著者
中村 大輝 堀田 晃毅 西内 舞 雲財 寛
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.45098, (Released:2022-01-21)
参考文献数
47

本研究は,社会認知的キャリア理論(Social Cognitive Career Theory, SCCT)に基づき,我が国におけるSTEMキャリア選択に影響する要因とその性差を検討した.OECDが実施したPISA2015調査の日本データを用いて,SCCTのキャリア選択モデルを追試した結果,当該モデルは日本の高校生のデータにも十分に適合することが明らかになった.多母集団同時分析の結果より,STEM職業志望への有意な影響が認められた要因としては「自己効力感」「結果期待」「興味」「社会経済文化的背景」があった.このうち,「結果期待」「興味」「社会経済文化的背景」の影響には有意な性差が見られたが,「自己効力感」の影響には性差が見られなかった.本研究の結果に基づけば,STEMキャリア選択者を増加させるためには,性別ごとに異なる介入方法が有効である可能性がある.
著者
石山 裕菜 及川 昌典 及川 晴 鈴木 直人
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.409-420, 2020-03-20 (Released:2020-03-30)
参考文献数
37

本研究では,表現筆記はクラスメイトとの葛藤の解決を促すことで,人間関係やストレスを改善させ,学力の向上を導くこと,また,文章がそれぞれの項目(他者視点,因果,内省,感情,まとまり)において構造化している場合,効果が促進される可能性があることを検討した.79名の小学生にクラスメイトとの葛藤体験について1日おきに15分間,合計3回書き綴らせた.ストレス反応が減少し,一部のテストパフォーマンスが向上した.また,感情を多く筆記した児童はそうではない児童と比較して算数の知識理解の項目の得点が高かった.よって,クラスメイトとの葛藤表現筆記は,小学生のストレス反応の減少だけでなく,テストパフォーマンスの向上を促す可能性が示唆されたが,より効果的な筆記に関してさらなる詳細な検討が必要である.
著者
松田 岳士 近藤 伸彦 岡田 有司 重田 勝介 渡辺 雄貴 加藤 浩
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.47017, (Released:2023-09-18)
参考文献数
20

本研究では,学生が自分自身のすべての学習状況を記録し可視化するシステムの試用版の実証評価を通して,自己主導学習レディネスがシステムの継続的な使用に与える影響を考察した.4大学の1年生から3年生が参加した実証評価における使用継続状況を決定木分析した結果から,自己主導学習レディネスの構成因子のうち,自己責任感が強く,自己効力感も高い学生の中に,外部からの介入がなくても長期間継続して使用する者の割合が高いことが示された.また,様々な状況で効果的な学習ができると考えている程度が高い学生ほどシステムを学習プランニングのツールとみなしておらず,学習記録のモニタリングシステムとして使用する傾向にあった.
著者
海﨑 孝斗 澤山 郁夫 永田 智子 藤原 雅弘
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S47078, (Released:2023-07-24)
参考文献数
8

本研究では,大学生における手書きとタイピングによる日本語記述速度を比較した.またこの際,大学生は,手書きとタイピングではどちらがより速く記述することができると考えているのかという事前予想の正確性にも着目した.その結果,過半数(77.44%)の参加者がタイピング条件のほうが速い(ある定型文について,1分間でより多くの文字数を記述することができる)と予想したにも関わらず,実際には,タイピング予想群と手書き予想群のいずれにおいても,手書き条件の方が,1分間に記述した有効文字数がより多かった.
著者
西田 寛子 久我 直人
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.167-182, 2018-10-30 (Released:2018-10-30)
参考文献数
18
被引用文献数
5

本研究の目的は,生徒の自律的な学びを生み出す主要な要素を組み込んだ英語科学習指導プログラムを開発し,その効果を検証することを通して,自律的な学習者の効果的な育成の在り方について検討することである. この目的を達成するための研究課題として,①生徒の自律的な学びを生み出す主要な要素を組み込んだ英語科学習指導プログラムを開発すること,②開発したプログラムの効果性を検証すること,とした. 研究を進めるにあたっては,自己調整学習の理論に基づいて,自律的な学習者育成のための主要な要素である「メタ認知」「動機づけ」「学習方略の獲得」を促進する英語科学習指導プログラムを開発し,中学1年生に導入するとともに,その効果の検証を行った. その結果,本プログラムは,上記3つの要素が効果的に作用し,自律した学びを生み出す一定の効果が検証された.
著者
脇本 健弘 佐々木 博史 平山 涼也 望月 俊男 Eagan Brendan 結城 菜摘 舟生 日出男 久保田 善彦 鈴木 栄幸 加藤 浩
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.309-324, 2023-06-20 (Released:2023-07-14)
参考文献数
38

