著者
石井 志昂 山田 剛史 中原 敬広 村井 潤一郎 杉澤 武俊 寺尾 敦
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S45033, (Released:2021-09-27)
参考文献数
1

本研究は,ベイズ統計学に基づくデータ分析を学習可能な,統計ソフトR を用いた心理統計の自習用Web 教材の試作,及び評価を行った.教材評価は,(1)学習者の教材学習状況,(2)R,及びベイズ統計学に対するイメージの変化,(3)学習後のインタビュー調査から行った.結果より,本研究で試作したWeb 教材の学習によりR を身近に感じるようになるとともに,コードを書きながら学習可能な点に対し肯定的な意見が得られた.一方,学習を行った参加者の約半数が教材の最後まで学習を終えることができず,教材の導入部分や章ごとの問題量について課題が示唆された.
著者
小川 修史 藤井 祐次 掛川 淳一 高野 美由紀 森広 浩一郎
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.36, no.Suppl., pp.217-220, 2012-12-20 (Released:2016-08-09)
参考文献数
2

筆者らはこれまでに行動要因の分析を目的としたケース会議支援システムを提案している.システムを経験の浅い教師に適用したところ,行動要因に関連した気づきが議論を通して発生する一方で,議論する事前に実施される個別作業の際に,行動要因を客観的に分析することが難しく,これらを支援することでより効率的に気づきが発生すると考えた.そこで,行動要因とストレスの対応関係に注目し,アノテーションをストレスの観点で分析させることで,個別の作業であっても行動要因の客観的な分析が可能となると考えた.この仮説に基づき実装したストレス可視化機能を用いて予備調査を実施した結果,仮説が有効である可能性が示唆された.
著者
荒木 淳子 高橋 薫 佐藤 朝美
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.45054, (Released:2021-09-09)
参考文献数
16

本研究は山陽地方にある普通科の県立A高校における地域と連携した課題探究型の学習プログラムについて,「複数の場面における学習を架橋する」ラーニング・ブリッジング(LB)(河井 2012)に着目し,地域課題探究型の学習プログラムでの学びと高校での授業や学習にはどのようなLBが見られるのか,LBはどのような要因によって促進されるのか,分析を行った.A校の1年生,2年生228名に行った質問紙調査と8名へのインタビュー調査の結果,生徒達にはプロジェクトにおける活動と学習や他の授業,これまでの学習とのLBが見られること,教員・地域の大人との関わりや積極的な取り組み姿勢がLBを促すことが示された.
著者
野中 陽一 堀田 龍也 ラブレス アブリル
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.315-322, 2008
被引用文献数
2

学力向上にICT活用が寄与することが検証され,関連する研究成果が蓄積されている英国において,国レベルで進められたICT環境整備に関わる施策について分析した.その結果,英国におけるICT活用の普及の背景には,自己評価フレームワークという学校の情報化のあるべき姿を示す指標が設定されていること,それらに基づき,ICT機器等の整備と併せ,国の組織が連携して教師の負担を軽減する条件整備を進めてきたこと,学校長を中心としたシニアリーダーシップチームによって学校を単位として情報化が推進されてきたことが明らかとなった.また,これらを推進するBectaのような組織の重要性も示唆された.
著者
藤木 卓 森田 裕介 全 柄徳 李 相秀 渡辺 健次 下川 俊彦 柳生 大輔 上薗 恒太郎 中村 千秋
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.395-404, 2006
参考文献数
16
被引用文献数
5

日韓の中学校間において生徒同士の討論を含む授業を行うために,インターネット上で高精細動画の伝送が可能なツールを用いて,2箇所の授業会場と司会・通訳会場の3地点を結ぶ遠隔授業を実践した.この授業では,交流授業の後「海を越えてエネルギの未来を考えよう」をテーマに,電気エネルギの利用や夢の発電に関する討論を行った.そして,授業及びトラフィックと伝送画質,対話支援環境,遅延の影響を検討し,以下の結論を得た.日韓間の中学校において,高精細動画と翻訳チャット,Web-GIS教材を用いた遠隔授業が実践できた.主観評価から,学習者,教師,参観学生にとって有用性の高い授業であったことが分かった.トラフィック評価から,福岡-長崎間では安定した通信ができたが,福岡-光州間では十分な帯域が確保できなかった.伝送画質評価から,福岡-長崎間の対面型の画質はPQR2.4〜3.4,福岡-光州間はPQR9.1〜13.5を示した.翻訳チャットやWeb-GIS教材の利用は,授業中の対話支援に有用であった.遅延の影響は,通訳や発言調整により目立たなかった.
著者
堀尾 姫那
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.44131, (Released:2021-07-06)
参考文献数
15

