著者
椎葉 俊司 坂本 英治 仲西 修
出版者
九州歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

ラット坐骨神経を緩徐に縫合した疼痛モデル(CCI : chronic constriction injury)とcomplete Freund's adjubantを使用し神経炎症を誘発させたモデル(CFA)が神経因性疼痛を誘発することが明かにされた。これらのモデルは足底への熱輻射、冷刺激、ピンプリックテストに対し足底をなめたり逃避行動をとるなどの疼痛関連行動を起こす。これらの疼痛関連行動は免疫調整剤のサリドマイドや免疫抑制剤のサイクロスポリンSの投与によって抑制されることより炎症性の物質が神経因性疼痛に関与していることが予測される。そこで神経再生に深く関与しているインターロイキン-6(IL-6)に注目し、IL-6の抗体を前投与したところ全ての疼痛刺激に対する疼痛関連行動が抑制されることがわかった。免疫染色ではIL-6のがラット脊髄後根神経節(DRG : dorsal root gangrion)、脊髄後根および神経損傷部に神経障害直後より出現し障害後3日でピークとなり、障害後14まで継続した。これはラット疼痛関連行動の程度の経過と一致する。また、ラット坐骨神経を露出しIL-6溶液を浸したオキシセルで被覆したところCCIやCFAのように疼痛関連行動が出現した。以上のことより神経因性疼痛へのIL-6の関与が明らかになった。神経因性疼痛の治療法としてIL-6拮抗薬の神経損傷後早期に投与することが有効であると考えられる。
著者
浜口 俊雄
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

観測値とGCM出力値の差からGCM出力値を統計的ダウンスケーリングする既往補正手法に,地球統計学から推定された調整パラメータの空間分布を得て,任意点でのGCM出力値の最適な補正を行う提案をした.それで得られた同出力補正値を用いて気候変動による地下水への影響評価を,高知県物部川流域沿岸部の塩水侵入度合で算定したところ,現在気候の塩水侵入度合に比べ世紀末の将来気候では,降雨による地下水涵養量が減ることで更に内陸部へ深く塩水が侵入し,農地環境は悪化する可能性があるという結果を得た.海面上昇も考慮したならば更に悪条件となる.したがって沿岸部で同様の結果となる流域を他に特定して早期に策を打つべきである.
著者
西本 豊弘 篠田 謙一 松村 博文
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

茨城県取手市の中妻貝塚から、縄文時代後期初頭の人骨100体以上がひとつの小さな土壙墓からまとまって出土した。これまでに縄文時代の遺跡からは多くの人骨が出土しているが、ひとつの土壙からこのような多数の人骨が出土した例はない。しかも発掘状況から、被葬者は堀ノ内2式期のごく短期間のうちに死亡した集落内の血縁の濃い人々であったと考えられた。縄文時代の社会組織については、住居址や埋葬形式などの考古学的事例や民族学的事例から論議されてきたが、いずれも想像の域を出ていない。とりわけ、人骨から議論されたことは一度もない。考古学を専門とする西本は取手市の依頼により中妻貝塚の発掘報告書を刊行すると同時に、1994、95年にわたり形質人類学を専門とする松村を分担者として、科学研究費助成金(一般C)の支援を受け、人骨の復元・整理・記載等の作業をおこなった。また試験的にこれら被葬者のうち29体の歯の計測値にもとづく血縁関係の分析を行ったところ、この29体に2つの家系とみられるクラスターが見出された。今回の基盤研究(C)による研究では、一つには、中妻貝塚人の歯の計測値にもとづいて推定された血縁関係がどの程度まで信頼できるかを別の方法で検討することとし、さらには中妻貝塚以外の遺跡について血縁関係を追及することとした。前者については、分子人類学的手法として、歯根部からDNAを抽出することにより血縁解析を実行した。最終的に歯の形態とDNAによる血縁関係の突合せることによって、確信のもてる血縁関係を明らかにした。歯冠計測による血縁推定とDNAによる血縁解析との対比が大きく注目されるところである。従来の単独の方法による血縁推定は精度の限界から、推定がどの程度事実を反映しているのか、検証が困難であったからである。両者の方法による結果の突合せは画期的であり、血縁推定の有効性や方法論についても大きな進歩が期待される。
著者
渡部 宗助
出版者
国立教育研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

