著者
岩藤 百香 松本 正富 青木 陸祐
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.3_57-3_64, 2021-01-31 (Released:2021-02-20)
参考文献数
17

本研究は,治験のインフォームド・コンセント用説明文書が患者に与える印象に着目し,文書の改善に有用なビジュアルデザインの要件を抽出することを目的とした.先に,比較対象として一般的に用いられる様式の文書(一般モデル)と,同じ内容で言語による情報の質や量を保持しつつ,効率よい情報伝達の指針「ミニマム・エッセンシャルズ(可視性・注視性・記憶性・的確性・造形性・時代性)」に即したデザイン操作を行った文書(デザインモデル)を作成した.両モデルに対する印象評価の比較では,デザインモデルの満足度は高く,明るさ・暖かさ・にぎやかさなど精神を高揚させる印象尺度の評価に効果が認められた.また,新たに文書の印象を構成する「楽観性・親近性・明朗性」などの情動的な心因因子が把握され,患者の心を慰撫するビジュアルデザイン要素による心理的支援を行うことの有効性が認められた.
著者
Sonya S. KWAK Myung Suk KIM
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.91-100, 2008-05-31 (Released:2017-07-19)

The objective of this study is to develop a triad problem-solving model of design with a controllable determinization level which satisfies both analytic and synthetic aspects of design activities. Rooted on the problem-solution duality model, a goal-oriented triad problem-solving model, which is based on the triad relationship among a problem, a solution, and a goal, is constructed. The goal area is distinguished from the solution area. The concept of determinization which is the process of transforming the indeterminate solution area into the quasi-determinate2 goal area is established. The determinization level controls the portion between discovery and invention. The triad problem-solving model of design with a controllable determinization level is applicable to all types of design activities with diverse conditions.
著者
杉山 和碓 金 哲浩 小野 健太 渡辺 誠
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.11-18, 1999-03-31 (Released:2017-07-21)
参考文献数
2
被引用文献数
1

デザイン決定プロセスはその企業の状況, 体質などによって異なる。その中で本研究ではデザイン決定プロセスに影響を与えると思われる要素の一つとして組織体系(企業におけるデザイン機能の組織的な位置)を取り上げ, 各企業におけるデザイン決定プロセスと組織体系との関係を明らかにし, 効率的なデザイン決定プロセスを行うための方向性を示すことを目的とした。そして, 各社のプロセスの現状を把握するために調査を行い, 各社のデザイン決定プロセスと組織体系を分類し, 比較を行った。その結果, デザイン決定プロセスの効率化においては, 事業部内デザイン組織の方が, 企業内独立デザイン組織に比べて効率的なプロセスをとっていることが分かった。しかし, 企業内独立デザイン組織であっても, 情報・知識の共有, 思考様式の統一を図るための工夫, 努力をすることによリ, 効率的なプロセスをとることは可能であることもわかった。
著者
稲坂 晃義 八馬 智 石塚 明夫
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.1_39-1_48, 2020-07-31 (Released:2020-08-10)
参考文献数
7

デザインの導入基礎教育を対象に,指導者が求める到達目標を明示した「振り返りシート」を用いて,学習者の自己評価により理解・習熟度を自身で把握し,指導者の評価との関係性を明らかにする.またその結果を用いて授業プログラムおよび指導方法等を検討するための示唆を得ることを目的とする.受講者の各課題に対するの理解・習熟度の自己評価,ならびに授業運営側の各課題の設定レベルの適性度の把握と今後の授業進行の調整や課題導出を目的としてICE モデルルーブリックを応用した「振り返り」シートを作成し導入した.因子分析とクラスター分析によって,学習者と指導者の各評価間の差異を明らかにした.学習者本人が自身の理解度を把握することに留まらず,指導者の指導内容の評価にも利用することができる.また多年度にわたりその結果の推移を見ると,各年度の学習者の傾向の違いがあるが,学習者の自己評価と指導者の評価の間の差異が年度を経るごとに小さくなる傾向があり,指導内容の変更や改善が一定の学習効果の向上に寄与することが分かった.
著者
小松 亜紀子
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.21-26, 2006-01-31 (Released:2017-07-19)
参考文献数
16
被引用文献数
1