本研究は,タンジブル人形劇によるマイクロティーチング支援システム「えでゅーすぼーど」の教師の専門性向上への有効性を検討したものである.本研究では,教員養成課程において実施された「えでゅーすぼーど」を用いたマイクロティーチングにおける学生の談話を分析した.学生は3回のマイクロティーチングに取り組み,2回目に「えでゅーすぼーど」を用いた人形劇によるマイクロティーチングを体験した.学生の談話をEpistemic Network Analysis により分析し,特徴的な変化を抽出し,さらに質的な分析を行った.その結果,「えでゅーすぼーど」を用いた人形劇によるマイクロティーチングでは,教師役の学生が児童役の学生の学習を深めるとともに,授業を円滑に進めるために即興的な働きかけを行っていたことが示された.
著者
福市 彩乃 山本 佑実 菅村 玄二
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.42153, (Released:2019-02-01)
参考文献数
50
被引用文献数
2

正座が,通常の椅座位やあぐらと比べて,授業場面でどのような影響を与えるか検討した.研究1では,カウンターバランスしたうえで36名が同じ椅子に3種類の姿勢で座り,それぞれ5分ずつ論文を読んだり講義を聞いたりした.その結果,あぐら条件や椅坐位条件よりも正座条件で参加者の眠気が低かった(ps < .02).また,正座条件では肉体的疲労が高かった(p = .013)が,精神的疲労は他条件との差が見られなかった.研究2では,実際の大学の授業でそれぞれ同一の椅子に座った83名の参加者を正座群と椅坐位群にランダムに割り付けた.その結果,正座群で,正座中及び正座後10分後の両時点で正座前よりも眠気が低く(ps < .05),足の痛みが高かった(ps < .002).一方で,姿勢間には肉体的疲労度,精神的疲労度,ストループ課題及び文字流暢性課題の有意差はなかった.正座は足の痛みをもたらすものの,痛みでは説明されない眠気緩和効果をもたらした.
著者
清水 優菜 山本 光
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.43, no.Suppl., pp.57-60, 2020-02-20 (Released:2020-03-23)
参考文献数
9
被引用文献数
1

本研究は,教員養成課程の大学生を対象に,小学校での教育実習前後における教授・学習観の変容,および教育実習のエンゲージメントが教授・学習観に与える影響を検討した.はじめに,実習前後での教授・学習観の変化について,実習後に構成主義的教授・学習観は高まるが,直接伝達主義的教授・学習観は低くなることが明らかとなった.次に,教育実習のエンゲージメントと教授・学習観の関連について,実習前の教授・学習観が実習後の教授・学習観に,実習エンゲージメントが実習後の構成主義的教授・学習観に正の影響を与えることが示された.また,実習前の構成主義的教授・学習観は,実習エンゲージメントに正の影響を与えることが示された.
著者
荒木 淳子 中原 淳 坂本 篤郎
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.319-329, 2011-03-30 (Released:2016-08-07)
参考文献数
43

日本では,企業で働く個人にも,自ら学びながら主体的にキャリア構築をすることが求められつつある.しかし,キャリア構築に向けた社会人の学習に関する研究は少ない(濱中2007).そこで本研究では,社会人の学習にとって重要な場である職場(松尾2006)に着目し,個人の仕事に対する態度(挑戦性・柔軟性),職場環境がキャリア確立(荒木2007,2009)に及ぼす影響について,階層線形モデル(hierarchical linear model)による分析をおこなった.17社,1214名の質問紙調査の回答を分析した結果,キャリア確立には個人の挑戦性,柔軟性が重要であること,職場における仕事内容の明示化は個人の挑戦性がキャリア確立に与える効果に正の影響を,知識やノウハウを教え合うといった支援的環境は負の影響を与えることが示された.個人の挑戦性をキャリア確立につなげるためには,職場において,仕事の目的や内容を明示化することが求められる.また,挑戦性が低い人には職場の支援的環境を整えることも必要であると言える.
著者
皆川 寛 高橋 純 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, no.Suppl., pp.141-144, 2009-12-20 (Released:2016-08-06)
参考文献数
5
被引用文献数
9

「授業中にICTを活用して指導する能力」を向上させるために,模擬授業・研究授業・ワークショップ型事後検討会の3つの活動を組み合わせた校内研修プログラムを開発した.実際に研修を実施し評価を行った.その結果,校内研修プログラムの活動及び構成は妥当であるという評価が得られ,「授業中にICTを活用して指導する能力」を向上させる上で有効であることが確かめられた.
著者
古荘 智子
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.45, no.Suppl., pp.113-116, 2021-12-20 (Released:2022-02-02)
参考文献数
10

