著者
山田 寛喜
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J104-B, no.2, pp.66-82, 2021-02-01

ミリ波レーダは,その伝搬特性,広帯域性から,主に車載レーダとして広く普及してきた.更にMIMOレーダ化による高機能化,低価格化に伴い,近年では,近距離高分解能レーダとして幅広い応用研究が進められている.このようなアレーレーダ化により,距離,速度(ドップラ周波数)に加え,方位(角度)情報といったターゲットの3次元情報が得られる.これらを用いることによりターゲットの空間的な位置や様々な特徴を得ることができる.距離分解能は周波数帯域幅,ドップラ分解能は観測時間の増加に伴い改善可能である.しかしながら,方位分解能に関しては,アレー素子数の増加が必要となるため,ハードウェアの制約等により十分な分解能確保が困難な場合が多い.この論文では,方位分解能改善の観点に絞り,その高分解能化に関して論じている.ここでは二つの異なるアプローチを概説し,その有効性を明らかにする.一つは人物などの動きのあるターゲットの検出を目的としたMIMO仮想アレーによる高分解能化手法である.もう一つは自動車の側方(斜め前方)監視を目的としたレーダプラットホームの動きによる合成開口手法である.これらの手法の効果を実験結果を通して示している.
著者
堀 俊和
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J99-B, no.9, pp.646-654, 2016-09-01

メタ・サーフェスは,自然界には存在しない反射特性をもつ人工表面(超表面)のことであり,その表面に入射した電磁波の反射位相を制御できる特徴を有している.本論文では,メタ・サーフェスの基本構造と特性を示すとともに,設計・解析手法について概説する.次に,FSSを用いたメタ・サーフェスを取り上げて,光学近似理論を用いた簡易設計法を紹介し,AMCの低姿勢設計,PMC特性をもつメタ・サーフェス設計,偏波変換メタ・サーフェスの設計,反射角制御メタ・サーフェスの設計の四つの例について具体的設計法を明らかにする.更に,メタ・サーフェスのアンテナ・伝搬への応用として,アンテナの反射板,モノスタティックRCS低減反射板,伝搬環境改善のための反射板の三つの検討例を紹介する.
著者
茅野 功 薮本 道人 望月 精一 宮崎 仁
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 = The transactions of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers. B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.92, no.3, pp.576-585, 2009-03-01
参考文献数
28

ぱちんこ遊技場は複数の電子機器に四面を取り囲まれる特殊な環境であり,老若男女を問わず多くの人が出入りする場所である.しかし,このような電磁環境における生体及び体内埋込形医療機器への影響に対する研究はなされていない.そこで本論文では,この基礎的検討としてぱちんこ遊技場の遊技機のうち回胴式遊技機に焦点を当て,4種の遊技機から放射される中間周波磁界及び高周波電界の測定を行い,遊技者の磁界及び電界曝露の程度を検討した.この結果,回胴式遊技機は遊技中の役物連続作動装置(いわゆるボーナスゲーム)動作中に中間周波磁界及び高周波電界を最も強く放射しており,このとき遊技者は電磁調理器前面30cmにおける約5分の1に相当する中間周波磁界と,VCCIクラスB許容値より最大6.3倍の高周波電界が曝露されるが,ICNIRPの定める電界及び磁界への公衆の曝露に関する参考レべル及び医用電子機器の電磁両立性規格IEC60601-1-2に対して十分低値であることを確認している.
著者
山中 直明 西村 光弘 石黒 正揮 岡崎 義勝 川西 哲也 釣谷 剛宏 中尾 彰宏 原井 洋明 廣岡 俊彦 古川 英昭 宮澤 雅典 山本 直克 吉野 修一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J104-B, no.3, pp.315-336, 2021-03-01