本研究では,大学生へのアンケート調査により観測したデータについて構造方程式モデルによる分析を行った。これにより,身近な工業製品における製品スタイル選択を通じて実現される「成果要因(共通性,不安,評価)」を媒介変数とし,「自分らしさ」に関連する「自己認識要因(相互協調的自己観,自尊感情)」が「流行志向」に及ぼす影響について,因果モデルを構築した。このモデルにより,「相互協調的自己観」の強い傾向と,「自尊感情」が強い傾向は,製品スタイルにおける流行を生じる上で,相補的な関係にあることを明らかにした。また,「相互協調的自己観」の傾向が強い場合は「自分らしさ」の定義を他者動向に依存し,「自尊感情」の傾向が強い場合は他者から選択結果についての評価を得て自己実現を図るため,それぞれ「自分らしさ」が結果的に製品スタイル選択における流行と強く結びついているものと考える。以上をふまえると,工業製品の製品スタイルにおける流行採用というかたちで,「自分らしさ」に関する自己認識が反映されているものと考える。
著者
渡邉 萠 中西 美和
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.5_49-5_58, 2017-01-31 (Released:2017-03-10)
参考文献数
41

「『愛着』がある」と表現されるモノは、そのユーザに長きに渡って高い心理的価値をもたらすとして、近年、プロダクトデザインに携わる従事者に注目されている。しかし、人がどのようにモノに対する「愛着」を形成していくのか、また、それを促す方法としてどのような実際的手段があるかは、明らかになっていない。そこで、本研究では、「愛着」の原義が定義される心理学理論に基づき、「愛着」の観点をプロダクトに埋め込むデザイン戦略を提案し、適用したときユーザの「愛着」形成が促されるかどうかを実験的に検証した。まず、心理学理論に基づき、「愛着」を形成する要件を検討し、これをスマートフォンアプリとして実装した。次に、ユーザを、アプリを使用するグループと、使用しないグループの2つに分け、製品に対する「愛着」の変化を、先行研究で明らかにした「愛着」検出指標(脳血液量変化、指突容積脈波)を用いて計測、分析した。その結果、提案したデザイン戦略が、ユーザのモノに対する「愛着」形成の促進において有効である可能性が示唆された。
著者
範 聖璽 野口 尚孝
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.61-68, 2007-01-31 (Released:2017-07-11)
参考文献数
8

デザインの創造的思考において,デザイン対象が属するカテゴリー(デザインしようとしているものがどのような名前で呼ばれるのか)を考える場合,いかにそのカテゴリーが示す対象の原型(プロトタイプ)のイメージを残しておくか,あるいはいかに新たなイメージを創出するかという視点の置き方によってデザイン対象のとらえかたと表現内容が大きく変わる。本報では,デザイン目標表現(デザイン対象の言語的表現)の相違から来る視点の相違と,デザイン対象のカテゴリーにおけるプロトタイプ・イメージの影響との関係を2つの実験によって確かめ,独創性の高いデザインを生み出すためのデザイン目標表現のあり方についての手がかりを探った。その結果,デザイン対象が属するカテゴリーの認知意味論的な基本レベルより上位のカテゴリーによるデザイン目標を与え,そこからその下位概念として基本レベルでの対象を考えさせるか,意図的にデザイン対象を含む,より大きな文脈でのデザイン目標を与えることにより,独創性のあるデザインを創出させることができることが分かった。
著者
範 聖璽 野口 尚孝
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.53-60, 2007-01-31 (Released:2017-07-11)
参考文献数
7
被引用文献数
1

