著者
小川 秀司
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ネパールの主にShivapuri Nagarjun国立公園でアッサムモンキー(Macaca assamensis)を観察した.同地域のアッサムモンキーは,他のマカカ属の種と同様に母系の複雄複雌群を形成し,オスはマウンティングや抱き合い行動を行って,その際相手のペニスを触る事があった.また,オスは群れのコドモを抱く事もあった.しかし,タイに生息するアッサムモンキーやアッサムモンキーと近縁なチベットモンキー(M. thibetana)とは異なり,相手のペニスを舐める行動やブリッジング行動(2頭のオトナが一緒にコドモを持ち上げる行動)は,ネパールのアッサムモンキーでは観察されなかった.
著者
瀧田 輝己 田口 聡志 太田 康広 福川 裕徳 上枝 正幸 武田 史子 椎葉 淳 矢澤 憲一 奥田 真也 原田 保秀
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、我が国でも重要な課題といえる内部統制報告制度およびその監査制度の意義ないし制度的な効果について、理論研究、規範研究、実証研究、および実験研究という4つの研究方法からアプローチすることを目的とするものである。そして、具体的な検討対象である内部統制監査制度の意義や効果を各方法論から多面的に分析していくだけでなく、各研究方法の根底にある基本的な立場を明らかにし、究極的には、監査研究における各研究方法の相互理解ないしコラボレーションの可能性を模索していくことを目指すものであった。3年間のプロジェクトの結果、多面的な方法論から、ワークショップ開催、学会発表、論文執筆をおこなうことができた。
著者
斎藤 悦子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

日本のCSRは、環境問題解決に特化され、ステイクホルダーである生活主体としての労働者・消費者・家庭人・地域住民への社会的公正性や倫理性、人権に関する取組みが遅れている。本研究は、生活主体の立場から、CSRを考察し、社会的公正性、倫理性、人権といった領域に、いかに関わることが可能かを検証した。Grosser & Moon(2006)の研究をもとに、市場、政府、市民社会という3つのアクターと日本のCSRの関係、とりわけ日本では論じられることのなかったCSRと市民社会の在り方を事例研究により明らかにした。
著者
山崎 貴男 前川 敏彦
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

自閉症スペクトラム(ASD)では社会コミュニケーションが障害される.本研究はASDの腹側(顔認知)視覚路(「社会脳」)の機能変化について調べた.ASDと定型発達(TD)成人で視覚誘発電位を記録した.赤緑(RG), 黒白(BW), 顔刺激を用いた.TD成人に比べて,ASDではRGのN1潜時延長,BWのN1潜時短縮,顔のP1潜時短縮,N170潜時延長を認めた.これらの所見は,ASDはV1での細部の処理に優れるが,色処理は障害されること,V4でのゲシュタルト顔処理も障害されることを示唆する.従って,腹側視覚路(「社会脳」)の機能変化がASDの社会的処理の異常に関与している可能性が示唆された.
著者
中根 秀之 田中 悟郎 木下 裕久 一ノ瀬 仁志
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

この研究の目的は、長崎でFEPの発生率を明らかにすることである。 我々は、1年の期間(2011年8月から2012年7月まで)の間、コホート研究を行った。 研究対象者は、キャッチメントエリアである長崎市近郊の精神科医療機関を受診した長崎市に在住する初診患者である。合計25人がFEPと特定された。 推定された年間発生率は、(概算にて)10,000人につき0.76であった。 精神病未治療期間の中央値は49日、平均値は1278日であった。 昭和53年~54年に長崎市で実施されたWHO共同研究DOSMeD Studyと比較したところ、概算では年間新規発症率が低い値となることが現在までの調査で推定された。
著者
長谷川 真里
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、幼児、児童、青年における道徳感情帰属を検討した。(1)幼児にHappy Victimizer反応がみられたが、被害者情報の強調などの場面操作により減少した。(2)入り混じった感情理解はHV反応の調整要因となる可能性が示唆された。(3)仲間関係のジレンマ場面では青年期になってもHV反応が見られた。(4)類似の欧米の研究と異なり、日本の青年はHappy Moralist反応が少なく、比較文化研究の必要性が示唆された。(5)道徳感情帰属と行動の関連性について弱い証拠が得られた。幼児でも、道徳的意思決定に道徳感情を利用することが示唆された。またそれは感情の種類によって発達の様相が異なった。
著者
岸 努
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

