著者
守田 智 岡部 拓也 伊東 啓
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究課題では,ネットワーク上のダイナミクスに応用できるような形式で隣接行列を縮約的に表現する方法を開発し,理論物理学で発展してきたネットワーク理論の応用範囲をより現実の問題を扱えるような形式に書き直すことを目指している.記述に膨大な容量を必要とする隣接行列に代わる縮約的表現によって,ネットワーク上を伝播する感染症や情報,あるいは進化ゲームにおける戦略の拡散メカニズムをより的確に理解できるようにする.研究代表者がその理論的基盤を整備し,分担者と協力して応用を開拓する.
著者
安部 千秋
出版者
公益財団法人神戸医療産業都市推進機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

マクロファージの機能低下は様々な疾患の発症に関与することが知られており、マクロファージ活性化因子である生体内免疫賦活物質GcMAFはがん、自閉症、慢性疲労症候群等の疾患に対する効果が報告されている。GcMAFはこれらの疾患への有望な治療候補物質であるが、基礎的な作用メカニズムの欠如のために臨床応用は制限されている。そこで本研究では、GcMAFのマクロファージ活性化の分子メカニズムの解明を行う。
著者
杉浦 知範 藤井 聡
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

心筋トロポニンは急性心筋梗塞などの心筋障害の指標として利用されている。わずかなトロポニン濃度の変化は軽微な心筋障害の反映と推測されるが、変化の機序や要因は明らかではなく、未解明のトロポニン調整機構に関連している可能性がある。本研究では健常人におけるトロポニンI、T 濃度、および関連する動脈硬化指標や血液学的指標などを測定し、さらにトロポニン発現を調節するnon-coding RNAに着目してエピゲノム因子の探索を行う。候補となる指標の有用性を検証しつつ、最終的にはトロポニン検出の意義解明を目指す。本研究の成果は心疾患の早期発見や治療に結びつき、医療費削減と健康寿命延伸への貢献が期待される。
著者
石井 英也 小口 千明 大濱 徹也
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

青森県の下北半島に位置する脇野沢村は、江戸時代に能登半島を中心とする北陸の漁民や商人が、ヒバや鱈を求めてやってきて定住したしたことによって、その建設が促進された村である。そのため、脇野沢に住む住民達は、当初から明治初期頃までは水主を業とするものが多く、いとも軽々と周辺地域での他所稼ぎに従事してきた。その後、明治維新による山林の国有地化などによって、脇野沢住民の生業は鱈漁への傾斜を強めるが、鱈漁の季節性を埋め合わせるように、幕末以降発達しつつあった北海道鰊漁への他所稼ぎが多くなった。脇野沢村では、大正期以降に鱈漁が興隆し、それに北海道鰊場への他所稼ぎを組み合わせる一種の複合経営が成立する。それとともに、他所稼ぎの弊害も見られるようになるが、しかし、昭和戦前期までの他所稼ぎは、むしろ地域経済に利をもたらすものと肯定的にみられる傾向が強かった。第二次世界大戦後、脇野沢の鱈漁や、まもなく北海道の鰊漁も壊滅する。しかし、北海道はその開発が国の緊急課題となり、さまざまな基盤整備が行われるようになる。こうして脇野沢住民は、北海道での土木出稼ぎに従事するようになり、思いがけずに失業保険も手にするようになる。その出稼ぎは、高度経済成長期になると、とくに東京を中心とする関東にも向かい、まさに「出稼ぎの村」が形成される。この頃になると出稼ぎの量も質も、出稼ぎを引き起こすメカニズムも変質し、とくに昭和40年代以降にはさまざまな社会問題が注目されるようになった。その重要な問題の一つが、持続的社会の崩壊、つまり出稼ぎ者や年金生活者の増大に伴う地域そのものの空洞化であった。出稼ぎは、諸問題の発生や出稼ぎ者の高齢化や「出稼ぎは悪」という風潮のなかで、昭和末期以降急速に減少してきたが、村の再建が急がれる。
著者
志村 哲祥 井上 猛 高江洲 義和
出版者
東京医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

初めに、高校生において睡眠へ影響を与えている生活の要因を調査しました。たとえば、カフェインを夜に摂取すると2倍、寝床の中でスマホを使用していると3倍、睡眠の問題が生じやすく、また、欠席には起床時刻の影響が大きいことが明らかになりました。次いで、睡眠の問題があり欠席の多い高校生へ、上記の知見をもとにした睡眠指導をする群としない群に無作為に割り当てたランダム化比較試験を行いました。その結果、睡眠指導をした群では睡眠が有意に改善すると同時に、欠席率が半減し、退学者も大幅に減少しました。本研究により、学生の欠席や退学を、睡眠という観点から改善させることができることが明らかになりました。
著者
伊原木 大祐
出版者
北九州市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、1960年代以後に優勢となるフランス現象学思想の一群(レヴィナス、アンリ、マリオン)を宗教哲学の高度な発展形態と捉えつつ、そこに表れた二元論的構成に着目することで、20世紀におけるフランス宗教哲学への新しい見方を提唱している。その結果、この思潮が形を変えながらショーペンハウアー哲学や20世紀のドイツ・ユダヤ思想にまで及んでいることを発見すると同時に、現代におけるマルキオン主義の政治的ラディカリズムを確認することができた。
著者
永吉 秀司
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

現在、住職不在の文化財に相応する神社仏閣も数多く存在し、将来文化財として大切にされるべきものが風化にさらされ、危惧する状況にある。このような状況は、地方行政の財政と文化財の再現で必要とされる予算の金額に齟齬が生じている現状があり、その改善方法として、流通性のある建築建材を活用しローコストな支持体による壁画の再現方法を提案するものである。尚、事業協力する寺院は、弘長年間(1261~1264年)に創設された弘長寺で、過去の修繕において壁画を撤去し白壁で塗り替えたという経緯がある。そこでその壁面を中心に脱着可能なパネル型素材を活用して来迎芸術壁画を再現し、新たな地域資産創出の役割も担うものとする。
著者
北村 和哉 飯田 宗穂
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