デザイン行為では,通常デザイン要求が言語表現で与えられるが,それを視覚空間的形態イメージに変換する過程がデザイン思考過程であるといえる。デザイン要求を表す目標表現は,デザイン思考における探索空間を限定するといえるが,実際のデザイン行為においては,同じデザイン要求であっても,その解釈の相違によって,結果としての視覚空間的形態表現も異なる。本研究では,「子供用のイスのデザイン」というデザイン要求を学生に課した実験により,その要求を解釈したコンセプトにおける言語表現の概念構造と,それに対応する視覚空間的形態表現との関係を,認知意味論のカテゴリー階層構造という視点からとらえ,デザイン要求の解釈の仕方の違いが形態表現における創造性とどのような関係があるかを確かめた。その結果,与えられたデザイン要求の解釈において,意味空間カテゴリーの中心的な解釈よりも,周縁的解釈の方が,作品の形態表現における新規性が高い傾向があることが分かった。
著者
落合 信寿 佐藤 昌子
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.85-94, 2002-11-30 (Released:2017-07-19)
参考文献数
19

本研究は,赤,橙,黄の安全色3色の探索に及ぼす周辺刺激の色とその配置,ならびに背景輝度の影響について検討した。刺激画像は視角40°の広視野に位置された色指標の配列によって構成され,80インチスクリーン上に提示された。妨害指標の色配置は,目標指標と妨害指標間の類似度,妨害指標間の類似度の関係に応じて4種類を設定した。目標指標色,妨害指標数,妨害指標の色配置の関数として反応時間が測定された。その結果,背景輝度が異なっていても,橙は妨害指標数の増加に伴い探索が著しく困難になるが,赤と黄は妨害指標数の影響をほとんど受けないことが明らかとなった。探索に及ぼす色配置の影響は,目標指標と妨害指標間の類似度に依存しており,また安全色によってその影響が異なっていた。すなわち,橙は色配置の影響を著しく受けるが,赤・黄は比較的影響を受けにくいことが明らかになった。これらの結果は,安全色の橙が,周辺環境の視覚刺激によって影響を受けやすい傾向にあることを示唆している。
著者
中島 瑞季 松永 皐希 横井 聖宏 齊藤 剛
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.2_51-2_58, 2021-09-30 (Released:2021-11-03)
参考文献数
19

電子書籍での読解における物語世界への没入感に着目し,レイアウトデザインに注意の集中を促すマスクをかけると読解時の注視点と没入感にどのような影響を与えるのか検討した.実験は輝度勾配を用いたマスク 2 種とマスク無しの計 3 種類に対して視線計測を行いながら読書をしてもらったのち,没入感評価とレイアウト評価を行うものである.その結果,マスクをかけると一定の場所に注視点が集まり,没入感の向上に繋がることが明らかとなった.しかし,マスクと文字色が近い場合はスクロール時に文字がちらつくことで気が散るため,読解に集中できず没入感の向上を望めない.そのため,マスク色と文字色の関係がスクロール動作によってどのように変わるのか考慮することがデザインを決定する上で必要となることがわかった.
著者
李 震鎬 宮崎 紀郎 村越 愛策
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.9-16, 1994

視認性に及ぼす走行環境の影響を調べる目的で,現在使用されている道路案内標識をとりあげ,文字を中心にそれらをどのように認知しているのかを明らかにしたものである。内容は実験I.として視認性に及ぼす走行速度の影響を調べるために,走行速度を30,50,70km/hの3種類に設定し,同一地名に対する検索時間などで視認性を調べた。実験II.としては視認性に及ぼす情報量の影響を調べるために,九つの異なる情報を設定して視認性を調べた。その結果,I.走行速度は50km/h,30km/h,70km/hの順に視認性に対して優劣関係にあることが明かとなった。II.情報量から見た場合の視認性は,文字の複雑さの要因が大きくて,画数の少ない,簡単なものから読み始める傾向が顕著である。また,視認したという判断については,漢字のみの構成ならば画数にしたがっているが,カナや数字が入ってくると,それらが視認されてから他の文字をはっきり視認しなくても推測が働き,漢字単独の状態よりも早い段階でその情報を認知していることを確認した。
著者
黄 世輝 田中 みなみ 三橋 俊雄 加藤 純一郎 宮崎 清
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.51-60, 1997-03-31 (Released:2017-07-25)
参考文献数
18

