著者
須田 達也 板生 知子 中村 哲也 松尾 真人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.84, no.3, pp.310-320, 2001-03-01
被引用文献数
14 6

本論文では, IT2に代表される新しいネットワークパラダイムの考え方を背景に, オープンなネットワーク環境におけるサービス創発のための適応型ネットワークアーキテクチャ:Jack-in-the-Netを提案する.Jack-in-the-Netでは, 複数の自律的なシステム構成要素であるサイバーエンティティ(CE:Cyber-Entity)の間で, 柔軟で可塑的なインタラクションを行うことによって適応型サービスを提供する.CEは自らを取り巻く環境をセンシングする能力をもち, 状況に応じてインタラクションを変化させたり, 移動, 交配, 死などの生物的動作を行う.複数CE間のインタラクションの結果, 集団としての望ましい動作や秩序が生まれ, 新しいサービスを創発する.そして, 創発によって多様化したサービスとその自然淘汰を経て, サービスが進化する.Jack-in-the-Netにより, ユーザの日々の生活シーンやマスの傾向の変化に追従できるサービスの創発が可能になる.
著者
大久保 寛 佐藤 慎也 竹内 伸直
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.88, no.4, pp.837-840, 2005-04-01
被引用文献数
16 1

落雷による電磁界の時間波形を観測する場合, 電磁界の伝搬経路中の大地の影響により観測波形が変歪する.本論文では, FDTD法を用いて大地を有限の導電率を有する媒質とした場合を計算し, 観測される波形のピーク時間への影響を解析している.
著者
松田 和政 中山 英久 加藤 寧
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.93, no.2, pp.166-176, 2010-02-01

Web会議やIP電話の普及により,ストリーミング配信におけるセキュリティ確保がますます重要となっている.しかし,P2Pネットワークや通信路の暗号化といった新たな通信技術の普及により,既存のセキュリティ技術でのパケットフィルタリングなどでは完全な通信制御ができない場合がある.そこで,我々のグループでは以前に,ルータにおいてストリーミング動画のトラヒック量を記録し,そのパターンをマッチングすることにより,該当する動画がネットワークを流れているかどうかを判定する手法を提案した.この手法ではパケットの中身を解析することなく,秘匿すべき動画の外部流出を検知することができる.しかし,既提案手法ではパケットの遅延変動が著しく増大すると,正しい比較を行うことができない場合があった.本論文ではこれを考慮し,動的なトラヒックパターン生成方式を用いた遅延変動にロバストなストリーミング動画検知手法を提案する.更に,マッチング手法として動的計画法を導入し,パケットロス時に発生するパターン長の伸縮問題にも対応している.提案手法は,既提案手法に比べて精度・再現率などの点で大幅な性能向上を達成した.
著者
松谷 健史 空閑 洋平 ロドニー バン ミーター 鈴木 茂哉 吉藤 英明 村井 純
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J96-B, no.10, pp.1095-1103, 2013-10-01

大規模データセンターにホストされているクラウドサービスの普及により,ネットワークに対する低遅延通信への要求が高まっている.しかし多くのIPパケット転送の実装は,複雑な経路選択が必要なグローバルインターネットの経路やAccess Control List (ACL)をサポートするために,転送遅延が大きい.本研究では全工程をパイプライン化し,パケットバッファを用いないIPパケット転送を提案する.本手法を市販のFPGAボードに実装したところ,41万経路のIPv4パケットの転送遅延が976nsで一定であることが確認された.これは市販のギガビットL3スイッチにて64バイトフレームを計測したときの20~25%に相当する.IPネットワークの転送遅延を削減することにより,クラウドやHPCなどのインターコネクトとしてIPプロトコルの適用範囲が広がることが期待できる.
著者
加藤 寧 風間 宏志 西山 大樹
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J94-B, no.3, pp.315-324, 2011-03-01

広域性と同報性に優れ古くから利用されてきた衛星通信システムだが,時代の変遷とともにその役割が少しずつ変化してきている.地上の有線/無線ネットワークの発達により都市部を中心に利用者数が減ってはいるものの,災害に対する強さなど非常時でも利用可能な通信システムとしての役割は依然として大きい.僻地や災害地でのシームレスな通信を実現するために衛星通信システムと地上ネットワークの融合が叫ばれる一方,限られた周波数資源の有効利用も課題となっている.更に,地球環境の変化などに伴い,環境モニタリングといった衛星通信システムの新しい利用法にも注目が集まっている.本論文では,衛星通信システム実験の現状を概観し,国内外の最新の状況を紹介するとともに,今後の展望について述べる.
著者
唐沢 好男 篠澤 政宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, pp.90-96, 2002-01-01
参考文献数
8
被引用文献数
12