2020年に我が国でも5G商用サービスが本格開始され,2021年の東京オリンピック・パラリンピックでは,5Gを応用したサービスのトライアルが行われる.一方,同時に将来の技術やニーズを先取りしたBeyond 5G/6Gの研究開発スタートの年となる.Beyond 5G/6Gを検討する際は,将来を予想して必要となるサービスを左手とするならば,ブレークスルーにより発展する基盤技術を右手として,それらを融合するネットワークアーキテクチャを面的に考え,同時に時間軸のステップを考える必要がある.そのため,総務省が主体となり「Beyond 5G時代の有線ネットワーク検討会」を発足させ,キャリア,国立研究機関,アカデミアに加え,本分野の代表的な電子情報通信学会研究専門委員会の委員長,コンソーシアムの主導者にも参加頂き,Beyond 5Gのオーバービューとブレークスルー技術等の取りまとめを行った.本論文では,そこで取りまとめた「ネットワークビジョン2030」を電子情報通信学会の多くの読者,研究者に提供することにより,自らのビジネスや研究へのヒントを得ると同時に,各分野の最新動向をフィードバック頂くことで,常に最新のビジョンへブラッシュアップすることを目指し,執筆を行った.
著者
阪田 史郎 青木 秀憲 間瀬 憲一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J89-B, no.6, pp.811-823, 2006-06-01

インターネットや携帯電話網などの従来のネットワークにはない無線マルチホップの新しい形態で通信を行うアドホックネットワークは,ユビキタスシステムにおける重要なネットワークとして,特に1990年代末以降活発な研究がなされてきた.2003~2004年にはユニキャストルーチングについて,IETF(Internet Engineering Task Force)のMANET(Mobile Ad hoc NETwork)WGにおいて三つのプロトコルがExperimental RFCになり,現在Standard TrackのRFCに向けた作業が進展している.また,大規模なテストベッドの構築が進展し,実用化への期待が高まっている.本論文では,アドホックネットワークについて,これまでの研究,標準化の動向を述べた後,MAC層でのアドホック(無線マルチホップ)ネットワークの実現技術として,2004年5月に検討が開始されたIEEE802.11sにおける無線LANメッシュネットワークに関する標準化状況,研究内容,アドホックネットワークの今後の進展を展望する.
著者
田邉 勇二 上野 伴希 馬場 孝明
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J90-B, no.12, pp.1274-1283, 2007-12-01

本論文では,室内の高精度な位置特定を実現させる基礎技術として,これまで報告のなかったアンテナ自身の群遅延解析をダイポール及び八木・宇田アンテナについて行った.2ポートZマトリックスを用いてダイポールアンテナ及び八木・宇田アンテナの群遅延解析を行い,遠方においてアンテナ群遅延が,前者はアンテナの自己インピーダンスで決定され,後者は放射器の自己インピーダンスと放射器近傍に存在する素子間における相互インピーダンスにより決定されることを示した.これらのことを踏まえ,ダイポール及び八木・宇田アンテナを実験により評価したところ共振周波数においてそれぞれのアンテナ群遅延が1.3 λ,2.7 λ(λは波長)となり,高精度な位置特定が必要とされる環境下では無視できない量であることが分かった.更に両実験について電磁界シミュレーションにより比較検討を行い,反射波による影響について考察する.
著者
中須賀 真一 酒匂 信匡 津田 雄一 永島 隆 船瀬 龍 中村 友哉 永井 将貴
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.88, no.1, pp.41-48, 2005-01-01
参考文献数
8
被引用文献数
14

2003年6月30日,東京大学中須賀研究室が開発した超小型衛星CubeSat-XI(1kg,10cm立方)がロシア連邦プレセツクより高度820kmの太陽同期軌道に打ち上げられた.その後,当初の予想を超え1年以上の長期にわたり順調に動作し,バス機器の軌道上実証,画像取得・ダウンリンクなどの実験を行って大きな成果を収めた.この衛星は学生の手作りにより開発された衛星で,その第一の目的は宇宙工学教育であるが,民生品をベースに低コスト・短期に衛星を提供することによる新しい宇宙開発を試行することをその先の目的としている.本論文では,CubeSat-XIの概要と軌道上実証の成果を述べ,その開発経験や成果を踏まえ,宇宙開発の低コスト化・短期開発化を目指した小型・超小型衛星開発のあり方を論じる.
著者
島岡 政基 西村 健 古村 隆明 中村 素典 佐藤 周行 岡部 寿男 曽根原 登
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J95-B, no.7, pp.871-882, 2012-07-01