台湾の寺廟文化は、中国大陸から渡来した漢民族による移民社会の成立とともに、地域生活と密接な関係を保ちながら発達してきた。本研究では、台湾・鹿港の文化的、社会的象徴といえる龍山寺を対象に、地域づくりにかかわる龍山寺の役割とその可能性について検討した。その結果、鹿港の地域づくりにかかわる龍山寺のあり方について、以下に示す五つの方向性について提示した。1)宗教活動の場として清浄な環境を保ちながら仏教教義の広がりに努める。2)教育の場として歴史的資産を保護、伝承しながら郷土教育を推進する。3)文化活動の場として住民参加型の文芸活動を展開する。4)観光活動の場として龍山寺の文化的価値を内外に発信する。5)憩い・交流の場として寺廟文化の情報センターの役割を担う。総じて、龍山寺は地域づくりの拠点として多くの住民が参加できる活動を展開することができる。
著者
森 絵美 松本 正富
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.2_35-2_42, 2021-09-30 (Released:2021-11-03)
参考文献数
17

本研究は,病院で広報や行事の企画運営に従事するデザイン技能を有した事務職員である院内デザイナーの配置に対する経営者評価について,利用者サービス向上に向けた業務支援の視点からみた有用性と課題を明らかにすることを目的とした.医療機関経営者を対象とした半構造化インタビューを実施し,M-GTA(修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ)を用いて分析した結果,1)広報が充実し医療機関の特色が明確化すること,2)情報共有と業務の効率化につながること,3)内製物の質向上と継続的な維持管理に貢献すること,4)利用者に寄り添ったサービス提供ができることが,有用性として認められた.これに対し,1)人材育成の環境が整っていないこと,2)人材配置に関わる費用対効果の検証が難しいこと,3)その職域自体が未だ確立されていないことが課題として指摘された.
著者
原田 利宣 石田 智子 吉本 富士市
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.61-68, 2002
参考文献数
8
被引用文献数
2

自動車インテリア評価に関する既存研究例には,写真や2次元CG,実車を用いて評価したものが多い。写真や2次元CGは室内空間という臨場感に欠け,実車は精度が高くリアルだが,意図した形態要素を含んでいるとは限らない。そこで,本研究では立体感,スケール感を再現できるVRシステムを用いてより精度の高いデザイン評価を行うことにより,インスツルメントパネルを構成する形態要素と印象との関係を明確化することを目的とした。まず,既存車39車種のインパネを計測し,プロポーション,面構造,曲線(面)の3つの視点から分析を行った。それによりインパネ形状に影響を与える形態要素を抽出し,それらを用いて実験計画法によるVRモデルの作成を行った。次に,作成したVRモデルを10語の評価用語を用いて評価実験し,主効果を求め,分散分析,t検定を用いてどの形態要素がどのような印象に影響するのか調査した。その結果,各評価用語に対し影響すると考えられる形態要素が抽出された。
著者
趙 英玉 朴 燦一 宮崎 清
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.31-40, 2000
参考文献数
55

清代、漢民族の被服は満州族に影響され、大きく変化した。本研究は、小説『紅楼夢』にみられる被服文様を対象に、清代の文様の特徴を、文様がもつ身分象徴や吉祥などの意味性の側面と装飾形式の側面から分析・考察した。その結果、以下のように清代の被服文様がもつ意味性や形式の特性の一端を明らかにした。1)身分文様 : 身分文様を施した礼服に、縁文様を加えて飾ることにより、身分を区別する傾向がみられ、一つの文様の意味が薄れると別の文様を加え、その意味を強くするという新しい文様の使い方が明らかになった。2)吉祥文様 : 吉祥文様は、ほとんどがその文様形式に意味が内包され、図像のモチーフより形式にこだわった吉祥文化であることがうかがえる。3)装飾文様 : 装飾文様は、身分象徴と吉祥的な意味性を特に有さないが、その文様構成の点で、身分文様や吉祥文様と類似した文様構成がなされていたことがうかがえた。
著者
王 伯勛 洪 明宏 邱 宗成
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.1_1-1_10, 2017