1.「二重学年制とは」、一年進級制を前提にして同一学年に学年始期を二つ設けるもので、「雁行級」とも称されて、日本では1909年(明治42)から一部の府県、小学校で実施された。ドイツから採り入れたと思われるこの制度は、4月から8月の間に生まれた満6歳の学齢児童を9月に入学させることで、その分早く卒業させると言う経済的効果を狙ったものであった。2.他方で、満6歳学齢自動の入学時における、いわゆる「早生まれ」児童の心身発達格差に伴う負担の軽減も期待された。学校現場では就学率の上昇に伴う、学級編成の方法もテーマになっていた。この時期は、義務修学4年制から6年制への移行期であり、多くの市町村では校舎・教室不足と教員不足の対策に追われており、それに拍車をかけるようなこの政策は、歓迎されなかった。3.「二重学年制」は、小学校では1941年(昭和16)の国民学校期まで存続し、中学校ではその後も法的には実施可能の状態にあったが、実施は皆無であった。それより以前中等レベルの学校でこれを実施したのは、初等・中等一貫校(11年制)の女子学習院(宮内省所管)であった。その間全国で最高時でも16校程度であったが、大正期に児童の「個性尊重」理念からこれを導入したのが富山県富山市であり、私立成城小学校であり、女子学習院であった。4.以上の点からみれば、この「二重学年制」導入の政策は失敗であった。しかし、「画一的」と言われる日本の学校制度に風穴をあけたものとしては、意義があったと言えるであろう。
著者
秀島 栄三 神田 幸治 渡辺 研司 渡辺 研司
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では,ターミナル周辺,再開発地区など施設群が都市的サービスを提供している場面に焦点を当てたアセットマネジメントの方法論の構築を試みた.このためには「サービス」の視点からの総合的な評価,可視化技術の向上などが不可欠である.そこで(1)名古屋駅地区の水防災サービスを対象としてBIM(あるいはCIM)を活用した施設群管理システムの構築を行った.(2)施設群管理の実施例に対し,業務プロセスマネジメント手法を応用した業務効率化の方法を提案した.(3)現在すべての自治体で進められている公共施設等総合管理計画の策定事例への関与を通じて施設群管理のあり方について知見を導いた.
著者
張 明栄
出版者
独立行政法人放射線医学総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

グルタミン酸代謝調節型受容体サブタイプ1(mGluR1)が脳虚血、疼痛、てんかん等の種々の疾患への関与の可能性が示唆されている。本研究は脳内mGluR1を画像化できる有用なPET薬剤を開発し、臨床初の応用研究を目指した。その結果、mGluR1に対し高い結合特性と選択性を有する数種な新規なPETリガンド候補を見いだした。その中から、新規PET薬剤[11C]ITMMを開発し、mGluR1がヒト脳内における分布と密度を世界で初めて測定することができた。
著者
志賀 洋介 南 浩一郎 白石 宗大 上園 保仁 松井 稔 堀下 貴文
出版者
産業医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