細胞周期G1期に機能するタンパク質群の発現を活性化する転写因子Swi5は、G1後期にユビキチンリガーゼSCFCdc4に依存して分解される。分解を受けずに安定化する安定化型Swi5を発現する細胞では、S期開始、染色体の分離、M期の終了が阻害された。この機構を解析した結果、G1期には、以降の細胞周期の進行を阻害する因子が存在すること、それらの発現をSwi5が活性化すること、Swi5がSCFCdc4によって分解されると細胞周期の円滑な進行が可能となることを明らかにした。
著者
田中 朋弘
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本年度は、年度内に三回の研究会を開催し、1)田中朋弘「ベナーのケアリング論-規範倫理学的観点から」(『先端倫理研究』第12号、熊本大学倫理学研究室紀要、pp.27-42、 2018年3月)、2)田中朋弘、「生と死をめぐる倫理-「気づかい」を手がかりに」、『生と死をめぐるディスクール(仮題)』(脱稿・共著出版予定)、として研究成果をまとめた。以下に、研究成果1) の概略を記す。ベナーのケアリング論は、人間存在におけるケアリングの第一義性を出発点にして、ケアリング実践としての看護の本質について明らかにしようとした一連の議論である。ケアリング実践としての看護は、テクネーに関わる専門性とフロネーシスに関わる専門性に分けられ、卓越した実践者になるためには、それら両要素の熟達が必要となる。ベナーの議論に特徴的なのは、そうした構造を理解するために、「スキル獲得の五段階モデル」を採用して分析を行う点にある。実践は、その基盤として職業的なコミュニティを前提とし、実践に埋め込まれた諸善の達成が目標とされる。ベナーは、ケアの倫理を、いわゆる正義の倫理、手続き的な倫理、原理に基づく倫理よりも基底的と位置づけ、「達人レベル」に達した卓越した実践者は、そうした諸原理を文脈や関係性を飛び越えてただ無条件に適用するのではなく、実践に埋め込まれた諸善の達成を目標としながら、それをとりまく人間の関係性の中でそれらを位置づけることになる。ベナーは、自律は成人の発達の頂点ではなく、ケアと相互依存こそがその究極目標であると述べているが、それは自律を基底的な道徳的価値と見なす立場とは強い対照をなし、その点ではそれは「ケアの倫理」の系譜に位置づけられる。他方でベナーの議論は、「実践」や実践に埋め込まれた善を重視し、倫理的熟達や卓越性を重視するという点では、徳倫理学あるいは共同体主義的である。
著者
永井 宏史 久保田 信
出版者
東京水産大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

刺胞動物門に属するクラゲはすべてが刺胞毒を有し、そのうち強力な刺胞毒を有するいくつかのクラゲは世界中で海水浴客や漁民に刺傷被害を与え、死亡例も報告されている。クラゲの毒素の化学的性状の解明についてはほとんど手つかずの状況であった。これは、それまで研究されたすべてのクラゲ毒素が非常に不安定であることに主に起因していた。このような状況のもと、我々は非常に不安定なクラゲタンパク質毒素を比較的安定に取り扱う方法を見出し、クラゲ数種からタンパク質毒素を活性を保持したまま単離することに成功した。さらに分子生物学的手法を用いてアンドンクラゲ(Carybdea rastoni)、ハブクラゲ(Chiropsalmus quadrigatus)、Carybdea alataの計三種の立方クラゲのタンパク質毒素の全アミノ酸一次配列の解析に成功した。これはクラゲ毒素類の化学的性状が明らかにされた初めての例である。これら立方クラゲ類の毒素同士は相同性があるが、既知のタンパク質とは全く相同性を有していなかった。つまり、我々の研究により新奇な生理活性タンパク質ファミリーの一群を見出すことができた。
著者
大園 享司
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

南西諸島の亜熱帯から本州の暖温帯に至る常緑広葉樹林において、落葉の漂白に関わる菌類の多様性、漂白部の化学組成およびその落葉分解にともなう変化、そして落葉漂白菌類の地理的分布を実証した。沖縄本島北部の亜熱帯林における継続観察により8属の菌類が漂白に関与しており、落葉中のリグニンの選択的除去が炭素と窒素のターンオーバーを促進していることを示した。石垣島から佐渡島に至る20地点では計62種の菌類が漂白に関与しており、落葉上の漂白面積率は年平均気温の低下にともなって減少した。以上により、リグニン分解に関与する菌類の多様性と機能の点から、本邦亜熱帯林の土壌分解系について新規性の高い成果が得られた。
著者
小橋 浅哉 谷川 勝至
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