本研究では,認知言語学(Cognitive Linguistics)的知見に基づく中核的意味とその意味拡張を用いた多義語学習法(以下,CL学習法)が,記憶保持および意味推測に有効であると報告されたオランダ人英語学習者を対象に実施された先行研究を応用し,母語や英語力あるいは学習環境が異なる日本の英語学習者にも有効であるかどうかを検証した.さらに,本研究では,日本の学習者が広く用いている一語一義的な暗記学習法とCL学習法を比較し,学習効果に差が示されるかを検証した.結果から,記憶保持および意味推測には効果が示されたが,学習法の違いに主効果は示されなかった.しかし,事後アンケート結果から,CL学習法が,浅い処理の暗記学習から有意味学習へ,学習者を導く役割を果たす可能性が示唆され, 多義語学習への有効性が明らかになった.
著者
高橋 薫 鈴木 道代 佐々木 さくら
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.46, no.Suppl., pp.169-172, 2023-02-13 (Released:2023-03-28)
参考文献数
7

本実践では創価大学の「学術文章作法Ⅰ」を履修する留学生を対象に,文章診断ソフト「文採」を活用して文章の言語形式へのフィードバックを試み,意見文を自己推敲させた.本研究の目的はフィードバックを手がかりに,学習者が適切に日本語の誤用を自己推敲できるか否かを確認することである.フィードバック前後の意見文を比較したところ,「副詞率」「話し言葉」「助詞の誤り」において,問題箇所の出現頻度が有意に減少した.次に,効果量の大きかった「話し言葉」「助詞の誤り」について修正の適切さを確認したところ,「話し言葉」の約8割,「助詞の誤り」の約7割は適切に修正できていた.しかし,フィードバックの適切性を見ると,「話し言葉」の約9割が適切であったのに対し,「助詞の誤り」へのフィードバックは4割程度に過ぎず,「助詞の誤り」については教師の介入が必要であることがわかった.
著者
原 健太郎 渡辺 雄貴 清水 克彦
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.239-252, 2019-12-31 (Released:2020-02-14)
参考文献数
22
被引用文献数
1

夜間定時制高校は,算数・数学の基礎学力に課題を抱える生徒が多く在籍している.本研究では,夜間定時制高校でのアクティブ・ラーニング型の授業設計の検討を見据え,数学科での反転授業の有効性について検証することを目的とした.そのためにADDIE モデルに従って開発した授業に対し,ID の目指す価値としての効果・効率・魅力の観点から検証し,以下の結果を得た.授業前に動画を視聴しない状況,動画を視聴していてもそれを前提とした授業展開は厳しい状況が見られた.学習形態の変容により学習に困難を抱える生徒は取り組みやすくなり,教え合いの対話的活動での動画活用や,復習として主体的な動画利用の状況が見られた.定期考査等の得点が低かった生徒でも得点が増加し,効果的な習得が確認された.学習場面での必要時間が短縮され,効率的な学習が行われた.反転授業によって,基礎学力に課題を抱える生徒において大きな効果が得られる可能性が示唆された.
著者
福山 佑樹 森田 裕介
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.365-374, 2014-02-20 (Released:2016-08-10)
被引用文献数
1

社会的ジレンマにおいて協力行動を取ろうとする「道徳意識」を獲得するためのカードゲーム教材である「The irreplaceable Gift」を開発した.ゲームは,参加者にこれまでのゲームでは体験できなかった「社会的ジレンマによる悪影響の時間的遅れ」を体験させ,協力行動を取ろうとする道徳意識を獲得することができるようにデザインされた.「The irreplaceable Gift」を用いた実験群と,「時間的遅れ」の要素を除いたゲームを用いた統制群との比較実験の結果,本ゲームの参加者は「道徳意識」を獲得しており,その獲得はゲーム終了時のリフレクションを通して「未来への世代」への影響を参加者が判断した結果によることが示唆された.
著者
福富 隆志 油川 さゆり
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.1-11, 2023-01-20 (Released:2023-02-01)
参考文献数
23

本研究では,フィードバック(FB)の提供と改善支援がスピーチのパフォーマンスに及ぼす効果を,制御焦点の適性と評価観との交互作用の観点から検討した.大学生を,FB に基づいて問題点と改善策を考えさせる条件(FB・改善支援条件),FB の提供のみの条件(FB 条件),問題点と改善策を考えさせるのみの条件(改善支援条件)に20名ずつ振り分けて,スピーチのパフォーマンスに及ぼす効果を比較した.その結果,言語的パフォーマンスについて,改善的評価観(評価とは学習改善に活用するためのものであるという認識)が低い参加者はFB・改善支援条件で最も高く,促進焦点の適性と改善的評価観が高い参加者はFB 条件で最も高かった.改善的評価観が低い人は,FB の活用を促す支援によりFB に注意を向けて改善に活かす一方で,促進焦点の適性と改善的評価観が高い人は,FB の提供のみで改善を行う傾向にあることが示唆された.
著者
香西 佳美 田口 真奈
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.449-460, 2018-03-01 (Released:2018-03-16)
参考文献数
28
被引用文献数
2

