著者
河野 裕介 平 勁松 加藤 隆二 市川 勉 河野 宣之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.1071-1078, 2001-06-01
被引用文献数
4

スピン安定型衛星に搭載された送受信アンテナの不均一な位相特性は, 衛星が自転することによって送受信位相に変化をもたらし, この位相変化はドップラー周波数に影響を与え, 真の距離変化率の測定に誤差を与える.またアンテナ位相中心の平均的な位置は必ずしも衛星のスピン軸に一致しておらず, 位相中心の平均的な位置とスピン軸の不一致もドップラー計測に影響を与えることが知られている.そこで, 鹿児島宇宙センタにおいてインテグレーテッドドップラー計測方式で得られたスピン安定型衛星'のぞみ'のドップラー周波数データを解析し, スピンの影響と考えられるドップラー周波数の変動を検出した.そして, それらの影響が除去できる条件と, その除去方法を提案し, 実際に'のぞみ'の観測データからそれらの影響をほとんど除去できることを示す.またこのような条件を満たすためには, 衛星軌道投入時のスピン周波数に制限があることがわかった.
著者
渡邊 実 佐野 健太郎 高前田 伸也 三好 健文 中條 拓伯
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J100-B, no.1, pp.1-10, 2017-01-01

近年,FPGAは家電製品,自動車,そして宇宙システムと幅広い用途に使用されている.しかし,2000年代前半まで,FPGAはASICと比較して性能が低く,試作,テスト,研究用途に用いられただけで,量産品に対してはコストあたりの性能に秀でたASICが多用されてきた.これが変わるのが2000年代後半であり,FPGAは最先端のプロセスが利用できる数少ない集積回路の一つとなり,高性能な製品を生み出す主役の座に躍り出た.その代表的なものの一つにFPGAを利用したハードウェア・アクセラレータがあり,その有効性については,MicrosoftがBing検索に用いるデータセンターに対してFPGAを用いたサーバーを開発したり,Intel社がXeonプロセッサにFPGAを実装する等,もはや疑う余地がなくなったと言える.そして今日,FPGAベンダーは開発に多大な工数を要したハードウェア記述言語(HDL)の代わりに,C++からFPGAへの回路実装が可能な汎用的な高位合成ツールの提供を開始している.このような皆高位合成ツール時代のFPGA開発において,各企業が他社との優位性を確保するためには,これら万人向けに作られた汎用高位合成ツールやベンダーから提供されるHDL開発環境等を活用するだけでなく,汎用ツールの弱点を補完でき,より高性能な製品をより少ない工数で開発できる特定用途向けのツール群が必要になる.本論文では既に広く有効性が認知された汎用的な高位合成ツールではなく,まだ認知度が低いが日本で独自に開発が進められる「日の丸」ツール群を紹介する.
著者
岩見 哲也 西 正博 吉田 彰顕
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.92, no.1, pp.224-232, 2009-01-01
被引用文献数
2

これまで陸上伝搬のみならず海上伝搬特性を明らかにすることを目的として,多くの電波伝搬実験が行われてきた.本研究で対象とした瀬戸内地域は,対岸からの電波が到来しやすい環境であるが,その測定例は少ない.筆者らは,今後地上デジタルテレビ放送や移動通信への利用が検討されているUHF帯に着目し,標高の異なる2箇所の受信点において瀬戸内海上を伝搬したUHF帯テレビ放送波の定点測定を行った.18か月間の測定データから各受信点における伝搬損の月ごと累積確率分布や1時間ごとの伝搬損変動幅を算出することで,伝搬特性の定量的な評価を行った.また,直接波と海面反射波を想定し,従来から知られている2波モデルに基づいて大気屈折率と潮位の変動を考慮し,伝搬特性の考察を行った.測定の結果,受信点の標高が高く直接波と海面反射波の経路長差が大きいほど,伝搬損の変動が大きくなることを確認した.この伝搬損変動は大気屈折率の変化に伴うK形フェージングによって生じること,また大気屈折率が変化せず伝搬路が安定する場合にも,反射点の潮位の変化に伴って約12時間周期の伝搬損変動が生じることが分かった.また2波モデルによる考察から,瀬戸内地域におけるUHF帯電波の海上伝搬特性は,大気屈折率と潮位の両方の影響を考慮する必要があることを示した.
著者
荒木 健次 肖 鳳超 上 芳夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.90, no.11, pp.1106-1115, 2007-11-01
被引用文献数
10

