている場合,複数のUAVで推定された到来方向を組み合わせることにより波源の位置を推定することができる.一方,波源とUAVの間が見通し外(NLOS: Non-Line-of-Sight)伝搬路である場合には,到来方向から直接波源位置を推定することはできない.本論文では,到来方向分布の広がりが波源とUAV間の距離が大きくなると狭くなることに注目し,NLOS環境における最ゆう推定を用いた波源推定手法を提案する.提案手法では,各UAVにおける信号の到来方向は単峰型の角度分布として知られるvon-Mises分布に従うと仮定し,複数のUAVで推定された到来方向よりゆう度関数を構成し,繰り返し推定により波源の位置とvon-Mises分布のパラメータを推定する.
著者
柏 達也 辻 寧英
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J105-B, no.3, pp.322-329, 2022-03-01

5G(第5世代)高速通信を支える基幹技術の一つとなるのが従来に比べ非常に高い周波数帯であるミリ波帯の利用である.また,5Gによる自動運転,遠隔医療,ローカル5Gの実用にはミリ波技術が重要となる.最近の3Dプリンタの急速な高性能化は従来の解析的な設計手法のみならず,トポロジー最適化といわれる素子構造最適化問題により得られた高性能素子の実用化を可能にしている.このトポロジー最適設計においては様々な手法が提案されているが,現在,最も注目を集めている手法は人工知能の一つである発見的最適化手法であり,それによる素子性能最適化に関する研究が重要である.従来の手法に比べ解析の高速化及び素子の高性能化の実現が重要なポイントとなる.本論文ではミリ波伝送線路の一つであるNRDガイドのトポロジー最適設計による素子性能向上について報告する.
著者
野村 勝也 高橋 篤弘 小島 崇 山崎 慎太郎 矢地 謙太郎 坊 大貴 藤田 喜久雄
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J102-B, no.8, pp.669-673, 2019-08-01

最適な構造物を数値計算で導出する手法であるトポロジー最適化をノイズフィルタの導体パターン設計に適用した.回路定数により支配的なノイズが異なるフィルタで最適化を行った結果,支配的なノイズに応じた構造変化が生じ,フィルタの性能が向上した.
著者
山本 哲矢 岩田 綾子 河内 涼子 湯田 泰明 鈴木 秀俊
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J104-B, no.10, pp.792-805, 2021-10-01

国際標準化団体である3rd Generation Partnership Project (3GPP)では,第5世代移動通信システム(5G: 5th Generation mobile communication systems)の無線インタフェースの一つであるNew Radio (NR)の規格標準化が進められている.NRでは,モバイルブロードバンドの高度化(eMBB: enhanced Mobile Broadband)だけでなく,超高信頼・低遅延通信(URLLC: Ultra Reliable and Low Latency Communication)もサポートする.URLLCの基本機能は,Release 15において仕様化され,Release 16では,URLLCの適用範囲拡大のための仕様化が進められた.本論文では,URLLC実現のための基盤となる技術に焦点を当て,3GPP Release 15及びRelease 16において規格化されたNRの主要無線アクセス技術について解説するとともに,それら技術の適用効果を無線区間遅延評価により明らかにする.また,Release 17において検討されている技術課題についても紹介する.
著者
小林 真 増長 遥 新 浩一 西 正博
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J104-B, no.6, pp.471-480, 2021-06-01

VHF帯周波数は広く放送などで用いられている.特に,災害時には重要な情報伝達手段の一つとして利用されていることから,ノイズの大きさ等の電波環境を把握することが重要である.本研究では,湿度(相対湿度)変化とVHF帯ノイズの増減の関係を明らかにするために,VHF帯ノイズと湿度を含む気象現象との関係を調査した.2015年から2019年までの観測結果から,湿度40%以下のときに,湿度の低下に従ってVHF帯ノイズが急激に上昇することが分かった.更に,VHF帯ノイズと湿度の関係を表す式を導出した.
著者
深谷 芽衣 牧野 滋 瀧川 道生 中嶋 宏昌
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J105-B, no.1, pp.14-20, 2022-01-01