<p> 本研究は、民間習俗としての地域における鎮物の造形を調査し、広東省・マカオを対象として、「土地神」「石敢當」等民俗資料を広く収集したものである。広東は「土地神」信仰が絶対多数を占めており、伝統的な吉祥文様が描かれた紙「春聯」と立体の簪花(かんざし)により飾られた「天官賜福」「門口土地財神」の牌位を頻繁に目にする。マカオの「石敢當」の数は「土地神」には及ばないもの、民間風俗と文化的背景から「土地神」と「石敢當」とが融合し、幸福祈願、富貴、魔除け、厄除け等心理的必要性に対応する様々な霊石信仰が生まれた。「石敢當」は路地、住宅、オフィス、商店、廟、集落神龕等の場所に分布し、石板、石碑、石塊、山型の四形態に大別される。広東とマカオの民間信仰に関しては、「土地神」と「石敢當」の設置と装飾から、民族独自の視覚的記号が垣間見える。例えば、漢字の字体、伝統的象徴的文様等は、伝統文化の保存・継承を体現するものでもある。</p>
著者
陳 郁佳 野口 薫
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.71-80, 1998-09-30 (Released:2017-07-21)
参考文献数
15
被引用文献数
1

知覚・認知心理学的視点から, 道路環境におけるサインの視覚的伝達効果を検討した。まず, サイン認知の前提条件として, 人間の視知覚特性を示した。次いで, 台北のサイン環境について基礎調査を行い, サインの効果は, そのデザインのみならず, 環境的・文化的要因によって規定されることを明らかにした。さらに, 台北と千葉における道路標識の現状について比較し, それぞれの道路標識に対するドライバーの意見を認知的基準にしたがって分類した。最後に, 台湾留学生と日本人学生を被験者として, 二地域の道路標識に対する認知実験を行った。その結果, 標識に含まれる情報数が増えると, 標識の検出率と正答率は低下して, また情報数が同じであっても, 情報の種類や視覚ノイズによって影響されることを示した。さらに, 道路標識の表現形式が異なる地域からの被験者群の比較から, 文化的要因がサイン情報の認知に影響することを確認した。
著者
東 恒人 島田 恭宏 高橋 武志 佐々木 武
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.11-20, 2007-03-31
被引用文献数
1

本手法で取り扱うメッシュは、2種類の曲線で構成されている.一つは横断面の形を表す曲線であり,もう一つは上記の曲線の配置関係を表した曲線である.これらの曲線は等しい長さの線分から構成されており,各曲線の形状は隣接した線分の間の角度の分布に依存する.本論文では、このような構造のメッシュについて、その形状的な特徴を定量的に分析するために,かつ,角張った形状のメッシュを生成するために,以下のような方法が提案されている.この方法では、二種類の曲線のうちの一方の種類の曲線の角度配布に対して、ウォルシュ変換対が適用され、他方の種類の曲線の角度配布に対して、フーリエ変換対が適用され、変換成分の一部を削除することにより、二種類の曲線のうち、一方の種類の曲線の形状の滑らかさの程度と他方の種類の曲線の形状の角張りの程度が強調されたメッシュが生成されている.
著者
町田 俊一
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.41-46, 2003

浄法寺漆器の復興にあたっては、実質的な技術課題は下地加工と塗漆技術である。漆器生産技術の中でも、下地加工は漆器の強度を左右する重要な工程で、技術修得にも長い時間がかかると言われている。また、下地加工の意味は、素地の凹凸を埋めて、軟らかい木部の上に硬い塗膜層を形成し、強度を確保すること、断熱性を向上させることであると言われている。製造技術を新たに再修得しなければならなかった浄法寺漆器にとって、高度な技術は、時間とコストの増加を招く。そこで、日常品に適した下地法を採用するため、現在我国の主要な漆器に用いられている8種類の下地について手間と、強度の比較検討を行った。その結果、蒔地法、塗重ね法が高い強度を発揮する事が判明し、更にこれらの下地は技術修得が容易に行えることが判明した。