電子機器で使用される多層基板において,バスラインを2枚のグランド層間に挟んで直交に配線する方式におけるクロストーク問題を解析するための回路網モデルを考察している.このモデルでは線路断面構造は上下面がグランド面で,線路の位置が中央にない非対称なストリップ線路である.このような線路が直交している場合のクロストーク問題を検討するために,TEMモードの条件下において一方の線路が作る電界が他方の線路に影響を与えるとして,4ポート回路網表示を求めている.このときの電界は電気影像法を用いて,ストリップ線路が非対称な構造であるので線電荷が作る電位から解析関数で求めている.この電位を線路端子での電圧と電流で表現し,最終的に縦続行列形の4ポート回路網を得ている.更に,この系での結合モデルでの分布相互キャパシタンスを評価し,そのほとんどが交差点に集中していることを定量的に明らかにし,集中相互キャパシタンスで表現するモデルを提案している.これらの回路モデルは実験モデルの測定値から検証を行っている.
著者
福島 智恵 山岡 建夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.89, no.6, pp.999-1006, 2006-06-01
被引用文献数
10

地上を捜索するレーダにおいて,背景クラッタに埋もれた目標や小型目標をより高精度に探知するためには目標と背景クラッタの分離が必要であり,距離分解能や方位分解能を向上することが求められている.一般に距離分解能を向上する手段としては,送信パルスの狭パルス化や広帯域FMパルス化などが挙げられるが,これらの手段では広帯域の受信機が必要となり,ハードウェア構成が複雑でコスト増大を招く.これに対して,周波数ステップさせた複数の狭帯域パルスを周波数領域で合成して逆フーリエ変換(IFFT)を施すことで,時間領域での狭パルス化,すなわち距離分解能の向上を図る手法が提案されている.本論文では,この手法をもとに周波数ステップさせたパルスを高速に発生する高速広帯域エキサイタを用いて合成帯域レーダ(Synthetic Bandwidth Radar:SBR)を構成し,実環境下における実験的評価を行うことで,その有効性を確認した.
著者
橋本 仁 五十嵐 秀平 行松 健一 村山 秀胤 宮村 崇 塩本 公平
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.91, no.6, pp.645-654, 2008-06-01
被引用文献数
2

MPLSにおけるトラヒックエンジニアリング(MPLS-TE)では,与えられたトラヒックを収容する際,各リンクの利用率に注目してその最大値が最小になるパス設定を考える.実際の動的なネットワーク環境下では,トラヒックの変動に応じて最適化を行いネットワークを再構成するのが望ましい.しかし,この再最適化は多くのトラヒックに対するLSPの再設定につながりかねず,切換時にパケット欠落や順序逆転などの転送品質の劣化の原因となり得る.本論文では,動的にMPLS-TEを行う際,全トラヒックの中からいくつかのトラヒックを選択し,選択トラヒックに対してのみLSP再設定を行う部分的な最適化手法を提案する.線形計画法による定式化では再設定トラヒック本数,したがってトラヒック量を明示的に限定することができるため,パス切換に伴う品質劣化リスクも限定可能と考えられる.また再設定トラヒックはトラヒック量から定め,イングレスルータでの測定量から決定可能なものである.この結果,明示的に対象トラヒック量を制限した場合であってもグローバル再最適化に近い効果が得られることが分かった.またシミュレーションの結果から,ほとんどの場合,再最適化対象のトラヒック量を約25%に制限した場合であっても,グローバル再最適化時の1.1倍程度の最大リンク利用率を実現できる結果を得た.これらのことから,パス再設定時のトラヒックヘの影響であるネットワーク品質劣化のリスクを限定あるいは低減する手法として有効であることを明らかにした.
著者
山口 裕之 梶原 昭博 林 尚吾
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.83, no.4, pp.567-579, 2000-04-25
被引用文献数
3