小学校学習指導要領(平成29年告示)の「総合的な学習の時間」に対応するために,同指導要領が指示している「獲得すべき資質・能力」を考慮し,児童らが,児童らの周囲の人物や事物とのネットワークの変化とともに成長していくと仮定して,以下の条件で単元を設計した:(a)学級全体で1つのプロジェクトに取り組むこと,(b)児童らが自ら課題を設定するプロセスを必ず入れること,(c)学校を取り巻く地域にある独自の事物を活動のテーマとすること.受け持った教室での1年間の実践で,この単元設計の効果を検証した.子どもたちの変容過程を評価するために,主に児童らが作成したポートフォリオデータを用い,アクターネットワーク分析,テキストマイニング分析,数量化分析を行った.その結果,児童の成長と,学級全体や地域社会とのネットワークの拡大・深化が共進化していることがわかり,上記の仮定の妥当性と,条件(a),(b),(c)から単元を設計することの重要性が示された.
著者
安里 基子 佐藤 正寿 高橋 純 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S45064, (Released:2021-09-07)
参考文献数
8

本研究では,算数科におけるグラフの学習と国語科・社会科・理科(以下,他教科)におけるグラフを活用した学習の関連を明らかにするために,小学校の教科書で用いられているグラフの表現形式と想定される学習時期による分類を行った.その結果,教科の内容としてグラフの読み取り方等を学習する算数科よりも,グラフを活用して教科の内容を学習する他教科の方が特定の表現形式のグラフの学習時期が早くに想定されている場合や,算数科と他教科における,特定の現形式のグラフの学習時期が離れている場合がみられた.また,社会科や理科の教科書においては,算数科における学習の機会が少ない,もしくはない表現形式のグラフがみられた.
著者
安田 晶子 小方 博之
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.419-429, 2021

<p>大学等の高等教育機関におけるe-learning の機会は急速に増加している.それに伴い,単位認定などを目的としたハイステイクスな試験もオンラインで実施する必要が生じてきている.しかしながら実際には,オンラインでのハイステイクスな試験は十分に普及していない.これは,現状では,オンライン試験において替え玉受験などの不正行為を検出し防止する技術が確立されていないためである.そこで本研究では,オンライン試験受験時に使用される可能性の高いタブレット型端末に着目し,端末のタッチスクリーンを操作する際に得られる手形状の特徴を用いて,替え玉受験を検出・防止する手法を提案した.本研究で提案した手法では,タッチスクリーン操作時の受験者の手形状画像を記録し,機械学習によって受験者本人であるか替え玉かを判別した.実験を行い提案手法の有効性を検証した結果,提案手法によって替え玉を検出できる可能性が示された.</p>
著者
小島 一生 村松 浩幸 室岡 聡也 小松 裕貴
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.35, no.Suppl., pp.169-172, 2011-12-20 (Released:2016-08-08)
参考文献数
7
被引用文献数
3

中学生にネットトラブルに関して保護者への相談を意識させるために,ゴールベースシナリオ(GBS)理論に基づいたシナリオゲーム教材を開発することを目的とした.教材は,主人公を女子中学生とし,母親と関わりながら「不当な請求」,「個人情報」,「著作権」,「掲示板トラブル」の各内容に関する情報を収集し,その対応法を選択する構成とした.開発は,Flashによるゲーム制作ツールでおこなった.1年生64名を対象にした授業実践での評価から,1)中学校の授業で使用可能なこと,2)シナリオゲーム型や親子の設定により,本実践の範囲内において保護者への相談の意識が一定程度向上したこと,が確認できた.
著者
齋藤 玲 和田 裕一
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.40, no.Suppl., pp.185-188, 2017-01-15 (Released:2017-03-06)
参考文献数
6

インターネット技術の発展に伴う情報機器やその関連コンテンツの普及が人間の認知や行動を変えているという見方がある.しかしながら,その見方を議論するまでの知見の蓄積は不十分である.そこで本稿では,この見方を,個人のインターネットを含めた各種メディアの利用傾向とテキストの読みとの関係から検討した.具体的には,メディア利用傾向がテキストの課題成績や読み時間に及ぼす影響について,相関分析と重回帰分析から検討した.その結果,日常的なSNSの接触頻度が高いほど,テキストの課題成績が低くなることが見出された.この結果は,インターネットの利用傾向の違いがテキストの読みのあり方に影響を及ぼしている可能性を示唆した.
著者
清水 康敬 山本 朋弘 堀田 龍也 小泉 力一 横山 隆光
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.293-303, 2008
参考文献数
4
被引用文献数
13