サブバンド信号処理型アダプティブアレー(SBAA)のメリットは分割したサブバンドことに並列信号処理ができることであり, トータルとしての計算量も大幅に軽減できることである.一方, その代償として遅延波の取込み能力などの性能面での低下が免れず, その問題解決が必要である.そこで, 本論文では, OFDM方式のなかで取り入れられているガードインターバル(サイクリックプレフィックス)付加の仕組みを, 通常のデータ伝送に取り入れ, 上記SBAAの性能を極限にまで引き出す方法を提案する.また, その性能を計算機シミュレーションによって評価する.
著者
西村 豪生 岩佐 絵里子 入江 道生 金子 雅志 福元 健 上田 清志 片山 悦子
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J97-B, no.5, pp.393-406, 2014-05-01

設備コストの低減や運用柔軟化を目的として,セッション制御サーバシステムの仮想化プラットホームへの移行が行われつつある.本環境では,仮想化されたハードウェアリソースをリソースプールとして共有化し,各サーバシステムの要求に応じて動的なリソース割り当てを行う.本論文では,仮想化プラットホーム上のセッション制御サーバシステムを前提とし,リソースプール中のハードウェアリソースを一時的に活用することにより,キャリア網の構成装置に求められる無停止ソフトウェアアップデートを実現する手法を提案する.具体的には,現用のシステムとは独立して更新済みのソフトウェアが動作するシステムを構築し,動的な移行を行うことで冗長性を維持したまま無停止ソフトウェアアップデートを実現する.また,セッション制御アプリケーションがリソースプールや複数世代のシステムを意識することなくソフトウェアアップデートを実施可能とするミドルウェアを提案し,プロトタイプ実装によって提案するソフトウェアアップデート方式がサービスに深刻な影響を与えることなくセッション制御サーバをアップデート可能であることを示した.
著者
早川 正士
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.89, no.7, pp.1036-1045, 2006-07-01
被引用文献数
13

近年地震に伴って各種の電磁気現象が発生することが報告されている.すなわち,地圏から直接放射する電磁気現象や地震に伴う大気圏や電離圏のじょう乱などである.本論文では,地震の短期予知の観点から極めて注目されている二つの観測項目;(1)ULF電磁放射(地圏から直接放射される極低周波電磁放射);(2)電離層じょう乱(VLF/LF送信局電波の伝搬異常として検出)を取り上げ,その計測手法や最新の成果までをレビューする.
著者
北原 武 中村 元
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J94-B, no.6, pp.729-737, 2011-06-01

無線通信端末における電池駆動時間の向上は重要な課題であり,各種関連分野において様々な研究が進められている.筆者らは,放電電流の増加に伴い放電容量の減少を招く事象に対して,電池の電気化学的性質に着目し,放電容量の維持を指向したデータ通信制御技術を検討してきた.小型化が進む無線通信端末において,電池容量を制限しつつ高出力の無線送信機器を駆動する際には放電容量の減少が顕著となる.一方,連続放電に適切な休止期間を設けた間欠放電では,放電容量の減少が抑制される特性があり,電子回路での放電制御にも利用されている.本論文では,アプリケーションレイヤでのデータ送信制御により間欠放電を実現し,放電容量の減少を回避する方式を提案する.データ送信制御による間欠放電では,電子回路における放電制御に比べて,放電電流の変動幅及び動作周期が増大するため,放電容量の減少回避に関わる効果も異なると考えられる.そこで,CDMAセルラ網に接続可能な通信モジュールを用いて小容量電池で駆動する端末を試作し,提案方式による間欠放電を実証する.更に,同試作機に搭載したリチウムイオン二次電池の放電実験を通じて提案方式の適用効果を評価する.
著者
小川 晃一 高田 潤一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.83, no.6, pp.852-865, 2000-06-25
被引用文献数
43

本論文では, ホイップアンテナと板状逆Fアンテナによって構成された携帯電話用ダイバーシチアンテナについて, それを所持する人体の電磁的影響を考慮して求められるブランチ間相関及び実効利得性をπ/4シフトQPSKの相関係数及び不等中央値として使用することにより, アンテナ特性が影響するシステム利得である移動局のダイバーシチ利得とアンテナ実効利得の両者を同時に評価する指標として, ダイバーシチアンテナ利得(DAG:Diversity Antenna Gain)を新たに導入し, 携帯電話用ダイバーシチアンテナの実効性能と外部環境, アンテナ構成パラメータ及び人体の影響を定量的に評価した.ダイバーシチ合成法としては, 現行ディジタル携帯端末(PDC方式)に用いられている高周波段での切換合成の上限特性を与える検波後選択合成受信(遅延検波), 及びより高い性能が期待できる最大比合成受信(同期検波)の2通りについて解析した.900MHz帯において, ホイップ長, 鉛直方向からの傾き角, 人体と端末の距離, 到来波の状況とダイバーシチアンテナ利得の関係を解析し, これにより, 携帯電話用ダイバーシチアンテナの使用状態における実効性能を調べ, 高いアンテナ性能を得るための条件を具体的に示した.
著者
澤井 亮 原田 博司 白井 宏 藤瀬 雅行
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.84, no.7, pp.1187-1197, 2001-07-01
被引用文献数
3

