著者
譲原 晶子 奥 香織
出版者
千葉商科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

平成28年度からの課題を引き続ぎ、以下に示すような次のステップの準備をすることができた。① 18世紀におけるオペラ・コミックと劇的バレエの関連について分析する。初期のバレエ・ダクシオンには、人気のオペラ・コミックをもとにつくられたものが多いが、オペラ・コミックをバレエ化することのバレエ側のメリットとして、これまで、「音楽の言語的機能」という点が指摘されてきた。これに対して本研究では、両ジャンルが「劇構成」において共有している点を明らかにすることで、両者の関連について考察する。② オペラ・コミックはその成立過程からみてもパントマイムを重要な要素としてきたが、オペラ・コミックの台本作家のなかには、台本にト書きを書き、劇作家は台詞を書くのみならず自ら演出を行なうべきである、と考える者が現れるようになった。本研究は、オペラ・コミックのこうした動向を、ディドロの「演劇タブロー」の理論との関連から考察する。これによって、この時代に「演出」を見据えた劇作法が確立していく様相を理論と実践の両面から把握し、そのバレエへの影響を明らかにすることを目指す。③ バレエの主要概念のひとつ「アラベスク」が絵画(装飾)藝術の概念でもあることに注目することで、18世紀フランスにおける絵画と舞踊の関連性について考察する。バレエの「アラベスク」が現代のようにポーズの概念となったのは19世紀になってからであるが、舞踊藝術は、舞台美術家ベランの活動やボーシャン=フイエの舞踊記譜法を通して、17世紀より「アラベスク画/グロテスク画」の影響を受けてきたと考えられる。18世紀において舞踊の「アラベスク」の捉えられ方、またその変遷を探究することにより、この時代の絵画と舞踊の関係について新たな視点を導入する。
著者
鹿児島 浩
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

乾燥・凍結に耐性を持つ南極クマムシActuncus antarcticusのゲノム解析を行い、総塩基数28.9 Gbの配列を得た。これにより完成したミトコンドリアの全長配列(14.4 kb)の解析結果を、国際的科学雑誌Mitochondoriaに投稿するべく、現在、論文の準備を進めている。一方、本来の目的であったクマムシの核ゲノム配列については、細菌ゲノム配列の混入のために完成には至らなかった。そこでクマムシの無菌化を行い、餌のクロレラとの二者培養の系を確立した。これによりクマムシの高純度の長鎖ゲノムDNAを調整することが可能になり、10x genomics社のchromium、並びにPacBio社のRSIIによる完全長ゲノムの決定を開始する準備が整った。さらに、南極線虫Panagrolaimus davidiから得られた乾燥・凍結耐性遺伝子の候補遺伝子LEAを、実験モデル生物Caenorhabditis elegansに遺伝子導入し、本来、乾燥感受性の生物であるC. elegansに乾燥耐性を付与することに成功した。これは耐性遺伝子の実用的な応用に大きなインパクトを持つ結果だと考えている。また、乾燥耐性との強い関連を持つ高温耐性生物(温泉に生息する)について、2報の論文を発表した。以上のように、数々の困難を乗り越え、研究のは好ましい方向に向かっていたが、残念ながら研究を続けるポストに就くことができず、科研費申請資格を喪失し、本研究を中止することになった。成果を期待され研究費を交付された研究を全う出来ず、慙愧の念に堪えない。現在、これまでに整備した実験材料や研究成果を活かせるよう、これまでの共同研究者と調整を行っている。
著者
芳鐘 冬樹
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

技術融合型特許に関して,引用・分類共起関係のネットワーク構造という視点から調査した。自動車関連企業に関しては,次のことが分かった。付属パーツに関わるメーカは,以下の特徴を持つ。(1) 技術要素数の割に融合関係数が多い。(2) 特定の技術要素が多様な技術要素と融合関係を持つ一方,他の多くは融合関係をあまり持たない。(3) 特定の技術要素が,技術融合型の研究開発の核としても,補助的な関連技術としても採用される一方,他の多くは核,あるいは補助的技術のどちらかにしか採用されない傾向が強い。(4) 各技術要素が広い融合関係を持つ傾向は弱い。(5) 同じ技術要素を組合せる研究開発が繰り返される傾向は弱い。
著者
松井 哲哉 並川 寛司 板谷 明美 北村 系子 飯田 滋生 平川 浩文
出版者
独立行政法人森林総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