疼痛発生のメカニズムは脊髄レベルでの機序が解析され始めG蛋白共役型受容体(GPCR)が疼痛発生に関与しているという報告がなされてきた。しかし、麻酔薬や鎮痛薬がこれらの受容体にどのように影響を与えて鎮痛作用を引き起こしているかはいまだに結論が出ていない。脊髄後根神経節(Dorsal Root Ganglia,DRG)細胞は多くの神経ペプチドが含有され、一次求心性線維中枢側から急性侵害刺激により遊離される。最近、グルタミン酸受容体が侵害刺激に関与していることが示唆されている。メタボトロピックグルタミン酸受容体(mGluR)はグルタミン酸が作用するGPCRで、同じGPCRであるムスカリン受容体などとは大きくその構造が異なる。mGluRが痛覚伝達や麻酔鎮痛機序にどのように作用しているのか興味深い。本年度は脊髄レベルでの麻酔薬、鎮痛薬の抗侵害作用におけるmGluRの役割を解析することを目的に以下の研究を行った。培養DRG細胞を用いて麻酔薬、鎮痛薬がmGluR1、mGluR5にどのように影響するかを検討し、細胞内Ca^<2+>の変動に対する、麻酔薬、鎮痛薬の影響を解析した結果、グルタミン酸により細胞内Ca^<2+>は上昇することを確認できた。さらに、アフリカツメガエル卵母細胞発現系を用いてmGluR1、mGluR5に対する影響を電気生理学的に解析し、mGluR1には麻酔薬デクスメデトミジンが抑制する事実を確認した。また、吸入麻酔薬の一部も抑制することを確認している。今後はこれらの反応に細胞内リン酸化酵素が関与を明らかにする。最終的にはmGluRノックアウトマウスを用いて行動薬理学的に鎮痛薬、麻酔薬の抗侵害作用を検討し、麻酔薬、鎮痛薬の抗侵害作用におけるmGluRの役割を総合的に解析したいと考えている。
著者
洪 恵子
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は冷戦後の国際刑事裁判権の発展が国際慣習法に与える影響を、特にユーゴ国際裁判所の判例を手がかりとして検討した。国際的刑事裁判所では適用法規として国際慣習法を重視ているが、その認定方法は伝統的方法を厳格に維持するのではなく、刑事法的考慮や自らの判決に依存するなどの特徴が見られた。各国の国内裁判への影響さらには今後の国際刑事法の立法という点から考えて、国際的刑事裁判所の判例の重要性は今後高まっていくだろう。
著者
山下 清海
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

本研究では、アメリカ・東南アジア・日本におけるチャイナタウンを対象に、チャイナタウンの形成および変容について比較検討し、各地のチャイナタウンに共通する普遍的性格を明らかにするとともに、各地域のチャイナタウンの地域的性格を解明し、それらの背景について考察することを目的とした。まず、チャイナタウンに関する内外の関係文献を収集し、文献資料のデータベースの作成を行った。また、日本の三大中華街(横浜・神戸・長崎)の現地調査を行うとともに、東南アジアのシンガポール・クアラルンプール・ジャカルタのチャイナタウンの現地調査を実施した。アメリカのチャイナタウンに関しては、本研究開始前の平成6年〜7年にかけて実施した調査成果を整理するとともに、多数の文献から考察した。これらの結果、次のようなことが明らかになった。日本の三大中華街は、いずれも観光地としての性格が強く、近年ますますその傾向を強めている点に大きな特色がある。これに対して、サンフランシスコやニューヨークなどのアメリカのチャイナタウンの一部には、日本と同様に観光地になっている所もあるが、近年、中国大陸・香港・台湾・東南アジアなどからの新来の華人の増加に伴い、郊外にニューチャイナタウンが形成されつつある。東南アジアのチャイナタウンを全体的にみると、現地の華人社会に対して経済的、社会的、文化的サービスを提供する機能が強く、チャイナタウンが観光地化しているところは少ない。
著者
大和田 勇人 青木 伸 西山 裕之
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

リガンドデータベースを活用した機械学習によるたんぱく質と化合物の結合予測を行った。インシリコ創薬は薬として有望な化合物(リガンド)をコンピュータで選別する手法であるが、ここでは化合物の化学的性質をからSupport Vector Machine(SVM)による機械学習に加えて、化合物の構造を学習するInductive Logic Programming(ILP)を組み合わせ、予測精度の向上を図った。次に、がん放射線治療の副作用低減のためにp53標的放射線防護剤を候補化合物を予測することをターゲットにした。その成果はジャーナルや国際会議で発表した。
著者
相馬 幸作 増子 孝義 林田 まき
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