紙は、植物を原料として製造されるパルプを主な成分としている。紙類に含まれる放射能のレベルや紙類をめぐる放射性核種の動態を明らかにするため次のような研究を行った。1 書籍中の^<137>Cs濃度の発行年に伴う変化は、^<137>Csフォールアウト降下量の年変化のパターンによく似ている。その原因を明らかにするために、国内で1960年代に印刷された書籍について、中身と表紙に分けて^<137>Csの含有量を測定した。中身はほとんど^<137>Csを含んでいなかった(0.2 Bq kg^<-1>以下)。表紙については、芯材の板紙が稲わらを原料とする黄ボールのものは^<137>Cs濃度が高く(1.0-5.7 Bq kg^<-1>)、チップボールのものには^<137>Csは検出されず、半黄ボールのものは両者の中間の濃度を示した(0.2-1.0 Bq kg^<-1>)。このことから書籍に含まれる^<137>Csは、ほとんど稲わらから来たことがわかった。書籍中の^<137>Cs濃度と^<137>Csフォールアウト降下量の年変化の類似は、稲わらの^<137>Cs含有量の年変化および1960年代半ばからの表紙の板紙の種類の変化により説明できる。2 国内で1990年代に発行された新聞および情報用紙について、天然放射性核種(^<226>Ra、^<228>Ra、^<228>Th、^<40>K)およびフォールアウト核種(^<137>Cs)の放射能を定量した。新聞試料中の天然放射性核種の濃度は低かった。情報用紙の一つには、30 Bq kg^<-1>もの濃度の^<228>Raおよび^<228>Thを含んでおり、これらの核種は、填料のカオリナイトによってもたらされたと推定された。^<137>Csは、情報用紙においては検出されなかったが、新聞については全試料において検出された(0.1-0.2 Bq kg^<-1>)。新聞用紙については、使用されている機械パルプに原料木材に含まれていたフォールアウトの^<137>Csの一部が残っているため、^<137>Csが検出されたと推定された。紙類に含まれる放射能の測定データをもとに、紙類の燃焼に伴いごみ焼却場から排出される放射能の影響について、石炭との比較により考察した。
著者
蝦名 敦子
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

一年目の研究として、子ども達の実践的考察を次の二つの観点から行う。一つは学校教育における図画工作の表現である、造形遊びと絵や立体・工作について。二つ目は学校外で実施した展覧会である。一つ目は、これまでの実践から、子どもの造形活動と空間の問題を振り返った。子どもは自らの身体感覚を働かせながら,造形空間を感じ取り認識していく。造形遊びではそれが顕著で,場所の空間を確かめながら,より大きな造形空間が把握されている。絵や立体・工作では,主題に応じて造形空間が作品とともに見出されていく。共同製作ではさらに充実した展開を見せた。同じ造形活動によって意識される「空間」であっても,そのプロセスに異なった方向性が見られる(「子どもの造形活動による空間把握の特性―実践的考察を通して―」「弘前大学教育学部研究紀要クロスロード」第22号に掲載)。二つ目の学校外での実践では、2017年8/4~6にかけて開催した「みんなでつくる形と空間」展の内容について、これまで実施した展覧会と対比的に考察した。課題を明確にし、次の展覧会に向けての方向性を探った。「空間」について定義づけながら、これまで筆者が先に行った3つの展覧会と比較して、本展覧会の成果と課題について考察したが、特に子どもの造形活動と空間の問題に注目して、造形空間と展示空間が論点となる。その切り口からそれぞれの展覧会の特徴について整理すると、本展覧会は遊具を設置した展示空間でありながら、光と影の造形空間を創り出すことができた点が特徴的である。今後は「形をつくる」方向をさらに強め、イメージの問題に関連づける。造形遊びからよりイメージに訴え、仕掛けによる展示空間を準備しながら、その空間を造形空間として創っていくような場が課題となる(「『みんなでつくる形と空間』展の成果と課題―ワークショップ型展覧会の比較考察を通して―」「芸術文化」第22号に掲載)。
著者
宮地 泰造
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