授業でのICT活用による学力向上を実証するために,全国の教員に依頼して,ICTを活用した授業と活用しない授業を実施した結果を報告してもらい,それらを総合的に分析評価した.まず,授業を実施した教員が決めた評価の観点に基づいて分析し,ICTを活用した授業を実施した教員は,ICT活用によって児童生徒の学力が向上すると実感していることを示した.また,授業後に,児童生徒の意識調査に関するアンケートを実施してもらい,因子分析を用いて因子を抽出し,因子ごとにICT活用の有無による差を調べたところ,授業にICTを活用した場合の方がいずれの因子においても有意に高い効果が得られることを示した.さらに,授業後に実施した児童生徒に対する同一の客観テストの結果を総合的に分析評価し,ICTを活用した授業の方が,活用しない授業よりテストの成績が有意に高いことを示した.
著者
朱 睿 雪田 恵子 西森 年寿
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.44, no.Suppl., pp.33-36, 2021-02-20 (Released:2021-03-08)
参考文献数
7

本研究では,背後に配置したロボットによって社会的促進・抑制が生じるかを検討する.学生47名を単独で課題を行う群(単独群),他者として人間がいる群(人間群)とロボットがいる群(ロボット群)に振り分け,単純課題と複雑課題に取り組ませた.この結果,単純課題では社会的促進が認められた.複雑課題では,ロボット群の課題遂行量は単独群と人間群より多くなった.
著者
後藤田 中 松浦 健二 鍋島 豊晶 金西 計英 矢野 米雄
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.269-277, 2010
参考文献数
22
被引用文献数
1

近年の健康志向を反映し,日常的な運動の役割が増している.本研究では,その支援の一端として,ナワトビプロジェクトと称し,ナワトビ学習を対象としたSNS(Social Networking Service)を設計,構築した.具体的には,SNSに映像日記機能を組み込んだ上で,(1)映像から得られる特性に応じた記事推薦エージェントのメッセージ,(2)映像記事間のトラックバックによるスキルの関係グラフの2つの機能を実装した.本研究は,これらのスキル開発支援に対し,個別の映像記事閲覧の機会増加,異なるスキルの関連性を全体像として俯瞰する意識の向上につながることを示す.提案に対して実験を行った結果,アクティブユーザにおける閲覧割合の向上,また異なるスキルの関連性に対する意識に一定の効果が確認された.
著者
網岡 敬之 森 裕生 江木 啓訓 尾澤 重知
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.245-253, 2018-01-31 (Released:2018-02-05)
参考文献数
9
被引用文献数
1

学生の多角的な評価および支援方法を実現する一環として,受講生が主として授業終了時に毎回記入する手書きワークシートを定量化し,学習成果との関係を検討した.定量化指標としては,ワークシートをデジタル化した際のファイルサイズを用いた.(1)各学生の学期を通した平均ファイルサイズによるグループ分けと(2)ファイルサイズの増減の推移によるクラスタ分けを行った後,授業で身についた力や授業への有用性の自己評価,学期末レポートの得点といった学習成果との関係を分析した.その結果,ファイルサイズが相対的に大きいグループは,平均的なグループや小さいグループに比べて学習成果が高い傾向にあった.一方,ファイルサイズが小さいグループと平均的なグループの間には,授業への有用性や獲得した力の評価に大きな差がみられなかった.ファイルサイズというシンプルな指標を用いた場合でも,学習成果を評価することが可能であり,多角的な評価や支援に応用することが可能であると考えられる.
著者
安田 晶子 小方 博之
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.419-429, 2021-03-20 (Released:2021-03-25)
参考文献数
30

大学等の高等教育機関におけるe-learning の機会は急速に増加している.それに伴い,単位認定などを目的としたハイステイクスな試験もオンラインで実施する必要が生じてきている.しかしながら実際には,オンラインでのハイステイクスな試験は十分に普及していない.これは,現状では,オンライン試験において替え玉受験などの不正行為を検出し防止する技術が確立されていないためである.そこで本研究では,オンライン試験受験時に使用される可能性の高いタブレット型端末に着目し,端末のタッチスクリーンを操作する際に得られる手形状の特徴を用いて,替え玉受験を検出・防止する手法を提案した.本研究で提案した手法では,タッチスクリーン操作時の受験者の手形状画像を記録し,機械学習によって受験者本人であるか替え玉かを判別した.実験を行い提案手法の有効性を検証した結果,提案手法によって替え玉を検出できる可能性が示された.
著者
保田 幸子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
2021