通信の安全を確立するサーバ認証を適切に行うには,パブリック認証局から発行されたサーバ証明書が必要である.しかしながら,過去にはパブリック認証局から発行を受けることの重要性が正しく認識されてこなかったことがあり,更には商用のサーバ証明書は審査手続きが煩雑な上に学術機関の実態に沿っていないなどの課題もあったため,学術機関におけるサーバ証明書の普及は遅れていた.そこで筆者らは,学術機関のために最適化したサーバ証明書発行スキームと,証明書自動発行支援システムからなる学術機関のためのサーバ証明書発行フレームワークを提案した.国立情報学研究所による実証実験と本運用を通じて,同スキームにより高い身元確認レベルを確保しつつ審査手続きの学術機関最適化を,また同システムにより認証事業者の証明書発行業務を自動化するとともに各学術機関が必要な学内システムを用意した場合には学術機関側の工数削減も可能であることを実証した.
著者
斉藤 春夫 三浦 周 小原 徳昭 岡本 英二 山本 伸一 森川 栄久 小園 晋一 若菜 弘充
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.731-740, 2001-04-01

通信放送技術衛星(COMETS)は, 平成10年2月21日に打ち上げられたが, H-IIロケット第2段エンジンの故障により静止トランスファー軌道への投入に失敗した.その後, アポジエンジンによる7回の軌道変更により, 遠地点高度17,711km, 近地点高度473kmの2日9周回の準回帰軌道にのせることに成功し, 1日当り最長90分間の通信実験が行えることになった.平成10年8月末から通信・放送実験が開始され, 平成11年1月に定常運用段階を終了し, 2月からは後期利用段階に移行した.しかし, 残念ながら平成11年8月6日に, 予定された運用期間のほぼ半分でCOMETSの運用は終了した.本論文では, 軌道変更直後に衛星のテレメトリのみを用いて実施された軌道上における移動体衛星通信用機器(MCE)の初期機能確認試験と, その後, 地球局から実際に通波して行われた軌道上機能評価実験の結果ついて述べる.周回化により懸念されていた放射線の影響による特性の劣化はごく一部に限られ, ほとんどのMCE機器が軌道上においてもほぼ良好に機能していることが判明した.
著者
吉敷 由起子 チン ギルバート シー 岡村 航 岩﨑 慧 古川 玲 杉山 健斗 呉 聖屹 白川 正之 川村 雅彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J105-B, no.11, pp.862-871, 2022-11-01

Society5.0の時代では,サイバー・フィジカル空間が相互に作用し,電波システムに関しても新たな設計・評価,検証を短時間で実現することが求められる.本論文ではサイバーフィジカルシステム上でエミュレーションを可能とする電波伝搬モデルの開発を目的として,レイトレーシングベースでの研究開発を行っている取り組みについて紹介する.広域環境として,ドローンによる橋梁のインフラ点検業務などを対象としたシナリオでの電波伝搬モデルの検討を,狭空間では,スマート工場を想定して,人や機械が動く環境を対象としたシナリオでの伝搬モデルの検討について述べる.また電波伝搬の解析には構造物の3Dモデル化が重要になってくるので,点群データからレイトレーシング解析用の3Dモデル化の研究内容についても述べる.
著者
川又 憲 石上 忍 藤原 修 スローカ ヤン
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J106-B, no.10, pp.639-645, 2023-10-01

ESD(Electrostatic Discharge: 静電気放電)によりインパルス性の過渡電磁ノイズが発生する.このような広帯域かつ過渡的な電磁ノイズは,機器の誤動作や故障の原因となり,またその対策も簡単ではないためEMC(Electromagnetic Compatibility: 電磁両立性)の観点から重要な問題の一つとされている.そこで,ESDによる電磁ノイズの放射メカニズムを議論するため微小電気ダイポールによる放射モデルを想定して検討を進めている.本論文では,この放射モデル適用の妥当性を実験で確認するため,一対の球電極で発生するESDによる過渡電界波形を10 GHzの帯域を有する光電界プローブを用いて測定し,電界強度ピーク値の距離特性について考察を行った.その結果,電界強度のピーク値は,球電極対の極近傍では放電点からの距離dの1/d3に従って減衰し,近傍では1/d2,更に遠方では1/dに従って減衰した.この結果は電気微小ダイポールによる電磁波放射の距離特性と一致しており,ESDによって発生する過渡電界の放射モデルとして,微小電気ダイポールモデルの妥当性を確認した.
著者
金尾 奨 五百旗頭 健吾 豊田 啓孝
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J106-B, no.7, pp.400-402, 2023-07-01