北海道では、野生エゾシカによる農林業被害が深刻化し、その対策として生体捕獲ジカの短期飼育による有効活用(一時養鹿)が行われている。本試験では、一時養鹿に必要なエゾシカの短期飼育肥育特性の解明を目的とした。増体について、成獣雌鹿は出産や授乳の影響により増体量が低かった。成獣雄鹿も増体量は低いが、得られる肉重量は最も高かった。満1歳鹿は雌雄ともに肉重量は低かったが、増体量が高く、飼料効率は高かった。また、成獣では飼育環境により解体時期による肥育成績の差は出ないことが推察された。代替飼料の給与について、製造副産物などの代替飼料の活用により生産費の低減が可能であることが推察された。
著者
川村 軍蔵 安樂 和彦
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

1)蛍光灯照明下においてキンギョを用いて縦縞と横縞を識別する学習を完成後、紫外線LED照射下において紫外線反射縞模様に置き換えて識別学習行動をみた。供試魚は紫外線模様に対して識別行動を示さなかったことより、紫外錐体のみでは高度な形状識別が困難であると考えられた。2)上記の実験方法を変えて、心電図条件付法による形状識別能を確認する実験を行っているが、まだ結論を得られていない。3)紫外線LED照射下においてウグイを用いて紫外線縞模様に対する視運動反応を調べた。視運動反応装置内において、ウグイは弱い視運動反応を示したことより、紫外線視覚で運動視は可能であるが通常光下における反応より精度が低いと考えられた。4)上記の実験はテレビでモニタするため背景光に近赤外線(波長860nm)を用いたが、供試魚はこの近赤外線に感度をもつ可能性がみられた。コイを用いて近赤外線応答を網膜電図と心電図法によって調べ、両方で応答が見られた。ティラピアを用いた同様な実験では、波長860nmと940nmに心電図応答がみられ、近赤外線受容器は眼であり、上生体は近赤外線感度をもたなかった。網運動反応による受容視細胞の特定を行った結果、完全な暗順応でも近赤外線に心電図応答があることから、桿体が近赤外線受容視細胞であることが明らかであるが、錐体の可能性は否定できなかった。
著者
本村 政勝 福田 卓 吉村 俊朗
出版者
長崎総合科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

LDL受容体関連蛋白質4(Lrp4)抗体陽性重症筋無力症(MG)の臨床像と神経筋接合部病態を解明し「アセチルコリン受容体(AChR)抗体と筋特異的受容体型チロシンキナーゼ(MuSK)抗体に次ぐ、第3番目の病因自己抗体になる」という理論仮説を検証した。我々はAChR抗体陰性MG患者から、Lrp4抗体を有する9症例を報告した(Ann Neurol. 2011)。その臨床像は、男女比4対5、発症平均年齢57歳、嚥下障害を主体とする全身型MGで胸腺腫の合併は無かった。神経筋接合部生検は、3例とも運動終板に免疫複合体の沈着は無く、電顕でも運動終板の破壊像は無くAChR抗体陽性MGとは異なるものであった。
著者
福田 宏
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