複数の超音波ビームの交差点に、可聴音が外部にほとんど出ない小さい音空間球を生成する新方式を開発する。音生成素子群において、隣接する素子の位相差を180度にする手法を導入した.これに基づく3つの方式(1)音空間外への可聴音の生成を大幅に削減する、(2)同心円状の配置により可聴音の生成を弱める、(3)超音波の方向を内側に集めると、それらの相乗効果において、大きな進展があった。
著者
上床 輝久 藤原 広臨
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、発達障害の傾向を持つ大学生において、社会的能力やコミュニケーション能力のアンバランス等の特性が就職および就労能力に与える影響について、その精神的健康における要因及び環境的な要因を明らかにすると同時に、特性や能力に応じた就職/就労支援プログラムを開発し、その効果を科学的に検証することを目的としている。本年度も、引き続き健康診断会場での質問紙調査および二次面接調査を実施し、大学生における心理発達傾向と修学状況、就職活動・就労への不安および期待、必要な支援環境等についての調査を行った。二次面接調査については、来年度以後も引き続き実施すると共に対象者を追跡し、長期的な結果について観察を継続する予定である。また、これまで集積した知見を通じて、具体的な支援プログラムとして、スマートフォンを活用した認知行動療法に焦点を当て、京都大学医学研究科との共同研究を通じてその効果検証を行うことを目的とした介入試験を開始した。さらに、集団による心理教育および研修からなる支援プログラムの実施については、引き続き学内外の支援機関との協力を元に介入試験の実施準備を進めている。本年度までの研究成果として、昨年度実施した就労支援機関における予備研究の結果について、共同研究者と共にその成果を日本児童青年精神医学会にて発表した。また、日本学生支援機構および発達障害学生修学支援体制構築に関する合同研究協議会の招聘講演において、研究結果の一部を発表するとともに、支援関係者との情報交換を通じてより効果的なプログラム開発に向けての知見の収集及び協議を行った。次年度は、本研究計画を総括し、その成果を学術集会等にて発表し、学術誌等への公表を行う予定である。
著者
吉田 宗平 河本 純子 紀平 為子
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

平成10年〜11年において、まず第1に、紀伊半島全体のALS患者頻度の動向と多発地の状況を把握するため、1973-94年紀伊半島三県の人口動態死亡票データにより死亡頻度の変遷を解析した。この22年間で紀伊半島三県において799例(男性472/女性327名 ; 男女比1.44 : 1)を得た。死亡年齢の高齢化と共に、平均年間死亡率(年齢調整)は和歌山県では最高値から漸次低下を示し、紀伊半島全体としては近年0.9人/10万人へと均一化する傾向が見られた。しかし、和歌山県牟婁郡ではなお高率が保たれていた。第2に、和歌山県における河川・飲料水、特に多発地区古座川町と対照地区串本町大島を中心に、主な微量元素の含有量を分析した。古座川水系の河川・上水道のCa,Mg含有量(平均Ca2.3, Mg0.75ppm)は最も低く、この傾向は日高郡以南のALS多発地帯に見られるが、紀伊半島最南端の離島串本町大島の井戸水のみは(Ca13.3, Mg4.3ppm)と全国平均レベル(Ca8.8, Mg1.9ppm)を上まわった。第3に、house-to-house studyを施行するため、特定疾患医療受給者情報を利用し、地域医療機関や保健所の協力を得て古座川・大島地区の予備調整を行った。1990-99年の10年間で古座川町では、ALS2名、PDC-ALS2名の計4名の発症が確認された。このうちPDC-ALS2例の家系には、共にALSの発症が確認され家族性例であることが判明した。過去この地区にはPDC-ALSの発症の記載はない。古座川の平成12年1月1日現在の時点有病率は、71.5人/10万人であったが、大島にはなお患者は確認されていない。現在、当初のALSのみを対象としたhouse-to-house surveyの計画を再考して、PDCを含めた家系および環境要因分析を中心とした研究課題として考慮中である。
著者
遠藤 芳信
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究課題名は「近代日本の要塞築造と防衛体制構築の研究」ということで、1910年要塞防禦教令の成立過程を中心に実証的に考祭を深めてきた。この結果、3年間にわたる本研究の実績と成果としては、下記の4点をあげることができる。第一に、1910年要塞防禦教令はその頒布(限定部数、閲覧者制限等)と保管自体が厳密な機密保護体制の下に管理されてきたので、参謀本部及び要塞司令部の限定された業務従事者のみが閲覧・調査・審議等の対象にすることができただけである。これによって、近代日本における要塞防禦の意味等の公開的な議論・研究はほぼ完全に閉ざされてきたということができる。これに対して、本研究は、1902年要塞防禦教令草案と1910年要塞防禦教令の各款項等が意味する内容を初めて解明・考察したことになる。第二に、1910年要塞防禦教令は日露戦争前の1902年要塞防禦教令草案の特に「編冊草案」の記載事項と比較するならば、戦備を基準にして、戦備実施、要塞守備隊配置、防禦戦闘等に関してかなり整理・整備した規定を示したことである。第三に、1910年要塞防禦教令は要塞内の民政・警察事項等の規定においては、1882年の戒厳令制定段階においては特に合囲地境内の具体的な戒厳業務が必ずしも明確でなかったのに対して、軍隊側の戒厳業務内容(地方行政機関との関係、治安維持対策、住民避難、給養・衛生、住民の軍務従事等)の具体的な考え方を示したことである。第四に、クラウゼヴィッツが指摘するように、常備軍建設以降には要塞の自然的な住民保護の自的が忘れ去られていくが、1910年要塞防禦教令の成立過程をみると、日露戦争後直後には、部分的には要塞の自然的な住民保護の議論は潜在化していたものと考えてよい。
著者
藤田 育嗣 寺井 伸浩 奈良 忠央
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では,(1)整数係数の方程式で定義された楕円曲線の有理点群の生成元や整数点を調べる(2)ディオファンタスの2組の5組への拡張可能性を調べる の2つの目的を遂行した.(1)について,楕円曲線C_m:x^3+y^3=m(mは3乗因子をもたない)に対しC_mの有理点群の階数が1,2の各場合に生成元および整数点を決定した.また楕円曲線E^N:y^2=x^3-N^2x について,E^Nの有理点群の階数が2や3の場合に生成元を具体的に調べた.(2)について,a<b<a+4*sqrt{a}やb<3aを満たすディオファンタスの2組{a,b}はディオファンタスの5組に拡張できないことを示した.
著者
井戸 伸彦
出版者
岐阜経済大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