損失を有する共振器型フィルタは,回路基板の平行平板共振抑制時におけるオープンスタブ構造からの不要放射が懸念される.本論文では,放射要因ごとに分解したモデルを用いて共振抑制時の放射を評価した結果,当該構造からの放射増は無視できる程度と判明した.
著者
大石 裕司 大沼 晃浩 眞下 大輔 高瀬 誠由
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J106-B, no.5, pp.281-291, 2023-05-01

ローカル5Gは既設ネットワークから分離して敷設されうるが,ローカル5Gネットワークから既設ネットワーク内システムの利用のために相互接続の需要がある.一方でローカル5Gネットワークと既設ネットワークとの間には,(1)アドレス体系が独立でありネットワーク管理レイヤが異なるため,既設ネットワークからローカル5G端末を識別・管理できない,(2)セキュリティレベルの低いローカル5Gネットワークにより既設ネットワークのセキュリティリスクが増大する,という二つのギャップがあり相互接続が許可されない.本論文では解決技術として,(1)レイヤ間でアドレスを変換し既設ネットワークからローカル5G端末を識別・管理させる「レイヤ間アドレス変換」,(2)ローカル5Gネットワークから既設ネットワークへの通信範囲を限定する「既設ネットワーク内トンネリング」の二つの手法を提案した.提案手法をソフトウェアにより実装し,実際のローカル5Gネットワークと実際の社内ネットワークを用いて評価を行った.結果として,提案手法にて二つのギャップを解決し,ローカル5Gネットワークと既設ネットワーク間で相互接続できることを確認した.
著者
島崎 安徳 西森 健太郎
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J105-B, no.7, pp.504-505, 2022-07-01

0.92/2.4/5GHz帯における様々なセル形態の実伝搬測定データに基づき,複数の伝搬環境に分類した.対数近似曲線にて距離に対する伝搬損失係数を求め,各結果における伝搬損失を考察した.
著者
山本 康平 尾﨑 龍之介 日景 隆 山﨑 圭子 宮下 ちひろ 岸 玲子
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J105-B, no.8, pp.640-642, 2022-08-01

青少年の電波ばく露と健康影響に関する大規模な疫学研究が実施されている.本論文では,同疫学研究のばく露量推定に用いられる携帯型個人ばく露計について,被験者に近接配置された際に人体による反射及び遮蔽影響が受信特性に与える影響を定量的に評価した.
著者
早川 正士
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J89-B, no.7, pp.1036-1045, 2006-07-01

近年地震に伴って各種の電磁気現象が発生することが報告されている.すなわち,地圏から直接放射する電磁気現象や地震に伴う大気圏や電離圏のじょう乱などである.本論文では,地震の短期予知の観点から極めて注目されている二つの観測項目;(1) ULF電磁放射(地圏から直接放射される極低周波電磁放射);(2)電離層じょう乱(VLF/LF送信局電波の伝搬異常として検出)を取り上げ,その計測手法や最新の成果までをレビューする.
著者
大石 晴夫 矢守 恭子 張 成 田中 良明
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J105-B, no.1, pp.1-13, 2022-01-01

複数の通信方式を組み合わせて通信ネットワークを構築するコグニティブネットワークや異種混合ネットワークにおける利用者の協調による効用,コスト削減,インセンティブメカニズムが研究されている.一方,多様な通信方式のサービスが一般に普及している中で,社会環境の変化に対応した協調行動を取り入れ,これらを統合して利用者にサービス提供するフレームワークは提案されていない.本論文では,交通分野におけるサービス提供の概念であるMaaS (Mobility as a Service)に注目し,MaaSのコンセプトを取り込んだSHaaS (Sharing framework for Heterogeneous network as a Service)を提案する.SHaaSにおける事業者と利用者の間のリソース共有により,利用者の効用と事業者の収益の向上を目指す.SHaaSのアーキテクチャ,料金モデルを提案し,モデルに基づくシミュレーションにより有効性を評価した.従来のサービス提供形態と比較して,特にリソース不足の条件下における高い有効性を示した.
著者
山本 高至 白戸 裕史 内田 大誠 北 直樹
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J104-B, no.12, pp.963-973, 2021-12-01