小型航空機やヘリコプタが比較的低高度で航行するとき, 山林や建物等の前方障害物を検地しクリアな航路を確保することは, 衝突事故防止において極めて重要である.このような障害物のうち, 特に高圧送電線は背景とのコントラストが得にくいため視認性が悪く, これまで多くの接触事故が報告されている.本論文では, 航行における前方障害物検知に対してミリ波帯レーダセンサを想定し, 物理光学法(PO)を用いて高圧送電線のミリ波帯レーダ反射断面積(RCS)を検討している.まずPOの有効性を確認するために, 電波暗室内で取得した94GHzにおけるRCSと比較・検討する.次に, 送電線はアルミニウム線をより合わせたより線形状(周期的な表面特徴)をしていることに着目して, より線形状がRCSに与える影響について明らかにする.実際, 送電線はレーダ照射範囲よりも長い.そこで本計算では, アンテナの指向性をガウシアン分布と近似することによって上記の状況を模擬し, RCSを算出している.
著者
大倉 浩嗣 伊藤 清繁 田坂 修二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.91, no.3, pp.321-327, 2008-03-01

本論文では,IEEE 802.11gによる音声・ビデオ伝送時に,Bluetooth干渉がメディア同期品質に及ぼす影響を実験により評価している.実験では,Bluetoothによる送信がIEEE 802.11gのアクセスポイント及びメディア受信端末に干渉可能な擬似電波伝搬環境を構築する.そして,アクセスポイント及びメディア受信端末におけるBluetooth干渉電波の受信電力を可変減衰器で変化させた場合,音声・ビデオのメディア同期品質にどのような影響を及ぼすかを測定する.その結果,Bluetooth干渉が大きいほど再送パケットやCRC誤りパケットが増加することにより,メディア同期品質が低下することを示す.また,メディア同期制御を適用することにより,メディア同期品質を改善できる.
著者
大林 功実 朝香 卓也 高橋 達郎 佐々木 純 品川 準輝
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.90, no.8, pp.720-733, 2007-08-01
被引用文献数
9

ファイル共有などで主に利用されているUnstructured型P2Pネットワークでは,べき乗別に従うトポロジーが形成される傾向がある.またコンテンツの人気度の分布にも同様の性質が見られる.そのため隣接ピア数の多いピアにかかる負荷が著しく大きくなり,更に稀少コンテンツを発見できないことによるネットワーク全体のヒット率が不十分であるという問題がある.そこで本論文ではこれら二つの問題を同時に解決する各ピアによる自律分散的なキャッシュ置換え方式を提案する.本論文で提案する方式は各ピアの隣接ピア数に応じたキャッシュ置換えを行うことで,隣接ピア数の多いピアへの過負荷を低減し,同時にネットワーク全体のヒット率を向上させる.またシミュレーションによる評価を行い,提案方式の有効性を示す.
著者
大渡 裕介 小川 恭孝 西村 寿彦 大鐘 武雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.90, no.9, pp.885-895, 2007-09-01
被引用文献数
2

MIMO-OFDM空間分割多重において,送信側でチャネル情報(CSI)が既知,若しくは,受信側から用いるべき送信ウェートが報知される場合,固有ビーム空間分割多重(E-SDM)方式を用いることができ,MIMOチャネル最大の容量が得られる.筆者らはこれまで時間領域で最小二乗法を適用し,推定したCSIのうち,主要な成分のみをフィードバックすることにより,情報量が削減できることを報告してきた.本論文では,筆者らが提案しているCSIフィードバック手法及びコードブックを用いた送信ウェートフィードバック手法について比較検討を行った.その結果,各手法におけるフィードバック情報量をほぼ等しくした場合,情報量が少ない4×2MIMOにおいては送信ウェート行列をフィードバックする手法の特性が,情報量が多い4×2MIMO,及び4×4MIMOにおいてはCSIフィードバック手法の特性が良好であることが確認された.
著者
大渡 裕介 小川 恭孝 西村 寿彦 大鐘 武雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.89, no.9, pp.1765-1775, 2006-09-01
被引用文献数
9 4

送受信側に複数のアンテナを設置し,各送信アンテナごとに独立したOFDM信号を送信するMIMO-OFDM空間分割多重では,マルチパス環境においても符号問干渉なしに伝送速度の向上が期待できる.更に,送信側でチャネル情報(CSI)が既知の場合,MIMOチャネルにおける最大スループットを得る固有ビーム空間分割多重(E-SDM)方式を用いることができる.しかしながら,OFDMでは各サブキャリヤごとにCSIをフィードバックする必要があり,通信容量を圧迫してしまう.本論文では,筆者らが以前より提案している時間領域で最小二乗法を適用し,推定したCSIをフィードバックすることで情報量を削減でき,更に良好な特性が得られることを示している.
著者
阪口 啓 ティン シーホー 荒木 純道
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.87, no.9, pp.1454-1466, 2004-09-01
被引用文献数
15 5

