著者
古賀 靖敏 ポバルコ ナターリア 西岡 淳子
出版者
久留米大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

Klotho遺伝子のノックアウトマウス(KlothoKOマウス)では、ヒトの老化に類似した種々の症状を来すことから、老化現象に関わる重要な遺伝子として報告された。我々は、KlothoKOマウスにおける老化現象と正常加齢マウス(CD-1)を比較検討し、老化機構におけるKlotho遺伝子とミトコンドリア機能障害のネットワークを解明するために腎および脳組織における病理学的、生化学的解析を行った。正常加齢マウスでは、腎腫大が診られ、糸球体の減少と総タンパクの低下、ミトコンドリアの酸素消費の低下と電子伝達系酵素活性の全般的な低下が観察された。一方、KlothoKOマウスでは、正常糸球体数の減少と総タンパクの増加を伴う電子伝達系酵素活性の比活性の低下を来した。また、電子伝達系の酵素活性の中で、複合体IIが選択的に早期に低下する事を見いだした。終脳では、正常加齢のマウスでは電顕的なミトコンドリア腫大がみられミトコンドリア電子伝達系低下を伴っていた。KlothoKOマウスでは、その加齢減少に伴い、正常加齢マウスでは診られない、腎と脳でミトコンドリア機能不全を来し、その原因は、異常たんぱくの蓄積によると考えられた。
著者
奥山 恭英
出版者
北九州市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では災害の経済的影響評価のための枠組みを提案するために、まず経済的影響推計のための方法(モデル)を吟味し、その課題を抽出した。それに基づき実際の災害事例を用いて実証研究を行い、評価枠組みの構築に有用な成果を得た。被害などの災害一次データに関しては標準化が必要不可欠であるが、その推計方法は各災害の特異性により柔軟かつ状況適応が肝要であり、その上での比較可能な対応が今後の課題として導出された。
著者
伊東 利勝
出版者
愛知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

王国内の地方村落コミュニティはアティー(平民)とアフムダーン(王務員)で構成されており,これらは人格的紐帯に基づく別々の支配体系に組み込まれていたので,村落の中で住民相互の利害が一致しなかった。日常生活は同一サイクルで展開されていたが,集落に住む人びとの心理的凝集性,すなわち村という社会単位への帰属意識は二次的であった。従ってこうしたコミュニティの中での我われ意識は流動的で,民族なる自覚(エスニシティ)はいまだ生まれていなかった。
著者
森 治代 小島 洋子 川畑 拓也
出版者
大阪府立公衆衛生研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

大阪府内で流行が拡大し、分子疫学的に大きなクラスターを形成するHIV-1 株に着目し、それらを特異的に増幅するPCR プライマーを用いることによりHIV-1 のsuperinfection(初感染とは異なるHIV-1 株に再感染すること)もしくは重複感染を簡便に検出する方法を開発した。3 種類の特異プライマーを作製し、HIV-1 感染者63 名から得られたプロウイルスDNA について検討した結果、2 症例においてサブタイプB 株の重複感染が認められた。
著者
原田 隆郎 横山 功一
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

橋梁の各種振動によって人体が受ける影響度の定量化手法を提案するため,本研究では歩道橋の振動問題に着目し,歩道橋横断時に利用者が感じる不快な揺れを生体脈波で評価するための実験的検討を行った.実験では,歩道橋の振動を実測するとともに,歩道橋利用者の歩行時の振動を同時計測し,両者の振動特性と人間の生体脈波の関係を把握した.その結果,歩道橋の振動変位が大きくなればなるほど不快感も大きくなるとともに,利用者の歩調が歩道橋の固有振動数と一致する場合に利用者の生体脈波が大きく変化することを確認した.
著者
奉 鉉京 加藤 鉱三
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は類似する母語(日本語・韓国語)話者による英語前置詞の第二言語習得研究である。理論的方針として、英語の前置詞と日本語・韓国語の助詞を、意味的・統語的考察から、プトロタイプ理論に基づく習得仮説(Prototypicality Hypothesis)と生成文法に基づく言語習得仮説(Economy-Driven Development Hypothesis)を2つの実験研究を通じて検証した習得実験研究では、各々の中間言語、つまり、日本語・韓国語を母語とする学習者のL2としての英語の前置詞の心的標示を3つの構築段階に分けて記述し、母語の影響、習得難易度などについて議論しながら、経済性に統率された習得仮説の優越を提訴した
著者
今井 直
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

国連人権理事会を創設した2006年3月の国連総会決議60/251は、「理事会が、重大かつ組織的な侵害を含む、人権侵害の事態に対処」すべきことを定める。新設の普遍的定期審査(UPR)については、基本的に人権侵害事態対処機能とは異なる趣旨のメカ二ズムであることが確認される一方、「アラブの春」の文脈では、人権理事会の活動にその発足以来はじめて積極的なアプローチが見られた。しかし、その常態化は困難であり、特別手続や人権高等弁務官などによる注意喚起が、人権理事会の審議や決議の「引き金」となるメカニズムを確立させることが必要である。
著者
木本 哲也
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

