著者
井上 勝生
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

昨年夏、家族が事故にあい、その介護などのため、現地調査が必要な本研究は滞った。昨年度は、そのようななかでも、研究誌(東学農民戦争特集号)に、論文と史料紹介発表を実現することが出来た。論文と史料紹介の2本で、京都大学人文科学研究所『人文学報 特集 日清戦争と東学農民戦争』111号に、巻頭論文「東学農民戦争、抗日蜂起と殲滅作戦の史実を探究して――韓国中央山岳地帯を中心に――」と史料紹介「東学党討伐隊兵士の従軍日誌――「日清交戦従軍日誌」徳島県阿波郡――」を発表した。史料紹介は、東学農民軍殲滅に従軍した四国出身、一日本兵士の「従軍日誌」復刻である。後備兵への応召、東学農民軍討滅のための渡韓。ソウルから三路に分かれ出軍。東路進撃。京畿道・忠清道での討伐。東の慶尚道を討伐しつつ南下。縦断する山岳を越え、西の全羅道へ転回。農民軍主力が集結していた南原から、長興、羅州へと東学農民軍を殲滅。公式記録に記されない現場の様相を兵士が記した「従軍日誌」を原文通りに復刻し、農民軍の拠点村々全部の焼き打ち。銃殺、焼き殺し、銃剣による刺殺、苛烈な戦闘状況など。忘れられていた戦場を韓国側研究者と共同の現地踏査と、文献資料にもとづいて検証した。その結果、討伐戦争が、これまでの想定をおおきく越える徹底したものであったこと、戦場も、知られていなかった利川、東幕里、城内里、文義・沃川、南原などを現地調査し、もっと広範なものであったことなどを検証した。この「従軍日誌」現地調査は、韓国の東学農民戦争第一線の研究者らと共同で行ったが、まだなかばを残している。
著者
宮崎 征行 井町 寛之 大橋 晶良
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

微生物が作り出すマンガン酸化物はレアメタルを吸着しやすい事が知られている。そこで、本研究ではマンガン酸化物を連続的に作り出すことができる微生物群集をバイオリアクターに集積培養することを目的とした。植種源には海底堆積物サンプルを、バイオリアクターにはdown-flow hanging sponge (DHS) リアクターを採用し、二価のマンガンを含む人工海水を基本とした培地をリアクターに供給した。その結果、DHSバイオリアクター内に独立栄養細菌とマンガン酸化菌が繁茂し、微生物が生成したと思われるマンガン酸化物の生成が確認された。
著者
棚村 政行
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、日本における面会交流の合意形成支援、面会交流の円滑な実現のための支援の具体的な仕組みについて、明石モデルとも言うべき自治体の先進的取り組み、司法・行政・民間の連携に基づく具体的な支援策の提言をすることができた。本研究では、面会交流の紛争が生ずる当事者に対するヒヤリング及びアンケート調査、面会交流支援者の資格や経験、面会交流支援団体の規模、活動及び運営上の課題や問題点についても明らかにすることができた。本研究の成果として、2015年5月に、全国の自治体に対して、厚生労働省が明石モデル等の普及・活用を進める報告書を公表し、面会交流や養育費支援を強く打ち出した。
著者
坂口 貴弘
出版者
創価大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

文書館等のアーカイブズ施設において近現代の公文書や個人・団体の資料を閲覧に供する際は、資料中に個人情報や企業情報、治安・防衛等に関する情報(以下「秘密情報」と総称する)が含まれているかを点検し、場合によっては公開を一定期間制限する必要がある。この作業は複雑かつ多大な労力を要し、特に小規模施設における資料公開を著しく阻害している。本研究では、諸外国のアーカイブズにおける秘密情報保護と公開促進の両立をめぐる歴史的経緯とその背景を検証するとともに、国内外の各種アーカイブズ施設の実地調査に基づき、近現代資料の受け入れから公開に至る方法論の適正化と標準化を図る。これまでの研究から、本テーマは単に文書館における保護・公開制度の現状を分析するだけでは不十分であり、記録管理及びアーカイブズのシステム全体を包括する視点から、通時的かつ領域横断的に考察する必要があることが判明した。そこで本年度は、第二次世界大戦後のアメリカ合衆国における重要記録保護プログラム(vital records program)の普及に大きな役割を果たした全米記録管理評議会(National Records Management Council(NAREMCO))の活動について分析した。米国国立公文書館及び議会図書館等が所蔵する一次資料に基づき、NAREMCOが同プログラムの意義と役割をどのように説いていたかについて、その時代背景を踏まえつつ考察を進めた。その成果は、次年度に口頭発表および論文の形で公表する予定である。
著者
宇佐美 しおり 西阪 和子 田中 美恵子
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