MIMO固有モード通信システムは,MIMO通信システムの中で最大の通信容量を実現できることが理論的に知られているが,実環境での動作報告はまだ行われていない.本論文では,測定器ベースのMIMO固有モード通信システムを構築し,屋内環境において測定実験を行った.その結果,MIMO固有モード伝送が実現可能であることを実験的に証明することができた.次に,スループット最大規範に基づく固有モードごとの適応変調・適応電力制御を行った.その結果,ビット分配特性・電力分配特性は理論計算値とよく一致したものの,高いスループット特性は得られなかった.本論文では,この問題の原因が特にチャネルの時間変動特性・RF系の不完全性(I/Qのアンバランス)にあることを明らかにし,実用化への課題を示す.
著者
梶田 剛広 高橋 英士 矢守 恭子 田中 良明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.88, no.10, pp.2042-2051, 2005-10-01
被引用文献数
8

コンテンツ配信を効率的に行う手段として, 同じコンテンツに対するユーザからの配信要求を集めて, マルチキャストで配信する方法がある. しかしながら, この方法においては, 適切な配信間隔設定を行わないと, 無駄に長く待ったり, あるいは回線ふくそうを起こしたりして, ユーザ効用が減少する可能性がある. また, パケット損失を防ぐことを重視すると, 一人の低速回線ユーザがマルチキャストグループに加わることによって, 配信全体の速度が低下し, ユーザ効用が減少する. そのため, 呼受付制御を行うことにより, ユーザ効用の減少を抑えられる可能性がある. 本論文では, ダウンロード形のマルチキャストコンテンツ配信におけるユーザ効用に注目し, ユーザ効用を最大化する配信間隔設定並びに呼受付制御について検討を行っている. その結果, マルチキャストの配信間隔には最適値があること, また, ユーザが待ち時間に対して敏感な状況において呼受付制御が有効であり, 呼受付率に最適値があることを明らかにしている.
著者
水野(松本) 由子 伊達 進 甲斐島 武
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.85, no.8, pp.1261-1268, 2002-08-01
被引用文献数
5

近年のインターネットの普及及び高速化など情報産業技術の発達は著しい.そのなかでグリッドと呼ばれる広域分散計算環境が注目されており,グリッドを用いた様々なプロジェクトが進みつつある.-方,高齢化社会における脳疾患や心疾患の増加や,異常犯罪を犯す若年者の脳機能発達異常など,深刻な疾病が社会問題となっている.また,MEG(脳磁図),PET(陽電子放射断層撮影装置),fMRJ(核磁気共鳴機能画像法),NIRS(近赤外線分光器)などの高度先進医療機器や最先端技術を用いた医療検査法が開発・導入され,更に,ゲノム解析や治療等への応用及びポストゲノムと目される再生医療などの新しい治療方法が用いられるようになってきた.このような状況のもと,バイオメディカル分野でもネットワークを用いた遠隔医療への期待が大きくなってきている.本論文では,広域分散コンピューティング環境での医療応用の現状と必要性を述べるとともに,望まれる医用インフラストラクチャについて考察する.
著者
浦塚 清峰 梅原 俊彦 灘井 章嗣 佐竹 誠 前野 英生 松岡 建志 増子 治信
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.134-136, 2001-01-01
被引用文献数
7

平成12年3月31日に噴火を開始した北海道有珠山に対し, 航空機搭載映像レーダによるマイクロ波(波長3cm及び24cm)による有珠山の映像を取得した.このレーダは, 地上12, 000mの高度からでも1.5mの高分解能で地上の地形形状の把握が可能である.観測は噴火から約1週間後の4月6日と, 更にその6日後及び5月30日の3回実施した.この結果について速報する.
著者
辻 正敏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.96, no.5, pp.555-558, 2013-05-01

本研究では,屋外防犯用途のマイクロ波センサにおいて,草葉の揺れ物体による誤検知を大幅に減少させる手法を提案する.その手法は,検出物体の移動距離を求め,そのしきい値を設けて判定するものである.Xバンドのマイクロ波センサを用いて草葉の移動距離のデータが採取され,分析が行われる.その結果,検出物体の2秒間の累積移動距離のしきい値を0.4mにしたとき,草葉の揺れに対する誤検知率を従来の受信新号のレベル判定のみを行うセンサと比較して0.0134%程度まで減少させることができた.また,揺れ物体の移動距離は,正規分布に従うため,設定した移動距離のしきい値に対する誤検知率を推定することが可能であることが分かった.
著者
一岡 義宏 青木 輝勝 安田 浩
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.84, no.7, pp.1299-1310, 2001-07-01
被引用文献数
7