海馬で低用量ビスフェノールA(BPA)の作用を検討した。(1)成熟ラット海馬スライスに10nMBPAを2時間作用させると樹状突起スパイン(特にmiddle-head:頭部直径0.4-0.5μm)が増加した。BPA作用は膜受容体ERRγが媒介していた。MAPキナーゼ・NMDA受容体阻害もBPA作用を抑制した。(2)周産期に母体経由で低用量BPA(30μg/kgBW/day)に曝露されたラットのスパインは成長後のオスで減少した。メスでは性周期依存性変動が消失しオスに近づいた。(3)質量分析法でオスラット海馬に約64nMのBPA蓄積が判明した。
著者
高橋 勉
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

フィルムやペットボトルの成形加工に用いられる平面伸張流動場における高分子流体の挙動を調べるために,シース流を利用して試料を急速に加速しフィルム状に引き延ばすフローフォーカッシングを用いて安定した高伸張速度の流れ場を形成した.伸張速度をさらに増加させるために流体駆動と試験部を一体化した装置を作り効果を確認した.さらに,定常伸張流動中に180旋回する流路を用いて伸張応力の評価も行った.
著者
井土 愼二
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

研究計画に示した通り、論文では明代の資料『回回館雑字』、ヘブライ語表記のブハラタジク語資料、そして録音から得られる音響データを組み合わせてタジク語とウズベク語の母音体系を分析した。その結果、タジク語の母音体系の成立過程については、これまでに知られていなかった幾つかの事実が明らかになった。15世紀のサマルカンドでの母音体系の『回回館雑字』に基づいた再構や、タジク語母音推移の過程や時期のヘブライ語表記のタジク語資料と音響分析に基づいた推定などがそれにあたる。研究の主目的であるウズベク語母音体系の成立過程の解明については、上述の論文のうちの1本がその嚆矢となっている。今後発表を続けていきたい。
著者
永田 智 清水 俊明 大塚 宜一
出版者
東京女子医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

肥満群の便では健常児と比較してビフィズス菌の有意な減少と便中酢酸濃度の明らかな低下が認められた。肥満群は、観察期間の前半6ヶ月を食事・運動療法のみ、後半6ヶ月は乳酸菌シロタ株含有飲料を飲用させたところ、飲用1ヶ月後に有意な体重減少が得られた。また、飲用3カ月後に中性脂肪値の有意な低下、1カ月後にHDLコレステロール値の上昇傾向、飲用3カ月後に便中ビフィズス菌の有意な増加と酢酸濃度の有意な上昇が認められた。以上より、シロタ株には肥満抑制効果があることが示唆され、その効果は、シロタ株が腸内のビフィズス菌の増殖を促進して、その代謝産物である酢酸などが脂質代謝に影響している可能性が考えられた。
著者
村上 興匡
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

明治30年代以降、告別式や神前結婚式に代表される宗教式結婚式など、近代的な人生儀礼の様式が次々考案された。これらは日本を文明するという機運、簡素化・合理化の主張としての風俗改良運動、社会教育における宗教の役割といった時代の問題と関係していた。その一方で日本の伝統的宗教習俗の多くは、文明に反する迷信として排除の対象となったが、「家」に関連する部分(たとえば「祖先教」など)は天皇制との関係で残された。近代的な人生儀礼は、都市的な生活様式に適合するものであるとともに、「家」的なイデオロギーと密接に結びついていたといえる。当初一部インテリ階級のみによって実行されてきた告別式や神前結婚式は、昭和になってから都市市民、特に戦後の高度経済成長期以後には、地方全国に広がった。1970年には、それまで大会社しかおこなっていなかった「社葬」を、創業者の葬儀のために中小企業においてもおこなうようになり、「村」-「家」に擬制したような企業間の贈答関係が成立し、葬儀は華美なものとなった。その一方で少子高齢化、核家族化によって「家」制度は徐々に壊れ、1990年代には継承者いらない墓地、散骨(自然葬)等々の運動が起こった。これらの運動の主題は「どう葬るか」ではなく「どう葬られるか」にあり、従来の葬儀慣習が強制力をなくし、葬儀のあり方が多様化していることを示している。それによって人々の葬儀や死に対する考え方は個人化し、葬儀の社会儀礼としての意味づけが弱められてきている。
著者
冨田 智彦 安成 哲三 斉藤 和之 吉兼 隆生 日下 博幸 安成 哲三 斉藤 和之 吉兼 隆生 日下 博幸 山浦 剛 橋本 哲宏 坂元 勇一
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究計画では、我が国の夏季水資源管理にとって重要な梅雨降水の年々変動特性、関連する大規模大気循環場、そして西太平洋における大気海洋相互作用の役割を議論する。主な研究成果は、(1)黒潮域の大気海洋相互作用が10 年規模の梅雨前線活動に及ぼす影響を明らかにした点、(2)エルニーニョ/南方振動現象が梅雨前線の北進中にその活動度をいかに変質させるか、を解明した点、そして(3)梅雨前線活動に2-3 年周期、3-4 年周期、そして新たに6 年周期変動の卓越を見出し、各時空間変動特性を明らかにした点、の3 点である。
著者
桑原 牧子
出版者
金城学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究はタヒチのイレズミの施術における物質性(道具と染料)と衣服の物質性(素材やスタイル)を分析し、タヒチ社会の人々がイレズミと衣服を通して階級、性、年齢、職業、エスニシティ、住居地域などの違いごとにいかに自らを差異化してきたか、西欧との接触期から現代にいたるまでの変化を検証した。植民地支配、近代化およびグローバル化による社会変化を受け、イレズミと衣服の物質性も大きく変化し、イレズミの施術と衣服の生産・着用にも影響を及ぼした。その結果、タヒチ社会の個々人の身体性構築もより多様化していった。
著者
三浦 篤
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