ブナ分布北限地域の最前線における正確な分布を調べるために、空中写真解析と現地調査を併用した結果、ブナの孤立林は最大約4km間隔で9箇所分布していることが判明した。これらの孤立林は、ブナの連続分布域から鳥などによって運ばれた種子が育ち、成立した可能性がある。遺伝的解析の結果、孤立ブナ林では孤立度が高く、多様度は低下する傾向がみられたものの、ブナの樹齢は120年以下の若い個体が多く、ブナは林冠のかく乱などを契機として今後もゆっくりと分布範囲を拡大すると考えられた。
著者
中生 勝美
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、GHQの下部組織であるcivil Information and Education section (CIE)に所属していた人類学者の分析から、戦後のアメリカの極東政策と人類学の利用について、公文書と聞き取りから研究を進めた。当時GHQが収集した資料はアメリカの公文書館に所蔵されている。特に、1990年代に日本への戦時賠償請求が時効にかからないという法令が採択された影響で、2000年以降、新たな資料が公開されている。本研究では、CIEの資料を中心に調査をしたが、かつてCIEに勤務していた日系人研究者へのインタビューより、アメリカの人類学が日系人強制キャンプでの調査から始まり、戦時情報局、CIAの前身のOSSと関係を持ち、それがGHQの調査に継承されていくプロセスを明らかにできた。CIEの調査部長であったH. Passinは、1946年8月に目本民族学協会主催の講演会で「現代アメリカ人類学の諸傾向」を講演しており、その後、当該学会はCIEからの依頼で『日本社会民俗辞典』の編纂に着手して、GHQの人類学を利用して日本社会の深い理解を目指したことが判明した。さらに、CIEは、農地改革などの改革政策について、日本各地に調査拠点を選定し、その調査に日本人の人類学者、民俗学者、社会学者を嘱託で採用して実態調査をさせている。この調査方法が起点となって、アメリカにおける日本研究の基礎となり、また日本におけるアメリカの方法論に基づく調査研究が発展している。しかし、アメリカの学界では、GHQ時代の日本研究について、全く知られていない。本研究は、GHQの人類学者たちの活動を、オラル・ヒストリーと公文書により、戦前から戦後にかけてのアメリカの人類学者の活動を明らかにし、戦後の日本の人類学・民族学・民俗学との関係を解き明かすことに一定の成果を挙げた。
著者
孝口 裕一 山野 公明 八木 欣平 奥 祐三郎 松本 淳 浦口 宏二
出版者
北海道立衛生研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

イヌの抗多包条虫ワクチンの開発は将来的に飼いイヌからヒトへ、あるいは終宿主動物の感染率を長期的に下げる有力な手段になる可能性がある。一方、イヌに感染と駆虫を繰返すと部分的な感染抵抗性を示すという報告があり、再感染によって誘導される虫体排除機序を解明することはワクチン開発を行う上で重要であると考えられる。本研究ではイヌに多包条虫を繰返し実験感染させ、従来の糞便検査に加え、分子生物的な解析を行うことにより主要な虫体排除機序の一端を明らかにした。また、繰り返し感染により感染抵抗性を獲得したイヌの虫体排除能は短期的に消失せず、イヌの抗多包条虫ワクチン開発の可能性を裏付けた。
著者
渡辺 伸一
出版者
奈良教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