本論文では, 不特定多数の人で混み合う都市型コミュニティでの人々の生活や行動を支援する情報提供システムの新しいアーキテクチャを提案するとともに, 本システム実現のために必要な赤外線簡易放送型通信プロトコルIrBRCとIrUCIS を提案する。提案システムは, 扱う情報を「上映用コンテンツ」と「持帰り用コンテンツ」に分けることによって, 発信者により生産, 発信された情報を受信者が手持ちの携帯端末に受信し, 移動しながら自由に閲覧できるモバイル時代のスタイルを可能にし, 発信者から受信者への情報の生産, 配信, 消費という情報の流通を生み出すことを目的として開発したシステムである。本システムは, 狭いエリアでの集中した情報取得要求によって引き起こされる配信サーバへの負荷の集中を, メインサーバとエリア内に点在させた近傍サーバによる階層化構成によって分散させることで解決し, 一方で分散化によって引き起こされる情報内容の一貫性の問題を, 情報のバージョン管理を行い変更による差分データをメインサーバから近傍サーバへ迅速に配信することで解決した。更に, 近傍サーバでの情報取得アクセスによる輻輳は, 赤外線による簡易放送型通信を用いることで解決した。
著者
矢守 恭子 田中 良明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.86, no.10, pp.2041-2052, 2003-10-01
被引用文献数
19

近年,インターネットなどを用いたコンテンツ配信サービスが新たなビジネスとして注目されている.このようなデータ配信では,優先制御を行うことにより,データの待ち時間が異なる複数クラスを設けるサービスが考えられる.ユーザ全体の効用は,優先制御するクラス数やクラスごとの呼量の割合によって変化すると予想される.そこで,本論文では,優先制御を用いたデータ転送における待ち時間とユーザ効用の関係を,効用速度関数を用いて定量化し,優先クラスを設けた場合の各クラス呼量の割合とユーザ全体の効用最大化について検討した.そして,効用最大化のための条件をデータ転送の方式やユーザ効用の速度関数ごとに解析し,数値例より最適な回線能率を示した.その結果,単一クラスよりも複数クラスを設け優先制御を行う方が,ユーザ全体の効用が増加することが明らかとなった.また,優先制御を用いた場合,回線能率100%で効用最大とはならず,少し回線の空いているときの方が効用最大となることがわかった.
著者
藤瀬 雅行
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.655-665, 2001-04-01
被引用文献数
17

ITS(Intelligent Transport Systems;高度道路交通システム)情報通信システムの一形態として, ROF(Radio On Fiber;光ファイバ無線)による36〜37GHzミリ波帯の路車間通信システムを検討し, 開発を進めている.開発中のシステムは, ITS専用サービスの一つであるETC(Electric Toll Collection;ノンストップ自動料金収受システム)のほかに, 既存の移動通信や放送サービスを統合して提供可能な, マルチサービス対応型の無線通信形態を採用している.本論文では, 開発中のシステム構成を紹介するとともに, ROFによる将来のマルチサービス無線通信の可能性について種々の検討を試みる.
著者
岡野 好伸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.85, no.8, pp.1426-1433, 2002-08-01
被引用文献数
15

本論文では,ループアンテナの有する広帯域性や利得の優位性を保ちつつ,複雑な無給電素子の装荷や高価な整合器を用いることなく,同軸線路の特性インピーダンスと整合可能な板状ループアンテナを提案する.具体的には,外形を変えることなくループ内側の開口部形状を変形させることを試みた.これにより,入力インピーダンスのコントロールが可能となり,VSWR≦2となる帯域がTV用UHF帯の中心周波数620MHzに対して約40%に達することを示した.また,反射板を装荷し単方向指向性としたアンテナを試作し実験とFDTDによる解析の両面で検討し,VSWR≦2となる帯域が620MHzに対して約50%にまで達することを確認した.更に,動作利得に関しては,UHF帯の全域にわたり7.6〜8.2dBiと極めて安定した利得を達成し,地上波ディジタル放送用アンテナとしての有用性を示した.