斉次ポテンシャル-1/r^aおよびレナード=ジョーンズ・ポテンシャル1/r^12-1/r^6で相互作用する等質量3体問題の8の字解のモースインデックスを計算した。モースインデックスとは作用の第二変分を負にする独立な変分関数の個数である。モースインデックスの計算は,変分関数を周期Tの周期関数とした場合,コレオグラフィーに限った場合,8の字コレオグラフィーに限った場合の3通り行った。それぞれのモースインデックスを順にN,Nc,Neとする。斉次ポテンシャル系については,ポテンシャルの指数aに応じて,N=4 (0≦a≦0.9966), 2(0.9966≦a≦1.3424), 0(1.3424≦a),そしてNc=Ne=0 (0≦a)であった。レナード=ジョーンズ・ポテンシャル系については,スケール不変性がないために様々な形と大きさの8の字解が存在するが,標準型8の字解とその大きさを変化させて得られるひょうたん型の解について計算をおこなった。周期Tの大きい標準型の8の字解はa=6の斉次ポテンシャル系の8の字解と同じインデックスをもち,周期を連続的に変化させていくとNは0から12,Ncは0から4,Neは0から1に単調に増加してひょうたん型の解に至ることがわかった。この計算結果は9月に応用数理学会2017年度年会で発表した。その発表でのディスカッションをヒントに,2000年にSimoの発見したコレオグラフィーではないが8の字解に非常に近い周期解,H解とモースインデックスとの関係が明らかになった。また,作用多様体のオイラー標数とモースインデックスの関係を検討し,レナード=ジョーンズ系で周期Tが小さい時では8の字コレオグラフィーの関数空間で定義される作用多様体のオイラー標数が0で保存している事を見出した。
著者
松田 嘉子
出版者
多摩美術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

平成29年度は、アラブ古典音楽の即興演奏タクスィームに関し、特にマカーム(旋法)の構造と展開について研究を推進した。現地調査はマレーシアで行なった。研究成果展として公開講座「マカームとラーガ2」(多摩美術大学・平成29年12月)を開催した。東京音楽大学小日向英俊氏を講師に迎え音楽家による実演も伴いながら、今回はアラブ音楽の即興演奏「タクスィーム」とインド音楽の「アーラープ」の比較研究を行い、討議した。アラブ音楽ではマカームを転調しながら展開する点がインド音楽とは大きく異なり、観客にもその理解が共有された。他にも、「琵琶とシルクロード」(文京シビックホール・平成29年11月・薦田治子武蔵野音楽大学教授企画)を始めとする多くの公演や講演において、アラブ音楽の真髄であるマカームの構造を実演し解説することに努めた。平成30年3月、ビレン・イシュクタシュ博士を中心とするトルコの演奏家・研究者の企画によりマレーシアで開催されたインターナショナル・シェリフ・ムヒッディン・タルガン・ウード・フェスティバル(クアラルンプール・ユヌス・エムレ研究所)に出演し、自作曲とタクスィームを演奏し好評を博した。シェリフ・ムヒッディン・タルガンはアラブ音楽、トルコ音楽両方にとって重要な役割を果たした音楽家である。その名を冠したウード・フェスティバルでは、トルコ音楽とアラブ音楽の比較研究が行われ、タクスィームの表現や多様なプロセスを検討した。またマレーシア、シンガポール、インドネシアなど東南アジア諸国にウード音楽が浸透している現状を把握し、アラブ音楽圏の広がりについても認識を新たにする貴重な機会となった。
著者
白羽 英則 小橋 春彦 大西 秀樹 中村 進一郎 山本 和秀 小林 功幸
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

Des-gamma carboxy prothrombin (DCP)は、血管内皮細胞のKDRに作用し、細胞移動能(2.2倍)、細胞増殖能(1.5倍)を亢進させた。これら効果はKDR阻害剤により消失した。肝癌細胞のシークエンス解析からexon2の脱落したΔ2-gamma-glutamyl carboxylase(GGCX)を同定し、クローニングした。肝癌細胞においてΔ2-GGCX発現はDCP産生細胞(69%)において非産生細胞(8%)と比較して優位に高く、本来DCP非産生細胞であるHLE, SK-Hep-1は、Δ2-GGCX遺伝子導入によりDCP産生機能を持つようになった。これらの結果より肝癌におけるΔ2-GGCXの発現は、DCP産生の一因であることが解明された。Δ2-GGCX導入Hep3Bは、parental Hep3Bに対して約10倍のDCPを産生し、逆にWT-GGCX導入Hep3Bは、DCPの産生が消失した。それぞれの細胞を、ヌードマウス皮下に接種し8週間飼育した。Δ2-GGCX遺伝子導入細胞(腫瘍体積632mm^3)においては、WT-GGCX遺伝子導入細胞(腫瘍体積153mm^3)と比較して4.2倍と大きな腫瘍をヌードマウス皮下に形成し、血管新生も多く認められた。HCC患者組織(手術標本)でもDCP産生、血管新生の検討を行った。免疫組織染色の検討では、DCP発現と血管新生を示すCD31発現の相関が認められた。また、造影CTで評価したHCCのvascularityと、血清DCPの値にも相関が認められた。これらの結果より、DCPは臨床検体においても血管新生と密接な関連を持つことが判明した。
著者
川本 竜彦
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