漢字検定相当の試験の自動採点を行うシステムを実際の大学教育で運用し、教育成果を上げることを目標に、報告者は研究とシステム開発とを進めてきた。技術的には、正解となる標準字形と受験者による入力字形との間の照合方法、画数を間違えた入力字形に対応する画数フリー化、入力字形の瑕疵への減点の合算方法を開発した。システム開発としては、文化庁文書「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)について」のすべての記載内容を採点結果に反映するシステムを、実際の授業で運用した。産業分野では、今後商用化への検討を進めていくパートナーとして(株)日立社会情報サービス様(旧日立公共システム様)に支援を頂いている。
著者
信夫 隆司
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、当初、在京米大使館のインテリジェンス活動とアメリカの対日政策決定への影響を分析することが構想されていた。ただ、実際に史料収集にあたってみると、在京日大使館のインテリジェンス活動とは、外務省関係者からの情報収集、あるいは、東京にある他の在外公館からの情報収集が中心であった。そこで、事例を絞り、日米安保条約にもとづく事前協議制度、在日米軍の刑事裁判権、沖縄の施政権移行期に交わされた密約、奄美返還、ジラード事件を中心に、在京米大使館の活動と政策決定の影響を分析した。
著者
R・TINOCO Antonio
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本プロジェクトの目的はスペイン語の変異言語学的な研究で、そのアプローチとしてインターネット上のソーシアルメディア(主にツイッター)のデータをStreaming APIを利用し、 自動的に収集し、大規模なコーパスを作成することにより、広大なスペイン語圏のスペイン語の語彙と文法の地理的な分析をすることである。利用するデータベースに関してはSQL系(MySQL)とNoSQL系(Elastic Stack)を両方テストした。地理的な情報(経度、緯度)が含まれるデータはMySQLのデータベースに蓄積し、他の言語も含まれるデータはNoSQL系のデータベースに蓄積し、目的により使い分けることにしている。例えば、米国のスペイン語と英語の接触、あるいはスペインのスペイン語とカタルーニャ語の言語接触の現象を研究するために、可能な範囲で他の言語もNoSQL系のデータベースで蓄積した。Elastic StackのようなNoSQL系のデータベースは、ツイッターのJSONフォーマットをそのまま処理できるので、Kibanaなどで基本的な可視化もできる。しかし、言語地図の作成はGIS専用のQGISで行う。このような方法で集めたデータによってスペイン語の具体的な語彙と文法のバリエーションの共時的な研究が可能になった。例えば、語彙のバリエーションとしてはメキシコのcobija、apapacharなど、ベネズエラのpiche、arrecheraなど、またはアルゼンチンではgauchar、mina、またはa mi lado es un porotoのような独特な言い回しを、地理的な分布および用法についても調べることが可能になった。また、hicisteとhicistesのように過去形の二人称で見られるバリエーション現象も量的な分析と、その分布を示す言語地図を作成することも可能である。