無線通信の大容量化に伴い,周波数資源の潤沢なミリ波帯以上の周波数活用の検討が進められている.このような高周波数帯では送受信点間が人体によって遮蔽された程度であっても,従来の移動通信等で用いられてきたUHF帯や低SHF帯に比べて大きなレベル低下を生じるために,基地局-端末間の見通しの確保が重要になる.複数の人が動き回るような環境では,複数の基地局やアンテナによって,いずれかの基地局(アンテナ)と端末間に見通しを確保するためのサイトダイバーシチやスペースダイバーシチ等を目的とした分散アンテナシステムが有効である.アンテナ間の離隔は遮蔽状態の相関に依存するが,これまで遮蔽状態の相関については経験的な検討に留まっていた.本論文では,高周波数帯を用いる通信の人体遮蔽に関して,人体を一様なポアソン点過程と仮定した確率幾何解析により,遮蔽率,ハンドオーバによる回避率,遮蔽の発生有無に関する自己相関関数を導出する.加えて,多数の分散アンテナに対する等価見通し率を示すとともに,解析結果に基づくアンテナの設置法について幾つかの例を示す.
著者
柳瀬 裕輝 西 正博 新 浩一 吉田 彰顕
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J94-B, no.2, pp.176-184, 2011-02-01

現在筆者らは,UHF帯テレビ放送波に着目し,全国4箇所にてその伝搬損変動特性を昼夜連続観測している.本論文では,瀬戸内地域において海上伝搬したテレビ放送波の伝搬特性について述べ,その伝搬損を推定する新たな方法を提案する.瀬戸内地域では,直接波と海面反射波の2波の伝搬が支配的であり,大気屈折率と潮位の変化を考慮することで2波モデルにより任意の周波数の伝搬特性を推定できる可能性がある.大気屈折率の指標として等価地球半径係数Kが一般に用いられるが,従来Kを推定するにはラジオゾンデで上空の気象データを取得する必要があった.しかし,ラジオゾンデを有する気象観測点は限られており,特に瀬戸内地域においてはその観測点が存在せず,これまでKを推定することは困難であった.そこで本研究では,UHF帯電波の伝搬特性を推定する新たな試みとして,2波モデルに基づき伝搬損の実測値からKを推定する方法を考案した.1年間の実測値からKを推定した結果,Kの累積確率50 %値は冬季に1.4~1.5,夏季に1.6~1.7となり,その変動幅は夏季に増加する傾向を確認した.また推定したKから異なる周波数の伝搬損を推定し実測値と比較した結果,累積確率の1 %値において6 dB以内の精度で伝搬損を推定できた.
著者
永野 航太郎 長尾 勇平 尾知 博
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J104-B, no.10, pp.772-782, 2021-10-01

無線センサネットワーク等におけるノード間の高精度な時刻オフセット推定及び同期は,正確なデータ解析のための重要な課題である.一方,従来の高精度時刻同期手法は,無線センサネットワーク等の膨大なノードが参加するネットワークにおいて時刻同期のために大量の情報通信を要したり,同期を主導する時刻同期サーバが必要とされたりする問題がある.本論文では,時刻同期のための同期通信パケットを削減し,無線LANにおける高精度な時刻オフセット推定及び同期をソフトウェアにより実行する手法を提案する.具体的には,APから定期的に送出されるビーコンパケットに含まれるTSF (Timing Synchronization Function)タイムスタンプ値の増分に対して,各ノードが自身のローカルクロック増分値との近似回帰直線を算出し,マスタノードから回帰直線係数を送信する.また,提案手法について,計算機シミュレーションによりその精度と有効性を評価する.加えて市販無線LANアクセスポイント等を用いた実機実験により,従来手法よりも少ない情報量・通信でサブマイクロ秒オーダの時刻同期精度を実現できることを示す.