平成18年度は九州管内の私立K精神病院にて、海外のアサーティブ・トリートメントモデル(以後ACT)が日本の精神障害者を対象として実施できるのかどうか、についてのパイロットテストを行った。GAF35以下、入退院を繰り返すか長期入院の患者で本調査に同意の得られた統合失調症患者5名(介入群)にACTを実施し、その評価を病状、日常生活機能、社会的機能、ケア満足度で行い、また介入内容を記録に残し、介入内容の検討を行った。介入は海外のスタンダードにそって実施し、介入にあたってはスタッフ訓練を行った。これらの結果を対照群5名の結果と比較した。その結果、ACTチームのフィディリティスケールが若干低いこと、地域資源をチームメンバーにいれることが困難であったが、海外のスタンダードにそって介入が可能であることがわかってきた。そこで、平成19年度は、ACTチームを固定化して、介入群10名、対照群10名で介入前後の比較を行った。ACT介入群の病状、日常生活機能、社会的機能は入院時、退院時、退院3か月後と改善し、対照群と有意な差がみられていた。また介入内容については地域での生活を念頭にいれた介入が中心的となっていたが、患者のニーズを中心とした支援より、再燃予防を目的とした介入であることが明らかとなった。今後、病状を含めた患者のニーズを中心とした介入の必要性が示唆された。
著者
岡部 嘉幸
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究課題では、現代語でも近世後期江戸語でも用いられる複数の文法形式(助動詞など、文法機能を果たす形式、たとえば、ハズダやカモシレナイなど)について、当該形式の近世江戸語での意味・機能的な特徴を、近世後期江戸語と文法体系の似通っている現代語との比較・対照という手法を用いることで明らかにした。また、本研究課題における文法形式の分析の中心は、モダリティ形式であったが、この分析の過程で、先行研究において議論の錯綜している「モダリティ」という文法概念の再検討も行った。さらに、江戸語資料の資料ジャンルの多様性や言語量の確保のため、他の研究課題と連携しつつ、人情本・洒落本のコーパス化も行った。
著者
松田 英子 岡田 斉 福田 一彦 川瀬 洋子
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

睡眠障害は世界中でよくみられる健康問題であるが,特に日本人の成人,若年成人における睡眠の不調は深刻である。労働者は大学生より悪夢症状をより強く訴える。また縦断調査から希死念慮・自殺企図の予防には悪夢症状の改善が重要であることが示唆された。しかし日本人は服薬抵抗感から,悪夢症状があっても,受診する,投薬治療を受けるなどの対処行動をあまりとらないため,睡眠衛生教育や認知行動療法などの非薬物療法の効果が期待されている。本研究は,認知行動療法の介入の効果を,一事例実験デザインによる複数の事例研究と準実験研究を実施し,悪夢障害とPTSDの悪夢症状の低減効果を確認した。
著者
伊藤 正敏 熊野 広昭 窪田 和雄
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究は、がん患者の情動変化を客観的に脳画像として評価する方法を開発し、心理テストを補足する情動検査法を確立することを目標とする。昨年度の研究により全身ポジトロン断層検査(PET)を用いてがん診断を行った72症例の脳画像を用い、帯状回、視床下部、海馬等の大脳辺縁系における広範なブドウ糖代謝の低下を認めた。この変化が脳器質障害によるものなのか、あるいは心因性の障害なのか不明であった。そこで、ドイツのアルバート・ルートヴィヒ大学核医学科との共同研究として、ドイツでのがん患者の脳の解析を行った。年齢・性別をコントロールした正常患者10名との比較をおこない、がん患者と比較した結果、前頭前野、側頭頭頂葉皮質、前・後部帯状回、大脳基底核、などにおいて代謝の低下が確認され、東北大学データを近い結果を得ることができた。また、癌患者21名を、(1)抑鬱度、(2)不安、(3)化学療法の有無、(4)残存癌組織の有無、の四項目に関してサブグループに分け、サブグループ間解析を施行した。その結果、前頭前野、側頭頭頂葉皮質、前部帯状回における代謝低下は、抑鬱度および不安と強い負の相関を示すことがわかった。化学療法の影響が前部帯状回で、腫瘍組織の残存という因子の影響は、小脳および後頭葉において観察されたが、がん患者に観察されるこのような代謝異常は、癌組織による脳に対する生物学的影響というよりも患者の心理的な間題により引き起こされている可能性が高いという結論を得た。一連の研究結果は、スペイン、バルセロナにおけるヨーロッパ核医学会で注目すべき演題として紹介された。
著者
吉朝 朗
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