水に富む流体と(1)堆積岩、および、水に富む流体と(2)高マグネシウム安山岩との間の臨界終端点を決定した。その結果、(1)火山フロントの下のスラブ直上では、沈み込む堆積岩層からマントルに付加される流体は、たっぷりとケイ酸塩成分を溶かし込んだ超臨界流体で、(2)マントルウェッジ内を上昇する高マグネシウム安山岩質成分を溶かし込んだ超臨界流体は、マグマと水流体に分離しマントルとそれぞれ反応し、2種類のマグマを作る仮説を提案する。
著者
宮本 淳 久留 友紀子 仙石 昌也 橋本 貴宏 山森 孝彦
出版者
愛知医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

医学部初年次チュートリアル教育においてクラウドを用いたレポート課題を課し,剽窃行為を中心に,学生のレポート作成過程の調査を続けている。レポートの作業過程を確認していくと,一見して質の低いと思われるWeb上の情報をコピペによって組み合わせ,体裁を整えただけのレポートが少なからず存在する現状が依然としてある。先行研究では,このようなレポートについて学生がどの程度コピペ剽窃をしているかについて,文字数の増加やコピペの頻度などの量的なデータに注目して調査を続けてきたが,コピペ剽窃情報の質については検討してこなかった。どのような教育的介入がコピペ剽窃だけに頼らないレポートの質の向上に繋がるかを考える上で,学生がどのような質の情報に頼ってレポート作成しているのかを調査することは非常に重要な視点であろう。そこで平成28年度の研究では,初年次学生がどのような情報に依拠してレポートを作成しているか,特に情報源の信頼性に着目して調査した。その結果,初年次学生のレポートにおいては情報源として書籍よりもWebを数多く引用していること,Web資料については,四次資料,すなわち三次資料にも該当しない,大学生以上のレポートの根拠として利用できる信頼性を有していないと考えられる資料を多くの学生が利用していることが明らかになった。平成29年度の研究では,こういった問題のあるWeb上の資料をどのように引用,あるいは「コピペ」しているかについてプロセス分析での調査をした。その結果,一次・二次・三次資料からのコピー&ペーストの場合にはその殆どが正しい形式で引用されているのに対して,四次資料の場合は半数以上がその出典は「不記載」であった。レポートを作成する際に,四次資料に依拠する場合には Webページ上の情報をそのままコピペして使用されることに繋がりやすく,その出典は明記されない傾向が明らかになった。
著者
小川 登紀子
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

疲労ストレスを受けたラットの下垂体では、ホルモン分泌細胞の機能に異常を生じることを見いだした。中間葉のメラノトロフには、視床下部からの持続的な刺激により引き起こされたストレスに起因した細胞死が起こることを、前葉のソマトトロフは、増殖刺激に対する反応性が失われることを報告した。また、これらの機能異常の分子メカニズムについて研究を行い、関連する分子を明らかにした。
著者
小原 功任
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

多変数超幾何関数について数式処理を利用して新しい公式を導出した。超幾何関数の有理変換公式、A-超幾何多項式の特殊値をグレブナー基底を使わずに高速に計算する手法の開発、パラメータ付きホロノミーD加群に対するアルゴリズム(b-関数)や、グロタンディーク留数の計算アルゴリズムなどの結果を得た。アルゴリズムは、数式処理システムRisa/Asir上にプログラムとして実装した。