公害・環境問題には、その発生から何十年も経つのに依然として未解決という問題が少なくない。本研究では、その代表例であるイタイイタイ病問題(慢性カドミウム中毒問題)について、未解決の理由と解決過程に潜む問題点について解明した。他方、公害・環境問題の中には、社会問題として一定の解決はみたが、どのように解決したのかが未解明という事例が少なくない。本研究では、大分県大分市(旧大分市、旧佐賀関町)における環境問題を選択し、その解決過程を明らかにした。
著者
中尾 祐治
出版者
中部大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

15世紀の英国作家サートマス・マロリーの現存する二つの異本間の言語差異に関する研究は、私の永年の課題で、それを英文書としてまとめる時期が来たと感じている。しかしそのためにはまだ研究すべきかなりの言語現象が残っているので、それらの調査研究をするのが科研費による研究の目的の一つであった。このような目的で、四編の論文を執筆した。論文の一つは、定冠詞と不定冠詞の異同現象である。この論文は英国出版の論文集に掲載された。第二は否定離説接続詞の研究である。この論文ではne, neither, nouther, nother, norなどの語に関し、両テキストでの用法の特徴を突き止め、論文に仕上げた。これは、スロバキアのコメニウス大学の論集に採用され、印刷された。第三は頭韻の問題である。キャクストン版の第五巻(アーサーのローマ戦役物語)は、写本と刊本で本文が異なり、キャクストンが、頭韻詩に依拠している写本の本文を、頭韻を嫌って全面的に書き直した、と云う説があるが、本当にキャクストンが頭韻を嫌ったか否かにつき、新しい資料でこの問題を論じた。この論文は印刷中で、2005年7月に韓国で出版されることになっている。これら三編はいずれも海外で出版され、海外の研究者と論文を交流するように努めた。他の一編は接頭辞の有無を論じた英文論文で、中部大学人文学部紀要に寄稿した。また中部大学ブックシリーズの1冊として『トマス・マロリーのアーサー王伝説-テキストと言語をめぐって』というタイトルのブックレットを日本語で出版した。この作業を通じ完成させようとしている英文による研究書への糸口を探ることができた。これらの研究成果をあげるため、科研費が大きな役割を果たしたことを述べ、深く感謝申し上げる次第である。
著者
伊藤 和之 加藤 麦 中村 仁洋 池田 和久 幕内 充 水落 智美 岩渕 俊樹
出版者
国立障害者リハビリテーションセンター(研究所)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

重度の中途視覚障害者の手書き行動が学習に影響を与えるかを検証するため,新規外国語単語学習課題を手書き有り無しの2条件で行う行動実験及びMRI撮像を行った.その結果,聴くだけの学習は短期記憶で,手書きとの併用は長期記憶で有効との示唆を得た.また,視覚障害者群で,両側の運動野を含む前頭頭頂葉から後頭葉に亘る広い領域で,晴眼者に比して強い神経活動が見られた.特に,左前楔状回を中心とする視覚領域では,手書き条件で,非手書き条件より強い神経活動が観察された.重度の中途視覚障害者の手書き行動は,長期記憶に有効であり,視覚心像に関わる視覚連合野を中心とする神経活動を介して学習促進が起こることが示された.
著者
齋藤 雅英
出版者
日本体育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

記憶課題と注意仮題を用いた新たな催眠尺度の作成を行うために実験を行った。実験には、世界的に使用されているハーヴァード集団式催眠感受性尺度(HGSHS)と、意図的に操作することが難しい潜在連合テストを用いた。潜在的権威主義尺度(IAT)とHGSHSの関連について実験を行った。その結果、HGSHSとIATの相関係数が有意であり、IATを用いた新しい催眠尺度を作成できる可能性が示された。
著者
松永 典子 徳永 光展 施 光恒 伊藤 泰信 祝 利 緒方 尚美 余 銅基
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究課題では、総合型日本語人材養成プログラム開発という目的のため、理論研究と実践研究を行った。まず、理論研究では、日本型「知の技法」の有する自文化を相対化する視点と他文化に対する積極的受容姿勢とが相互文化学習の手法として有効であるという理論化を行った。次に、その理論を日本語教育・留学生教育に還元するための教材開発及び教育実践研究を行った。実践研究の結果、本実践における日本人学生と留学生が協働でひとつの課題解決に取り組むという方法論が学習者に課題解決に向けた意識を促す可能性があることが示唆された。
著者
相澤 啓一
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009-04-01