地球の下部マントルは、主にペロブスカイト型(Mg,Fe,Al)(Si,Al)O_3固溶体と岩塩型(Mg,Fe)O固溶体により構成されていると考えられている。地磁気測定から下部マントルは高い電気伝導性(10^0〜10^1S/m)をもつことが知られている。局所構造における振動特性の理解は複雑に絡み合った物性を理解するうえで重要である。EXAFS法は局所構造の振動特性の情報を与えてくれる。振動の非調和性は、イオン伝導のような物性と直接関係してる。本研究において、下部マントル構成鉱物の結晶の電気伝導度と導電機構を精密に調査した。下部マントル鉱物等の単結晶や均一組成試料を26GPa2000Kなどの極端条件下で合成を行った。複素インピーダンス法を用いて、高精度で導電率を測定した。マントル遷移層の主要構成鉱物のメージョライトガーネットやペロブスカイト型固溶体、岩塩型固溶体等について、回折法やEXAFS法による精密構造解析、各種分光法や分析法によるキャラクタリゼーションを高精度で行なった。EXAFS法による局所構造解析から高温高圧下での伝導イオンをポテンシャル障壁上に見い出す確率を見積もった。確率は、超イオン伝導状態の鉱物では融点近くの高温域で数パーセントに及ぶ。アナログ物質を含めたペロブスカイト型化合物は、融点近くの高温域でイオン伝導体であり、イオン移動の活性化エネルギーは約2.0eV(intrinsic:内因的)であることが明瞭になった。本研究により下部マントルでの高い電気伝導度はペロブスカイト型鉱物の内因的導電機構では説明できないことが明らかになった。下部マントルでの導電機構の可能性として、ペロブスカイト型固溶体の共晶反応を伴った外因的イオン伝導機構、あるいは、岩塩型固溶体のlarge-polaronによる導電が想定できる。
著者
有田 和徳 時村 洋 宮田 篤郎 栗原 崇 貞村 祐子 鮫島 芳宗
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

脳卒中後疼痛モデルマウスにおける安定した機械的アロディニア反応および情動行動異常の検出法を確立し、機械的アロディニア反応、自発運動量増加はミクログリア活性化阻害薬(ミノサイクリン、p38MAPキナーゼ阻害薬)が有意な抑制効果を示した。また、N型Caチャネルは、脳卒中後急性期の疼痛行動に関与する可能性が示唆された。一方、脳卒中後少なくとも亜急性期までは、顕著な抑うつ様行動変化は観察されず、慢性期におけるより詳細な検討が今後必要である。
著者
高澤 知規 三輪 秀樹 林 邦彦 高鶴 祐介
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