<p>研究成果を報告する科学論文では,「IやWeの使用は避ける」,「曖昧で冗長な表現は避ける」といったディスコースが推奨され,現在もアカデミック・ライティング授業や論文作成ガイドの中で指導されることがある.しかし,このアカデミック・ディスコースはいつどのように誕生したものなのか.なぜ特定の語られ方に権威が与えられるようになったのか.この権威は21世紀現在も変わらず固定的なものなのか.これらの問いについては国内では十分な検証が行われていない.本研究は,こうした通説を再考すべく,科学論文において客観性が求められるようになった歴史的背景とその後のパラダイムシフトを明らかにするとともに,21世紀型の科学論文において書き手がどのように読み手を導いているか,その主観性の表明技法を明らかにすることを目指す.得られた成果を元に,科学論文執筆に迫られた学習者層に対する21世紀型の高年次英語教育支援のあり方について提案する.</p>
著者
江木 啓訓 横山 裕紀 今村 瑠一郎 則常 一輝
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.135-145, 2021-06-10 (Released:2021-06-18)
参考文献数
27

本研究では,視野映像を用いてTA(Teaching Assistant)が自らの学習支援行動を振り返るための行動記録システムを提案する.学習者に対して臨機応変に支援を行うために,TA には自ら考えて行動する主体性が求められる.視野映像を記録する方法で自らの行動を振り返ることにより,主体性を伸ばすための気づきを喚起することが期待できる.しかし,TA が従事する全ての時間の視野映像を確認することは負担が大きい.この問題に対して,TA が身につけた加速度センサのデータから行動を推定し,振り返り時の手掛かりとして提示する行動記録システムを開発した.複数のTA が本システムを用いた振り返りを行った実験の結果から,加速度センサでTAの学習支援行動を識別することが可能であった.また,手掛かりの提示によって,いずれのTAも振り返りのための視野映像の確認時間が短くなった.本システムを用いることで,TA が学習支援行動を効率的に振り返ることの可能性が示唆された.
著者
木内 泰 鈴木 佳苗 大貫 和則
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.32, no.Suppl., pp.169-172, 2008-12-20 (Released:2016-08-05)
参考文献数
9
被引用文献数
1

本研究では,高校3年生男女199名を分析対象とし,高校生のケータイ通話およびメールの利用が青少年の対人関係の親密性に及ぼし得る影響とその影響過程における媒介要因としての自己開示の役割を検討した.その結果,ケータイ通話については,ケータイ通話が多いほど,ネットでの自己開示,対面上の自己開示が多くなり,親密性が高まるというモデルの適合がもっともよいことが示唆された.さらに,ケータイメールの使用については,ケータイメールの使用が多いほどネットでの自己開示,対面上の自己開示が多くなり,親密性が高まる,あるいは,ネットでの自己開示から直接親密性が高まること,さらに,親密性が高いほどケータイメールをよく使用するようになる,という循環モデルの適合がもっともよいことが示唆された.
著者
山田 政寛 北村 智
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.353-362, 2010-01-20 (Released:2016-08-06)
参考文献数
38
被引用文献数
3

教育学習研究において社会的存在感が着目されてきている.社会的存在感は学習意欲の向上や学習満足度の向上に対して有効であるとされているが,これらの知見は1つの社会的存在感の概念で説明されたものではない.社会的存在感の考え方が複数存在し,その違いによって研究知見も異なる.システムデザインや協調学習の評価のためには,「社会的存在感」に関する考え方や知見が整理されていることが望ましい.本稿では「社会的存在感」概念に関する考え方をSHORTらの考え方,GUNAWARDENA,TUらの考え方,GARRISONらの考え方に大別し,それぞれの考え方ごとにどのような研究が行なわれているのかを整理する.またその3つの考え方にもとづく測定法を整理することで「社会的存在感」概念が何の評価に関わるのかを議論する.
著者
森 玲奈
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.445-455, 2008-03-10 (Released:2016-08-04)
参考文献数
47
被引用文献数
3

研究の目的は,ワークショップのデザイン過程におけるベテラン実践家の特徴的思考を明らかにすることである.本研究では,ベテラン実践家とその集団に属する初心者2組を選定し,発話思考法を用いた実験を行った.分析は,まずベテラン-初心者間における発話の流れを比較し,その上で2人のベテランに共通する特徴を検討した.その結果,ベテランにおけるデザイン時の発話には,依頼内容の確認・解釈の後,コンセプトの立案を行うという共通の流れがあることが明らかになった.また,ベテランの特徴として,(1)依頼内容に対する幅広い確認を行うこと,(2)デザインの仮枠となるデザインモデルを使用すること,(3)保留や選択の余地を残した「やわらかな決定」を行うこと,(4)スタッフの育成に対する意識とデザイン力を持つこと,(5)過去の実践体験の想起や経験から構築された慣習を用いてデザインを行うこと,が明らかになった.さらに,ベテランには経験に裏づけられた「個人レベルの実践論」があることが示唆された.