一つの機器で複数の無線通信システムの同時処理を可能にするマルチモード・マルチサービスソフトウェア無線通信(MMSR:Multi-mode & Multi-service software Radio communications)システムが提案されている。本論文では, このようなシステムを一つのシステムクロックを用いて省スペースに実現する方法として, 稼動するシステムのシンボル(チップ)レートに応じてシステムクロックを決定し, その一つのシステムクロックをすべてのシステムに効率良く配分する適応マルチサンプリング処理法を提案する。提案方式の評価には, 将来的なITSサービスに向けたMMSR無線機を設計し, 白色ガウス雑音及び1波のレイリーフェージング環境下におけるビット誤り率について計算機シミュレーションを用いて評価する。
著者
米林 順平 高松 昇三 齊藤 一幸 高橋 応明 伊藤 公一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.94, no.2, pp.297-299, 2011-02-01

筆者らは,呼吸検出用ドップラーレーダの性能を評価するため,人体の腹部運動を模擬したダイナミックファントムを開発した.また,ダイナミックファントムと人体の測定によって得られる出力波形を比較することで,ダイナミックファントムの妥当性を示した.
著者
山田 吉英 道下 尚文
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J96-B, no.9, pp.894-906, 2013-09-01

ノーマルモードヘリカルアンテナは,小形アンテナの代表的なものとして,携帯電話機などの小形化が必要とされる用途に広く使用されてきた.また,これまでに多くの研究がなされており,アンテナの設計や電気特性に関する様々な評価式が明らかにされている.本論文では,まず従来の様々な研究と評価式を概観する.次に,筆者らが考案した,アンテナ構造に対する簡便な自己共振の設計式について述べる.また,自己共振時の電気的及び磁気的蓄積エネルギーの関係につても述べる.更に,インピーダンス整合用のタップ給電の簡便な設計式について述べる.最後に,実測により求めたアンテナ電気性能や,低抵抗値の測定法について述べる.実測の結果,1/200波長と小形化しても,-15 dBiという良好な利得が得られることが分かった.
著者
岡本 謙一 重 尚一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.91, no.7, pp.723-733, 2008-07-01
被引用文献数
6

熱帯降雨観測衛星(TRMM:Tropical Rainfall Measuring Mission)は,1997年11月28日に打ち上げられて以来,現在に至るまで,約10年以上も順調に,熱帯.亜熱帯降雨の観測を継続している.TRMMは,世界で初めてのアクティブフェイズドアレー方式の降雨レーダ(PR)を搭載しており,台風などをはじめとする様々な降雨システムの三次元構造の観測にその威力を発揮してきた.論文では,TRMM衛星のミッションの目的,搭載センサの概要,TRMM降雨レーダシステムの概念設計時の諸検討,TRMM降雨レーダシステムの概要,TRMM降雨レーダデータ解析処理アルゴリズムシステム,様々な観測成果(台風,潜熱加熱など),TRMMを継承する全球降水観測計画(GPM:Global Precipitation Measurement)主衛星搭載2周波降水レーダ(DPR)並びに更に次世代の衛星搭載の降雨レーダ技術についての展望などについて解説する.
著者
河野 隆二 春山 真一郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.84, no.7, pp.1112-1119, 2001-07-01
参考文献数
26
被引用文献数
24

異なる技術標準や多様な応用の無線システムが混在する状況が今後も続くものと予想され, この状況の問題点を解決し, 究極の無線通信へ近づくブレイクスルーとして, ソフトウェア無線(Software Defined Radio, Software Reconfigurable Radio)が期待されている。本論文では, 環境や応用目的に応じてソフトウェアの変更により通信システム機能を適応できるソフトウェア無線の必要性, 有効性を明確にし, 最近の国内外における研究開発動向を取りまとめるとともに, 実現において克服すべき問題とそのための要素技術を紹介する。 無線通信工学, ソフトウェア工学などの広範な学術領域にまたがる技術の粋を結集して達成できる新たな融合領域であり, 学術的な意義とともに産業界における新システム, サービスの創出へ寄与することが期待される。
著者
前田 貴博 西 正博 新 浩一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J95-B, no.10, pp.1353-1363, 2012-10-01