老化促進マウスであるSAMP8とコントロールマウスSAMPR1を用いて術後モデル動物を作成し、抗菌薬のミノサイクリンに術後認知機能障害(POCD)の予防効果があるかを調べた。POCDは麻酔よりも手術による侵襲により引き起こされること、ミノサイクリンにPOCDの予防効果があることを発見した。SAMP8ではミノサイクリンによって術後1日目のTNF-α濃度の上昇が抑制された。ミノサイクリンは血液中のサイトカイン濃度を低下させPOCDの予防効果を発揮することが示唆された。ミノサイクリンが術後の認知機能に与える影響を調べるMINPOC-Jトライアルは、予定数のデータ取得がほぼ終了した。
著者
恵川 淳二 井上 聡己 川口 昌彦 瓦口 至孝
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の目的は、テトラサイクリン系抗生物質であるミノサイクリンの脳への直接投与が頭部外傷モデルのマウスの運動機能、高次脳機能を改善するかについての研究を行なっている。評価の方法としては、行動実験、組織学的評価、生化学的評価を用いて行う計画としている。現在、動物の倫理的扱いに十分留意してし、実験を行なっている。頭部外傷モデルは、安定した作成が可能となった。現在、inverted gird試験を用いた行動実験を行なっている。Invereted grid 試験の評価方法としては、体重×落下までの時間を計算し、頭部外傷前からの変化率で評価を行なっている。個体による差が非常に大きく、サンプル数が不十分なため、統計学的にはミノサイクリン投与群と生理食塩水投与群で有意な差は見られていないが、ややミノサイクリン投与群で良い結果を示している傾向がある。今後、サンプル数を増やして行く必要がある。組織学的評価についても、手技的には大きな問題を生じず行うことができるようになった。頭部外傷48時間後の外傷部のミクログリアやアストロサイトの活性の評価及びHE染色を用いた欠損体積について検討を行なっているところである。欠損部体積については、ミノサイクリン投与群で小さい傾向にあるが、こちらについてもサンプル数を増やして統計学的検討を行って行く必要がある。生化学的評価は、組織学的評価終了後に検討して行く予定にしている。
著者
山名 仁 筒井 はる香 山名 朋子
出版者
和歌山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、19世紀前半のウィーンにおいて、フォルテピアノのペダルが6本あるいは7本と増えその後減っていく過程と、ウィーンの連弾楽譜の出版状況の推移との間に密接な関係があることを明らかにした。またウィーン連弾文化の精華ともいえるシューベルトの全連弾作品において上記ペダルの多数の組み合わせを検討し、①ペダルの間隔が狭いのは一本の足で2つのペダルを同時に踏むことを想定していること、②6本のペダルを2本の足で操作することは困難だが、4本の足を使えばペダルの効果を最大限に活かすことができるということを、実際の演奏を通して明らかにした。
著者
岩井 敏洋
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

微分幾何学的手法で、(1) 猫の宙返りモデルのポートハミルトン形式での定式化と制御、及び計算機内での宙返りの実現、 (2) 対称性群の両側変換のもとでの線形変形体の古典及び量子力学の簡約化、(3)回転群の離散部分群のもとで不変な、2次元球面上で定義されたパラメータ付きエルミート行列に付随する固有空間バンドルのチャーン数のパラメータ依存性、 (4) 行列の特異値分解に対応するリーマン幾何学的最適化問題の解法、(5) その他の課題をそれぞれ研究した。
著者
津久井 宏行 冨澤 康子
出版者
東京女子医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

2-アミノエタンスルホン酸(タウリン)術前投与による開心術後急性期における有効性の検討【目的】人工心肺使用下の心臓手術に伴い、心筋内タウリン含有量が減少することが指摘されており、このことが術後急性期における心不全の原因の1つと推察される。タウリンの術前投与による開心術後急性期における効果は未だ立証されていないため、その有用性について検討した。【対象】待機的心臓外科手術患者21名を対象とした。【方法】上記患者を無作為にタウリン内服群(術前7日前より3g/日)と非内服群に分けた。心筋保護は、大動脈基部より間欠的順行性に行った。人工心肺開始前と大動脈遮断解除後30分の2点で心房筋を採取した。術後は、収縮期血圧100mmHg以上、心係数2.5/min/m^2以上、Ht25%以上を指標に強心剤・末梢拡張剤・抗不整脈薬の使用、輸血を適宜行った。術中は自己心拍出現の有無を、術後は、心拍数、血圧、肺動脈圧、中心静脈圧、尿量、心係数、Sv02を計測するとともに、血液・生化学検査を行った。術後、カテコラミン、末梢拡張剤、抗不整脈薬の使用量、不整脈の出現の有無、出血量、輸血の有無、術後挿管時間、IABP挿入時間、ペースメーカー使用の有無について検討した。術中得られた標本から心房内タウリン含有量を測定した。【結果】両群とも大動脈遮断解除後、心房内のタウリン含有量の低下傾向が認められたが、タウリン内服群においては、その傾向が小さい傾向にあった。術前のタウリン内服により必ずしも心房内含有量の上昇は認められなかったが、タウリン内服群においては、不整脈の出現、術後カテコラミン量・使用数、Ca補正目的のCa製剤使用量の減少傾向が認められた。【総括】タウリン内服群では、開心術後急性期における有用性が認められた。今後、タウリンの至摘内服量、期間を検討することによって、術前タウリン内服による術後急性期における更なる有効性が示唆された。
著者
寺田 暁彦 石崎 泰男 吉本 充宏 上木 賢太
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