本論文では,リフレクトアレーアンテナの測定結果から利得低下の要因分析を可能とする測定法について示す.特徴として,リフレクトアレーアンテナと同じスピルオーバー損失となるようなパラボラアンテナを試作し測定結果を比較することで,損失の切り分けを容易にし,利得低下の要因を分析する.結果としてリフレクトアレーアンテナとパラボラアンテナの測定値の差と,利得低下分析より求めたリフレクトアレーアンテナ固有の損失の差は測定誤差の範囲内であり,利得低下分析は妥当であることがわかった.
著者
大島 一郎
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J104-B, no.11, pp.841-851, 2021-11-01

メタマテリアルの研究開発は実用化のフェーズに入ったといわれている.本論文では,移動通信分野において,基地局アンテナへのメタマテリアル技術の応用と,電波伝搬環境の改善のためのメタサーフェスの応用に着目し,実用化の観点から現時点での応用可能性を検討する.そして,メタマテリアルを応用した基地局アンテナ,メタサーフェス反射板について,筆者らによる実現例を紹介する.
著者
矢守 恭子 田中 良明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.89, no.3, pp.390-394, 2006-03-01
参考文献数
7
被引用文献数
2

近年,優先制御を用いて複数クラスの品質を提供する差別化サービスが新たなサービスとして検討されており,品質に対する料金設定が問題となっている.そこで,本検討では,帯域幅の違いによる品質の差をアプリケーション品質の差に置き換え,それぞれの最低保証帯域幅と支払意思額の関係を主観評価実験により求めている.その結果,帯域保証に対する追加料金の支払意思額の増加割合は,帯域保証をしない場合の基本料金に対して,約25%が上限値になることを示している.
著者
大窪 義博 上保 徹志
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.89, no.7, pp.1141-1150, 2006-07-01
被引用文献数
1

一般に,レーダは近距離の測距が難しく,その最小探知距離は数m以上である.我々が提案した定在波レーダは,周波数帯域幅が76MHzの場合,最小探知距離は2m程度となる.最小探知距離を短くするための一解決法は周波数帯域幅を広くすることであるが,電波法による制限があり現実的ではない.我々はこれまでに,定在波レーダにおいて,周波数帯域幅を広げることなく,0mから測距可能な手法を提案し,その構成と測定原理を示した.また,数値計算によるシミュレーションで測定原理の検証を行った.本論文では,0mから測距可能な定在波レーダの実現性を確認するため,実際に定在波レーダを用いて,その測定原理を実験的に検証する.その結果,24GHz帯で周波数帯域幅76MHzの条件において,最小探知距離2mよりも近い位置(0.14m,0.3m,0.5m,1m)にあるターゲットの距離を誤差数cmの精度で測定できることが確認された.0.14m以下の距離については,今回の実験環境では,ターゲットとアンテナとの位置的な干渉のため,ターゲットを0.14mより近くに置くことができず,実際に確認することはできなかった.しかし,確認した距離において,理論どおりの距離スペクトルが得られていることから,特別な制限なく測定可能であると考えている.
著者
嘉久和 翔 藤井 雅弘
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J104-B, no.7, pp.662-664, 2021-07-01

本論文では,超球面上で一般化したシンボル設計手法を提案し,数値計算実験によりその性能を評価する.提案設計では高次元ほど最小シンボル間距離を長くすることができ,8次元では通常のQPSKと比較してBER=10-7で約0.8 dBの利得を達成することが可能であることを示す.
著者
齋藤 宏文 金子 智喜 河野 宜幸 村上 圭司 國井 喜則 友田 孝久 田中 孝治 平子 敬一 中須賀 真一 白坂 成功
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J104-B, no.7, pp.669-672, 2021-07-01

