著者
津村 文彦
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第50回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.H12, 2016 (Released:2016-04-23)

タイ王国では現在も若者を中心にタトゥーが流行し、大きくファッション・タトゥーと呪術タトゥーに二分できる。呪術タトゥーは、通常黒色インクを用いて、文様や動物、神々、経文を身体に刻みこむ。しかしときにインクを用いない「見えないタトゥー」が実践される。本報告では、東北タイのタトゥー事例を通して、「見えるタトゥー」との比較のもと、「見えないタトゥー」を取り巻く物質的、宗教的、および社会的状況を検討する。
著者
大村 敬一 木村 大治 磯部 洋明 佐藤 知久
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第47回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.140, 2013 (Released:2013-05-27)

人類の宇宙への飛躍が目前に迫っているかもしれない今日の状況下、人類学に何が求められ、人類学に何ができるのだろうか。本分科会の目的は、宇宙空間への人類の進出が同時代的な課題となりつつある今日の世界にあって、「地球」という限定された空間を超えて、「宇宙」 という新たなフロンティアから人類を見つめ直す宇宙人類学の可能性を示し、問題提起を行うことにある。
著者
杉田 映理
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第50回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.A03, 2016 (Released:2016-04-22)

報告者は、博士課程の学生かつ未婚であった時にウガンダの農村部において1年強の長期フィールドワークをおこなった。そして14年ほどの時を経て、今度は子ども2人を連れて家族とともに同じ農村において住み込みの調査を実施した。本発表では、子連れでフィールドワークを行ったときの調査地での自分の立ち位置が14年前とどう変化したのか、またそれがなぜなのか、さらにフィールドで得られるデータに変化はあったのかを考察したい。
著者
安念 真衣子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第50回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.C07, 2016 (Released:2016-04-23)

本発表の目的は、現代ネパールの農村地域における女性のリテラシー実践について考察することである。ネパールではこれまで、政府、NGO、民族運動団体などが識字教育活動を実施してきた。学習者として対象とされるのは多くの場合女性である。本発表では、女性たちが日常生活の中で、文字を習う実践の場である識字教育活動にいかに関わり、そこで得られる知識や技術やネットワークをどのように生活の中で利用しているかを検討する。
著者
李 セイ
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

本発表では日本東京都北区王子市での調査中に出てきた「カワイイ妖狐」について語りの読み解きから、現代日本都市部における「大衆的な妖狐」の認識について試論を展開する。「カワイイ妖狐」の特徴を捉え、「民俗的キツネ」と「学術的キツネ」から受け継いだ連続性を検討する。また、同じく「妖狐」として扱われているが、おおむね同じ存在ではないと主張する。
著者
河西 瑛里子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第43回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.128, 2009 (Released:2009-05-28)

英国南西部のグラストンベリーという町は現在、ニューエイジの聖地として、主に欧米諸国の白人の間で知られている。当地では、様々な宗教的実践がみられるが、ヨーロッパ人が主な信者であるスーフィズムのナクシャバンディ教団の活動もその一つである。本発表では、グラストンベリーにおける具体的な活動の実態をフィールドワークに基づいて報告し、この町におけるスーフィズムの位置づけを示す。
著者
沼崎 一郎
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第52回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.90, 2018 (Released:2018-05-22)

本分科会の目的は、研究技法としてだけではなく、生活技法として、特に「多文化」を生きる技法としてのオートエスノグラフィーの可能性を探ることである。オートエスノグラフィーは、語る主体としての自己を顕在化させつつ、主観と客観、自己と他者、パーソナルなものとポリティカルなものの交差する民族誌的状況を描き出すことによって、再帰的/反省的に人類学的な考察をを展開しようとする試みである。それは、いわゆる「『文化を書く』ショック」以後の人類学における「再帰的/反省的転回」の提起する諸問題を、最もラディカルかつパーソナルに受け止めようとする試みの一つである。本分科会では、各発表者が、それぞれの人生と人類学的営為とを往復しつつ、研究技法としてのみならず、生活技法として、とりわけ「多文化」を生きる技法としてのオートエスノグラフィーの可能性を探る。
著者
謝 黎
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第54回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.B09, 2020 (Released:2020-09-12)

現在、中国では「国服」の議論が起きている。その議論の中心に「旗袍派」と「漢服派」がいて、両者の間で互いに「自分こそが正統である」と論争している。さらにこれに、APEC唐装が加わる。旗袍と漢服のような「戦い」はないものの、「漢族の伝統服」という議論において、旗袍と漢服の中間に位置する存在だと考えられる。本発表は、中国社会における「伝統」のあり方について、服飾論争のそれぞれの根拠を通して考察する。
著者
大戸 朋子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第50回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.I15, 2016 (Released:2016-04-23)

本発表は、「腐女子」と呼ばれる男性同性愛を主題とするフィクションや想像などを嗜好する少女/女性たちの二次創作活動とメディア利用を対象として、メディアを含むモノとの連関の中で形成される腐女子のつながりとはどのようなものであるのかを明らかにするものである。調査からは、二次創作を行う腐女子のつながりが、個々人の「愛」という不可視のモノを中心に形成され、メディアを通して評価されていることが明らかとなった。
著者
熊田 陽子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第43回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.193, 2009 (Released:2009-05-28)