本研究は,大学教員の授業力量のうち重要な要素のひとつであるTPACK に焦点をあて,MOOCでの授業実践の経験を通じて大学教員がどのようにTPACK を形成しているのかを明らかにすることを目的とする.具体的には,MOOC での授業実践を経験した大学教員に対するインタビューにより,大学教員の授業力量がどのように変化したのかをTPACK フレームワークを用いて検討した.その結果,単一要素の知識ではなく複合的な知識を形成していることが明らかになった.これは,教員と専門家スタッフの双方が主体的な実践者として関与することで,互いに学び合う関係が構築されていたというMOOC 実践の特徴によるものであることが示唆された.さらに,MOOC での実践を普段の授業と関連づけることでTPACK 形成が促進され,普段の授業との違いが大きいほどより広範なTPACK が形成される可能性が示唆された.
著者
小山 理子 溝上 慎一
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.375-383, 2018-03-01 (Released:2018-03-16)
参考文献数
22
被引用文献数
8

本研究の目的は,大学生の一般的な「講義への取り組み方」を測定する尺度を開発し,信頼性と妥当性の検討を行い,「講義への取り組み方」が「アクティブラーニング外化」を媒介し,学習成果に与える影響について検討することであった.大学生1,854名を対象とした質問紙調査を行い,分析を行った結果,講義への取り組み方は,アクティブラーニングへの取り組み方を媒介し,学習成果のうち「資質・能力」と「深い学習」にポジティブな影響を与えることが明らかになった.本研究の結果は,講義への取り組み方が学習成果に及ぼす影響を改めて確認するものであり,資質・能力の獲得や学習の深化のためには,講義の質を見直すことが必要であることが示唆された.
著者
大久保 紀一朗 佐藤 和紀 山本 朋弘 板垣 翔大 中川 哲 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.157-169, 2022-02-20 (Released:2022-03-15)
参考文献数
25

本研究では,小学校社会科の農業の学習においてドローンを用いたプログラミング教育を実践し,テクノロジーを米作りへ活用する必要性の理解に関する効果について検証した.授業の事前事後において,米作りへの参画意識に関する調査への回答と,米作りに関連すると考えられる仕事の記述をさせた.その結果,ドローンを用いたプログラミング教育が,ドローンを米作りに活用することを想起させることに有効であり,米作りへの参画意識を育むことが示唆された.また,授業の事後において米作りに対するイメージを自由記述で回答させ,テキストマイニングによる分析を行った.その結果,ドローンを用いたプログラミング教育を経験することにより,ドローンを米作りに活用することの必要性を理解するとともに,人が担う役割について再考するなど,これからの米作りに必要なことについての思考を促すことが示唆された.
著者
姫野 完治
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.95-104, 2020-07-10 (Released:2020-07-10)
参考文献数
26
被引用文献数
2

本研究では,授業実施中の授業者の視線配布と思考様式を解明することを目的として,ウェアラブルカメラを用いて授業者の視線映像を録画・記録し,その映像を事後に視聴しながらインタビューを行う調査を,熟練教師と教育実習生を対象として行った.その結果,教育実習生は子ども全員や発表者等に漠然と視線を向ける回数が多く,教室に生起した出来事を受動的に知覚する傾向があること,一方熟練教師は,特定の意図の下で選定した子ども集団に視線を向け,能動的に知覚する割合が高いことがわかった.また,そのように視線を配布しながら,教育実習生は授業の進み具合等の進度について思考しているのに対し,熟練教師は学力下位層と上位層の子どもの理解や考えの深まり,注目点を意識化したり整理したりすることについて思考していること等が明らかになった.
著者
田中 孝治 水島 和憲 仲林 清 池田 満
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.1-12, 2017-05-20 (Released:2017-05-26)
参考文献数
31
被引用文献数
7

多様化する仕事に適応できるように,企業の人材育成には,日常的に自ら育つ環境づくりが重要である.本研究では,分析過程が残る特徴と分析過程でストーリーラインが記述される特徴を持つ質的データ分析手法SCAT を用いることで,新入社員の学び方の学びとその指導にあたった指導員の支援方法の表出化を試みた.本研究では,新入社員研修で用いる週報を新入社員と指導員とが対話する学習環境として捉え,週報に5週間に渡って記述された新入社員の振り返りとその振り返りに対する指導員のコメントを分析対象とした.分析結果から,指導員が,経験の積み重ねによる知識構築のプロセスである経験学習サイクルに沿って,実習員の学び方の学びを支援することで,実習員の学び方の学びが深化していることが読み取れた.本研究では,週報の分析から得られた結果を基に,学び方の学びの経験学習サイクルを転回する実習員と指導員の相互作用モデルを作成した.