潰瘍性大腸炎は原因不明の腸管の慢性炎症性疾患であるが、その一因に腸内細菌叢の乱れが存在する。この乱れを是正する方法として糞便細菌叢移植がある。糞便細菌叢移植を成功させる要素として、移植細菌の患者粘膜への生着が重要である。本研究では、移植細菌が患者粘膜に生着する免疫学的機序を明らかにすることを目的とした。今研究の結果、糞便細菌叢移植の移植細菌の生着に、ステロイドが負の役割を果たすことが明らかとなった。このステロイドの作用は、主に粘液中のMUC2の発現抑制によるものであり、外的に粘液を投与したり、内的な粘液分泌を促すレバミピド投与で、移植細菌叢の生着が改善することが明らかとなった。
著者
櫻庭 美咲 荒川 正明 野上 建紀 大橋 康二 西田 宏子 藤原 友子
出版者
神田外語大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、アウグスト二世(通称アウグスト強王)が、「日本宮」のために収集した大規模な陶磁コレクション(ドレスデン国立美術館磁器コレクション館所蔵)の悉皆調査を軸に、研究を進めた。同コレクションの総目録編纂にむけた大規模な国際共同プロジェクトへの参加を通じ、日本磁器約800点を熟覧して得た結果をデータベース化し、総目録の英文作品解説約440点分を完成、文様の図像研究にも知見を得ることができた。これらは総目録の一部として公開予定である。受容史的な観点からみた「日本宮」における日本表象の変遷についても、建築図面等の文献研究・磁器作品研究の両面から確認することができた。
著者
太田 彦人 大津留 修
出版者
科学警察研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1.トリカブト毒国産トリカブトから、トリカブトの既知猛毒成分アルカロイドアコニチン類6種を全て得た。これらの代謝物(8-ヒドロキシ体)6種及び最終代謝物(8,14-ヒドロキシ体)4種を全て合成した。さらに定量用内部標準物質として、8-アルコキシアコニチン類数種、及び現在最も定量精度が高いとされる重水素化アコニチン類も併せて合成した。以上の化合物を用いて、市販のOasis HLBカートリッジを用いた、血液や尿等の生体試料からの迅速固相抽出法を開発した。さらに、安価に普及しているODSカラムを用いたLC-ESI-MS/MS高感度一斉微量分析法も開発し、生体試料より迅速かつ容易にトリカブト毒及びその代謝物を検出・同定・定量することが可能となった。各成分の検出下限はng/mLオーダー以下であった。2.バイケイソウ毒国産バイケイソウより、幼若アルカロイド、催奇形性有毒アルカロイド、エステル型猛毒アルカロイド計11種を得た。これらを用い、トリカブト毒同様の固相抽出-ODS-LC-ESI-MSIMS分析法を用いて、血液や尿等の生体試料から全成分を迅速に分離検出・定量できる分析法を開発した。内部標準物質はメチルリカコニチンが最も適切であった。各成分の検出下限はng/mLオーダーであった。3.アセビ毒古来より有毒植物として知られるアセビの毒もまた、分析の困難なテルペノイド系神経毒である。アセビ毒を経口服毒した事例において、服毒したアセビについて、植物粉砕粉末化装置を応用してアセビ毒を検出定量することができ、また世界で初めてヒト胃内容からアセビ毒を検出・定量し、さらにヒト胃液中におけるアセビ毒の変化及び強毒化の様子を明らかにした。
著者
丸山 美貴子
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

子育て支援において家族支援、とりわけ親のエンパワーメントは不可欠であるが、その過程と条件について、保育園児の親を対象とした研究はほとんど見られない。本研究は、保育園・幼稚園児の親が集うコミュニティとして保護者会や家族会を対象とし、社会教育学的観点により、親のエンパワーメントの過程とその条件としての教育・学習実践の解明を課題とするものである。その際に、教育・学習実践を、個人が知識や力量を獲得していく<個体モデル>としてではなく、問題を顕在化・課題化し解決にとりくむ実践共同体(=実践コミュニティ)の形成と一体のものとして把握する<コミュニティモデル>として、事例調査から実証的に研究するものである。
著者
石塚 淳子 笹野 幸春 山本 哲子 小元 まき子 渋江 かさね 山崎 準二
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

近年、看護師養成の課程をもつ看護系大学・学部が急増し、それに伴い看護教員の不足と質の低下が大きな問題となっている。日本の看護教育において、これからの看護教員の教育力の向上のためには、諸外国の物真似ではない日本独自の社会的背景の中で発展してきた熟練看護教員の力量発達過程を活用したプログラムが有用である。そこで申請者が長年研究してきた研究の成果を活かし、教師教育や生涯教育の研究者らと協力して熟練看護教員の経験をライフヒストリー・アプローチで描き出しながら現役若手看護教員らによる“実践コミュニティ(経験から学ぶ場)”プログラムを試みる。
著者
藤森 淳
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

銅酸化物高温超伝導体の発見から36年を経て膨大な研究成果が蓄積されてきたが、未だに高温超伝導機構の解明に至っていない。機構解明の鍵を握るのが、超伝導ギャップより遙かに高温から開く擬ギャップの形成機構の解明である。近年、電子の分数化よる擬ギャップ形成機構が理論的に提案され有力視されている。本研究では、世界最高の分解能を持つ台湾放射光施設において共鳴非弾性X線散乱法を用いて、擬ギャップ状態を詳細かつ精密に特定し電子の分数化を検証する。