土壌気体水銀(GEM)放出率測定方法を構築して,箱根火山大涌谷噴気地において観測試験を行い,有効性を確認した.この結果に基づき,草津白根火山においてGEM観測を2017年に行った.その結果,将来噴火口になり得る破砕帯に相当すると思われる,高GEM放出域を白根火砕丘の南および南西斜面に見出した.また,地質調査に基づき,白根火砕丘南側から本白根山にかけて,過去に爆発的噴火が繰り返し発生してきたことが判明した.既存の物理観測網は湯釜火口湖を取り囲むように配置されている.現状よりも南側領域における観測点の整備が,今後の草津白根火山の監視上の課題である.
著者
荻野 佳代子 稲木 康一郎 北岡 和代 増田 真也
出版者
神奈川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

対人援助職のバーンアウトへの介入に向け,ワーク・ライフ・バランス(WLB)風土の測定尺度を開発し,バーンアウトとの関連を検討した.この結果, WLB風土は「上司の支援」,「スタッフのチームワーク」,「'ワーク'最優先」,「'ライフ'の尊重」の4因子から構成されていた. 4因子すべてがバーンアウトに関連していたが,とくに「上司からの支援」にバーンアウトに対するより強い関連がみられた.さらにWLB風土醸成によるバーンアウト予防プログラムを開発・実施した.
著者
遠藤 俊明
出版者
札幌医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

多嚢胞性卵巣症候群polycystic ovary syndrome(PCOS)の原因が、男性ホルモンの暴露によるのではないかと考えられている。今回、男性ホルモンとPCOSの関係を、男性ホルモンを投与された性同一障害のfemale to male taranssexuals(FTM)をPCOSモデルとして検討した。結果は男性ホルモン投与により、内分泌学的にも、組織学的にも部分的ではあるが2次性のPCOS状態になることが判明した。このことにより、男性ホルモンの暴露がPCOSの原因の一つであることが示唆された。
著者
東海林 洋子 水島 裕 嶋田 甚五郎
出版者
聖マリアンナ医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

我々はこれまで、単純ヘルペスウイルスI型(HSV-I)をターゲットとして、アンチセンスDNAを合成してきて、スプライシングのある限局した部分をターゲットとした場合にのみ、高い抗ヘルペス活性を認めてきた。そのメカニズムとして、スプライシングに必要な高次構造を崩すことにより高い抗ヘルペス活性を示すことを認めている。しかしながら、例外として、配列の中にGXGGG (X=A,T,C,G)を含む時には、アンチセンス配列を含まない場合にも、高い抗ヘルペス活性を認めた。ひとつの要因として、フォスフォロチオエート型オリゴヌクレオチド(S-ODN)の有する蛋白結合性に着目した。フォスフォロチオエート型オリゴヌクレオチドは血清蛋白との結合率は86.6%と天然型ODN(D-ODN)が21.6%に比べ高かった。また、ウイルスそのものとの結合率も、D-ODNが5%以下であるのに比べ、S-ODNは約50%がウイルスと結合した。そこで、S-ODNの抗ヘルペス活性のメカニズムの一つにウイルスの吸着阻害が考えれらた。ウイルス吸着阻害を検討すると、S-ODNでは、感染の初期にウイルスの吸着阻害が認められた。この吸着阻害がS-ODNの高次構造と関連があるものとみられ、CDスペクトラムを検討したところ、4重鎖構造を示唆するパターンが得られたが明確ではなかった。さらに、カチオン性リポソームによる活性増強を試みたところ、D-ODNによる活性増強は認められたものの、S-ODNでは活性の増強は認められなかった。この一因として、S-ODNの蛋白結合性、高次構造がむしろ、カチオン性リポソームの効果を阻害しているものと思われた。アンチセンス医薬品の第1号が発売されたのは、画期的なことであるが、連続したG配列を含む場合には、アンチセンス以外のメカニズムが存在することにも留意すべきであろう。
著者
河合 久仁子 中下 留美子
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究はモモジロコウモリが根室海峡を飛翔しているという知見に対し、その生態を明らかにし、適応的意義を考察することを目的とした。このため、音声調査、標識捕獲調査、皮膜および体毛の採集による安定同位体比解析および集団遺伝学的解析を行った。その結果、海上を飛翔する個体が海で採餌している可能性は低く、海上飛翔は特定の気象条件の時のみ観察されること、およびモモジロコウモリ以外の種も海上を飛翔していることが明らかになった。標識再捕獲調査では国後島、知床半島および海上で捕獲された個体の直接的移動はこれまで確認されていないが、これらの地域に生息する個体の遺伝的分化はほとんどないことが明らかとなった。