人間は、ある目的を達成するためだけに生きているのではなく、その過程や行為を楽しむ(「遊ぶ」)ものであると考えたホイジンガは、人間を「ホモ・ルーデンス(遊ぶ人)」と呼んだ。様々な性行為も、生殖という目的だけで行われるわけではなく、それ自体の面白さを楽しむ「遊び」である。本発表では、あるSMクラブを事例に、そこで働く女性たちがSMプレイをどのように認識しているのかついて、「遊び」を手がかりに検討する。
著者
上杉 妙子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第46回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.84, 2012 (Released:2012-03-28)

本発表では、旧英領インド陸軍及び英国陸軍に雇用されてきたグルカ兵の通婚規制を取り上げ、配偶・生殖過程の管理に注目する観点から英国の国際戦略におけるマーシャル・レイスの位置づけ及び主体的関与を明らかにする。結論として、1)グルカ兵が自主的に通婚規制を行ってきたことと、2)通婚規制が、駐屯地周辺の人々との民軍関係を調整しマーシャル・レイスのブランドを維持するための境界作業として機能してきたことを指摘した。
著者
中川 敏
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第47回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.37, 2013 (Released:2013-05-27)

本発表は他者にエージェンシーを付与する(志向姿勢をとる)ことについて考察する。第一部では、生活世界においてわれわれが他者にエージェンシーを付与するのはどのような状況なのかを考察する。第二部では、他者が論理空間の外部ならば、 他者は「謎」として現れるという野矢茂樹の指摘を受け、 そのような他者に対する姿勢、志向姿勢を越えた姿勢(倫理姿勢)の可能性について考察する。
著者
山口 未花子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.260-260, 2008

カナダの狩猟採集民であるカスカの人々にとって、ヘラジカは最も重要な狩猟対象動物である。本発表ではヘラジカ皮の利用方法について明らかにすると共に、その実用性や経済的側面、文化的な価値について検討する。そしてヘラジカ狩猟活動系においてヘラジカと人間との関係を維持する精神的な戦略としてヘラジカ皮利用を位置づけると共に、他の動物の皮利用との比較を行いカスカ社会におけるヘラジカの重要性を明らかにしてゆく。
著者
福西 加代子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.158-158, 2009

日本国内に散在する自衛隊基地や在日米軍基地で毎年、航空ショーがおこなわれている。航空ショーでは、地上での戦闘機への試乗や、飛行展示などをメインとして、自衛隊や米軍の地域社会での活動の紹介や、軍用機の技術を幅広く展示している。本発表では、2008年に日本各地でおこなった、航空ショーでのフィールドワークをもとに報告し、航空ショーにおける軍事力展示の位置づけを示す。
著者
菅野 美佐子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第50回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.A05, 2016 (Released:2016-04-22)

本報告では、女性調査者が現地社会と自らの帰属する社会の双方のジェンダー規範やジェンダー構造に絡め取られながら実践するフィールドワークを「ジェンダー的価値の交差点」ととらえ、そのなかで調査者はいかなるポジショナリティの変化を経験したり、困難的状況に直面し、それにどう向き合い、あるいは今後どう向き合っていけばよいのかを、子連れフィールドワークの経験から考察することを目指す。
著者
山本 桜
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 The 56th Annual Meeting of the Japanese Society of Cultural Anthropology 日本文化人類学会第56回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.A13, 2022 (Released:2022-09-13)

本発表では、身体的性別を変更するために身体加工を追求してきた人々がそれらを中止するという、脱トランスの営為を対象にする。当事者たちは、身体的性別に対して自らが感じてきた違和感を度々内省し、自己や自己の身体についての語りを再構成してきた。発表者は、彼らの当時的/遡及的語りを分析することで、彼らの身体違和がどのように形成されてきたのか、および身体と自己との関係がどのように変遷してきたのかを論じる。
著者
飯嶋 秀治
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第57回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.B02, 2023 (Released:2023-06-19)

本研究ではグレゴリー・ベイトソンの戦時活動をアーカイブス研究から明らかにする。特にNARAⅡの文献カードの定量調査とUCSCの個別フォルダ調査を用い、OSS前史としての反ナチ運動とモラル研究、サイバネティクス研究前史としての精神医学者ミルトン・エリクソンとの関係を重視する。そこからベイトソンのインテリジェンス活動を位置づけ、戦後理論への文脈を見る。
著者
古川 不可知
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第57回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.A10, 2023 (Released:2023-06-19)

本発表の目的は、日本における一般登山とキャンプの実践を取り上げ、「戸外outdoor」にあることが持つ意味と、そこから想像される理念的な「ホーム」について考察することである。具体的には、①戸外と人類学がどのような関わりのもとにあるのかを整理する。②現代日本のアウトドア観光における語りと実践を、登山とキャンプを対比しつつ報告する。③あるべきホームが戸外からどのように想像されているのかを論じる。
著者
岡野 英之
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第57回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.F09, 2023 (Released:2023-06-19)

隣国ミャンマーで2021年にクーデターが発生して以降、A国には大量の「難民」が流れ込んできた。本発表で指摘するのは、A国の国境地帯のある町が構造的な汚職によってミャンマー難民にとっての「アジール空間」となっていることである。この空間はミャンマーの民主派勢力にとって対外拠点として機能している一方、外部世界とつながるチャンネルとして機能している。