低高度地球観測衛星からのデータダウンリンクの高速化を目的に,シンボルレート300 Msps,64APSK変調,及び256APSK変調,左右円偏波多重方式のデータダウンリンクの軌道上実証実験を行った.64APSK変調にて2.65 Gbit/sec,256APSK変調にて3.3 Gbit/secの低高度衛星からの世界最高の通信速度が確認された.
著者
上坂 晃一 高橋 応明
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J89-B, no.9, pp.1548-1557, 2006-09-01

近年の非接触ICカード/RFIDタグ等の急速な普及には目覚ましいものがあるが,使用されているアンテナは,システム全体の中で最も設計が難しいといっても過言ではない.これはアンテナの設計パラメータが,形状,材質,ICとのインピーダンス整合,通信エリアや各種規制等の遵守等々と非常に多岐にわたるためである.まず,このRFIDシステムには使用する周波数帯がいくつか用意されている.この中で13.56 MHz帯を用いるシステムでは,アンテナが波長に対して非常に小形となることから微小アンテナの設計技術を必要とする.またUHF帯(860~960 MHz)やISM帯(2.45 GHz帯)等では13.56 MHz帯の場合とは異なり,通信エリアが電磁界の近傍界から遠方界にまで及ぶことから,その全域で動作させる必要があり,設計が困難となる.更に,RFIDを貼り付ける物質(金属や高誘電体等)によっても,アンテナ特性が大きく変化する.本論文では,これらの事例について,無線ICタグの設計法を述べる.
著者
下妻 陽介 下塩 義文 秋山 佳春 桑原 伸夫
出版者
社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 = The transactions of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers. B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.89, no.4, pp.585-593, 2006-04-01
参考文献数
16
被引用文献数
3

電力線搬送通信(PLC)は家庭内の配電線を通信線としても利用するため,新たに通信線を配線する必要がないといった利点があるが,通信目的として設計されていない電力線を使用するため,他の通信-の影響を検討する必要がある.通信に影響を及ぼす経路としては放射,伝導,誘導によるものが考えられるが,本論文では,通信線に誘導したPLC信号が同じ周波数帯域を使用するVDSL通信へ与える影響について検討を行った.まず,電力線から通信線に誘導する電圧を,2対の平衡ケーブルの4導体とグラウンドを考慮した5導体からなる8ポート回路網モデルにより解析を行った.この解析モデルにより,伝送系の平衡度を変化させたときの近端クロストーク(VTR)を求め測定値と比較した結果,両者の傾向はほほ-敦し,解析によりVTRの評価が可能であることが分かった.次に,誘導したPLC信号がVDSL通信に与える影響を,スループットの劣化を尺度として評価を行った.その結果,通常の条件下においては影響がないこと,vTRの解析値,PLC及びADSLモデムの入出力信号レベル,干渉が発生するDU比(通信信号と妨害波の比)が既知であれば,干渉の発生をある程度予測することが可能であることが分かった.
著者
林 磊 石崎 龍 鷹羽 浄嗣 福井 正博
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J99-B, no.7, pp.481-489, 2016-07-01

蓄電池は蓄電容量や内部抵抗の劣化に伴い変化するため,残量予測や充放電など管理を高精度かつ安全に行うためには,起電力や内部抵抗などの内部パラメータの同定が必要である.システム同定の方法としては忘却係数付きの汎用問題に対する逐次最小2乗法が複数提案されているが,本論文では,蓄電池のOCVと電極表面抵抗の同定を目的とし,SOCとOCVの関係に着目することにより,端子電圧と端子電流の比率に基づき最適な忘却係数を算出する発見的手法を提案する.実験により,充放電電流や環境温度の様々な条件に対して,1Hzの電流電圧サンプリング条件で,SOCに関して5%以下の誤差,電極表面抵抗に関しては10%以下の誤差で同定できる良好な結果を確認した.
著者
戸辺 義人
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J90-B, no.8, pp.711-719, 2007-08-01