日独両言語間の通訳者養成は日本の高等教育機関では未だ制度化されていないため、本プロジェクトでは希望者を募って通訳者養成を定期的に実践する中で、通訳者が必要とする日独専門用語データベースの整備と、よりよい通訳のあり方をめざす理論化を目指した。本プロジェクト開始後、ドイツ・ハイデルベルク大学では日独英通訳者養成の修士課程が設立されたので、協力して資料収集と単語リストの共同開発、意見交換を行った。用語リスト等は今後も継続して整備されていく予定である。
著者
貝原 巳樹雄 千葉 悦弥 金野 茂男
出版者
一関工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

ハロゲン光源(近赤外光源)、光チョッパー、モノクロメーター、光センサー、プリアンプ、ロックインアンプ(高い信号対ノイズ比を実現するための特殊なアンプ)、モノクロメーターの波長送りモーター、制御およびデータ処理用PCをUSBで接続するタイプの原価20万円程度のプラスチック種類判別機を開発した。判別できるプラスチックの種類は13種類程度であるが、国内のプラスチック総生産量の約90%程度の種類判別をカバーできる。
著者
池田 京子 大谷 真 香山 瑞恵 東原 義訓 山下 泰樹 谷塚 光典
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

通常,正しい発声法は,熟達したプロのヴォイストレーナーによる個別訓練によってのみ習得できるとされており,このことが教育現場において,歌唱指導の壁となっていた。そこでこれまで研究代表者らが開発してきた「声の見える化技法」を応用したソフトウェアを開発し,改良を重ねた。また、それを用いた指導法を構築し、附属学校園での「歌唱指導」の授業実践を重ねてきた。これにより,児童・生徒たち自身が自分の声を評価し,友だち同士の相互評価ができ,プロのヴォイストレーナーがいなくても,自分たちが目的を設定することで,主体的な学びに発展させるシステムの端緒を構築した。
著者
山崎 敏正 井上 勝裕 齊藤 剛史
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

以前の科研費(基盤研究(C)サイレントスピーチBCI、平成23年度~25年度)では、頭皮脳波を利用したsilent speech Brain-Computer Interface in Japanese(SSBCIJ)において、個々のサイレント母音とサイレントなひらがな2文字のdecodingにとどまっていた。本研究では、健常者において、日本語で、サイレントの3文字以上から成る単語および文節のdecodingを可能にするアルゴリズムの開発と、患者(脊髄性筋萎縮症Ⅰ型)への適用を目指した、real-time SSBCIJシステムの設計を検討した。
著者
中西 千香 荒川 清秀 明木 茂夫 塩山 正純 植村 麻紀子
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

わたしたちは、中国語のレアリア“realia”の中国語教育における可能性、妥当性について検討した。メンバーそれぞれが毎年、資料収集、そして、分析を行い、論文発表および学会発表を通して、このことを証明した。また、年に1回研究会やワークショップを行い、一般の学習者や中国語教育従事者に向けて、レアリアとは何か、レアリアの特徴を紹介し、中国語教育でどのように援用できるか、援用することが、これからの中国語教育にどういう意味をもつのかについて,利点を述べ、明確な示唆を与えることができた。メンバーそれぞれが限られた時間の中で、やるべきことはやりとげ、本プロジェクトは目標を達成したと言える。
著者
辻 加代子
出版者
神戸学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、京都語に隣接する京都府口丹波方言の敬語展開の現状を明らかにすることを目ざしたものである。口丹波地方では、従来、尊敬語として機能するハル敬語と、親愛語として働くテヤ敬語とが併存し、使い分けられていた。しかし、2012年から2015年までの現地調査の結果、京都市に近い南東部、特に中心部の亀岡地区で、テヤ敬語が廃れつつあることがわかった。そして女性は京都市女性話者に近い敬語運用を行い、男性は京阪地方で盛んな軽卑語のヨルを取り入れ、テヤ敬語の役割の一部を担わせつつある。また、ほぼ全域で、存在動詞がハルに承接する場合、オラハルとイハルないしイヤハルとのあいだでゆれがみられることがわかった。
著者
三宅 康子 山村 卓
出版者
国立循環器病センター(研究所)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