筆者らはヒトの屋内への侵入検知を目的とし,UHF帯テレビ放送波を用いたヒト検知システムを提案している.本システムは,テレビ放送波の受信レベルがヒトの動きに応じて変動することを利用してヒトの有無を判定している.これまでは,テレビ放送波を受信するアンテナを屋内に設置し,受信レベルが変動した場合に「屋内にヒトが居ると判定(検知)」していた.一方,受信レベルは屋内のヒトだけではなく,屋外のヒトや車などの外乱の影響でも変動するため,「屋内にヒトが居なくても外乱により屋内にヒトが居ると判定(誤検知)」することがある.そこで本論文では,より高精度な検知性能を実現するために,屋内と屋外にアンテナを設置し,それぞれの受信レベル変動から外乱を判定し誤検知を低減する協調検知手法を新たに提案する.検知対象として屋内のヒト,また誤検知対象の外乱として屋外のヒト,車を想定し,検知確率及び誤検知確率を従来手法と比較し,協調検知手法の性能を評価した.実測結果から,従来手法では外乱により誤検知が生じる一方,協調検知手法ではどの外乱に対しても誤検知が低減されたことを確認した.またシミュレーション結果により,継続時間が3秒の外乱が10秒に1回生じるような状況においても,提案手法は,誤検知を従来手法と比べて約1/100に低減でき,また約50%の時間率で確実にヒトを検知できることを明らかにした.
著者
日高 宗一郎 児玉 和也 丸山 勝巳 橋爪 宏達
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.86, no.3, pp.376-384, 2003-03-01
被引用文献数
1

今やほとんどのシステムはソフトウェア制御で,システムの成否をソフトウェアが握っており,システム制御プログラム開発の効率化が求められている。したがって,システム制御用に適した,要求に応じて機能拡張や変更が可能なOSが望まれる。この対策として,筆者らは,マイクロカーネル+マルチサーバ構成のOSの研究試作を進めている。このOS構成では,カーネルモードで実行されるのはマイクロカーネルのみであり,そのうえで各種のOSサービスタスクが,個々の論理空間をもちユーザモードで実行される。本方式では,拡張性,耐障害性,分散処理への適合性,制御ソフトウェア開発の容易化が図られる。また,この手法で懸念されるタスク間メッセージ転送のオーバヘッドは十分に少ないことを明らかにした。
著者
渡邉 英伸 大東 俊博 近堂 徹 西村 浩二 相原 玲二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.93, no.7, pp.893-901, 2010-07-01
被引用文献数
1

仮想計算機(VM)を別の物理計算機上へ移動させる際,VMの処理中断時間を極力短くするライブマイグレーションが注目されている.ライブマイグレーションを拡張し,IP層における移動透過通信機能(IPモビリティ)をもたせることで,別ネットワークへの移行を可能にするグローバルライブマイグレーションが提案されている.しかし,既存方式ではVMの再構築時にIPモビリティ処理が実行されるため数秒以上の通信途絶が発生し,ライブマイグレーションとしての性能を達成できていない.本論文では,VMに複数のネットワークインタフェースをもたせ,マイグレーション前に未使用のインタフェースにあらかじめネットワーク設定を行うことで,通信途絶時間を大幅に短縮可能なグローバルライブマイグレーション方式を提案する.更に,本手法を実装し性能評価実験を行った.その結果,通信途絶時間が1秒以下であることを確認した.
著者
シャグダル オユーンチメグ 中川 健治 張 兵
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.88, no.3, pp.539-550, 2005-03-01
被引用文献数
3

無線アドホックネットワークは, 将来のモバイル通信の一形態として最も注目されており, IEEE 802.11準拠の無線LANデバイスの利用が一般的と考えられる.無線アドホックネットワークの広い実現のため, QoS(Quality of Service)制御の要求が高まっている.その中でも, フロー間の公平性は非常に重要な要素である.伝統的な有線ネットワークでは, フロー間における公平性の問題は, 主にリンク層によるものだが, 無線アドホックネットワークにおいては, MAC層にも大きく起因する.具体的には, IEEE 802.11MACは無線端末間に公平なチャネル割当を行っているが, フロー間の公平を実現するには, フロー数に応じてチャネル割当を行う方式が必要となる.そこで, 本研究では, 各フローに同等なチャネルアクセスを割り当てることで, MAC層でのフロー間の公平を実現する方式を提案する.提案方式は公平性の改善だけでなく, ネットワーク全体のパフォーマンス, チャネルユーティリティなども改善できる.また, ネットワークシミュレータによる特性評価を行い, 提案方式の有効性を確認した.