無線センサネットワークは,センシングと無線ネットワークを融合させることにより,様々な技術課題を生み出している.こうした課題はハードウェアとしての実装から信号処理,ソフトウェアアーキテクチャにまで広がっていて,ネットワーク単独での特殊性をとらえることが難しくなっている.しかし,無線センサネットワークには,センシングデータを配送することを目的とすることに伴う特徴があり,ネットワークアーキテクチャ設計の考え方にも影響を与える.本論文では,これらの特徴から導かれるMAC(Media Access Control)プロトコル,位置情報を利用するルーチング,データセントリックネットワークの研究成果を中心に,ネットワークにかかわる技術的な課題を解説する.
著者
福田 明 椋本 介士 大市 聡 中野 啓 吉廣 安昭 長澤 正氏 山岸 久雄 佐藤 夏雄 楊 恵根 何 国経 金 力軍
出版者
電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 = The transactions of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers. B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.90, no.2, pp.199-207, 2007-02-01
参考文献数
17
被引用文献数
1

本論文では,筆者らが2001年末より2004年末まで,ほぼ3年間にわたって南極大陸で実施した流星バースト通信実験のうち,最終年度(第45次南極地域観測隊)において行ったデータ伝送実験の概要とその実験結果を報告する.実験は,昭和基地(マスタ局)-中山基地(リモート局)間約1400kmで行われ,筆者らが開発した,ソフトウェアモデムによる流星バースト通信システムRANDOMが用いられた.期間を通しての平均スループットは,流星バーストによる伝搬が主である昼間には約1.7 bit/s, オーロラに関係すると思われる非流星伝搬がしばしば発生する夜間には約6.8bit/sであり,全休では約3.4bit/sであった.このように,本システムのデータ伝送能力は,それまでの2年間のデータ伝送実験に用いた米国MCC社製のシステムに比べて非常に高く,この1対1通信路を通して1日当り30キロバイト以上の観測データを伝送できることが分かった.
著者
山下 玲 今給黎 薫弘 岡本 聡 山中 直明
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J102-B, no.4, pp.310-318, 2019-04-01

データセンタネットワーク(DCN)における消費電力増加に伴い,電気パケット交換と光回線交換/光スロット交換を併用するハイブリッド型DCNが注目されている.ハイブリッド型DCNでは,DCN内を流れるフローをサイズや継続時間によって分類し,電気パケット交換網と光回線交換網/光スロット交換網のどれに流すべきかを判断する必要がある.本論文では,フロー分類手法として,Hadoopのジョブ特性を用いたアプリケーション駆動型手法を提案する.提案手法では,HadoopのShuffleデータ量とジョブ継続時間を推定することで,電気パケット交換網と光回線交換網/光スロット交換網のうちより省電力な網を選択することを可能とした.コンピュータシミュレーションにより,従来手法と比較して約15.8%のスイッチング消費電力削減効果を確認した.
著者
小杉 智 上原 宏 神成 淳司
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J103-B, no.1, pp.1-10, 2020-01-01

本論文では,土壌,農地,気象など農業関連のデータをクラウドデータベースに集約した農業データプラットホーム'農業データ連携基盤(WAGRI)'のサービス,及びアーキテクチャを述べる.耕作放棄地の増大,担い手不足に直面する日本の農業では,農家の経験を代替するデータ農業への期待が高まっているが,始まって間もないこれらの取組みにおいて,サービス要件は極めて流動的である.こうした背景から農業データ連携基盤では,今後発生する様々なデータサービス要件に対して,ソフトウェアの追加開発を極力抑えてサービス実装できるアーキテクチャ'Dynamic API'を考案した.Dynamic APIによれば,ユーザ自身が新たなサービスを実装することも可能である.本論文では,Dynamic APIアーキテクチャによって実現した各種のデータサービスを述べるとともに,このアーキテクチャが新たに発生するサービス要件に対してプログラム開発を伴わずにサービスを提供する仕組みについて,事例を交えて述べる.