マネの主要作品について19世紀当時の批評を調査し、その受容の様相を分析した。取り上げたのは《草上の昼食》、《オランピア》、《エミール・ゾラの肖像》《フォリー・ベルジェールのバー》、《鉄道》の5点で、その批判的な反応から、マネの作品が主題の扱い方、様式・技法のレベルにおいて、いかに当時の美的な基準を逸脱していたかが明らかになった。本質的には、マネの絵の曖昧さや多義性が観者の読解を混乱させたのである。
著者
山田 昭広
出版者
明星大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本課題の第2目的である本文批評については特記すべき事項はない。第1目的である古版本に見える書き込みの収集と整理が第2年目の研究の中核となった。その研究実績を以下に報告する。(1) 学会発表(a)平成10年8月に英国ストラットフォードで開催の第28回InternationalShakespeare Conferenceにおいて、“A Seventeenth-century Reader of King Lear,with SpecialReference to the Marginalia in a First Folio at Meisei University"を発表、英・米・加・伊・日・西などの研究者約30名からなる分科会で討議。討議内容は下に述べる図書の刊行に役立った。(b)日本シェイクスピア協会の依頼で、会報Shakespeare News(38巻2号、平成11年3月発行予定)のために「1630年頃のシェイクスピアの読者」を執筆、寄稿した。(c)名古屋大学英文学会第38回大会(平成11年4月24日)で「17世紀のシェイクスピア読者-1623年の戯曲集の欄外メモを中心にして」と題して講演の予定。(2) 図書刊行 平成10年12月、明星大学図書館所蔵のシェイクスピア本の書き込みについての研究The First Folio of Shakespeare:A Transcrjpt of Contemporary Marginalia in a Copy of theKodama Memorial Library of Meisei Universityを公刊した。お詫びと謝辞 本年度限りで明星大学を退職するので、本課題はここで打ち切らざるを得ない。申し訳ない。顧みれば、課題16件、延べ33年度分の科研費を受けて今日まで研究。心から感謝したい。
著者
太田 照美 村上 武則 シェラー アンドレアス
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ドイツの社会法上の回復請求権の法的性質について損害賠償請求権との違いを明確にした。その学問的意義は大きい。また日本の景観権につき、ドイツの公法上の結果除去請求権の対象とされる絶対権と比較し、わが国の民法学で論争されている「権利論」との関わりで、わが国で初めて考察した。さらに日本の地方公共団体の租税過誤納金返還問題につき、日本で初めて、ドイツの公法上の原状回復請求権により救済を求めることができるとする理論を呈示した。
著者
渡辺 学 岡本 能里子 甲賀 正彦 岡本 能里子 甲賀 正彦
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

ビジュアル・グラマー、タイポグラフィーなどに注目しながら、日本語とドイツ語を中心とする言語社会での言語記号(文字)と視覚的記号(図像)の分布や使用法を観察し、文字と視覚的要素との相互行為によって生み出される意味創出と意味伝達の動的な諸相を調査分析・考察し、テクストデザインの問題性とのリンケージを試みたうえでポライトネス研究へと視野を拡大することにより、爾来の社会言語学のテーマ領域的・方法論的進展への貢献を行った。
著者
阿部 博友
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究によりブラジル会社法の特質を明らかにすることができた。特に支配株主の責任と義務規定は、強大な外資がブラジル企業を支配してきた社会的現実に焦点をあてた注目すべき規定であり、本研究によりその詳細が本邦にはじめて紹介されたものである。また同国資本市場法は、我が国では先行研究が乏しい。本研究は、その概要をはじめて紹介した先駆者的試みであり、今後さらに継続した研究が望まれる。
著者
坂本 祐子
出版者
福島県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では,術後せん妄を予測する尺度を開発した。この尺度は,睡眠 2 項目,基本属性 5 項目からなる.尺度項目は,術後患者の睡眠測定と看護師を対象とした質問紙調査から作成した。睡眠に関する項目は「日中の熟睡」「夜間覚醒」,基本属性に関する項目は「脳血管障害の既往」「睡眠剤服用」「向精神薬服用」「介護保険施設入所」「通所サービスに利用」であった.評価は,各項目を「有:1 点」「無:0 点」で行う.我々の評価では,基本属性 1 点以上かつ睡眠項目が 1 点以上になった場合に,せん妄を発症する可能性が高いとみなすことができた.