家族性(遺伝性)高コレステロール血症の原因遺伝子として因果関係が最もよく知られておりかつ高頻度なものはLDLレセプター遺伝子異常である。わが国に見られるLDLレセプター遺伝子異常にはどのようなものがあり、またどのような異常が多いのかについて調査してきた。LDLレセプター遺伝子の全coding領域およびプロモーター領域についてSSCP法、direct sequencing法により塩基配列の詳細を調べたところ新たな高頻度変異や、minor変異がいくつか見出された。互いに血縁のない207例の家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体について解析を行ったところ、207例中121例(58%)にLDLレセプター遺伝子異常が見出され、合計56種類の異なる変異が確認された。それらのうち、8種類の変異は比較的高頻度に見られた。それらはC317S変異(207例中6.3%)、K790X変異(6.3%)、1845+2T→C変異(6.3%)、L547V変異(3.4%)、P664L変異(2.9%)、D412H変異(2.4%)、2313-3C→A変異(2.4%)、V776M変異(2.4%)でありこれらはいずれも点変異であった。これらの変異はわが国におけるLDLレセプター遺伝子のcommon mutationであると思われる。これら8種類の変異を合わせると全体の32%を占めるところから、わが国の家族性高コレステロール血症の32%の遺伝子診断は比較的容易であると思われた。しかし残りの48種類の変異は1例(0.5%)から3例(1.5%)にしか見られず、これらのminor mutation(全体の26%)は診断が難しい。このようにわが国におけるLDLレセプター遺伝子変異は非常に多様なものであり一般的には遺伝子診断は難しいと思われる。症状と変異の関連については、LDLレセプター活性を正常の20〜30%残しているtypeの変異ではnull typeのものに比べて臨床症状がmildであった。全coding領域の塩基配列を調べても変異が見られない症例は207例中86例(42%)あり、これらの遺伝的高コレステロール血症は、LDLレセプター遺伝子以外の遺伝素因に基づくものと思われる。これらがどのような遺伝素因によるものであるのか、考えられる高コレステロール血症素因について調査予定である。
著者
中村 雅之
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

免疫沈降法や免疫細胞化学法などの研究の結果、コレインは細胞骨格系タンパク質やオートファジー関連タンパク質と相互作用することが示唆された。ミトコンドリア膜電位を消失させマイトファジーを誘発する脱共役剤で細胞を処理すると、コレインと細胞骨格系タンパク質との相互作用が増強した。また、コレイン強発現細胞ではコントロール細胞と比べてオートファジーを誘発する飢餓刺激やマイトファジーを誘発する脱共役剤刺激後の細胞生存率が有意に高かった。これらの結果から、コレインはオートファジーやマイトファジーに関わる細胞死抑制機構に関与しており、それらの機構の破綻が有棘赤血球舞踏病の分子病態である可能性が示唆された。
著者
森川 輝一 福島 清紀 奥田 太郎 佐藤 啓介 宮野 真生子 佐藤 実 新田 智道 福野 光輝 近藤 智彦
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

研究課題について、各メンバーが様々な分野の学会で研究発表を行なったほか、仏教学、社会心理学、古代ギリシア思想の研究者を研究協力者として招き、意見交換を実施した。また、それぞれのメンバーが研究課題についての論文や著書を刊行した。代表的なものとして、宮野真生子『なぜ、私たちは恋をして生きるのか』(ナカニシヤ出版、2014年)、森川輝一他『政治概念の歴史的展開・第八巻』(晃洋書房、2015年)が挙げられる。